英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
季節は夏。里でゆっくりと過ごし始めてから一年半程経った。シリウスに稽古をつけつつローゼリアとルーチェの修業を見ていたり少し馬鹿な事をしてローゼリアに怒られたりと何だかんだで楽しく過ごしていた。だが1つ気がかりなことがある。レイヤの実家……海都オルディスに帰ったレイヤから連絡がない。リアンヌに聞いたが彼女も知らないとのこと。少し心配だが大丈夫だろうと思っていたが……
「……はぁ。レイさん元気でしょうか?」
「大丈夫だろ。確かに心配だが」
ルーチェが少し寂しそうにしている。溜息も日に日に増えていた。あれだけ敵意むき出しだったも関わらず。これは行動した方がよさそうだな。
「出かけるぞルーチェ。シリウスも連れていく」
「出かけるって……オルディスですか?」
「あぁ。俺はロゼに行ってくるからシリウスを呼んで来い」
「はい。すぐに」
シリウスを呼んで来てもらい俺はローゼリアの元に。アトリエに居た彼女に事情を伝えると暫く考えた後『妾も付いて行く』と言う。
「別についてこなくてもいいぞ」
「そうはいかん。あそこには≪蒼の騎神≫が眠ってるからの」
「へぇ……(今のは聞かなかった事にするか)」
軽く聞き流し準備を済ませて里の中央にある大型の転位陣に向かう。先に長刀を担いだシリウスと杖を持ち起動準備していたルーチェが来ていた。
「遅いぞ親父」
「悪かったな……っておい。誰が親父だ」
「別にいいじゃねぇか。付き合い長いんだし」
「たかが一年半だろ。長くない」
「それを言うなら妾とヴィクトリアもじゃな。約5年程。人生の150分の1しかないぞ」
「胸張ってどや顔で言う事か?」
少し呆れてしまう。いつもの事だからいいが。そんなやり取りをしている間にも転位の準備は終わりオルディスから一番近い精霊窟に転位する。
「さてと、すぐにオルディスへと行きたいが」
「その前に一仕事じゃな」
「一仕事って……」
「……だな。親父と婆さんは下がってな」
担いでいた長刀を抜く。それと同時に木の影から数人の野盗が出て来る。どうやら俺達がここに現れる事を知っていたようだ。野盗達はそれぞれ短剣や弓を構えて近づいてくる。
「悪いが覚悟してもらぜ」
「これも依頼だからな」
(依頼?)
誰からの依頼か気になるな。大体の予測は付きそうだが……深くは考えないようにしよう。
「シリウス。程々にな」
「了解。んじゃ行くか」
シリウスは一瞬で野盗達と間合いを詰め峰で野盗達を斬る。ゴツ!と痛々しい音が聞こえるがシリウスは容赦することなく全員の意識を奪う。
「終わりだな。この程度で親父の命狙うとは馬鹿げてるぜ」
「ほぅ。中々やるではないか。それと小僧。後で覚えておけ。妾を婆さん呼びとは生意気じゃぞ」
「何でだよ!事実だろ!550歳のババァじゃねぇか」
「……小僧。余程死にたいようじゃな?よかろう。以前のヴィクトリアのように霊力を枯らしてやるわ」
まさしく魔女を言わんばかりの笑みを浮かべながらシリウスに近づく。こうなったら俺は知らん。どうなるかもな。
「その……助けます?」
「放って置け。どうせ頸動脈辺りに噛みついて霊力を吸い取るだけだろ。慣れれば問題ない」
「慣れればって……」
最初はきついが大丈夫。俺の教え子なら耐えられるさ。その日と次の日は動けないけどね。因みに俺は大丈夫。慣れたからな。
「よし行くぞ」
「いいんですか?流石に助けた方が……」
ーぎゃぁぁぁぁぁ!
「……行きましょうか」
「おぅ」
背後から聞こえてくる悲鳴を無視してオルディスに向かう。途中で魔獣と戦闘し勝利を収めた後に上機嫌のローゼリアとゲッソリしたシリウスが合流。どうやら相当搾られたようだな。今日一日は使い物にならんしルーチェに任せよう。
そんな感じで魔獣を討伐しながら進むとオルディスに到着。多くの人で賑わっていた。平和な証だな。
「ここに来るのも久しいの。レイヤと出会った以来か」
「その時も夏だったか」
「妾と初めて会ったのも夏じゃ。懐かしいの」
「だな」
「「……」」
確かに懐かしい。昨日の事のように覚えている。しかしローゼリアが懐かしいと感じるとはな。僅か3年半程。生きた年齢からすればほんの僅かだろうに。
「よし、レイに会いに行くか。2人もいいな?」
「いえ、私達は買い出しに行きます」
「2人でゆっくり」
ルーチェとシリウスは去って行く。うーん……何か気を使われたような気がするがいいか。どのみちすぐに会えるか分からんしあの2人の事だから情報を得てくるだろ。なら俺達は彼女の住む屋敷に向かうか。
「行くぞロゼ。屋敷の衛兵に聞いてみよう」
「その前に少し街を見て周るぞ。ほれ」
右手を出すローゼリア。俺は何も言わずにその手を握り歩き始める。レイヤの住む屋敷はオルディスの一番端。出来る限り遠回りしていると、ローゼリアがある店の前で足を止める。その店は宝石店。指輪や首飾りが売っていた。
「いいのがあったのか?」
「いや……そういう訳ではないのだが。うむ……」
ローゼリアは赤い鉱石が付いた指輪から視線が離れない。珍しいな。指輪とかに興味ないと思ってたが……。思えばローゼリアと出会い早くも4年半。何かと迷惑をかけているしここは……。
「嵌まるか調べて貰うか?」
「本気で言っておるのか?指輪じゃぞ?」
「俺はいつも本気だぞ?欲しい物は全力で取りに行く」
「……そうか。ならダメ元で調べて貰うかの」
店の中に入り店主に頼んでサイズを調べて貰う。ローゼリアは殆ど期待していなかったが結果は彼女の薬指と同じサイズ。だがローゼリアは指輪を外し店主に返し店を出る。俺も後を追い聞く。
「いいのか?」
「あぁ。妾には似合わん。それに今欲しいのはあの指輪ではない。もっと大きな物が欲しい」
「手に入るといいな。それ」
「そうじゃの。そいつが死ぬ前に手に入れて見せる。ほれ行くぞ」
レイヤの住む屋敷に向かい始めるローゼリア。欲しい物は気になるが今はいいだろう。ひとまず置いて置き俺達は屋敷の前まで来る。そこで衛兵に話しを聞くが『お嬢様とは会えません』とバッサリ斬られ諦める事に。中々固い防御だが何処か崩せる場所はある。取り合えずルーチェとシリウスと合流するか。
「ルーチェ達と合流しよう。構わないな?」
「……いや宿に戻ろう。今日はここに泊まっていく」
「いいのか?」
「うむ。おヌシと色々話したいからの」
「分かった合流して宿を取ろうか」
指笛でミネルヴァを呼び、ルーチェ達の所に移動した。
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日付が変わる少し前。一足先にベットに寝ていたが中々寝付けそうになかった。それに気づいたローゼリアが俺の隣に来て優しく抱きしめてくる。珍しいと思いつつ右腕を背中に回して抱き寄せる。
「眠れんのか?」
「まぁな。助かるよ」
「気にするな。妾も最近眠れん」
それは昼寝のしすぎたろうと言いたいが今日は寝てなかったな。何か悩みでもあるのだろうか?いや、彼女に限ってそれはないな絶対に。
「そういやルーチェとシリウスは仲良くやってるな」
「いい事じゃろ。流石に嫁にやるつもりはないが」
「まだそういう年じゃないだろ。この親バカ」
「そのまま言い返す。そういうおヌシこそどうするのじゃ?そろそろ考える頃じゃろ」
「何をかね……」
視線を逸らし誤魔化す。確かに年齢を考えたらそろそろいい頃だろう。親父を安心させるためにも。でも俺にはルーチェやシリウス。ローゼリアがいる。それだけでいいのだが。
「俺にはロゼ達がいる。それだけで十分だ」
「……そうか。ならいい」
瞼を閉じるローゼリア。やっぱりちょっとおかしいぞ。俺の気のせいかもしれないが。
(ま、何かあったら言ってくるだろ。俺もそろそろ覚悟決めるか。いつかは伝えないといけないし)
胸に秘めた思い。いつか伝える時が来ると願ってゆっくりと瞼を閉じた。