英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
ー神技・光凰剣。
それは唐突に現れた。ヴィクトリアやサンドロット伯に見送られレグラムの出立。直ぐにグンナル達が従えた魔煌兵と呼ばれる存在に囲まれて絶対絶命の窮地に陥る。
それでも私は諦める事無く剣を取り戦ったが、戦力差は絶大。何も出来ぬまま撤退しようとした時だった。背後から強烈な光の一撃が魔煌兵を薙ぎ払い、甲冑を纏った見覚えのある女性をを筆頭に、武器を持った集団が背後から現れたのは。
「君は……薬師の……」
「ふふ……。薬師の女は最初からいません。私はリアンヌ・サンドロット。
「という事だドライケルス」
黄金の剣を持った甲冑を纏った剣士。レグラムの地で背中を押してくれたヴィクトリアが姿を現す。そこで全て分かった。
「私を嵌めたかヴィクトリア」
「んなわけ無いだろ。人聞き悪い事言うな。今回の件は全部リアンヌが……」
「おや?タイミングは貴方の指示ですが?」
「何のことかな?それよりやるぞリアンヌ。相手は魔煌兵、背後からくる連中はシオン達に任せておけばいい。ドライケルスとノルドの連中は下がってな」
2人は私の横を通り過ぎ、黄金の闘気をその身に纏う。あの時……私と剣を交えた時とは雲泥の差だ。
「さて、良い所を見せるとしましょう」
「張り切り過ぎてやり過ぎるなよ!」
これが、後に≪槍の聖女≫と呼ばれる帝国最強の武人と≪光の剣神≫と呼ばれる帝国最強の剣士との出会いだ。
ーーーーーーーーーー
ーヴィクトリアside
「数が多ければいいわけではないが!」
「もう音を上げましたか?」
「んなわけ無いだろ!」
迫りくる魔煌兵を悉く斬り伏せる。それにリアンヌが合わせて止めを刺す完璧な連携。互いの癖や行動パターン。思考などを完全に分かっていないと出来ない芸当だ。
「後はあの青い魔煌兵だけですね」
「オルディスでも見たイスラ・ザミエルだ。ここは合わせ技で行くぞ」
「了解です」
ガランシャールに黄金の闘気を纏い薙ぎ払う。イスラ・ザミエルの足を崩した後、リアンヌが竜巻を発生させて拘束。そこを逃す事無く斬撃を放ち、リアンヌは強烈な突きを繰り出す。
「「神技・ライトニングクロス!!」」
閃光の一撃がイスラ・ザミエルを跡形も無く消滅させる。背後はシオン達に任せているし大丈夫だろう。後は周囲の兵士だが……。
「どーするドライケルス?全員斬るか?」
「その必要はないだろう。これだけの力の差が出ればこれ以上戦う必要が無い事が分かる」
ドライケルスの言った通り撤退していく兵士達。ならこれ以上の追撃は必要ないだろう。ガランシャールを仕舞い、事の次第の説明をリアンヌに任せよう。
「説明は頼むぞリアンヌ」
「詳しい事はバリアハートで。宜しいですかドライケルス?」
「……あぁ。聞かせて貰おう」
「決まりだな。移動はシオンに任せてくる」
後方に移動してシオンと合流の後、バリアハートへ移動することを伝える。俺は念の為に後から向かうと伝えてこの場に残る。
「さて……何が出るか。出来ればマシな奴が出てくれよ」
そう祈りガランシャールを構えると、周囲を黒い瘴気が漂い始め、一か所に集まり大きな漆黒の魔獣へと姿を変える。この場に残ったのはこの魔獣……というより黒い瘴気。どうも妙な気配がして仕方が無かったのだが、どうやら当たりを引いたらしい。
「グルルルルル……」
「こいつは……幻獣とは比べ物にならないな」
冷や汗が額を流れる。ここまで空気が張り詰めピリピリと痺れるのは久しぶりだ。最初から全力で行かないといけないな。
「さぁ行くぞ。ここから先はーーー」
「ヴィクトリア?どうしたのじゃこんな所で?」
「っ!来るなロゼ!」
最悪なタイミングで姿を現すローゼリア。漆黒の魔獣はローゼリアにターゲットを変え超スピードで間合いを詰め襲い掛かる。
「え……?」
「くそ!」
右腕でロゼを弾き飛ばす。それと同時に背中に激痛が走る。鋭い爪だろうが。鋭利な物で切り裂かれたような感覚だ。しかも一か所だけではなく三か所程だ。
「うっぐ……」
「ヴィクトリア!!」
直ぐに駆け寄って倒れる手前で支えてくれるローゼリア。彼女の視線は背中に向けられ、顔が青ざめているのを見るとかなり重症の用だ。
「ロゼ……少し離れてろ。俺は……大丈夫」
「大丈夫な訳ないじゃろう!足元も見て見んか!」
視線を下に向けると足元は血の海。あぁ……思ったよりヤバい一撃だったか。だけどこの程度では俺は死なない。死ぬわけにはいかないからな。
「いいから離れていろ……行くぞガランシャール。全開だ」
「ま、待て、あの魔獣は妾が」
静止するローゼリアを軽く押しガランシャールに光を集約させ、振り返りながら薙ぎ払い、漆黒の魔獣を吹き飛ばす。消滅したのを確認してから両膝を着く。
「っぅ……はぁ……はぁ……」
「無茶をしよって馬鹿者!」
優しく抱き寄せてくるローゼリア。彼女の言う通り相当無茶だったようだ。素直に頼めばよかったkも知れない。だけど彼女に任せるとルーチェ達に気付かれる可能性がある。いや、どちらにしても気付かれたか。
「悪い。いつも苦労を掛ける」
「気にするなヴィクトリア。ゆっくり休め」
「あぁ。すまねぇ……」
彼女に抱きしめられながら意識が暗闇へと落ちて行った。
ーーーーーーーーーー
ー全くアンタは……。
(ん……?)
聞き覚えの無い声が聞こえる。ゆっくりと瞼を開けると、視界に映ったのは小さな村……だろうか。見覚えの無い場所だが、妙な親近感を感じる。周囲を見渡すと、近くに大きな湖があるのを見つける。
(ここは……そうか……)
ここが何処なのか気付く。あの湖を見間違えるはずが無いからだ。だとすると、俺はまた誰かの記憶を夢として見ているのか。
(なら……)
きっと彼がいるはず。そう思って再び見渡すと、湖の近くに植えてある樹の根元で黒猫と話している青年を見つける。先代ローゼリアの姿は無かった。
「何で樹を植えたの?しかも勝手に」
「必要だからだ。次の俺を見つけるために。頼むぞチビ猫」
「嫌よ。言っておくけどアンタが死ぬなんて信じてないから」
やや怒りながらそっぽを向く黒猫。どうやら青年をかなり嫌っている様子。というかあの樹、実家の庭に植えてるのと似ているような……。確か子供の頃からあったけど、もしかして。
(俺の見てる夢って……。それにロゼは先代の使い魔で、先代の死後に使命を継いだって聞いたけど)
「それと、次のアンタも今と似たような物でしょ?アンタの後を継いでも面倒見ないから」
「酷いなおい。次の俺は焔の眷属じゃなくてごく普通の一般家庭から生まれるから至って普通だ」
「どうかしら?」
何と言うか……前回といい今回といい、思い当たる点がいくつかある。青年の生まれ変わりも。でもエル・プラドーは何も言わないしロゼも知らないふりをしている。問いつめてもいいのだが……。
「さて、俺は行く。色々と残していかないといけないからな。何とか聖痕に近いものも作れたし、剣と一緒に精霊窟に置いておかないと」
「本当にぶっ飛んでるわね。まぁ…寿命を消費してるみたいだけど。大丈夫なの?」
「そこまでしないとアイツは倒せない。他の至宝の二の舞だけは避けないと。というわけだからまたな黒猫。もう会う事無いだろうけど」
黒猫に手を振って立ち去る青年。黒猫は何か言いたそうな表情で彼を見送り、青年の姿が消えると、周囲が暗くなっていった。
ーーーーーーーーーー
「うぅ……重い……」
何か重しが圧し掛かっている事に気付き目が覚める。どうやら俺は生きているようだ……って、夢を見ている時点で生きているのだが。今回で2回目の夢だが、気になる事が多すぎるが、その前に俺に圧し掛かっている犯人を動かして起きよう。
布団を捲るとローゼリアが思いっきり抱きついて寝ていた。俺は起こさないように腕を動かして布団を掛けなおす。ゆっくりと立ち上がって軽く体を動かす。
「痛みはないか。流石は魔女の長にして聖獣。苦労を掛けてばかりだな」
反省しつつローゼリアの右頬を優しく撫でる。少しこそばゆそうにしていたが起きる気配はない。朝もまだ早いし起こすのは後にしよう。
コートを着て外に出る。俺達が居たのはバリアハートの宿。状況を確認するべく街を歩いていると、各所でノルドの民と鉄騎隊を見かけ、ここはドライケルスの占領地になっているのを確認した。
「お父さん。おはようございます」
「ふわぁ……おはよう親父」
「あぁ……おはよう……って(昨日は2人一緒だったのか)」
ローゼリアが知ったら軽くキレそうだ。というか、手出してないだろうな?ルーチェはまだ14歳、出すならせめて後2……いや、6年は待って貰わないと。
「盛んなのは良いが程々にな」
「っ!何言ってんだオッサン!昨日の戦闘で軽く怪我をしたから治療して貰ただけだ!」
「そうですよ。私がこの馬鹿に抱かれるとでも?」
「誰が馬鹿だおい!」
(いつも通りだな)
平常運転でなによりと安堵していると、背後からレイヤが抱きついてくる。そしてルーチェとシリウスを見て少し微笑んだ。彼女から見たら妹と弟がじゃれているような物なのだろう。
「お爺ちゃんも近いかもねヴィクト」
「26で爺とか嫌だわ。ロゼではあるまいし」
孫見る前に孫を見せないといけないのだが。と言ってもローゼリアは子を成せないので、孫は弟に賭けるしかない。弟が戦死でもしない限り。
「で?大丈夫?」
「何の事だ?」
「あの2人は良いとしてボクには隠さないで」
そっと背中に触れるレイヤ。相変らず鋭い女。昨日どうやってローゼリアが誤魔化したのかは知らない。恐らくは幻術でも使ったのだろう。リアンヌでも気づかないような幻術を。
「昨日ロゼの様子がおかしい気がしたからね。君は隣に居たけど妙だと思って。直ぐに宿に入って行ったし」
「バレバレじゃねぇか……」
もう少し上手に誤魔化して欲しい所だ。妙な所で正直なローゼリアには無理だろうけど。しかい……正直に話したい所だが、昨日の黒い魔獣はどう考えても以上だ。レイヤ達を巻き込むわけにはいかない。
「大丈夫だ。何かあれば相談する」
「ん。直ぐに言ってね。それじゃあリアンヌ達の所に行こう。これからの事を考えないといけないし」
「了解した。行くぞ2人共」
ルーチェに声をかけ、リアンヌ達の所に向かうのであった。