英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
「準備はいいなエル・プラドー」
『うむ。いつでも構わない』
エル・プラドーの返事に小さく頷く。いつもながら頼りになる。相手は魔煌兵の中でも3本の指に入る強者。だが負ける気がしない。今ならば騎神のもう一段階進化させても問題なさそうだ。
「最初から全開で行く。状況によればアレも試すぞ」
『よかろう。ただし継続できる時間は……ん?』
「どうした?」
何かに気が付いたエル・プラドー。そういえば今日は妙に一体感があるな。少し懐かしい気もする。内から湧き出てくる力と関係しているのか?
『ふふ……そうか。ようやくか……』
「何が?」
『あぁ気にするな。今は目の前の敵に集中だ』
「分かってる」
心を落ち着かせて魔煌兵と向かい合う。リアンヌとの稽古で何度もこの場所に座っているがまだ慣れないが不安はない。やるべきことは体が分かっている。
「さぁ行くぞ」
黄金の剣を強く握り一歩踏み出しながら振り下ろす。イスラ・ザミエルは右腕2本で受け止めてから左腕で反撃。こちらも左腕で受け流し、胴体に一撃。イスラ・ザミエルの体勢が崩れたのを逃さない。
「そこだ!」
さらに体勢を崩すために剣の柄で胴体の中心を突き、一撃を叩きこむ。イスラ・ザミエルは3歩ほど下がるが膝は付かない。
「硬いな」
『在野の魔女の加護も受けているからだろう。油断は……そなたには不要か』
「当たり前だ。だが長期戦は場所の事もあるから出来ん。一気に決めるぞ」
黄金の闘気を開放し、騎神と完全に同調させる。それにより一時的だがエル・プラドーはもう一段階上へと進化し姿が変わる。少し細身のフレームとなり、腰から白亜の翼が現れる。
「騎神一体。光の一撃にて斬り伏せる」
剣に光を纏い十字に斬る。イスラ・ザミエルは淡い光を放ちながら消えていき、エル・プラドーは元の姿に戻る。俺は安堵の息を漏らしつつ操縦席から降りて片膝を付く。
「ふぅ……結構きついな。霊力の消費が多すぎる。俺もまだまだか」
『そんなことは無い。まだ目覚めた力に慣れていないだけだ』
「あー。あの淡い光か。そういえば妙な青年を見たな」
『……。(そうか。後もう少しで完全に目覚める。後は『彼』の魂と力を託すだけか)
しかしあの青年は誰だろうか。妙に他人な気がしないのだが……と。今は考えないでおこう。まずは彼女達の無事を確かめないと。
「大丈夫か?」
「あぁ。俺は大丈夫だがルーチェが……」
「……ごめんなさい。私は……」
少しだけ目に涙を浮かべるルーチェ。その理由は分かる。自分の力の無さを責めているのだろう。俺は優しくルーチェの頭を撫でて言った。
「泣くなルーチェ。俺が来るまで諦めなかった。大事な事は分かっている。だから二人を守れたんだ」
「でも。私達を信じて大きな役目を託して貰ったのに、結局はお父さんとエル・プラドーの力に助けられてしまった」
「それがどうした?俺は二人の父親だぞ。助けて当然だ。例え血が繋がっていなくても。だから泣かない。泣くのは嬉しい時だけにしてくれ」
「……はい」
服の袖で涙を拭ってからシリウスの元へと向かい、傷の治療をしてからおば様の元へ。そちらの方は任せようか。問題はレイヤの方。急ぎ戻るとしようか。
「エル・プラドー。俺はレイの元に戻る。この場は任せたぞ」
『承知。後で連絡する』
この場を任せてから部屋の前に転移。ガランシャールを取り出して戸を開けると、中は大量の兵士が倒れており、その中心にレイヤがいる。グンナルがいない所を見ると撤退したか。
「大丈夫かレイ?」
「うん。全員片付けた。グンナル皇子とその他はオルディスから完全に撤退。後は……」
ヘブン伯に視線を向ける。俺は壁に背を預けて2人の会話に耳を傾ける。どうしてこうなったのか?俺達をおびき出した本当の理由。彼はゆっくりと話し始めた。
「思いは皆同じだ。オルディスを守るのにお前達の力が必要だった。そんな時に……」
「皇子達は来た」
「あぁ。そこでヴィクトリアとその友が2体の騎神を退けたと聞いた。人智を超え、魔煌兵を簡単に倒す騎士。それを人の身で簡単に退けてしまう」
「だからって……それに簡単にヴィクトリア達は退けていない。帰って来た時傷だらけだったんだから」
それほど傷は負っていないのだが……。霊力の消費と言う意味では傷だらけだけど。しかし……ヘブン伯が俺達をおびき出したのは、あくまでもオルディスを守るため。気持ちは分かるが。
「だったら普通に頼めばいいでしょう?」
「時には必要なのだ」
「だからと言って!」
「レイヤ!」
「っ!」
手を上げようとするレイヤを止める。ヒートアップするのは構わないが心は冷静でいて欲しい。
「人の家族問題に割って入るのは趣味ではないがヘヴン伯。貴方の想いは分かりました。グンナルが去りオルディスは中立。暫くは手を出してこないでしょう。貴方はこの地の中立を保ってください」
「無理だ。出来ればそうしている」
「……そうですか。なら私は何も言いません。あくまでもオルディスの問題ですから。行くぞレイ」
「ちょっと!」
部屋を出て早足で屋敷を出る。そのままルーチェ達と合流しようとしたが、背後からレイヤに抱き着かれ足が止まる。
「どうした?」
「……怒ってる?父様の事?」
「怒っていない。彼の気持ちも分かるさ。けど……諦めたらそこで終わりだ。こんな状況だからこそ諦めて立ち止まるわけにはいかない。俺は……止まるわけにはいかない。
「彼女との約束ってロゼとの?」
「あぁ。ロゼと……ん?俺は今なんて言った?約束って言ったのか?」
「……言ったけど?」
約束って何だ?ローゼリアと大事な約束をした記憶はない。なのに何でだろう?大切な何かを忘れている気がする。もしかして熱でもあるのか?どうもあの青年を見てからおかしいな。
「大丈夫ヴィクトリア?少し変だよ。ちょっといつもと違うというか……」
「いつもと違うか……なら」
「ふぇ!?」
レイヤの方へと振り返り彼女の頬に手を添える。決して疚しい事をするつもりでは無いので誤解しないで欲しい。
「ど、どうしたのヴィクトリア?だ、ダメだよ?いくら私は2番目でも良いって思っていても、流石に一線超えるのは……せめて頬にして欲しいかなぁ……唇は日が沈んだ後で……」
「おいこら!」
頬赤く染めながらさり気無く問題発言したレイヤにデコピンする。全く……油断も隙も無い。最近はマシだったのに。ま、酒を飲んで泥酔するよりマシか。
「で。どう違う?」
「んー……。中身かな?ロゼに近い気がする」
「あの不老不死の魔女聖獣にか?」
「……ねぇ、一応嫁さんだよね?そんなこと言ったら赤雷が落ちてくるよ?」
「まだ結婚してないぞー」
レイヤの右頬を引っ張りながら反論。彼女とはまだそこまでの関係に行っていない(まだ勇気が出ないだけ)。いい加減そろそろ決めないとな。
「取り合えずレグラムに帰ろう。俺の身に何かあったのかも知れないし」
「……だね。その前に……ん」
軽く触れるように右頬に口付けするレイヤ。あぁ……色んな意味でおかしいと思いつつルーチェ達と合流してレグラムに帰るのであった。