英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
ドライケルス陣営に加わり早くも一か月。怒涛の勢いで俺達は各地を解放し、多くの協力者を得て行った。その分各陣営との激しい戦闘を繰り広げる事になるも、レイヤの完璧な戦術で撃退に成功……したのだが、時々ドライケルスが言う事を聞かないことが度々あり俺とレイヤの胃が破れそうになった。
そんなある日の事。オルトロス陣営からアルスターを解放し、数日滞在することになった。それだけならいいのだが、今はちょっとした問題が発生していた。
「ドライケルス様。お茶をどうぞ」
ドライケルスにお茶を渡す1人の女性。彼女の名前はイヴリン。この地を治める伯爵家の娘なのだが、ドライケルスが助けてからずっと一緒に居る。俺としては別にいいのだが、その度にリアンヌが殺気立っている。見て見ぬふりをしたいのだが、イヴリンが付いてくると言っている以上はずっとこのままだ。これも全部女タラシのドライケルスが悪い。
「しかし……かなりの令嬢だなリアンヌ」
「……そうですね」
「敵増えるだろうけど頑張れよ」
「……そうですね」
「その……喧嘩売るなよ。リアンヌにはリアンヌの良い所あるんだから」
「……そうですね」
これはダメだな。暫く放置するしかないだろう。ドライケルスが誰を選ぶのか気になるが、前皇帝のように複数の女に手を出すような事をしないと信じたい。まぁリアンヌを選ばなかったら説教だが。
「所で。ロゼにいつ指輪を渡したのですか?」
「ん?どうしたんだいきなり?」
「いえ。お互いに忙しいのであまり話せていないでしょう?いつの間にか指輪を嵌めていたので一言欲しかった。祝いの言葉と贈り物を贈ったのに」
少し拗ねるリアンヌ。言われてみれば最近はあまり話せていない。というか部隊ごとに行動しているので、俺はローゼリア達と常に一緒に居るからリアンヌやシオンとは作戦会議の場でしか話さないし、他にも鍛錬の場でしか会わない。
そう考えたら、最近はリアンヌと腹を割って話していない。俺にとっては可愛い妹の様な物だし、目の前で近い内に修羅場を繰り広げられる前に、リアンヌのストレスを晴らしておかないと。
「なぁリアンヌ。まだ夕方だけど一杯どうだ?ロゼやレイも呼んで」
「そうですね。たまには羽目を外すのもいいかもしれません。先に酒場に向かっていてください」
「了解」
先に酒場に向かい席を取る。少し待っていると、リアンヌ達が酒場に入ってくる。ロゼが隣に座りレイヤとリアンヌが向かいに座ったのと同時に人数分のビールが置かれる。
「よしそれじゃあ久しぶりに!」
「「「乾杯!!!」」」
乾杯をし、まずはレイヤが一気に飲み干した。そして直ぐに女将さんにもう一杯頼み、結構なハイペースで飲み始める。それに対抗してか、珍しくリアンヌもそこそこ早いペースで飲み、俺とロゼは少し引いていた。
「おいヴィクトリアよ。止めなくてもよいのか?」
「もう無理だろ。因みにレイは結構大変だぞ」
「それを先に言わんか!」
ロゼは怒るが時既に遅し。瞬く間にレイヤとリアンヌの前には空になった容器が置かれていき、僅か10分程で2人は出来上がってしまった。そして最初に口を開いたのはリアンヌである。
「どうして……どうしてドライケルスは私が居ながらイヴリンと!」
「お、おい。落ち着かんかリアンヌ。とりあえずは水を……」
「貴女は黙ってなさいロゼ」
「なぬ!?」
反撃を喰らうロゼ。ひとまずリアンヌは任せよう。俺は……いつの間にか椅子と一緒に俺の隣に移動した相棒をどうにかしないといけない。俺の腕を掴んだまま何も言わないのが怖いから。
「何で……」
「ん?どうしたレイーーー」
「どうしてヴィクトはボクじゃなくてロゼを選んだんだい!?」
「うぉ!」
少し泣きながら抱きついてくるレイヤ。こちらはある意味でリアンヌより大変そうだ。取り合えずロゼの目が怖いので引き剝がさないといけない。
「えぇい離れんかレイヤ!」
「嫌だよ!ボクの方がお嫁さんに相応しいもん!ロゼとは違って家事も出来るし、隠し事もしないし何より!」
レイヤは俺から離れ、ロゼに対抗するように胸を張りながら言った。
「君とは違って子供産めるから」
「……」
(おいおい。それ言ったらダメだろ……)
今一番ロゼが気にしている事を言ってしまう。あぁ、俺が取る行動はどれが正しいのだろうか。誰かに助けを求めるのが当然だろう。一番頼りになるのはルーチェだが、この場を見ると笑顔で見て見ぬふりをして、翌日ロゼとレイヤに雷を落とすだろう。そうなればシリウスが大変な事になるのだが。
「リアンヌ。済まないが手伝ってくれ。ロゼが出来上がる前に」
「……嫌です」
「は……?」
小さな声で答えたリアンヌ。というかさっきから机にふっして顔を上げないのだが。えっと……こういう時はどうすればいい?暴走する気配しないから放置が正しいな。まずは2人を……。
「小娘!夫婦だからといって必ず子を残さないといけないわけではないじゃろう!」
「でもシオンに何かあったらどうするのさ!血の繋がらないシリウスに後を継がせる?」
「そ、それは……いや!問題ない!シオンを死なせなかったらいいだけだ!」
(関係ない弟巻き込むなよ……)
あながち言っている事は間違っていない。まぁこのまま行くと家を継ぐのは弟だし、俺は元より家を継ぐつもりはないし、子供もルーチェ達が居るし……。多分レイヤも酒に酔った勢いで言っているんだよきっと。ロゼが怒涛の勢いでお酒を飲んでいる姿なんて俺の視界には映っていない。
「兄上……?この状況は……」
「おぅシオン。飲むか?」
「えぇ。ですが……」
シオンの視線はロゼとレイヤに向き直ぐに外す。顔が引き攣っている所を見ると関わりたくないのだろう。その選択肢は正しいぞ弟よ。
「ほらバーボン」
「ありがとう兄上。では乾杯」
カツンと器を当てて半分ほど飲む。因みに俺は程々しか飲めない。弟やリアンヌは結構な酒豪だ。上手に飲めばの話だが、今日はよろしくない飲み方だ。一応薬は用意してあるからヤバい時は飲ませよう。
「で。姉上とレイヤ嬢は放って置いても宜しいのですか?」
「大丈夫……多分。いつもならもう少しで寝る」
「あの。あれでですか?」
再び視線を2人に視線を戻す。ロゼとレイヤの熾烈な争い?はどんどんヒートアップし、酒を飲む速度が上がっている。さて……明日も早い事だしそろそろ終わらせよう。
「2人共。そろそろお開きにするぞ」
「まだまだだよヴィクト!ボクはーーー」
「えぇい。おヌシは黙ってーーー」
―沈黙の光。
2人の額に指を当てて意識奪う。2人は深い眠りに落ち、それとほぼ同時にリアンヌが顔をあげる。
「ようやく納まりましたか」
「すまんな。俺が悪い」
「いえ。そうなる事が分かって選んだ道でしょう?家族ですから喧嘩は当然です。まぁ私はレイの味方ですが」
「はいはい。悪いがレイを頼んでも?」
「えぇ。ロゼは頼みましたよ」
「分かってる。んじゃまたなシオン。例の令嬢と仲良く」
「余計なお世話です兄上」
「はいはい」
リアンヌはレイヤを担いで、俺はロゼを担いで宿に戻る。ベットに寝かせて布団を被せてから近くの椅子に座ろうとしたが、ロゼが目を覚ます。どうやら事前に対処されていたようだ。
「妻に酷い事をするものよ」
「悪かったな。落ち着かせるには仕方ないだろう。取り合えず寝てろ。俺はシオンの所に……おっと」
腕を掴んで引っ張ってくるロゼ。そのままベットに引きずり込まれて抱きしめられる。どうやら今晩は離してくれないようだ。
「ふふ……。久し振りに離さんぞ」
「はいはい。程々にね。ん……」
優しく口付けをし、力強くロゼを抱きしめた。