英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
オルディスに来て2日目。今日こそレイヤに会おうと思ったが朝早くからローゼリアに捕まってしまい昨日と同じ様に街をブラブラしていた。手を繋ぎ腕をがっつり組んで。
「今日はどうしたんた?今日こそレイに会いたいところだが?」
「……妾は会いたくないの」
「どうしてだ?事情を知っているからついて来たと思ったが?」
「……」
足を止め離れるローゼリア。そして俺の方に向き珍しく真剣な表情で言った。
「おヌシは妾よりレイヤの方が好みか?」
「いきなりなんだよ」
「真剣に聞いておる。答えんか」
力強い声。目の前にいるローゼリアはいつもと違う。あの時と同じだ。騎神の試しを受ける時に選択肢を迫られたあの時と。
「俺は……レイはダチとして信頼してる。どっちかって聞かれたらローゼリアだな。魔女でも聖獣でもない目の前にいる君だ」
「……そうか」
「でも……俺では駄目だ。後50年もすれば死ぬし。
「そんな事、妾が気にするとでも?」
「俺が気にする。以前言ったろ。俺達の命は限りがある。だからこそ星のように輝き、全力で駆け抜けると。逆に不老不死である君は見届けないといけない。時代が変わる度にその時代の人間がどのように輝くか」
それを示すように右手に光を集める。あれからまた異能を自在に操れるようになり、今では光を纏って一時的な身体能力の強化も可能にした。
「綺麗な光じゃ。かの黄金に引けを取らん」
「まだまだ至らぬ身。もっと精進しないと」
「至境に至りまだ先を求めるか?今でも十分じゃろ」
「人の身で何処まで高みに辿り着くか。行ける所まで行きたい。剣が不要となるその時まで」
少なくとも今はその時ではない。その前に俺が剣を置く時が来ることはないだろう。来たら大惨事だ。きっと死んでもあの世で剣を振るっているだろうな。
「そういう訳だ。お互い
「そのいい関係とは……」
ーホホォゥ!!
「ぐはっ!」
「ヴィ、ヴィトリア!?」
背後からミネルヴァが凄まじい勢いで頭に降りてくる。め、めっちゃ痛いんだけど?それに今はルーチェ達の所にいたはずだが。
「どうした?」
「ホォゥ!ホォゥ!」
「む……異常事態みたいじゃな」
翼をバサバサさせて伝えてくる。ローゼリアの言う通り異常事態だな。ミネルヴァに案内してもらい後を付いて行くと多くの人が集まっていた。その中央にから男性の罵声が聞こえてくる。
「貴様!貴族である私に無礼を働くとはな!覚悟はいいか?」
「っ……貴方こそ罪のない子に手を上げていた。私はその間に入っただけです」
「それが無礼だと言っている。その子は私の所有物だ」
「暴力で従えている人が何を!」
こいつは相当やばいぞ。貴族もそうだがルーチェも頭に血が上ってる。どうにか間に入るか!
「ルーチェ!」
「む、何奴だ?」
「あ……お父さん」
何とか中に入る。中ではルーチェが傷だらけの子供を抱きかかえ、その前には鞭を持った貴族。それを見て大体の事情が分かった。そこで俺はルーチェの頭を撫でてから貴族に謝罪する。
「私の娘が済まなかった。この子供を以前の自分と重ねたのでしょう」
「だから何だ!?その小娘はあろうことか私をーーー」
「ですが少々やり過ぎでしょう。貴方の家に使えているとはいえ鞭で叩くなどの行為は宜しくないかと?」
「貴様が口を出す必要はない。それより貴様たちへの罰をだな……」
穏便に済みそうにないな。どうにかして乗り切りたいのだが……。こういう時は……。
「手を貸そうかヴィクトリア?」
「ロゼ……だが……」
「おや?そこの女……」
(あ……)
貴族がこちらに近づきローゼリアの右腕を掴みニヤニヤしながらローゼリアの体を見る。まるで品定めをしているようだ。
「よし貴様。一晩付き合って貰おうか?」
「なっ!」
「……ほぅ?」
「……」
聞き捨てならないな。ここまで今の貴族が落ちぶれているとは。こちらに非があったのは事実だが彼も同じだろ。その前にやる事はやらないとな。
「触れるなよ下種。
「……え?」
「……」
ローゼリアの右腕を掴んでいる貴族の腕を掴む。そのまま折れない程度に力を入れると、貴族は喚きながらローゼリアの腕を離す。
「ぐぁぁぁぁぁ!貴様ぁ!」
俺の腕を払い右腰に携えている騎士剣を抜き脳天めがけて突いてくる。その突きを指で受け止め光を騎士剣に流し真っ二つにへし折る。
「なっ!指で……折られた?」
「まだやるか?続けるならヘヴン伯に突き出すぞ?」
殺気を放ち威圧。その圧に貴族は押され走り去って行く。やれやれ何とかなったか。だけどこの状況どうしたらいいんだろう。
「事後処理が……」
ーうんうん。事後処理大変だね。
「本当だよ……え?」
「ん?この声は……」
「もしかして……」
声が聞こえた方を揃って向く。そこにいたのはいつもと変わらないレイヤの姿。恐らく騒ぎを聞いて出て来たのだろう。あぁ、こういう時は本当に頼りになるが……。
「ここはボクに任せて。その子の事もさっきの彼についても」
「お、おぅ(あれ?何か貫禄出てるような……気配も大分違うし)」
「ルーチェとロゼも。会いに来てくれてありがとう。後で使いの者を出すから」
「は、はい」
「ではまた後での」
この場をレイヤに任せて離れる。出来る限り屋敷に近い場所に移動していると、途中でローゼリアが背後から抱きついてくる。そしてルーチェも正面から抱きついてくる。
「どうした?2人とも?」
「その……ごめんなさい」
やや涙目で謝ってくるルーチェ。別に謝る程では無いのだが彼女なりに責任を感じているのだろう。
「謝らなくていい。もう少し落ち着いて行動しような」
「……はい」
「よし、それじゃシリウスを呼んでこい」
「分かりました。また後で」
シリウスを探しに行くルーチェ。姿が消えた所で未だに抱きついてるローゼリアの方を向き、優しく頭を撫でる。
「どうしたんだ?」
「……何でもないわ」
とか言いつつ胸に顔を埋めてくる。これは暫くこのままだな。レイヤたちが来るのを待とう。しかし……。
(本当にどうしたんだろうか?)
いつもと違うローゼリアにドキドキしているのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ……いい夜風だな」
体を通り抜ける夜風を感じながらベランダでワインを飲んでいる。昼の件の後はレイヤの案内の元屋敷に案内されヘヴン伯と話をした後一晩泊まらせていただくことに。それとレイヤが音信不通だった理由も聞いた。何でも彼女が実家に帰ると弟が出来ていたらしい。流石のレイヤも驚き問いただし暫く家の事を手伝う事に。道理で貫禄が出てたわけだ。
「流石にあり得ないだろう21歳下の弟って……」
もし俺に21歳下の弟や妹が出来たら……あぁ親父やっちまったなと言ってしまいそうだ。シオンが何を言うか気になるが考えないようにしよう。
「やっと見つけたよ愛しの君」
「ん。レイか」
まだ空いていないワインを持って来るレイヤ。彼女はワインを開け空いていたグラスに注ぐ。自身のグラスにも注ぎ乾杯する。
「君とお酒を飲むのは初めてだね」
「互いに成人して会うのは初めてだからな。折角だし飲もうよ」
「成程。そのままお酒の勢いに任せてボクを……」
「襲う訳ないだろ」
釘を刺しておく。油断も隙も無いからな。レイヤがいい女って事は認めるが彼女は仲間であり家族。それに俺は欲しい女がいる手前、そんなことは絶対にしない。
「ロゼと順調?少しは進展した?」
「……どうだろうな。俺と彼女では生きる世界が違う。彼女の隣にいるだけで十分だ」
「本当にそれでいいの?」
レイヤはグラスを置き真剣な表情で言った。彼女の言いたい事は分かる。ローゼリアにも言われた事だからな。
「いいんだよ今のままで」
「……ボクは嫌だな。自分の想いを伝えないのは」
そう言って抱きしめてくるレイヤ。いつもと変わらないスキンシップとは違い、何時もルーチェやローゼリアが抱きついてくる時と同じだった。
「どうしたんだよ」
「君の事が大好きって伝えてる。ルーチェやロゼだって。それに気付かない程鈍感かな?」
「そんなことは無いが……」
「だったら答えないと。君の想いがロゼに向けられてもボクは気にしないし。まぁ……ちょっとは構ってくれると嬉しいけど」
頬を赤め照れながら離れる。暫く会わなかったが全く変わっていない。だが彼女の言う通りだろう。
「ありがとう。もう少し気持ちを整理伝えるよ」
「うん。それとは別に1ついい?」
「ん?どうした?」
「一つだけ頼みがあってね」
レイヤはゆっくりと近づき耳元で囁く。彼女が小さな声で言った言葉に一瞬固まるが、レイヤが軽く頬に口づけをした事で我に返る。
「お、おい!流石にそれは……」
「少し悪戯が過ぎたかな?でもボクは本気。考えておいてね。明日からはボクも一緒だから。お休み」
「……あぁ。お休み」
屋敷の中に戻って行くレイヤ。昼間のローゼリアと言い心臓に悪いな。明日から旅を再開するし色々と気持ちを整理しないと。
「寝るか。明日は早いし」
グラスに残っていたワインを一気に飲み部屋へと戻った。