英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
ドリューとの戦いの後、少し休憩した後に俺達は屋敷へと潜入。屋敷の中には誰も居らず、どうぞ自由にお通り下さいと言っているようだった。そのため俺達は誰にも邪魔されずにヘヴン伯のいる部屋の前へとたどり着いた。
「気配は二つ。その内の1つはグンナルか」
「……行くよ相棒」
右腰に携えている騎士剣を抜き勢いよく扉を開けて中に入るレイヤ。遅れて中に入り状況を確認。部屋の中ではヘヴン伯は椅子に座り、グンナルは紅茶を飲みながら窓の外を見ていた。
「……随分余裕だな皇子」
「ふっ……」
笑いながら振り返るグンナル。随分と余裕な笑みが気になるが今は良いだろう。正直何も無いのは不気味だ。
「久しいな。君の名は耳に入っている」
「そうか。ヘヴン伯は……成程。ルキウスたちと一緒か」
「それって……父様?」
ヘヴン伯を見るレイヤ。ヘヴン伯は何も言わずに目を閉じる。その瞬間にレイヤは彼の首元を掴み、声を荒げて言った。
「ヴィクトを売ったね父様!!」
「……オルディスを守るためだ」
「だからと言ってヴィクトは関係ない!ボクならまだしも!」
「……関係ないか。2体の騎神を退けるほどの力があるのにか?」
「それは……」
あの話はもう耳に入っているのか。この人も俺の力を欲する。何の為かは……この状況だ、大体は察する。
「さて、こちらも話をしようヴィクトリア。まずは……」
「ん?」
グンナルが指を鳴らすと、壁に結界が現れ何かが映し出される。これはローゼリアも使う転写か。しかしどうして……ん?
「あれは……青い魔煌兵……?その前にいるのは……っ!」
「ルーチェに……シリウス?」
青い魔煌兵の前にいるのは、傷だらけのルーチェとシリウス。その背後にはレイヤの母と弟がいた。あの2人が苦戦する魔煌兵。アレは確か……イスラ・ザミエルか。
「ヴィクトリア・アルゼイド。帝都解放のために力を貸せ。あの2人の命が惜しければな」
「……脅しか?あまり俺の子を舐めるなよ」
「大した自信だな。どうだ魔女殿?」
イスラ・ザミエルの傍にいた魔女に訪ねるグンナル。魔女はルーチェ達を交互に見てから、こちらに振り向き、俺の顔を見ながら言った。
『グンナル様。そちらの≪光の剣士≫様は金の起動者です。この2人は準起動者。恐らくレイヤ様も』
「なん……だと?それは真か?」
『はい。2人から黄金の加護を感じます。特にローゼリア様の教え子からは特に強く』
「……」
俺の秘密を簡単にばらされてしまう。≪在野の魔女≫だからと言って甘く見過ぎたか。さて……どうしようか。
「ふっ……好都合だ。選べヴィクトリア。子を見殺しにするか騎神を渡すか」
「……そう来るよな」
その2択は分かっていた。どちらかを捨てなければならない選択肢。ルーチェとシリウスを見殺しに出来ないし相棒も渡すことは出来ない。この状況を乗り切るにはどうすればいいんだ。
(くそ。出来れば両方守りたい。けど今の俺には……)
ー力ならある。今はまだ目覚めていないだけだ。
(え……?)
脳裏に響く声。気付けば見知らぬ空間にいて、目の前に淡い光がある。さっきの声はこの光からか?知らない筈なのに覚えがある。知っているのは俺の魂か。一体誰だろう?知らないのに何故か信用できる。
ー自分の思うがままに力を奮え。君は歩みを止めてはならない。≪彼≫とローゼリアは必ず力になってくれる。
(ローゼリア……だと?)
声が言った事に驚きを隠せない。≪彼≫とローゼリア。どうしてこの二つが出て来たのか。そして、この二つの正体が分かる自分が分からない。
(君は……誰だ?)
ーん?ローゼリアから聞いてないのか?俺は……いや、こればかりは自分で目覚めて貰おうか。≪イシュメルガの悪意≫が君に干渉してきた以上は自然と目覚める。後は相棒が上手くやってくれるさ。
(相棒って誰!?それに悪意って……)
ー今に分かる。君は今のエレボスを守るために出来る事をするんだ。少しずつこの地の真実に近づいて行けばいい。
(真実って何だ!?君何を知っている!?)
力強く問いかけるが返事はなく、周囲の景色が部屋に戻る。あの声が非常に気になるが今はいい。あの声を信じて、今は目の前で起きている事に集中だ。
「どうする≪光の剣士≫!」
「どうもしない!俺は、俺の心が命ずるままに、己が正義を貫くために力を奮う。だから!」
力強く左手を握ると、淡い光が全身を包み、折れていた右腕が修復され、体の内側から力が沸き上がり満たしていく。これならこの状況を打破できる!
「行くぞエル・プラドー!」
『応っっっ!』
力強い呼応と同時に、エル・プラドーがイスラ・ザミエル前に姿を現す。圧倒的な姿を見たグンナルは、思わず歓喜の声を上げると同時に、部屋の中に複数の兵士を呼ぶ。
「……行かせないつもりだろうが」
「甘いよグンナル皇子。ここは任せて行って相棒」
「あぁ!頼んだ!」
この場をレイヤに任せてエル・プラドーの操縦席へと転移した。
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ーレイヤsideー
「さてと、君達の相手はボク。これ以上オルディスで好きにはさせない」
右腰に携えている騎士剣を抜き兵士に向ける。数は20人程。数は多いけど練度は大したことは無い。というか、リアンヌやヴィクトリアに鍛えられているからこの程度は簡単に蹴散らさないと。
「剣を降ろせレイヤ。お前をそんな風に育てた覚えはない。素直に降伏しろ」
「無理だね父様。ボクはヴィクトの味方だから」
「剣しか取り柄の無い男の何処がいい?あれほどの力を持った人間は危険だ。オルトロス皇子と変わらない」
「全然違う。彼は私欲で力を奮わない。エル・プラドーだって本当の窮地にならない限りは頼らなかった。頼っても殆どはボク達家族を守るため。むやみやたらに振るったりはしないさ」
力強く父様に言う。でもあの人には届かないし、どうしてヴィクトリアを売ったのかも分かる。みんな、考えている事は同じ。それぞれ自分の正義と覚悟があるから譲れない。それでぶつかるのは仕方が無い事だ。でも……。
「残念だよ父様。家族を売って、ボクの大切な人達を売ってでもオルディスを守るなんて」
「お前に何が分かる!」
「ボクには分かる。どんな手を使ってでも大切な物を守りたい気持ちは。でも父様。貴方は心の中で自分さえ生き残ればいいと考えている。他の皇子もそうだ。だけどヴィクトリアは違う」
ボクは知っている。いつも彼は自分よりも誰かを優先し、手を差し伸べる。もっと我儘言って振り回せばいいのに、何時も自分の事は後回し。最終的には貧乏くじ引く大馬鹿者。だからこそ彼の生き方に惚れて好きになったんだけど。2番目でもいいと思えるぐらいに。
「アイツはただの馬鹿。自分の事を後回しにしてボク達を優先する馬鹿。その馬鹿に惚れたボクも馬鹿だけど」
「なら縁を切ればいい。あのような男に付いて行く気が知れん」
「何時か分かるよ。彼はボクを変えてくれた。彼には何かを変える力がある」
「無理だな。1人の人間に出来ることは限られている。諦めるのも大事だ」
父様の言う通りかも知れない。だけどあの時。ヴィクトリアと会って必死に頼んだあの時、彼は言った。
ーま。何とかなるだろ。ひとまず一緒に逃避行を楽しもうぜ。だけど追っ手が来るまでにきちんと言い訳考えろよ。
ー無理だよ!絶対に捕まって無理矢理連れ戻される!
ーだから諦めるのか?箱入り娘が嫌で俺に会いたいから飛び出したんだろ?初めて自分でやりたい事を見つけたんだ。だったら立ち止まるな。前だけ見てろ。最後まで貫け。あと弱音吐くな。俺の手の届く所にいる間は守ってやる。その代わり、さっき言った事を守らなかった時点で置いて行くからな。
今でも覚えている。正直に言って最悪な出会いだっただろう。でも彼は何も言わずに話を聞いて、一緒に連れて行くと言ってくれて。諦めかけていたボクの背中を押してくれた。あの時に勇気を出して会いに行かなかったら今のボクはいなかったし、多くの大切な
(諦めの悪さは彼譲りかなぁ)
自然とニヤケてしまう。最後まで諦めなければ光を見いだせる。どんな絶望的な状況でも。だから……。
「さぁ来い!諦めの悪さは相棒以上だよ!」