英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
今日のレグラムは朝から慌ただしかった。理由はいたって簡単。ついにドライケルス達がレグラムに来るからだ。出来る限り正常を保つように伝えているが、特にリアンヌはソワソワしている。何故か薬師の真似をしているし。俺としても彼に接触したいと思っているので、来るであろう酒場で仕事を手伝いながら待っている。
「しかしヴィクトリアよ。予想よりも早かったの」
「噂ではロランが死んだらしい。何でもドライケルスを庇ったらしいが」
実に惜しい男を亡くしたものだ。彼の死はドライケルスや仲間達にも大きな影響を与えているだろう。そのタイミングでレグラムに来るの俺達にとっても好都合かもしれない。
「で?偉大なる魔女殿は何をしている?」
「おヌシからの贈り物を見ながら酒を飲んでおる」
左手の薬指に嵌められている赤い宝石が付いた指輪を嬉しそうに見ながら酒を飲んでいるローゼリア。男として喜んでいるなら嬉しいが、ローゼリアは事ある度に見ている。理由を聞いても誤魔化され話してはくれない。渡したのは早計だったか。
「やっぱり早かったかもしれん。俺と君の関係は後50年程で終わるのに」
「どうじゃろうな。意外と長い付き合いになるかもしれんぞ?」
「その理由を説明してくれ」
「秘密じゃ我が夫」
このようなやり取りを何度も繰り返している。最近になって増えたんだよなぁ秘密主義。ルーチェに怒られるぞこの魔女。
「まぁいいが。秘密主義も程々にな。少し出て来る」
酒場の女将に声をかけて、俺はリアンヌのいる診療所へ向かう。彼女は今ここで薬師の1人としてドライケルスを待っている。少しそわそわしているが気にしないでおこう、緊張していないだけマシだ。
「リアンヌ。少しいいか?」
「……」
「リアンヌ?どうし……」
「っぅ!!!」
「うぉぅっ!」
いきなり首元にランスを突き出してくる。慌てて後ろに下がり回避し、一大事にはならなかった。あぶねぇ。あと一歩遅かったら女神の元送りだ。
「こ、殺す気かリアンヌ?」
「背後に立つあなたが悪い」
「そうかよ……打ち合わせ通りに頼むぞ」
念を押してから診療所を出ると、丁度こちらに向かってくる集団の気配。その一つはドライケルスの気配だ。
「んじゃ行くか」
ガランシャールを取り出してレグラムの入口で待ち構える。少し待つと傷ついたドライエルスを筆頭に200人程レグラムに向かってくる。ある程度の距離で殺気を放つと、ドライケルス達は立ち止まる。
「何しに来たドライケルス?レグラムに攻め入ろうってか?」
「いや……少し休ませて貰いたいと思っただけだが……君は……ヴィクトリアか。久しいな」
「……ふっ。覚えていたようで何よりだ放蕩皇子。さっきのは冗談だ。お前が来ることは知っていた。準備はしてるからゆっくりしていけ。後お前は先にサンドロット伯の元に行けよ」
一通り場所などを説明してから酒場へと戻ろうとするが、途中でルーチェとレイヤが談笑している所を見つけ、声を掛けようか考えていると、あの2人に気付かれ手を振ってくる。俺も混ざっていいのか分からないが、良い笑顔なので混ざる事にしよう。
「何を話してたんだ?」
「ボクの新しい剣。大分ボロボロだからどうしようか考えててね」
「そこでゼムリアストーンで作り直して、レイさんの特性を剣に込めようかと」
「成程。レイの特性となると光の炎を騎士剣に纏うのか。そうなれば刀身が細くても丈夫だ。闘気を纏うことが出来れば尚良い」
「闘気?あの拳闘士が纏っていた奴だよね。光の炎は君からの加護で大丈夫だけど闘気は……」
「修行あるのみ。今からやるか?」
「いいの?ドライケルスの事で大変だと思うけど?」
確かに大変だか、あの様子の彼を俺には何も出来そうにない。今の所はリアンヌに任せよう。どう動くかはアイツに任せているし、俺はドライケルスの背中を蹴り飛ばすぐらいしか出来ないから。
「それに今は体を動かしたい。ルーチェはどうする?」
「そうですね。レイさん一人では荷が重そうですし」
「おや?ルーチェこそ追い詰められたら半泣き上目遣いで、ヴィクトを動揺させない?」
「レイさんこそワザと押し倒されてお母さんの目を盗むのでは?」
(……女って怖い)
バチバチと目の前で火花が散っている。こうなったら俺は止められない。ローゼリアでもリアンヌでも。シリウスが来たらルーチェはそちらに惹かれるからいいが。
「2人共。いいから修業やるぞ」
「あ、はい」
「了解。今日こそ勝つよ」
レグラム内にある小さな広場に向かう。ここでは毎年リアンヌが街の若者を鍛え上げ叩きのめしている場所。俺もその被害者の1人だ。
「さてと、まずは闘気の纏い方だがレイ。闘気を放つことは出来るな?」
「うん。それは簡単」
小さく深呼吸し、真紅の闘気を全身に纏って俺に向けて放つ。ふむ、最近は手合わせしていなかったが、見ない内に腕が上がってる。理……いや、至境に入りつつあるか。
「そのまま騎士剣に纏ってみろ。全身に纏うと同じ。ルーチェはが魔法を唱える時に杖に集中させるのと同じだ」
「という事はこんな感じ……」
全身を覆っていた闘気が騎士剣を中心に強くなる。言っただけで出来るとは、やっぱりレイヤは天才だ。潜在能力の底も見えないし、ルーチェと言いシリウスと言い、頼もしい。
「うし、その状態で一戦やるぞ。ルーチェはレイのサポート」
「はい。背中は任せて下さいね」
「任せた。それじゃ……」
闘気の上から刀身に光の炎を纏う。ビリビリと空気が少し震える。危うく飲まれそうになるが、逆に闘志に火が付き、俺も闘気を纏う。
「さぁ来い」
「行くよ!」
騎士剣を構えて距離と詰めてくるレイヤ。正面から受け止めようとするが、光炎の球体が目の前に現れ瞬時に交代。その先にレイヤが回り込んでおり、騎士剣を振り下ろしてくる。
それを受け止めると、ガランシャールを光弾が弾き飛ばし体勢を崩してくる。そこをルーチェが逃すことなく、小さな光弾が周囲を覆い、雨のように降り注ぐ。
「フォトンスフィア」
光弾を斬り伏せ攻撃に備えていると、光弾の隙間から赤い刀身が現れる。それを防ごうとするが、死角から怒涛の光弾が押し寄せてくる。
「ちぃ」
ガランシャールを地面に突き刺し光弾もろとも周囲を吹き飛ばす。
「危ない危ないっと」
少しヒヤリとしたがいい経験だ。何故かルーチェとレイヤから何か言いたそうな視線を向けられているが気にしない。
「ここまでにしようヴィクト。一旦休憩」
「そうですね。私もお腹すきましたし、お父さんの奢りで食べに行きましょう」
「分かった。行こうか」
2人と共に宿へと戻るのであった。