英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
ローゼリアの案内でパルムの近くにある精霊窟に到着。中に入り最奥に行くと、見覚えのある紋様が描かれた扉が現れる。この紋様は確か騎神が眠っていた扉にも描かれていたな。まだ詳しい事は分からないが関係はあるだろう。
「で。この先に行くのか?」
「うむ。この先に求めている物がある。ヌシの王剣に使われたゼムリアストーン……その結晶がな」
「へぇ……って結晶?」
耳を疑ってしまった。俺の持っている王剣ガランシャールと対となる宝剣ガランシャールは旅の途中で入手したゼムリアストーンを使用して作られた物。それもかなり苦労して見つけた。その結晶が精霊窟にあるとは……まだまだ知らないことが多いな。
「では開けるとしよう」
呪文を唱え扉を開けるローゼリア。その奥へと進むと神秘的な雰囲気を放った空間が現れ、その奥からわずかに力を感じる。視界を上げると、光を放ったゼムリアストーンの結晶があった。
「あれが結晶……大きいな」
「じゃがその前にアレをどうにかせぬとな」
「ん?あれは……」
目の前に淡い光が現れ四足歩行の幻獣が現れる。全長は4アージュ程か。周囲に雷が漂っている所を見ると雷獣とローゼリアが呼んでいた奴だな。
「さて……我が剣の錆にしてくれる。友を超えるべく為にも」
ガランシャールを抜き一歩踏み出すと雷獣が雄たけびを放ちながら雷を周囲に放つ。襲ってくる雷を受け流しつつ接近。足に斬撃を放って体勢を崩し刃に光を纏う。
「行くぞ。秘剣・光覇連閃」
高速で切り抜け背後に回り斬撃を放つ。斬撃が雷獣を一刀両断し雷獣は光を放ちながら消えていく。
「ふぅ。こんな所か」
「見事じゃ。良いものを見せて貰った」
「それは良かった。それじゃ回収するか」
ゼムリアストーンの結晶を回収すると、ローゼリアが結晶を里に転移させ俺達は精霊窟を出る。そこで俺はどうしてゼムリアストーンの結晶が必要なのか聞く。
「騎神用の武器じゃ。以前見つけた欠片と合わせれば1つで大丈夫じゃろう」
「騎神に武器が必要なのか。てっきり素手だと思ったよ」
「そんな訳あるか。そもそもヌシは剣士じゃろ」
少し怒られる。そもそもローゼリアは騎神に武器が必要だと言ってない。なので剣の修行の合間にある程度素手で戦えるように鍛えておかないと思っていた。鍛えておいて損はない訳だし。
「で、騎神用の武器は何処で作るんだ?」
「ヌシの王剣を作った鍛冶職人に頼もうと思っておる。この件は妾に任せておけ。完成したらエル・プラドーに渡しておく」
「了解。それじゃレグラムに向かうか」
レグラムへと向かい始める。途中でバリアハートに立ち寄り幾つかの土産品を購入したり困っている人を助けたり。何回かはローゼリアに呆れられたりしたが、いつかは巡り巡って自分のためになる。それはいつになるかは分からないがやって置いて損はない。
そんな感じで3週間ほどバリアハートに滞在し1週間かけてレグラムに向かう。2年振りに帰って来た故郷。出た時と変わらない様子で良かった。故郷はあまり大きくないがとてもいい場所。郷土料理はおいしいしローエングリン城もある。ひとまずその辺りは置いて置き、まずは実家に顔を出さないといけないのだが……
「おや……ヴィクトリア?」
「……リアンヌ?」
金髪の令嬢と遭遇。彼女こそ、2年前完膚なきまで叩きのめされた相手。レグラムを治めるサンドロット家の長女であるリアンヌ・サンドロット。まさか帰って来ていきなり遭遇するとは思っておらず、何を言われるか考えていると、彼女は優しく微笑みながら言った。
「お帰りなさいヴィクトリア。そちらの方はご友人ですか?」
「あぁ……ただいま。彼女はローゼリア。レグラムを飛び出してすぐに会ってな。この2年の旅に付き添ってくれた」
「そうでしたか。私はリアンヌ・サンドロット。私の大切な親友がお世話になりました」
「ローゼリア・ミルスティンじゃ。こやつの事は気にせんでいい」
自己紹介する2人。その最中でローゼリアがリアンヌを見て何かを確信した様な表情を一瞬浮かべる。嫌な感じをした俺は2人の間に入り聞きたかった事を聞く。
「父上と弟は元気にしているか?」
「えぇ。飛び出した理由を聞いた時は呆れていましたが、貴方から送られてくる手紙を見て安心していますよ。少しお説教はあると思いますが」
「その辺りは覚悟している。それと少しいいか?」
「少し行く場所があるので後程私の屋敷でよければ」
「構わない。いつも済まないな。埋め合わせは必ずする」
軽く頭を下げる。幼馴染の影響か子供の頃から何かと迷惑をかけているので頭が上がらない。彼女は『気にしなくてもいいですよ』と言ってはくれるがそうはいかない。土産品と一緒に改めて謝っておかないと。
「行くぞローゼリア。また後で訪ねるよリアンヌ」
「はい。美味しい料理を作って待ってます」
リアンヌと別れまずは実家に向かう。その途中でローゼリアから彼女との関係を探られるが『ただの幼馴染』と誤魔化す。俺とリアンヌは決してローゼリアが思っているような関係ではない。まぁ……俺達の両親がどう思っているかは分からないが。
そんなことを話している間にも実家に到着。ゆっくりと息を整えて扉を開けてはいると、丁度掃除をしていた使用人と目が合ってしまう。
「えっと……若様?」
「えぇ……その……お疲れ様です」
「は、はい。そのお帰りなさいませ。旦那様は書斎の方に。その後ろの方は……」
「私の友人です。お茶とお菓子をお願いします」
「かしこまりました。ではこちらに」
使用人がローゼリアを客間に案内する。すれ違う時に『あまり虐めないように』と釘を刺してから書斎に向かう。2回ほど扉を叩くと中から父の声が聞こえ扉を開けて中に入ると、あまり宜しくない雰囲気を纏った父が椅子に座っていた。
「ただいま父上」
「……その前に言う事があるだろう?」
低く冷たい声で言ってくる。これは相当お怒りだ。父の隣に剣が立てかけてる時点でそういう事だろう。返答次第ではこの場で親子喧嘩もあり得る。ここは慎重に。
「無断でレグラムを飛び出し済まなかった。ですが元よりこの家を継ぐつもりはありませんし、そこまでお怒りにならなくても宜しいかと」
「ほぅ……」
「家を継ぐなら弟に。それにふさわしい物を持ち帰っています」
右手を上げ宝剣ガランシャールを顕現させ父に見せる。その輝きに一瞬目を奪われる所を見逃さなかった俺は言葉を続ける。
「この剣を弟のシオンに。それとこの2年で編み出した技を。それでご勘弁を」
「その技とは?」
「それは明日にでもリアンヌとの模擬戦で。まだ約束はしていませんがこの後会う予定ですし」
「この後会うのか?なら丁度いい。私と彼で
(話ってなんだ?嫌な予感しかしないんだが……)
まさかこの人に限ってないだろうと思う。しかし、昔から事ある度に俺とリアンヌの事を話している事を知っている身からすれば嫌な予感しかしない。
「ひとまずは分かりました。その話が気になりますがその剣は弟に渡してください」
「承知した。技の事も伝えておこう」
「はい。では失礼します」
会釈をしてから部屋を出る。大きく息を吐いていると屋敷の一階からリアンヌの気配を感じ降りる。どうやら用事を済ませ料理の準備も出来たらしい。使用人に声を掛けてから屋敷を出て彼女の屋敷に向かう。気が付けば陽が沈んでおり空は暗い。その代わりに星と月が輝いている。
「いい月ですね。風が心地いいです」
「ま、自然豊かだからな。霊力も満ちているし。そういえばリアンヌ。俺の父とサンドロット伯で何かの話を進めているようだが知っているか?」
「話ですか?私は存じ上げませんが……思い当たるとすると……」
「その思い当たるはあまり考えないようにしよう。俺の年齢を考えるとあり得るからな」
「ふふ……私は構いませんよ?」
「冗談きつい」
もし考えている通りだとすれば今すぐにでもこの場を去りたい。その場合2度とレグラムに帰ってこれなくなるがそれもいいだろう。誰かに縛られ先の人生を決められるのは嫌だからな。
「しかし……腕を上げましたね。その剣といい半泣きして飛び出した2年前とは大違いです」
「さり気に傷を抉らないでくれる?」
「いいじゃないですか。多少の黒歴史はあった方がいいですよ」
もはや黒歴史を超えると俺は思うのだが?レグラム全域に伝わっているので既に遅いかもしれないがこの事は一生残るだろう。どうか後世に伝わらない事だけを祈ろうか。
「さて……到着しましたよ」
サンドロット家に到着。一緒に客間に行くと、リアンヌが作った郷土料理が机に並べられており、美味しそうな匂いが漂っている。それだけならまだよかったのだが、客間にはサンドロット伯が座って待っており、俺の顔を見た瞬間、素晴らしい笑みを浮かべて前に座るように誘導する。
「取り合えず座りなさいヴィクトリア」
「……失礼します」
逆らわない方が良いと判断した俺は素直に座り、隣にリアンヌが座る。何を言われるのか待っていると、サンドロット伯は小さく息を吐いてから口を開く。
「この2年で大きくなったな。レグラムを飛び出した件は娘から聞いている。そして旅先で何をしていたのかも」
「そうですか……」
「そこでだが……君は今年で何歳だ?」
「先月で18歳ですね……」
「ふむ。なら頃合いか」
(あぁ……やっぱりか……予想通りだな。なら……)
それだけは避けないといけない。この時点で俺の先の人生を決められるわけにはいかない。さっきも言ったが、俺の人生は俺が決める。縛られるのは嫌だ。
「サンドロット伯。申し訳ありませんがお断りします」
「む……まだ何も言ってないが……」
「大体分かります。子供の頃から陰で聞いていますから。その上でキッパリと申し上げます」
「そうか……出来ればと思ったが……」
「そもそも誰かと結ばれるつもりはありません。どうかご了承を」
サンドロット伯は納得していないようだが納得してもらわないと困る。父にも啖呵を切っている以上は是が非でも引き下がって貰おう。
「さて……取り合えず食べましょう。話しもそれだけでしょう?」
「あぁ……そうだな。折角リアンヌが腕を振るった事だ。冷めぬうちに頂こう」
「ではいただきましょう」
3人揃って手を合わせる。久しぶりにリアンヌの料理を食べながらこの2年の話を2人にするのであった。
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「さて……そろそろいいか」
日付が変わる頃。こっそりとサンドロット家を抜け出した俺は、気配を消してレグラムを出ようとした。しかし、その事を気付いていたのかリアンヌが先回りをしていた。
「もう行かれるのですか?」
「あぁ……暫く帰ってこない。やるべきことと調べたいことがある」
「そうですか……もう少し滞在してもいいのに」
少し寂しそうな表情を浮かべるリアンヌ。その気持ちは痛いほど分かるが止めないで欲しい。俺には騎神の事や調べたい事が沢山ある。足を止める訳にはいかない。
「何かあれば家に置いてきたフクロウに頼んでくれ。ローゼリアから譲り受けた特殊なフクロウだ。一通りの事は出来る」
「分かりました。ですが旅立つ前に1つ頼みがあります」
「いいぞ。少し開けた場所に行こう」
レグラムを出て開けた場所に移動する。周囲が木々に囲まれており、ここなら多少騒いでも大丈夫だろう。ガランシャールを左手で抜き、リアンヌはランスを構える。
「さぁ……尋常に勝負です。互いに死力を尽くしましょう」
「望むところだ。この2年で磨いた光の剣。とくと味わうがいい!!」
互いに黄金の闘気を解き放つ。2年振りの手合わせは騒ぎに気付いたローゼリアが止めに入るまで続くのであった。