英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
「こんなものかシリウス?」
「まさか。まだまだいける!」
私の目の前で熾烈な手合わせをしているヴィクトリア様とシリウス。シリウスが仲間に加わって早くも半年。毎日のように挑んでは返り討ち。その度に魔法で傷を癒しては再び挑む……それが朝から夜まで続き、下手すればローゼリア様が怒鳴るまで続いてる日もあります。
(はぁ……今のシリウスではお父さんに敵わないのに……どうしてそこまで強くなりたいのだろう?)
彼についてはあまり知らない。ヴィクトリア様に聞いても『今は話せない』と言われ、ローゼリア様には『いつか知るときが来る』と言われた。恐らくとても深い事情があるのだろう。ローゼリア様は兎も角ヴィクトリア様が隠そうとするのは珍しいから。
「絶技・光凰剣」
(あ……)
そんなことを考えている間にもヴィクトリア様の一撃がシリウスを直撃。シリウスは目をクルクル回して気絶。今日は思ったよりも早く終わりましたね。
「シリウスはどうしますか?」
「そのまま放置と行きたいが部屋に連れて行こう。頼む」
「はい」
術を発動させてシリウスを家に転移。これも修行の一環。どうも私は編み出した光魔法以外は上手に扱えない。私が焔の眷属の末裔ではないから仕方ないかもしれないけど……もう少し頑張らないと!
「帰るかルーチェ。ロゼが寂しそうにしてるかもしれん」
「そうですね。怒られる前に帰りましょう」
色々と話しながら屋敷に戻る。扉を開けて中に入った時でした。とても大きなローゼリア様の痛々しい叫び声が響き渡ったのは。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「「!!??」」
何があったのかと思いアトリエに直行。中に入りローゼリア様の姿を探そうとしたけど思ったよりも早く見つかる。ローゼリア様は本棚の前で四つん這いになり体を震わせて何かを耐えていた。
「……どうしたロゼ?」
「お、おヌシらか……ちと腰が……」
「「……………」」
いわゆるぎっくり腰と呼ばれる物ですね。その……魔女の長で聖獣であるお母さんでもギクッと逝くなんて。それ、同胞に知られたら笑われますよ。
「担ごうか?抱っこの方がいい?」
「ど、どっちでも構わん。痛くない方で」
「了解。よっと」
ローゼリア様を軽々とお姫様抱っこするヴィクトリア様。思わず『おぉ……』と言ってしまいそうだったけどぐっと我慢。私は邪魔をしないために去ろうと思ったけど、ローゼリア様が石のように固まっていたのに気付き声を掛ける。
「どうかしましたかお母さん?」
「…………」
「ロゼ?どうした?」
声を掛けても反応がない。どうやら今の状況が理解していないようだった。何度か目の前で手を振ると我に返り頬を真っ赤に染めながら言った。
「よりにもよってお姫様抱っこか!」
「……?まずかったか?」
「お、おヌシ……」
(お父さん……)
ここで出ますかお父さんの悪い所……ここは見なかったことにしてシリウスの様子を見に行きましょう。気付かれないようにアトリエを出て向かうはヴィクトリア様の部屋。中では目を覚ましたシリウスが獲物を見ていた。
「どうかしましたか?」
「先生の技で根本から折れた。近い内に仕入れに行かないとな」
そう言ってから服の内側にしまう。そう言えば彼は短剣を使っていましたか。きちんとした剣の方が良いと思うけど……。
「一度お父さんに相談してみたらどう?どのみち短剣だと限界があると思うし」
「そうだな……以前使っていた長刀に戻すか。どのみち材料が必要だが」
「材料……」
生半可な材料ではすぐにダメになってしまう。私達に付いてくるなら最低でもゼムリアストーン製の……そうだ。確か騎神用の武器を作った時の余りがあったような。
「夜にでもお父さんに聞いてみよう」
「分かった。そう言えば聞きたかったけどルーチェって先生の娘だよな。それにしては年齢と合わない気がするけど」
「血は繋がっていません。私はあの2人の養女です」
「俺と同じ訳ありか……」
同じにして欲しくないのですが……訳ありなのは認めましょう。ひとまずゼムリアストーンについては相談ですね。そろそろいいころ合いでしょうし。
「では失礼します。ゆっくり休んでくださいね」
「あぁ。少し休む」
シリウスが横になったのを確認してからローゼリア様の部屋に。ゆっくり中に入ると、ベットに寝ているローゼリア様とその隣で椅子に座り本を読んでいるヴィクトリア様の姿があった。
「お父さん。少しいいですか?」
「ん?どうかしたか?」
先ほどのシリウスとの話をする。話を聞いたヴィクトリア様は寝ているローゼリア様に聞くと『確かアトリエのどこかに置いたはず』と返事が来る。
「……何処かとは何処です?」
「……忘れた」
「おいおい……」
これは後でお説教ですね。ついでに腰も叩きましょう。この人は本当に適当というかガサツというか。少し前も大事な手紙を適当に放置して泣きながら探していたし……これから先の事を考えてきちんと整理しよう。
「では探してきますね」
「済まないが頼む」
「はい!」
微笑みと一緒に返事をしてアトリエに向かう。改めて見ると散らかっている。以前片付けて置き場も決めたのに……まずは定位置に戻しましょう。
「浮遊!」
術を唱えて床に置いてあるものを空中に浮かせる。引き出しや棚に入っている物もすべて取り出し決めた場所に収納していく。
「霊草はこの棚……禁書は上から3段目。後は……」
収納していくにつれて気付く。いつの間には物が増えてる。ローゼリア様はまた無駄遣いしましたね。この辺りも抑えて頂かないと。だから同じものを2回買って置き場所を忘れるんです。
「一度本気で言った方がよさそうですね」
ぎっくり腰が治れば絶対に言いましょう。お父さんのためにも。
「後は……おや?」
ヴィクトリア様の気配が外に出る。何かあったのかな。あの人の事だからローゼリア様の元を離れないを思ってたけど……ちょっと後を追ってみよう。
「お父さん。何処に行くのですか?」
「ルーチェか。ちょっと散歩だ。付いてくるか?」
「散歩ですか……」
気分転換にはいいかも知れない。ローゼリア様の事で相談したい事もありますし。私はミネルヴァはを呼んでヴィクトリア様の後を付いて行く。向かったのは里と外を繋ぐ回廊だった。
「さてと霊草探すか」
「もしかして腰痛に効く?」
「どうだろうな?」
笑って誤魔化すお父さん。ですが私には通じませんよ。レグラムで一緒に寝た時の話は聞いていますし、先日口付けをしようとしたところもばっちり見ていますから。
「早く探そう。妙な魔物に襲われたら嫌だからな」
「その際は私が返り討ちにします」
杖を取り出し魔力を流す。たまには娘として親孝行をしないと。ユミルの件は力になれていませんし、里に帰って来てからもあまり甘えていませんから。
「それじゃ探すぞ」
「はい」
手分けして霊草を探す。話しによれば淡く光って少し違う霊力を纏っているらしい。なので意外と早く見つかると思っていた。けど実際はかなり苦戦して気付けば奥深くへと来ていた。
「見つかりませんね。かなり奥に来ましたけど」
「いや、そうでもないぞ」
ヴィクトリア様はガランシャールを取り出し、近くの大木を一刀両断。すると大木の後ろから淡く光った霊草が姿を現す。話しの通り少し違った霊力を纏っていて神秘的だった。それにしてもどうして気付いたのだろう?
「そのお父さん。どうして気付いたのですか?」
「光だよ。俺の異能に反応したんだ。回収するぞ」
「は、はい」
少し気になるけど置いておこう。私達は霊草を回収しアトリエに戻る。霊草をお茶にしてからローゼリア様の部屋に行き、ゆっくりと起こしてから湯飲みを渡すヴィクトリア様。
「ほら。言われて通りだぞ」
「助かる。本当に済まぬな」
「気にするな。今更だろう」
「そうじゃな……」
(これは……出ていった方がよさそうですね)
気配を消し部屋を出る。音を立てないように扉を閉めてからアトリエに向かい片づけを再開するんであった。
因みに夜中。ローゼリア様の痛々しい悲鳴で全員飛び起きたのは別の話しです。