英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
帝国全土を脅かす戦争が始まった。≪紫紺≫と≪緋≫を要するオルトロス・ルキウス陣営。第二皇子・アルベルトと第五皇子グンナル。それぞれが力を結集し激戦を繰り広げている。
そんな中で俺とローゼリアは、それぞれの戦力を確認しつつドライケルスを探し早2年。何も進捗が無い日々が続いたある日の事だった。
第二皇子の軍勢に追われている傷だらけのロランを見つけた俺達は、彼を救うべく両者の間に割って入った。
「大丈夫かロラン!」
「ヴィクトリアか!」
「ここは俺に任せておけ。頼むぞロゼ!」
「うむ!こっちじゃ小僧!」
「済まないローゼリア殿。お前も無茶はするな!」
「分かってる!適当な所で撤退するから自分の事だけを考えておけ」
ガランシャールを取り出し光の剣を薙ぎ払う。第二皇子の軍勢の一部は直撃し倒れていく。その中で1人、大柄な男が飛び出し、大剣を振り下ろしてくる。
「ふん!」
「ふっ!」
迫りくる一撃を受け止める。中々重く鋭い、強者か。
「ほぅ。俺の一撃を受け止めるか。何者だ?」
「偶然近くにいた剣士だ。ロランはやらせんぞ」
「嘘をつくな!」
男は一歩踏み出し力任せに剣を振る。俺は後ろに下がりつつ力を受け流し距離を取る。その間に20人程通り過ぎたが問題ないだろう。ロランはローゼリアに任せておけばいい。
「俺はドワーフ。お前の名を聞いておこう。その上で聞く。何故彼を庇う?」
「俺はヴィクトリア・アルゼイド。アイツを庇うのは≪彼≫へ俺達がたどり着くため。済まないが付き合って貰うぞ」
ガランシャールを握り直し黄金の闘気を解き放つ。ドワーフという名の男はその闘気に当てられ一歩二歩と後ろに下がる。
「っ……なんだお前は?」
「ただの剣士だ。しかし……少し期待したが残念だ」
高速で斬り抜け一撃で仕留める。ドワーフはゆっくりと倒れ、それと同時に後ろの方が紅く光りローゼリアの魔力を感じ取る。どうやら派手に吹っ飛ばしたようだ。
「やり過ぎだって……」
呆れつつ彼女たちの元に向かうと、先程通り過ぎていった兵士達が焦げている。その近くで不機嫌そうなローゼリアと傷の治療を受けている最中のロランがいた。
「大丈夫か?」
「この程度にやられる妾ではない」
「そ、そうか。ロランは?」
「俺も大丈夫だ。それと……」
ロランは近づいて来て耳元で小さな声で言った。
「お前の奥さん何者だ?」
「外見はリアンヌ並みだが中身が残念な魔女だ……って俺は結婚してないぞ」
「だが以前会った時は2人子供がいただろ?」
「あれは養子だ。勘違いするなよっと!」
お返しに傷を思いっきり叩く。油断していたロランは激痛で大きな叫び声を上げるが気にせず話を続ける。
「ともあれ無事でよかった」
「叩いておきながらよく言うな!」
「悪かった。それより何処に行くんだ?アルベルトの軍勢に追いかけられてたが」
少し気になっていた。ドライケルスが挙兵しているなら分かるが彼の居場所は分からない。聞き出すために追いかけられていたなら分かるがそうでもなさそうだ。
「今からドライケルスのいるノルドに向かう」
「ノルド?北か……盲点だったな」
「好き好んであの場所には行かんが……そう来たか。どうするヴィクトリアよ」
一緒に付いて行くべきだろうか。一旦レグラムに戻るか。リスクが低いのは後者だが前者の方がいい。状況を考えても彼が早く挙兵して欲しい所だ。
「ロゼ。ここは一緒に……はっ!」
「むっ。ヴァンダールの小僧動くな!」
「え!?」
周囲に結界を張るローゼリア。それと同時に紅い一撃が結界に襲い掛かり砕け散る。ローゼリア結界を一撃で粉砕する威力という事は……。
『見つけたぞ光の剣士に緋色の魔女』
俺達の頭上に現れた≪緋の騎神≫と≪紫の騎神≫。最悪にも程があるだろう。加えて少し酷くないか?いくら何でもやり過ぎだろう。
「あれは……噂の騎神か。どうしてここに……」
「俺を消しに来たに決まってるだろ。お前は眼中にないみたいだからノルドに行け」
「行けるわけないだろう。ここは協力して……」
「ロゼ。ロランを飛ばせ」
「うむ。許せ小僧。出来る限りノルドの近くに飛ばす」
「なっ!」
転移術でロランを飛ばす。これで邪魔者は居ない。さてどうするか。俺が起動者と知っている以上は避けて通れない道だが。
「降りて来いよオルトロスに紫紺の」
『ほぅ。我が軍勢に……』
「誰が加わるか」
『貴様……』
(おいおい……相変わらずじゃねぇか光の剣士さんはよぉ……)
降りてきたところに一撃喰らわせてやる。一瞬でも隙を作れば逃げられる。今は彼らと戦うのは得策ではない。
「降りてはいけませんよ兄上。彼の光の剣が来ます。直撃すれば騎神もただでは済まないかと」
『ゼクトールも暫く動けんかったからな』
『それは厄介だな……だがそれがなんだ。させなければいい!』
緋き魔剣を取り出し急接近してくる。すぐにローゼリアを抱き上げ空高く跳躍し回避。いくら何でも生身相手にそれはないだろう!
「生身の人間に騎神で攻撃する馬鹿がどこにいる!?」
「目と鼻の先にいるじゃろ!妾が許可するから呼ばんかい!」
「それは最終手段だ。君は転移の準備を……」
『そんな事はさせん。貴様らはここで死ぬ』
赤い魔弾が高速で迫りくる。今度は魔弓か。≪千の武具を持つ魔人≫とはよく言う。彼ほどの武具を扱うにはかなりの技量がいるだろう。現にオルトロスは完全に扱えるわけではなく攻撃に正確性はない。この魔弾も避ける必要はない。
「捕まってろ」
ローゼリアを抱き寄せると、その真横を魔弾は通り過ぎる。その時テスタロッサの動きが一瞬止まる。そこを俺は逃さない。
「絶技・光凰剣」
『おっと。そうはいかねぇぞ』
テスタロッサの間にゼクトールは割り込み光の剣を受け止める。流石に決めさせてもらえないか。
『ヴィクトリアよ。私は何時でも大丈夫だ』
「エル・プラドー……気持ちは嬉しいがまだその時ではない」
彼の力を借りればこの状況を乗り切る事は出来るだろう。だがそれではオルトロスと変わらない。力はただ力だ。振るい方を間違えれば神にも悪魔にもなる。
「大丈夫だエル・プラドー。俺は一人ではない。そうだろロゼ?」
「……!やるのか?」
「あぁ!上手く合わせろよ!」
テスタロッサの攻撃を避けつつ着地。ローゼリアを降ろしてから光を解き放つ。
『これは……』
「兄上!」
「遅いーーー」
テスタロッサの着地点に瞬間転移。距離と速度を確認してから絶妙なタイミングで光凰剣を放ち、テスタロッサの体勢を空中で崩す。当然ゼクトールは守りに入るがそれこそ俺の狙いだ。
「今だロゼ!」
「完璧な間合いじゃ!」
杖を高く上げ呪文を唱えると、テスタロッサとゼクトールを無数の緋い月と上空に巨大な緋い月が現れ、灼熱で2体の騎神を焼く。
『ぐっ!小癪な!』
『このっ!』
何とか逃れようとしているが防御に霊力を回すので手がいっぱいで逃げられない。加えて灼熱の量も増えている。ローゼリアの終局魔法を正面から喰らうと簡単には逃げられないぞ。
「ゆくぞヴィクトリア!」
「おぅ」
ガランシャールに光を集約。光の剣がガランシャールを覆いゆっくりと振り上げる。
「全ての闇を払う光の剣と!」
「全てを焼き尽くす緋き月の一撃を受けてみろ!」
緋き月が輝くと同時に剣を振り下ろす。緋と黄金の光が混ざり合い柱になって空を貫く。これぞ俺とローゼリアの合わせ技だ。
「良し。今のうちに撤退だ!」
「セントアークに飛ぶぞ!」
ローゼリアが転移術を唱え、俺達はセントアークへと転移するのであった。
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2体の騎神との戦闘から数時間後。外はすっかり暗くなり妙な気配もない。2体の騎神の追撃がある可能性があったが中立であるセントアークには手出しが出来いようで追っ手は無かった。
流石に俺達がセントアークを拠点にしている事には気付かないだろう。
「ふぅ……今日は疲れた」
「本当じゃい。この年になって2体の騎神と戦う事になるとは……はぁ」
大きな溜息を吐いてからベットに寝るローゼリア。年寄りには少し厳しかったか。こんなこと言ったら殺されるが。
「お疲れ様」
隣に座り優しく頬を撫でるとローゼリアは不満そうな表情を浮かべながら手首を掴んでくる。
「やれやれ。俺はもう少し起きておきたいのだが?」
「ダメじゃ」
「全く……」
彼女の誘いに乗り隣に寝る。布団を肩まで被せると、ローゼリアは思いっきり抱きついてくる。両腕を首に回し体を押し付けてくる。
「本当に死ぬかと思ったわい」
「それは俺も同じだ」
流石に2体の騎神の同時相手はきつい。正直生きている事が奇跡だろう。ゼクトールは兎も角、テスタロッサは力の半分ほどしか引き出せてなかった。そこを今回は突けたが次は上手くいかないだろう。
「一旦レグラムに帰るか」
「じゃの。いい加減ルーチェ達に顔を出さんといかん」
「帰ったら説教の1つは覚悟しておくか」
実の所2年レグラムに帰っていない。連絡は入れているがこちらからの一方的な物だ。帰ったらどうなる事か。
「その為にも寝よう。明日は早めに行動だ」
「了解だ。お休みヴィクトリア」
「うん。ゆっくり休めよ」
「分かっておる。明日に影響出ない程度に貰うがの」
そう言ってから瞼を閉じるローゼリア。俺も小さく息を吐いてから瞼を閉じるのであった。