英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
「お?あれは……」
エル・プラドーのモニターに小さな町が映る。あれはユミル村か。どうやら今いる場所からユミルまでは道が塞がっていないようだ。朝早くから作業して良かった。エル・プラドーから降り、別作業しているリアンヌとレイヤに知らせよう。
「シャインフレア」
右手に光を集め炎に変換。空に向けて放つ。少し経つとリアンヌとレイヤが駆け足で来る。エル・プラドーは里に戻って貰い、2人にこの先を見せる。
「おぉ……道が塞がってない」
「村に被害もなさそうですね。行きましょう」
「おぅ」
足元に注意しながらユミルに向かう。ここは小さな村だが温泉が有名。帝国でも温泉がある場所は少なく、観光客も多い。今は道が塞がった影響でいないようだが、道も繋がったし少しずつ戻っていくだろう。
「私は村長の元に。お二人は休んでいてください」
「了解だ。教会に行ってるよ」
「また後でね」
リアンヌと別れて教会に。司祭に事の事情を伝えると深く頭を下げて感謝される。加えて薬も譲って頂いた。一度は断ろうと思っていたが、流石に申し訳ないと思い受け取る。それからアイゼンガルド連邦に向かうにあたって状況を確認する。
「アイゼンガルド連邦はどうですか?やはり雪で立ち入るのは難しいですか?」
「そうですね。ですが今は比較的大丈夫でしょう。ただ……」
「どうかしましたか?」
深刻な表情を浮かべる司祭。これは何かあったな。話しを聞いた方がよさそうだが話してくれるだろうか。
「話してください司祭様。ボク達でよければ聞きましょう」
「レイ……」
「……ありがとうございます。実は……」
司祭が話し始める。近頃アイゼンガルド連邦で魔獣の群れが来たらしい。その中心に巨大な狼がいるらしく現在は村長の判断で立ち入り禁止にしているらしい。話しを聞いた俺達はリアンヌと相談して決める事にし教会を出る。
「狼の群れか。それもリーダーは巨大らしいけど……」
「突然変異か幻獣か。どちらかといえば前者だろう」
「苦戦しそうだね。念入りに準備しないと。ボク行ってくるよ」
「任せた」
準備をレイヤに任せて村長宅に。中ではリアンヌと村長であるシュバルツァーさんが話をしていた。村長に会釈してからリアンヌに事情を説明。彼女も村長から話を聞いたらしく、これから俺達と合流しようと思っていたらしい。
「では魔獣の件は任せてください。行きますよヴィクトリア」
「了解だ。では失礼します」
村長宅を出て準備を済ませてきたレイヤと合流。アイゼンガルド連邦に向かい始めるがその途中で精霊窟の気配を感じ取る。周囲を見渡すと氷で出来た小さな道を発見する。
「おや?これって……」
「精霊窟……この気配は……」
「行った方がよさそうだな。行こう」
氷の道を進む青い精霊窟が姿を現す。近づくにつれて寒さが増していく。精霊窟の周辺はとても寒く、甲冑を纏っているにも関わらず身が凍りそうだ。
「寒いな。大丈夫か?」
「鍛錬と思えば問題ありません。甲冑を纏っているのである程度は抑えられますが……大丈夫ですかレイ?」
「……無理」
「無理かぁ……」
コートを着ているが一番薄着のレイヤはダメージが大きいようだ。この精霊窟は後回しにした方がよさそうだな。先に魔獣討伐をしよう。来た道を戻り山を登る。途中で魔獣が襲ってくるが完璧な連携で撃退する。
「ふぅ。寒いから少ないと思っていたが……」
「例の魔獣の影響でしょう。急いだほうがよさそうですね」
「でも何処にいるのかな?近くって言ってたけど」
「もう少し登ろう。近づけば分かるだろう」
周囲を警戒しながら進む。様々な魔獣が襲ってくるがどれも聞いている種類と違う。一旦別行動するか?だがその隙を狙われる可能性がある。正体が分からない以上迂闊に行動するわけにはいかないが……ここはリアンヌに聞こうか。
「一旦別行動するか?」
「この状況では得策とは言えませんが……おや?」
「雪……?」
雪が降ってくる。気付けば空は黒く禍々しい気配が漂っている。何かが近くにいるようだ。それぞれ獲物を構え警戒していると、急に吹雪になり視界が白く染まる。
「っぅ!?リアンヌ!レイ!」
「ボクは大丈夫!リアンヌは!?」
「問題ありません!ですがこれでは!」
何かが近づいて来ても分からない。獣の類なら気配と足音を消してくる。これでは一網打尽だぞ。流石の俺でも不意打ちの対処には限界がある。冷静に状況を判断しないと。
(急に吹雪になったという事は幻獣の仕業か?可能性はあるが……ん?)
右から視線を感じそちらを見る。俺のすぐ右隣りには怪しく光る大きな目があり俺を見つめていた。
「………え?」
その目を見た瞬間、横腹に激痛が走り飛ばされてしまう。飛ばされた方向は崖。そして俺は空中。すなわち崖の下に落ちる。だがせめて何かがいる事は伝えねば!
「近くに何かがいるぞ!済まないが宜しく頼んだぞーーー!」
「「ヴィクトリア!?」」
俺は崖の下に落ちていく。このまま転落死したなど弟やローゼリアに知られたら笑いものだ。無論転落死などあり得ないが。
「済まないエル・プラドー!受け止めてくれ!」
『応ーーー』
真下にエル・プラドーが現れやんわりと受け止めて貰う。そのままゆっくりと着地しエル・プラドーの手から飛び降りる。
「危ない危ない……助かったよエル・プラドー」
『これぐらいお安い御用だ。それにしてもそなたが崖から落ちるとは。珍しい事もある』
「笑うなよ。俺だってそういう時がある」
完璧な人間ではないからな。多少のミスはするさ。大事なのは二度続けない事。これが大事だ。
「それよりエル・プラドー。上はどうだ?」
『ふむ。リアンヌとレイヤが戦っているようだが……妙だな』
「あの吹雪か?いきなり現れて魔獣に襲われたが。うん?あの雷は……」
吹雪が発生している場所に雷が落ちる。あれはアングリアハンマーか。どうやらかなりの激戦みたいだが……。
「リアンヌに任せよう。俺は……っ!」
背後からの殺気と同時に右に避ける。目の前を短剣が通り過ぎ木に刺さる。背後にいたのは黒装束を纏った小さな子供。ただならぬ殺気を向けてくる。一体何者だろうか。聞いたと所で答えないな。
「……殺す」
「物騒だな……っと!」
素早い動きから一閃。鈍く光る剣が迫ってくるが避ける。連続で斬りかかってくるが軽い足取り避け乍ら一応正体を聞く。
「嫌なら答えなくていいが聞いておく。何者だ?」
「……答える必要はない」
だろうと思った。なら無理矢理聞こう。少し痛いが勘弁してもらおうか。
「そこ!」
「!?」
腕を掴み地面に叩きつけそのまま軽く締め木に押さえつける。子供は暴れる事無く剣を落とし大人しくなる。
「さて?どうして欲しい?」
「殺せ。失敗したからには組織に戻れない」
「へぇ。どこぞの組織に所属してるのか。道理でそこそこやると思ったよ。因みに、俺は無益な殺生はしないから選ばせてやる。詰め所に入れられるか俺と一緒に来るか」
「殺せと言ってーーー」
「黙れよ小僧」
「うぐぅ!」
力を強める。折角の機会を潰そうとしたバツだ。見たところルーチェより少し年上ぐらいか。この年で殺し屋……いや暗殺者か。こういう奴は早めに更生させないと。
「どうする?人殺しより一緒に来た方が良い。ついでだからお前の組織も潰してやろうか?どんな境遇とかは知らんが子供に暗殺させるとか正気の定ではない。だから選べ」
「……分かった。お前と一緒にーーー」
「口の利き方がなってない。目上の人を敬わんか」
「痛い痛い!分かりました!」
「宜しい」
拘束を解き装束を取る。中から黒髪に赤い瞳の少年が姿を現す。そこで少年の気配が特殊だと気付く。これは……相当ひどい事をされたようだな。
「名前は?」
「シリウス。ナンバーは8だ」
「ナンバー?組織の?」
「実験ナンバーだ。俺は教団の使い手。ある人物から光の剣士を殺せと言われた」
「教団?」
どこかで聞いた気がするが……何処だ?確かローゼリアから聞いた気がするが……戻ったら聞いてみるか。
「所で誰に言われた?」
「知らない。ただ殺して来いと言われた」
「そうか。なら詳しくは聞かない。その代わりお前のいた教団とやらの場所を教えて貰おうか」
「聞いてどうする?あそこには俺より強い使い手がいるぞ」
「だから?俺はそんな連中より強い。いいからーーー」
言わせようとした時だった。リアンヌたちがいる場所から大きな音が聞こえてくる。俺とシリウスは見上げると、リアンヌがレイヤを抱えて降りてきた。
「ふぅ。中々強き相手でした。大丈夫ですかヴィクトリア?」
「あぁ。そこの小僧に暗殺されかけたけど」
「えぇ!?暗殺!?」
大きな声で驚くレイヤ。事情を説明するとシリウスに詰め寄りお説教。いつもは説教される側なのに……まぁいいか。それより魔獣の事を聞かないと。
「魔獣は?」
「グランドクロスで貫きました。もう大丈夫でしょう」
「流石。んじゃ説教終わったら戻るか」
レイヤの説教風景を一時間程見てからユミルに戻る。その道中でシリウスが教団の場所を聞いたが、それがまた面倒な場所で一旦保留にし、暫くユミルに滞在してからリアンヌはレグラムに帰り、レイヤも故郷オルディスに顔を出さないといけないらしく別行動。それぞれと再会を約束し、俺はエリンの里へと向かうのであった。