絵描きの盗賊   作:Fronta

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銀行に潜入します。禁忌の力ってワクワクしません?


静寂を破る筆先

夜の王都ルミナリアは、昼とはまるで別の顔を見せる。 灯りはある。人もいる。だがそれは、あくまで“許された範囲”の中の話だ。 その外側――影の領域に足を踏み入れた瞬間、この街は牙を剥く。

カインは、その境界線の上に立っていた。 黒い外套のフードを深く被り、人気のない裏路地から王都中央区を見上げる。 目の前にそびえるのは、重厚な石造りの建造物。 ヴィヴァルディ銀行。王都でも有数の資産を扱う巨大金融機関。 貴族、商人、そして時には王族すら利用する場所だ。

そして今夜―

「ここから巻物を頂く」

カインは小さく呟いた。

「緊張してる?」

背後から声がする。 振り向かずとも分かる。

「……してるように見えます?」

「いいや。むしろ逆」

足音もなく隣に立ったのは、レイナ・クローヴィスだった。 黒衣に身を包み、腰には短剣。視線はすでに建物の構造を読み取っている。

「楽しんでる顔だ」

「否定はしません」

カインはわずかに口元を緩める。

「今回の依頼、条件がいい。成功報酬も高いし……何より」

「強力な魔法ね」

「ええ。見たことのない術式かもしれない」

それが、彼にとって最大の動機だった。 金でも名声でもない。 未知を“描く”こと。 それがカインという少年の本質だった。--

「時間だ」

時計を見るレイナの一言で、空気が引き締まる。

「正面は論外。東側の裏搬入口から入る」

「警備は?」

「人間は少ないが――魔法防壁が多い」

「そっちは任せてください」

カインは懐から小さなスケッチ帳を取り出した。 そして、迷いなく筆を走らせる。 さらさらと描かれていくのは――複雑な紋様。 円と線が描かれ空間に歪みが走る

描き終えた瞬間、紙が淡く光る。

「即席展開か。相変わらず無茶をする」

「便利ですよ。理屈がいらないので」

カインはその紙を指で弾いたその瞬間、二人の姿はそこから消えていた。

-- ヴィヴァルディ銀行・内部

重厚な扉の先、一般人が決して踏み入れない領域。 金庫区画。 通常であれば、何重もの認証と魔法障壁に守られている場所だ。 だが今、そこに二つの影があった。

「……入れたな」

レイナが低く言う。 侵入経路は完璧だった。 視覚を欺く幻影、音を消す結界、魔力検知をずらす細工。 すべてが噛み合っている。

「まだ入口です。問題はここから」

カインの視線の先には、巨大な扉。 そして、その周囲に張り巡らされた見えない糸。

「……触れれば警報どころじゃ済まないな」

「ええ。たぶん触れれば僕らの体が三枚おろしにされるでしょうね」

軽く言いながら、カインはしゃがみ込む。 床に指を当て、ゆっくりと目を閉じる。

――感じる。 魔力が微細に流れている。 糸そのものは見えない。だが、カインには“形”として認識できる。

「……なるほど」

目を開けた彼は、すぐに帳面を開いた。 今度は、糸がどのように張り巡らされているかを描いてみせる

「それは?」

「ここの糸、隙間があります」

「隙間?」

「完全じゃないんです。そういう制約のある罠なんでしょう。」

「ここですね 」

カインが糸の隙間を指さす

「この大きさじゃレイナさんは入れませんね」

「イテっ蹴らないでください!」

「……」

「ここからは俺一人で行きます。レイナさんはここで誰も来ないよう見張りを」

そういいながらも蹴られた尻をさすっている。よほど痛かったのだろうか

「了解だ。」

カインは躊躇なく隙間へ滑り込んだ。ギリギリ肩が触れそうになり肝を冷やす

金庫室の中は、静まり返っていた。 整然と並ぶ箱。封印された宝。 だが、そのどれにも目もくれず、カインは一直線に進む。彼は迷わない。“呼ばれている”ようにすら感じていた。

部屋の最奥。 ひときわ厳重に封じられた小箱。

「これだ」

カインが手を伸ばす。 箱に触れた瞬間― ぞくり、と背筋が震えた。

「……危ない匂いがプンプンするな」

彼はゆっくりと蓋を開いた。 中にあったのは、一巻の古びた巻物。 だが、その表面には― 理解できないはずの“何か”があった。

「……っ」

カインの目が見開かれる。

「これ……」

彼は震える手でスケッチ帳を開いた。 そして、無意識に描き始める。 巻物の紋様を。

まずいとは思ったが探求心には逆らえず描いてしまった瞬間。 空気が、裂けた。 低く唸るような音と共に、魔力が暴走する。

「チッ、罠か……違う……これ、反応してる……!」

巻物が光を放つ。 まるで“カインを認識した”かのように。

その瞬間。――警報が鳴り響いた。

「時間切れだ、来い!」

「はい!」

部屋の外から聞こえるレイナの声を来たカインは巻物を掴み、出口に向かって走りだしレイナと合流する。

「遅かったな。行くぞ」

崩れ始める防壁。迫る警備。 だが、カインの頭の中は別のことで埋め尽くされていた。

(なんだ……今の……) あの紋様。 あの構造。 まるで― (“魔法そのもの”を見たみたいだ……)

-- 夜の王都に、再び静寂が戻る頃。 ヴィヴァルディ銀行の奥から、ひとつの報告が上がる。――秘蔵の魔法巻物、消失。 そして。 誰も知らない地下街、ノクス・アンブラ。 酒場リベルテの奥で。 灰狼の牙の運命を変える“何か”が、確かに持ち帰られたのだった。




レイナ
外見は二十代だが四十代団員はこう語る
「俺がガキの頃からいるぜ」と
その団員は現在は行方不明
灰狼の牙幹部
冷静沈着な女性でカインの教育係だった。
今回のバディ
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