英雄伝説・光の剣神 作:光の剣神
私の名前はルーチェ。ルーチェ・ミルスティン。今はヴィクトリア様と帝国各地を周り人助けをしながら異変の調査をしています。ヴィクトリア様とローゼリア様……お父さんとお母さんと会ってから早くも一年が経ち、奴隷だった頃とは大違いの生活を送っています。あの頃は何も考えず、ただ雇い主の指示のまま動いていたけど今は自分の意思でやりたい事をやっています。
それがとても楽しくて充実している。時々レイヤさんの無茶に振り回されているけど……。その度に説教するのも疲れるので旅の醍醐味だと思っています。そんなある日の事。オスギリアス盆地の一件から数日経ちレグラムへと向かっていた私達ですが、途中バリアハートに寄ることになりました。唐突だったのでお父さんに訪ねるとただ一言言いました。
「ちょっと買い物。後で合流しよう」
「え?何処に行くのですか?」
「大丈夫。すぐ戻るから」
行き先を告げずに何処かに行ってしまう。後をつけようとすると背後からレイヤさんに止められてしまう。レイヤさんは何処に行ったか察している様子。けど聞いても答えないので戻ってくるのを待ちましょう。
「私たちはどうします?」
「そうだね……適当に回ろうか。行きたい所はある?バリアハートは初めてだよね?」
「はい。レイヤさんは……確か何度か訪れたことがあると伺っています」
「うん。お家の都合とヴィクトとロゼと一緒に。あの時は必要最低限しか滞在していないな。それに追いかけられていたし」
追いかけられていた……話によればレイヤさんは幼少期の頃からの箱入り娘で外に出る事を許されなかったと。そんな時にお父さんの噂を聞き念入りに計画していた脱走計画で屋敷から脱走。そしてお父さんとお母さんを見つけて一緒に行動したらしい。その時の事をお父さんは『頭が痛くなるから話したくない』と言っていたのを覚えている。折角だから聞いてみよう。
「あの。お父さんと初めてお会いした時に何と仰ったのですか?」
「ん?あの時かい?あの時はこういったんだよ」
ーボクを誘拐してくれないか!
「って」
「……」
この人は何を言っているのだろう?会っていきなり誘拐して欲しいって……。普通は言わない。あぁ、この人は普通とちょっと違うから言うのかな。でも……。
「それでよくお父さんは誘拐……連れて行ってくれましたね」
「ヴィクトは優しいから。それに何となく察してくれたみたいだし」
「それって背後からの追っ手に気付いていたのでは?」
「……ふふ」
わざとらしく笑うレイヤさん。これは全部計算した上でお父さんに接触しましたね。その計算をもっと別の場所に使って欲しい。出来ればいい方向で。
「ですがどうしてヴィクトリア様を選んだのですか?他の方でも良かったと思いますけど」
「確かにそうだね。でも……会って見たかった。帝国各地を周り人助けをしている物好きな男に」
「会ってみてどうでしたか?」
「一目惚れ。噂以上にいい男だった。誰にでも手を差し出し悪を斬る。この時代にはあまりいない人間だ。ルーチェもそれは知っているだろう?」
確かに。帝国各地を巡って私の知らない事を沢山知る事が出来た。中には私のような奴隷を見たり、飢餓に苦しんでいる人がいたり。けど、その殆どは見て見ぬふりをされ視界に入っていない。まるで私には関係ないと言っている様に。
でもヴィクトリア様は見捨てなかった。手を差し出して話を聞き、出来る限り協力する。食べ物を分けたり多少のお金を渡したこともあった。奴隷を雇っている人には容赦ない一撃を与えて開放。盗賊団は捉えて詰め所に放り投げている事も。レイヤさんの言う通りヴィクトリア様の様な方はほとんど見なかった。
「だから惹かれた。彼になら全部捧げていいって。でも……ヴィクトの視界にはボクは入っていない。彼の瞳にはロゼが写っている。ボクは……ロゼに及ばないのかな?」
「レイヤさん……」
寂しそうに、悔しそうに俯くレイヤさん。彼女もローゼリア様も素晴らしい女性。決してレイヤさんがローゼリア様に及んでいなかったり劣っていたりしていない。それぞれに素晴らしい所がある。それをヴィクトリア様が見ていない筈がないけど……。
「ちょっと後をつけてみますか?」
「後をつけるって……ヴィクトの?」
「はい。気配を消して光魔法を応用すれば姿も消せます」
「ちょっと万能過ぎない?ボクは構わないけど……」
「では行きましょう」
杖を取り出し術を唱える。光を纏って反射させ姿を消し気配も消す。ヴィクトリア様が向かった方へと向かうと意外と早く見つかった。ヴィクトリア様は小物を売っている小さなお店で商品を見て悩んでいる。
「何か買うのかな?」
「レグラムに向かうのでリアンヌ様への贈り物かもしれません」
「リアンヌか……確か見合い話をしたって聞いたけど……」
「その話は無くなったと聞いています。おや?何か買って移動しますね」
小さな袋を受け取り歩き始めるヴィクトリア様。気付かれないように後をつけると、今度は宝石店へと入って行く。
「あれ?ヴィクトって宝石に興味あったかな?ルーチェなら分かるけど」
「確かに私は魔術で使いますが……はっ!もしかしてお母さんと遂にーーー」
「それは無いと思うよ。ヴィクトもロゼも今は互いを信頼している仲だと思うし」
「……分かってますよ」
ちょっとぐらい期待してもいいじゃないですか!娘としてはお二人の距離をもっと縮めたいと思っているんです!とは言えないので心の中で叫びます。でもどうして宝石店に入ったんだろう?
「お。出て来たよ」
「本当だ。こっちに来ますね……ってもしかして」
「うん逃げよう!絶対気付いてるよ!」
レイヤさんが私の腕を掴み全力でその場から逃げるけど一瞬でヴィクトリア様に追いつかれ先回り。私達の前に立ち塞がります。
「全く……何でついて来たんだ?」
「それは……その……ルーチェ!」
「私に振らないでください」
「……まぁいい。2人共宿屋に向かうぞ。今日はここで一晩過ごす」
「「え?」」
予定ではすぐに発つ予定のはず……何かあったのかな?取りあえず付いて行こう。私達は宿屋に向かい3人同じ部屋を取り荷物を置く。するとヴィクトリア様がレイヤさんに小物店で受け取っていた小さな袋を渡す。
「……どうしたの?」
「贈り物。来週誕生日だろ?ちょっと早いが渡しておく」
「……マジ?」
「マジだ。君に似合うかは分からんが」
「……ありがと」
少し照れながら受け取り中から細長い箱を取り出すレイヤさん。箱を開けると中には星を形どった耳飾りが入っていた。
「耳飾り……しかも星型……」
「何時も見てるだろ。好きだと思って」
「うん……好きだよ。ありがとう」
今度は嬉しそうに微笑んで耳飾りを付ける。それを見たヴィクトリア様は別の箱を取りだし中に入っていた髪飾りを私に見せてくる。沢山の宝石がついているとても高そうな髪飾り。もしかしてこれは……。
「後ろ向いて。付けるから」
「……私には勿体ないです。これこそお母さんに渡してください」
「いいんだよ。この髪飾りはタダだし。だから後ろ向く。怒るぞ?」
「うっ……分かりました」
素直に振り返り髪飾りを付けて貰う。その後に両肩に何かを乗せられその何かを確認。両肩に乗っているのは魔力が込められている白亜のロープだった。
「この魔力は……」
「ローゼリアから。今日は俺達と君が出会って一年。記念すべき日だからね」
そっか。だから寄ったんだ。もしかすると事前に準備をしていたのかもしれない。だとするととてもズルい親だ。私は血の繋がらない娘。それに元奴隷であまりいい人間とは言えない。なのにどうしてここまでしてくれるのだろう?この答えは出ている。それはヴィクトリア様とローゼリア様はとても優しくて慈悲深い方だから。だから私も会ってすぐに心を開けたのかもしれない。
「ありがとうございます。ずっと大事にします」
「おぅ。大事にして欲しい。それじゃあ休むか」
「そうだね。明日は早いし。また明日ロビーで」
「はい。お休みなさいレイヤさん」
隣の部屋に移動するレイヤさん。私達も明日の準備を済ませてから就寝する。そしてお父さんに抱きつき甘えて寝たのは秘密です。