英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
暗く静けまった夜。皆が寝たのを確認してから湖畔へと足を運んでいた。
「少し冷えるか。それなのにあのバカは……」
1人の男が先客出来ている。ドライケルスだ。背中を見てもかなり覇気がないのが分かる。背中蹴っ飛ばしてやろうか。頭が冷えたら少しは立ち直るだろう。
「湿気た面してる暇あるのかドライケルス」
「……ヴィクトリアか。こんな時間にどうした?」
「ロゼがやっと離してくれたから散歩。と行きたいが立て」
ガランシャールを取り出してドライケルス向ける。背中を蹴るより剣の方が早い。向けられたドライケルスは、視線を外して湖畔に向ける。こいつは重症だな。
「ロランも報われない」
「……!」
ドライケルスが反応する。やっぱりそこか。リアンヌと話をして少しはマシになったと思っていたのだが。これは荒療治が必要か。
「アイツはお前を信じて庇って散ったのに、今のお前を見たらどう思うだろうな?俺からすれば無駄死にだ。可哀そうすぎる」
「……何が分かる」
「分かんないな。俺は失いたくないから強くなる。ロランが死んだのはお前が弱いから。違うか?」
「ぐっ……」
言葉が出ないドライケルス。そこは理解しているなら大丈夫だろう。荒療治はしなくても済むか。後は自分次第だろう。
「ドライケルス。弱いのが悪いとは言わない。人それぞれ強さは変わる。俺は剣、レイは戦術、リアンヌは武術。お前は自分の強さを磨け。それぐらいは分かるだろう?」
「自分の強さ……」
「そうだ。俺はリアンヌに惨敗し、妻と帝国を周りながら研鑽を積んで分かった。俺には剣しかない。剣を振るう事で皆を引っ張る事しか。お前にもあるだろう?今一度ノルドの民や他の者がついてきた本当の理由を考えてみろ。1人でなんでも抱え込むな」
ガランシャールを肩に担ぐ。言いたい事は言った。後はドライケルス次第だろう。この内戦を本当に終わらせたいのなら立ち上がるはず。
「ヴィクトリア。1つ頼んでもいいか?」
「いいぜ。言って見ろ」
「もう一押し欲しい。胸を借りても良いか?」
「いいだろう。構えな」
少し距離を取りガランシャールを構える。ドライケルスが構えるのは軍刀。さてどれ程の物か見せて貰おうか。
「来いドライケルス」
「あぁ。行くぞ光の剣士!」
ドライケルスとの手合わせは夜が明けるまで続いた。
ーーーーーーーーーー
「ふわぁ……眠い……」
流石に明け方まで剣を交えるのはきついか。だってドライケルスの奴全然諦めないんだよ。しかも『俺でも使えそうな剣技を教えてくれ』って言ってくるし(後にロランから教わった剣術と共に研鑽を摘み百式軍刀術と呼ばれるのだが)。お陰で寝不足だわ。
「おはようヴィクト……うわ酷い顔。何?ロゼに食われた?」
「おい。朝から何言ってる」
「ごめんごめん。怒られた?慰めてあげるよ膝枕で」
「あー……マジで眠いのは事実だし……。いや、大丈夫。ありがとう」
「そっか。ボクはリアンヌの所にいるから何かあったら呼んでね」
微笑みながらリアンヌの元に向かうレイヤ。さて俺は庭に行ってもう少し寝よう。いつ何が起きるか分からないし、体調は整えないと。
「ふぅ。ドライケルスも立ち直れたし、後はリアンヌがどう動くかだが……」
「あら?お父さん?」
「ん?」
横になると同時にルーチェが顔を覗かせる。ミネルヴァが右肩に乗っているのを見ると、これから修業か、もしくは散歩。ルーチェの事だから前者だと思うが。
「どうした?鍛錬の相手ならシリウスに頼んだらいい」
「今日はお休みです。ミネルヴァが構って欲しいみたいで」
「珍しい。なら俺が遊んでやるぞ」
ミネルヴァに右手を差し出すが思いっきり噛んでくる。この野郎、元主に何たる態度だ。これは後で説教だな。
「おや?我が息子にルーチェではないか」
「なんだよ中年親父」
「見かけたから声を掛けただけだ親不孝者」
「……(仲いいのか悪いのか……)」
俺と親父は相変わらずだ。勿論ローゼリアに指輪を渡したことは話していない。魔術で嵌めている事を見えないようにしている。見えているのは俺とルーチェ達、家族だけだ。
「そろそろ血の繋がった孫が見て見たいものだ」
「ルーチェとシリウスでは不満か?いい子に育ってるぞ」
「不満なわけ無いだろう。だが跡継ぎは必要だ。シオンの身に何かあれば、アルゼイドを継ぐ者がいない」
「大丈夫だ。俺達が死なせない。アイツは強いから大丈夫だ」
何度も手合わせしているからシオンの強さは知っている。伊達に俺の弟ではない、リアンヌにも鍛えられてるし簡単には死なないだろう。と言うか兄より先には死なせん。
「親父は心配し過ぎ。碌な年の取り方をしないぜ」
「余計なお世話だ。人の心配してる暇あるのなら私を安心させろ。レイヤ嬢と仲が良いんだろう?」
「当然。
「……そうか。お前が言うならいいが、それよりドライケルス帝は明後日にも出立するらしい。行くならその前に顔を出せ。いいな」
そう言い残し去って行く親父殿。さてリアンヌはどう動くのやら。ローゼリアが集めた連中はリアンヌが鍛えて鉄騎隊に入れたし、俺達は隊とは言えないし。でも一個大隊に匹敵するのは事実か。
「あの……先ほどのおじ様の話ですが……」
「気にしなくてもいい。俺達の関係は家族間だけの秘密だ」
「……分かりました。お父さんが言うなら何も言いません。ではごゆっくり体を休めてください」
「あぁ。ルーチェもゆっくり」
「はい。では」
軽く頭を下げてから街道の方へと向かうルーチェ。俺は暫く横になっていると、ローゼリアとシオンが姿を現す。手に書類を持っているのを見ると、会議でもしていたのだろうか。
「ここに居ましたか兄上。少し宜しいですか?」
「いいぞ。どうした?」
「先の予定を考えていてな。ドライケルスの出立と同時に行動を開始するが、どうやら周辺にグンナルの軍が展開している。で、リアンヌと話し、おヌシの意見を聞こうと思ってな」
「んー……。その辺はレイの専門だが……、お約束通りの展開で良いだろう。どのみち今のドライケルスの戦力では魔煌兵を倒せないし」
ノルドの民の実力は見たら大体分かる。ドライケルスの剣も並み以上。それらを踏まえて魔煌兵には確実に勝てない。全滅は確実だ。
「気付かれないようにドライケルスを付けて危なくなったら助ける」
「簡単に言うがそれが難しい」
「大丈夫。待てばいい。タイミングは任せるさ」
「了解です。ではリアンヌにはそう伝えます。姉上はどうします?」
「こ奴といる。そちらは任せた」
「分かりました。体を休めてください兄上」
リアンヌの元へと戻るシオン。姿が見えなくなった所で上体を起こそうとするが、ローゼリアが額に手を置き止めてくる。
「寝ておけ。昨晩派手に暴れたのじゃろ?」
「そこまで派手ではない。思ったより根性あるからきつくやっただけだ」
「同じじゃ。だから休んでおけ」
「はいはい」
ローゼリアの膝を枕代わりにし、日が暮れるまで彼女と談笑した。そして三日後、ドライケルス出立したのを見送ってから俺達もリアンヌと共に彼の後を追った。