英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
セントアークを立ち数日。俺達はオスギリアス盆地へと到着した。レイヤの話ではあまりよくない空気が漂っていると言っていたがどうやら本当の様だ。予想以上に霊脈は狂い、妙な気配が肌を刺す。ちょっとでも妙な事をするとヤバい奴が出てきそうだ。
このままにするとミルサンテや周囲広範囲に被害が出そうなので、その原因を調べるために俺達は一旦分かれて調べ始める。ルーチェは霊脈の安定、レイヤは異変の原因。俺はもしもの事を備えて『彼』を呼ぶことにした。
「来い!エル・プラドー!」
手を上げて『彼』の名を呼ぶ。背後に淡い光が現れエル・プラドーが空間転移してくる。エル・プラドーのことはレイヤに話しているので問題はない。他に目撃者がいたらまずいがその時はルーチェに記憶を消してもらおう。
「呼んで済まないな」
『気にするな起動者よ。ここは……オスギリアス盆地か。かなり霊脈が狂っているようだが』
「その原因を探っている。俺達の手で負えない奴が出て来たら力を借りる」
『あぁ。我も周囲を警戒しよう』
それは助かる。俺達では気付かない事に気付いてくれる。この周囲は任せてよさそうだ。俺も周囲を調べ始め異変を調査するが特に何もない。絶対に何かあるはずだが……
「ちょっと荒業でもするか?いや、そうすると後が怖いが……」
「お父さん。こちらでしたか」
「ルーチェか。何か見つけたか?」
「はい。指輪を見つけました。調べたところ何も問題はありません」
銀色の指輪を見せてくる。形は見慣れた物でルーチェの言った通り問題はなさそうだ。だが古代遺物の1つであるのは変わらない。これはローゼリアに渡して教会に報告してもらおうか。
「ローゼリアに渡そう。何かあったら危険だ」
「……大丈夫です。この指輪から禍々しい気配は感じません。ですのでお父さんが嵌めて下さい。私には大きいので」
「そうか。なら受け取ろう。だがローゼリアには伝えるぞ」
「はい。では……」
ルーチェは俺の右手を掴み薬指に指輪を嵌める。指輪は恐ろしいほどきちんと嵌まり少し恐怖を感じるが体に異常は無い。うん……後でミネルヴァ経由でローゼリアに伝えよう。
「次はレイだな。何もないといいが……」
「そうですね。ここに来るまで色々とありましたから」
「急いで探そう。ルーチェは東側だ」
「はい」
東側をルーチェに頼み西側を探す。周囲を警戒しながらレイを探していると一瞬冷たい風が通り抜け、その後に禍々しい殺気が襲ってくる。すぐにその場に向かうと、そこでは真紅に輝く大剣を持ったレイヤの姿。彼女の持っている大剣から感じたことの無い気配を放っており、オスギリアス盆地を纏っている気配と同じだった。
「やれやれ……気をつけろと言っただろうレイ?」
「……」
声を掛けるが反応がない。古代遺物に飲み込まれたのか?彼女程の心の持ち主なら大丈夫だと思うが……そうはいかないか。
「少し痛いが我慢しろよ」
王剣と取り出し殺気を放つ。その殺気に反応したレイヤが振り返る。目に光は灯っておらず、剣と同じ気配を全身に纏っている。これは簡単にはいかないか。それに獲物も騎士剣ではなく大剣だ。
「来いレイ。目を覚ましてやろう」
ガランシャールに光を纏い高速で間合いに入る。横なぎに一撃を振るうがレイヤは後ろに下がり回避。すかさず接近すると、レイヤは大剣を振り下ろし赤い斬撃を放つ。その斬撃を斬り伏せ、速度を上げて接近。レイヤとの距離はほぼない。この間合いなら確実に剣を落とせる。
「絶技・光凰剣」
光の一撃を振り下ろす、。レイヤは避ける事無く正面から受け止めた。剣に操られているとはいえ正面から受け止めるか!
「だが甘い!」
一歩踏み込み上半身を回して大剣を弾く。レイヤの上半身は大きく後ろに流され直ぐには立て直せない。そこを逃すことなく一撃を入れてレイヤの手から大剣を落とす。大剣は3アージュ程先で地面に突き刺さり、倒れていくレイヤの手を掴み抱き寄せる。
「ふぅ……何とかなったか」
「……んっ?ヴィクト?」
「目が覚めたか」
意識が戻ったか。特に外傷もなさそうだし良かった。あの剣が纏い放っていた気配もない。だが……オスギリアス盆地の霊脈は狂ったまま。原因は他にあるのか?その前にあの剣を回収だな。
「……ねぇヴィクト。そろそろ離してくれるかい?ボクはとても嬉しけど……さっきからルーチェ凄い睨んでる」
「ん?そうだな。問題はなさそうだし悪かったな」
「ん……(別に謝らなくてもいいのに……)」
レイヤを離し振り返る。背後にはとても不機嫌そうにしているルーチェがいたがきちんと事情を説明。あまり信じて貰えていないようだが一部始終は見ていたそうで軽くレイヤに説教をする。
「気を付けて下さいと言いましたよね?」
「その……何と言うか凄い剣だったから……」
「だからといって安易に触れないでください。いいですね?」
「うぅ……気を付けます」
こうなったルーチェは止まらない。ローゼリアですら逃れられていないからな。レイヤはすっかり委縮してしまい泣きそうなので少しそのままにしておこう。
「で。この異変の原因だと思われる剣は地面に突き刺さっているが……あまり変わらないな」
「恐らくあの剣を媒介にしていると思われます」
「なら他に原因があるって事?」
「はい。その原因を探さないといけませんね。一度エル・プラドーに聞いてみましょう」
エル・プラドーの元に向かいさっき起きた事を説明。その上で異変の原因を尋ねるとエル・プラドーは少し考えて言った。
『もしかすると我が目覚めたからかも知れん。ルーチェは魔女殿から聞いたと思うが、我々に対抗して作られた存在がある』
「魔煌兵ですね。ですが今は起動していない筈……」
「レイ。オスギリアス盆地に来たのは何時だ?」
「確か一年ぐらい前かな?近くを通りかかった時に凄い悪寒に襲われて」
「俺が起動者になったのもその頃だな。だとすると……」
偶然ではないだろう。魔煌兵がどういった存在かは知らないが、エル・プラドーに惹かれてこの場に現れる可能性は高い。だとすると周囲に被害が出ないうちに異変を解決しないと。
「ルーチェ。霊脈を安定出来るか?」
「やってみます。少し離れてください」
俺とレイヤは少し離れる。ルーチェは杖を上げて魔力を解き放ち術を唱えて霊脈の安定を試みる。少しだけ気配が変わったが大した変化はない。暫くしてルーチェは杖を降ろし息を整える。今のルーチェではこれが限界か。
「お疲れ様。少しだが落ち着いたみたいだ」
「ですが解決したわけではありません。少し休憩したらもう一度……」
「ダメだよ。汗が酷いし息も荒い。ここはヴィクトに任せよう」
「あぁ。ここは俺にーーーん!?」
背後から強い霊圧を感じる。ルーチェとレイヤ、エル・プラドーも感じ取ったようだ。俺は息を整えてから振り返る。背後にいたのは4アージュを超える鋼鉄を纏った人型のゴーレム。感じたことの無い霊圧を放ち威圧してくる。
「な、なにこれ!?大きすぎないかな!?」
「っぅ!これは……」
「……これが魔煌兵か(これは手に負えない。だがエル・プラドーの力を借りるのは……)」
出来れば避けたい。切り札である彼の力を借りるのは最終手段だ。だが……下手をすれば全滅をあり得る。ならばーーー。
「行くぞエル・プラドー。力を貸して欲しい」
『勿論だ。ゆくぞ起動者よ!』
エル・プラドーの座席に転移し白亜の王剣を顕現させる。左手で掴み構えて魔煌兵と向き合う。何故だろう。エル・プラドーに乗るのは初めてなのに妙に一体感がある。動かし方も手に取るように分かるし……。少し怖いのだが置いておこう。
「初戦闘だから宜しく頼む。足は引っ張らない」
『そなたなら心配いらぬ。思う存分我が力を奮うといい』
「なら遠慮なく行こう!」
高鳴る心臓を落ち着け闘気を解き放つ。闘気に反応しエル・プラドーが輝く。体の内側から力が湧いてくる。これが騎神の力か。成程、確かに尋常ではない。振るい方を間違えれば神にも悪魔にもなる。『銀』の担い手になったリアンヌが封印するわけだ。
(だからこそ気になる。騎神はどういった目的で作られたんだ?≪巨イナル一≫を制御するためと聞いたが……そもそも≪巨イイナル一≫ってなんだ?)
色々と疑問が浮かび上がるが今は考えないでおこう。目の前にいる魔煌兵に集中だ。レイヤとルーチェを守るために。