英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
季節は冬。俺達はアイゼンガルド連邦の麓に来ていた。今からユミル村に向かいたいのだが、途中の鉱山都市ルーレで話を聞くと、最近雪崩が起きたらしく道が塞がっているらしい。どうするかリアンヌと考え、あることを思いついた俺達は取り敢えず塞がっている道の入口まで来て状況を確認していた。
「どうするの2人共?」
「そうですね。グランドクロスと光凰神剣で切り開くのもいいですが……」
「雪崩が起きる可能性もある。慎重に作業しないといけない。ここは彼の力を借りる。頼むリアンヌ」
「了解です」
リアンヌが周囲に気を放つ。これで誰も来る事が出来ない。なので『彼』を呼ぶことが出来る。
「来てくれエル・プラドー」
『承知!』
背後にエル・プラドーが現れ乗り込む。事情を説明し、大剣を顕現させて雪の除去を始める。レイヤに地図を元にルートを作成してもらい、リアンヌには雪崩が起きないように見張ってもらう。だが中々進まない。これは長丁場になりそうだ。
「済まないな。こんな事で力を借りて」
『気にするな。いつもの事だからな。遠慮なく使うといい』
「でもロゼに怒られそうだよね。『こんな事で使いおって!諦めることを知らんのか!って」
「ふふ……彼女ならいいそうですね。そこ、危ないですよレイ」
「ん?おわ!?」
ずるっと滑り尻餅を着くレイヤ。リアンヌが手を差し出し立ち上がるがとても痛そうにしている。そろそろ一旦休むか。エル・プラドーもずっと動ける訳では無いし。
「距離的な後どれぐらいだ?」
「今で3分の1かな。今日中に着くのは難しそう」
「ではどこかでかまくらを作りましょう」
「かまくらって……もしかしてここで野宿か?」
「はい。一度作ってみたかった」
「左様ですか……」
テンション高いなリアンヌ。そんなに楽しいのか。何事も楽しまないといけないが……1度言ったら止まらないしいいか。
「じゃ作ってしまうか。エル・プラドーは周りを警戒」
『うむ。任せるといい。楽しみにしているぞ』
「早速始めましょう」
(どれだけ大きいの作るんだろ……)
かまくらを作り始める。1時間程で大きなかまくらが完成。これなら1晩は過ごせそうだ。俺レイヤは外から具合を見ていると、リアンヌが薪を持って中に入って行く。
「テンション高いねリアンヌ」
「楽しいんだろ。あまり経験出来ない事だし」
「うん。それに居てくれると頼りになるし。それに加えてボクは……」
「大丈夫だ。頼りにしてるよ
「……珍しいね。君が言うなんて」
「事実だからな」
レイヤの知識と頭の回転は俺やルーチェには無い。対応能力も随一だし本当に頼りになる。それこそローゼリアと同等に信頼している。
「順調に旅が出来るのもレイがいるおかげ。俺たちに無いのを補ってくれる。頼りにしてるからな」
「ありがと。それならロゼの分まで支えないとね。えい!」
「おっと!」
抱き付いてくるレイヤ。優しく受け止めると、レイヤはググっと体を押し付けてくる。この子も変わらないな。惚れられた以上はきちんと受け止めるが程々にして欲しい。無理だろうけど。
「……レイ?」
「ちょっと位いいじゃない。ボクは君に『大好きだ!』って言ったから。ま、君は異性としてではなく仲間としてって勘違いしたけど」
「悪かったな。出会って数日で言ってきたから尚の事だ」
これに関してはローゼリアもルーチェも知っている。そのお陰でルーチェの目が厳しくなってレイヤのスキンシップは減ったが。
「で?今のボクはどう?魅力的?」
「その辺の男なら落とせそうだな」
「ボクは目の前にいる君を落としたいの。ロゼに負けないから」
何を競っているんだが。そこは女同士の争いだから首を突っ込ないが過激な争いに発展しないことを祈ろう。その原因が俺だとルーチェが知ったら雷が落ちる。
「あまり競うのは良くないぞ。競うより磨こう」
「勿論磨くよ。いつか振り向いてもらいたいから」
「……頑張れよ。それと……いや、これは言わない方が良いか。変に誤解しそうだし」
「……?」
ローゼリアとルーチェには一度言った事がある。同じことをレイヤに言うわけにはいかないだろう。俺がそう思っていても彼女はそう思っていないかもしれないから。
「さて、そろそろリアンヌが戻ってくる。作業を始めよう」
「了解。大好きだよヴィクト。父様……いやそれ以上に。君の事は家族のように思ってるから」
「……そうか。そこにはローゼリアやルーチェも含まれてるか?」
「勿論。皆大好きだ。一番は君だけど」
「ありがとう。さ、離れて」
「むーもうちょっと……って。リアンヌの気配が近い。続きは寝る時にするかな」
ニコッと微笑みながら離れる。これは寝る時に俺の腕を枕にするな。本当に変わらない。レイヤの良い所だけど。さて、談笑もここまでにして作業を再開しよう。
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日が暮れる少し前。ユミルまであと半分のところで作業を中断。かまくらまで戻り体を休めることに。リアンヌの作った熱いスープで体を温めていると、ルーチェの使い魔となったミネルヴァが入ってくる。俺達の上を一周回ると俺の右肩に止まる。
「何かあったか?」
「……ホゥ」
スリスリと頭を擦ってくる。もしかするとルーチェが魔術の修業をしてるから相手してもらっていないのか。可哀そうに。少し構ってやるか。
「ほら。膝に来いミネルヴァ」
「ホゥ!」
肩から右膝に飛び降りる。頭を優しく撫で時折軽く掴んだり。暫く戯れていると、気付いたリアンヌが獣肉を持ってくる。
「良かったらミネルヴァに。ここまで飛んできたのならお腹もすいているでしょう」
「ありがとう。沢山食べな」
お皿を前に置き、背中を擦るとミネルヴァはジーと見てからガツガツと食べ始める。どうやらご飯も上げていないよう。これは帰ったらお説教だな。
「そういえば1つ聞きたいのですが、弟子を取る予定は?」
「今は無いな。レイに教えたりしているが本格的に取ることは無い。君みたいにシオンを弟子にしたりしないな」
教えるほど大層な剣技ではない。編み出した奥義は弟に託したがアレをどうするかはアイツ次第。後に継がせるのも捨てるのも。
「それに俺が弟子を取ると思うか?」
「いつかは取ると思っています。貴方が生きた証を残すためにも。折角です。貴方の剣に名前を付けてみたらどうでしょう?」
「名前か……」
付けるなら名を取ってアルゼイド流……だが弟と被る。名付けるなら何がいいだろうか。変に付けると笑われそうだな。名を付ける時は慎重に考えよう。
「今はいいかな。まだ至っていないし誰かに継がせる事もないし」
「そうですか。その時が来ることを楽しみしていますよ。貴方の弟子なら立派な使い手になるでしょう。レイも日に日に成長していますし」
「筋がいいからな」
頭脳タイプのレイヤだが彼女の宮廷剣術はかなりの物。相手の急所を突き一撃で仕留める。最近は俺と手合わせをしている。魔獣も手強くなり幻獣と戦う事も増えている。足手まといにならないために頑張っているのだろう。
「さて……そろそろ休め。火の当番は俺がする。霊力を利用しているから消えないと思うが」
「分かりました。お休みなさい」
「あぁ……」
リアンヌが毛布に包まり就寝したのを確認し、レイヤも寝ている。俺は起こさないように外に出て空を見上げる。空には無数の星が輝いていた。
「いい光だ。俺の剣もあれだけ輝けば……」
ガランシャールを出し空に向ける。鈍く輝くが星に比べたらもう一つ……いやもう百は足りない。それは俺も同じだと思い知らされた。
「俺もまだまだ。エル・プラドーに相応しい乗り手に、ロゼの隣に立つためにも」
「……ホゥ?」
「ん?ミネルヴァ?」
レイヤの傍で寝ていたミネルヴァ頭に止まる。そのまま顔を覗かせてきたので優しく撫でると嬉しそうに瞼を閉じる。
「本当に人懐っこいな。最初は懐かなかったのに」
「懐かなかったってミネルヴァに?」
背後からレイヤの声。振り返るとコートを着たレイヤが出て来たところだった。
「レイ……起きたのか?」
「外から君の気配に気づいたから。ふわぁ」
大きな欠伸をするレイヤ。女だからもう少し控えようよ……と言えたらいいのだがそれも彼女の良い所だろう。それだけオープンにしてくれたら俺も接しやすいし。
「綺麗な星。君の心みたいに輝いているよ」
「俺より輝いてるって。アレに比べたらまだまだだ」
「そんな事ないよ。君は帝国で輝いている。いろんな人に知れ渡っているのがその証」
「なら帝国全土に俺達の名を轟かせるか?」
「いいね。楽しそう」
きっと楽しいだろう。妙な連中に目を付けられるかもしれないが俺達なら軽く撃退出来るだろ。俺が前に出てレイヤが近中距離と指揮。ルーチェが後方支援。連携が完璧に出来れば無敵だ。
「もっと楽しい事がこれからもある。背中は頼むぞ相棒」
「任された。頼りにしているから。その為にももう休もう」
「了解だ。ミネルヴァはルーチェの所に戻るんだ」
「ホゥゥ!」
ミネルヴァは羽根を広げて里へと向かう。それを見届けてから俺とレイヤはかまくらへと戻るのであった。