英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
第17話
旅を再開して早くも2年。月に一度は里に戻りつつ帝国各地を巡っている。そして俺とローゼリアの関係は少しずつ縮まり、レイヤとも変わらず相棒として背中を任せている。また最近ルーチェとシリウスの仲が良く、事ある度にローゼリアが『娘はやらんぞ!』とシリウスに言っていた。
そんな中、俺達は里の住民から『ローゼリア様と連絡が取れなくなった』と聞き、エリンの里へと帰っていた。
「やっと着いたか。大丈夫かルーチェ?」
「大丈夫です。長距離転移は慣れてますから。それより急ぎましょう」
「アトリエだね。何か残っているといいけど」
「あの婆さんの事だ。期待薄だろ」
「それでもだ。急ぐぞ」
急ぎアトリエに向かい何か残っていないか調べる。彼女が隠しそうな場所を調べるが何もない。台所や他の場所も最低1週間は動いていない。となるとローゼリアが姿を消したのは1週間前か。
「どう思う?私や里の皆は兎も角、君達に何も伝えないのはおかしい」
「どうだろうな。だが最近の以上多発を考えると自分でどうにかなると判断したうえかもしれん」
ここ一月。帝国の見えない部分で異常が多発している。霊脈が狂い異界化している場所がある。嫌な事に
「探しに行きましょう。得体のしれない何かが動いているのかもしれない」
「だな。すぐに準備する。手伝ってくれ姉貴」
「いいよ。後で転移石に集合だ」
準備を始めるレイヤとシリウス。ルーチェも準備を始め、俺も準備を始めようと思った時だった。
ードクン!!!」
「ぐっぅ!!!」
心臓が強く高鳴る。あまりの痛みに左胸を抑えながら片膝を付く。今までに感じたことの無い痛み。まるで中から心臓を鷲掴みにされた感じだった。
(何だこれは……この痛みは……)
『聞こえるか起動者よ』
「エル・プラドー?」
『すぐに来て欲しい。そなたに伝えねばならないことがある」
「分かった。すぐに行こう」
ルーチェ達に一言伝えてからエル・プラドーの場所に向かう。どうやら彼は事情が分かっているようだ。ローゼリアからの伝言も預かっているらしく初めに言った。
『『妾の事は気にするな。おヌシ達は里かレグラムで待っていろ』だそうだ。恐らく今の状況を見越していたのだろう』
「……どういう意味だ?それに今の状況って……」
『≪緋≫と≪紫紺≫が目覚めた。何か感じなかったか?』
「さっき心臓が高鳴ったが……その前に≪緋≫ってまさか……」
ローゼリアから聞いたことがある。600年前≪暗黒竜≫を討伐したヘクトル帝が搭乗した騎神。だが返り血を浴び呪われた存在となったと。その後にローゼリアと地精の長がバルフレイム宮の地下に封印したらしいが……。
「一体誰が起動者になった?まさか……」
『それはないだろう。恐らくは≪地精≫の長。そしてロゼは最悪の事態を防ぐべく行動しているのだろう』
(だとしても……)
気になる事が多すぎる。誰が騎神の起動者か。≪緋≫の眠っていた場所を考えると王家の人間だろう。出来ればオルトロスでないことを祈りたい。≪紫紺≫は……見て見ないと分からないな。
「エル……」
『分かっている。共に行こう』
右拳を突き出すエル・プラドー。俺も左拳で答える。まずは状況判断だ。目覚めた騎神の起動者とローゼリアの行方。少しずつ進めよう。
「何かあったら呼ぶ。準備していてくれ」
『承知した。無茶はしないでくれ』
「おぅ」
エル・プラドーの元を去りルーチェ達の所に戻る。丁度準備が終わった所で俺は事情を説明。ルーチェの米神に青筋が立つがシリウスが優しく宥め、レイヤも険しい顔を浮かべていた。
「ねぇヴィクト。1つ聞いていい?」
「どうした?」
「その……他に騎神が目覚めたって事は戦う事になるよね。もし騎神に乗って死んだら起動者はどうなるのかな?」
「どうだろうな。考えたことないが……それと俺が死ぬと思うか?」
少なくとも帝国で俺を殺せる使い手は居ないと思うが。以前手合わせしたロラン・ヴァンダールの双剣術は中々だったが。
「死なないと思ってるけど……ごめん」
「気にしない。行くぞ。頼むルーチェ」
「はい。ミストリア大森林の外に転移します」
転移術でミストリア大森林前に転移。ひとまずセントアークへ移動しようとした時だった。何かが接近してきている事に気付き、ルーチェ達を背後に下がらせる。そして程なくして、俺達の前に現れたのは≪紫紺の騎神≫その肩に見覚えのある人物。第六皇子であるルキウスがいた。
「久しいなヴィクトリア」
「そうだなルキウス。大層なおもちゃを手に入れたようだが何様だ?」
「決まっているだろう≪光の剣士≫一緒に来ないか?他の即位を宣言した皇子に対抗すべく、君の剣が必要だ。兄上にも許可をもらっている」
「兄上……どの兄上だ?その前に即位を宣言した他の皇子とは?」
「……父上とマンフレートが何者かに暗殺され私と兄上は帝都を掌握。それと同時に他の皇子が即位宣言をした。ドライケルス兄様を除き」
「は……?」
ちょっと待て。今父上とマンフレートが暗殺されたって言ったか?それと同時に兄上と帝都を掌握……他の皇子も同様ってどういうことだ?流石に理解が追いつかないぞ。
「力を貸して欲しいヴィクトリア。後ろの大切な家族も含め。レグラムにも手を出さないと誓おう」
「断れば?」
「命は無いな。そなた達の噂が聞いている。それぞれが卓越した使い手だと。野放しには出来ない」
「だろうな。そいつ……ゼクトールが一緒なのもそういう事か?」
「何!?騎神の名前を知っているのか!?」
「知っているとも。だって……
「……」
やや険しい表情を浮かべるルキウス。そして残念そうにゼクトールの肩から降り右手を上げる。どうやら俺達を始末するらしい。それもそうだろうな。
「やれヘルガー。一人残らず始末しろ」
『了解だ皇子さん』
異形の大剣を振り上げるゼクトール。生身の人間にその大きな力を奮うとは。それだけ俺達が危険なのだろう。どうにかしてこの場を斬り抜けないと。だがアレに一矢報いるなら光凰剣では駄目だ。もっと威力が高くて精密な一撃。それなら可能だが時間がない。2秒程あればいいが……。
『悪いな光の剣士さん。せめて楽に殺してやる』
「っ……ヴィクト。どうする?」
「俺達は何時でも大丈夫だが……」
「お父さん。ここは……」
「……仕方ないか」
出来れば呼びたくはない。でも大切な家族を守るためなら『彼』も許してくれるだろう。
「行くぞ!エルーーー」
ー呼ぶ暇があるなら力を貯めんかいヴィクトリア!
「はっ!」
「この声は!?」
ローゼリアの声と同時に俺達を赤い結界が覆う。それにルキウスとゼクトールの起動者は気を取られる。俺はそこを逃すことなく力を開放。全身を黄金の光で覆いガランシャールに集約させる。
「な、なんだ……?光……か?」
『っちぃ。アレはヤバいーーー』
光を見たゼクトールの起動者は本能的に危険と判断してルキウスの前に立ち塞がる。
「さぁ耐えてみろ!奥義・光凰神剣!!!」
奥義を薙ぎ払うように解き放ちゼクトールの体勢を崩す。それと同時にローゼリアが俺達の前に現れ、レグラムの実家の庭へ瞬間転移させる。
「ここは……親父の実家か」
「そうみたいですね。皆さん大丈夫ですか?」
「ボクは大丈夫。ヴィクトは?」
「……すまん。ちょっと無理っぽい」
技を全力放った影響か身体がすごく重い。まだまだ俺も未熟ということか。
しかしあの騎神の起動者、中々の使い手だったな。気配からして傭兵か。ともあれあの場を乗り切れて良かったが……
「っぅ……」
「親父!?」
「お父さん!?」
「大丈夫!?」
力が抜けガランシャールが地面に刺さり倒れそうになるが、ギリギリの所でローゼリアが受け止めてくれる。
「この馬鹿者。あの技を全力で放つからじゃ」
「悪い。助かった……って、お前、今までどこに居たんだ?」
「それについては今晩にでも話す。付き合ってくれ」
「了解だ。皆も今は休んでくれ」
言ったのはいいが1番やばいのは俺だよな。丁度いいしいつもローゼリアには心配かけさせられてるしこのまま落ちるか。
「ロゼ。このまま落ちる。部屋に運んでくれ」
「分かった。妾の腕の中と休め」
「助かる」
このまま俺は瞼を閉じ、ローゼリアに身を任せるのであった。