英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
「ぬぅ……寒い、寒いぞヴィクトリア」
「分かってるよそれぐらい……」
一面雪景色の中。俺とロゼは鉱山都市ルーレから200アージュ程離れた場所で待機していた。その理由はルーレ開放作戦に必要な情報を収集するため……だが。今日の天気は吹雪、今は落ち着いているがめっちゃ寒く、ロゼはさっきから俺を暖炉代わりに抱き着いて離れない。
「こんな季節にルーレを落とすとか正気かあの馬鹿皇子は」
「解放だ。気持ちは分かるがな。それともう一つあるだろ目的」
ドライゲルスを灰へと導くための試練の地。精霊窟が近くにある。精霊窟と言えば彼も言ってたか。生まれ変わる自分の周る精霊窟に何かを残すと。それを含めて確認されている精霊窟は全部回る予定だ。
「さて、一旦戻るか。戦力含めて作戦会議しないといかん」
「そうじゃの。そして早急に済ませる」
ドライケルス達のいる荒野に転移。皆寒いはいつ出陣してもいいように準備をしており、その中心にいるのは我らが軍師のレイヤで、各種確認を行っていた。邪魔をするのも悪いので俺達はドライケルスの元に向かったのだが……。
「さ、寒い。なぜこれほど寒いのだ……」
焚火の前で暖を取っているドライケルスの姿があった。リアンヌは……あぁ、シリウスと何かを話している。近くにいるのはシオンと最近仲の良いメルト嬢だ。イヴリンは……む。ルーチェと一緒。成程、このドライケルスを見て放置することにしたのか。
「むぅ……このままでは士気にかかわる。ここはヴィクトリアに……」
「……俺に何を押し付ける?」
「っぅ!?」
彼にとっての悪魔の声を聞かせる。ドライケルスは驚きながら勢いよく立ち上がる。まるで今の事がなかったように。まぁいいだろう。お仕置きはリアンヌに任せている。
「寒いなドライケルス。このままだと皆の士気にかかわりそうだ」
「その件で相談したくてな。いい案はないか?」
「いい案……温泉か」
「温泉……ユミルか。そう言えば楽しそうに話してたの」
ジト目でこちらを見てくるロゼ。温泉なら里にもあるだろうに。効力もさほど変わらない……いや、風景等を考えるとユミルの方が一歩上回るかもしれない。
「温泉か……よしリアンヌに話をしてくる」
「え?お、おい待て……あぁ」
決めたらすぐ行動は別に構わないが相手を考えてくれドライケルス。これから出陣もあり得る状況でリアンヌに『温泉に行こう』なんて言ってみろ。間違いなく雷落ちるぞ。
「ヴィクトリア。リアンヌが構わないと言っていた。直ぐに移動だ」
「……そうか」
これは後でリアンヌに話を聞きに行く必要があるか。恐らく米神に青筋立ててるだろ。ともかく、決まったなら移動開始だ。軍団を幾つか分けつつ雪道を進む。流石に遅れる仲間はおらず、道も整っているので1時間程でユミルに到着した。
「ふぅ。流石に以前ほど時間はかからんか」
「じゃが年寄りには答える。もうちとマシな道を作れんのか」
「そう言われてもな。と、そうだロゼ。一緒に温泉入るか?」
「勿論よいぞ。時間を合わせて落ち合おう」
「了解。また後で」
一旦ロゼと別れ、ドライケルスやリアンヌと共にシュバルツァー村長に挨拶に向かった。
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「んー……いいお湯……」
夜空を見ながら温泉を堪能している。挨拶を済ませた後、2日程英気を養うために滞在することとなった。人が多いので迷惑かと思ったが、ドライケルスが戦が終わった後に必ずお礼をすると言っていたので、何かしら考えがあるのだろう。
「もう来ていたのかヴィクトリア」
「うん。お先に堪能してる」
「全く……」
少し呆れながら温泉に入り、右肩に頭を乗せて体を密着させるロゼ。今は誰もいないから少しぐらいなら甘えてきてもいいだろう。
「しかし中々いい湯じゃのう。妾とルーチェに黙ってたとは」
「何時の話ししてんだよ。結果的に味わえたからいいだろ。ルーチェもさっきシリウスと入ってたみたいだし。ドライケルスやリアンヌはまだ……っと」
「む。この気配は……」
戸が開き湯着を着たドライケルスが入ってくる。ドライケルスは俺達に気付くことなく向かいに座り、肩まで浸かった所で俺達と目が合う。
「……」
「よぅ。意外と遅かったな」
「暫く休めんから今のうちに休んでおけドライケルス」
「……」
おや。返事が無いが何かあったか?俺達を見て固まってるし。あぁ、もしかしてロゼが俺に甘えているからか。俺達の関係もドライケルスには話してないし。
「……はぁ。居るなら気配を消さないでくれ2人共。それに……」
「ん?何じゃドライケルス?」
「いや。何でもない。そういった関係とは知らず驚いただけだ」
「言ってなくて悪かった。邪魔ならそろそろ上がるぞ。お前は休んでおけ。明日は朝早くから鍛錬と会議だろ」
「……そうだな」
何か怖い事でも思い出したのだろう。温泉に浸かっているにもかかわらず冷や汗をかいている。まぁリアンヌの稽古は厳しい。でもこればかりはドライケルスが強くなってもらうには仕方が無い事。シオンが完成させたアルゼイドの剣とドライケルスが扱うヴァンダールの剣を合わせた軍刀術。これからの事を考えると早めに完成して欲しい物だ。
「完成したら俺とだぞ」
「お前とはやりたくない。アルゼイドの原点などと」
「それはならぬぞ。これからの事を考えてもな。加えてシオンの剣はヴィクトリアの光凰剣とリアンヌの教えを元に編み出したアルゼイドの剣。ヴィクトリアとは似ても似つかぬ」
「え?初耳何だが?」
ギョっとした表情を浮かべつつ何処か興味深そうにしている。いずれ手合わせをするときが来る。その時まで期待して待って貰おう。
「上がろうかロゼ。明日も早いし」
「そうじゃの。ドライケルスはゆっくりしておけ」
「了解だ。お休み2人共」
温泉から上がり、部屋へと戻るのであった。
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「よし。これでいいか」
鏡の前に立ち身だしなみを確認。今日は朝早くから近くの氷霊窟に向かう。向かうのは俺とロゼの2人。ドライケルスには別の精霊窟を当てるらしく、今回は前回俺が感じた妙な気配が気になるとの事で、2人で向かう。
「ん……もう起きたのか?」
「……ん。おはよう。まだゆっくりしてていいぞ」
「そうはいかぬ。リアンヌに気付かれぬようにいかねばならんからの」
「そうだな。はい」
右手を出すとロゼはその手を掴んで起き上がって抱きついてくる。後ろに倒れそうになったがロゼが上手く腰に両腕を回して支えてくれるが、その代りかロゼに唇を塞がれる。
「こら。朝から何する」
「妾とは嫌か?」
「そんなこと言ってない。ほら準備」
軽くロゼの頭を撫でてから離れる。椅子に掛けてあった分厚いコートをロゼに渡し、俺も真紅のコートを纏って宿を出る。まだ朝早いのか人はあまりいない。所々に雪かきをしてる町民や手伝っている鉄騎隊がいいるぐらいだ。
「行くぞヴィクトリア。手短に済ませる」
「了解」
気付かれ似ないようにユミルを出て山道を北上し、例の氷の抜け道の前まで来る。置くから強烈な冷気と以前感じなかった神気を感じ取るがどこか懐かしく感じた。
「うーん。妙な気配だな」
「今まで立ち寄った精霊窟とは違うからの。気合い入れてゆくぞ」
抜け道を通り氷霊窟の中に入る。中は外よリも寒く、その名の通り凍っていたが魔物は周回している。時間をかけると体の内側から凍りそうだ。
「さ、寒すぎるじゃろ流石に!」
「文句言ってる余裕ないぞ。ほら進む」
ガランシャールを顕現させて魔物を斬り伏せつつ奥に進む。ロゼは後を付いてくるだけで戦おうとしない。寒いなら体を温めるという面でも少しは戦って欲しい所だ。
「そろそろ最奥についてもいいのだが……っと!」
「ぬぉ!」
ロゼの背後に魔獣がいたのでガランシャールを振る。ロゼが慌ててしゃがんだので彼女にかすり傷一つない。少しロゼは背後に気を付けた方がよさそうだ。
「よし進もう」
「おい待てヴィクトリア!今妾ごと斬ろうとしなかったか!?」
「さぁね?」
笑って誤魔化すがロゼは怒っている。たまにはこういうのもいいだろう。そうでもしなければこの寒さを防げない。魔獣もこの先いないし少しぐらいならいいか。
「ロゼ。素手だと寒いだろ。そら」
「……む。気が利くの」
左手を握るロゼ。そのまま先を進むと最奥に到着。ロゼが呪文を唱えて扉を開けると、中は更に寒く薄暗い。絶対に何か出そうな場所だった。
「ここに来るのは久しいの。しかしこの気配は……」
「……?(何だ?ここに入るのは初めてのはずなのに……)」
妙な感覚だ。この氷霊窟来るのは初めてのはずなのに一度来た事がある気がする。いつだろう?ずっと昔な気がする。何か大事な物を残していった感じだ。
「おや?ロゼ。あそこに何かないか?」
「あれは……まさか!」
手を離し走り出すロゼ。後を追うと結界に覆われた一本の剣が空中に浮いていた。その剣を見た瞬間にドクンと心臓が高鳴る。俺はこの剣を知っている。この究極の光の剣を。
「神剣・デュバインスワン。あ奴の剣がここにあったのか。しかも……」
「……剣だけではないな」
剣の上には刻印の一部が浮遊している。あれからも凄まじい力を感じ惹かれる。剣も刻印も誰かを待っているようだ。
「あの刻印は噂の聖痕か?なんでこんなものがあるんだよ?」
「……あれは、星痕じゃ。ある人物が作り出したもの」
そんなものが存在するとは初耳だ。しかし"ある人物"か。誰の事かは置いておこう。ともあれアレに俺が惹かれているのは事実。試しに手を伸ばして見るか。
「よっと……」
「む!?ま、まて―――!」
ローゼリアが止めるが気にすることなく星刻とやらに手を伸ばすと、星刻に触れるギリギリの所である事に気付く。神剣の前に誰かがいた。その誰かが以前夢やオルディスで見たのと同じ青年だ。
『欠片は三つ。全て集めてほしい。そしてどうか我々の罪を―――』
青年はそれだけを告げて消え去っていく。どこか悲しげな雰囲気を放っていたが、余程辛いことがあったのだろうか。今はそれを知るすべはない…か。
「…ここまであ奴の手の平か。となると残りの二つは……」
「ロゼ?思い当たりがあるのか?」
「まぁの。ひとまずドライケルスについてきながら集めよう。剣も大切にな」
「了解」
手を伸ばして星痕のかけらと剣を手にしてユミルへと戻るのであった。