「……ん?降ってきたか?」
ハルちゃんと抱き合っていると鼻に水がぶつかった。周りを見ればベンチも濡れ始めている。
「ハルちゃん。一旦離してくれ。雨が降ってきたし基地に帰る」
袋に入っているとはいえ、ゲームが濡れるのは嫌だからな。
「あ、うん」
ハルちゃんが離れたので俺は絶牙を抜いて、ボーダーの屋上との距離を斬る。
同時に基地の屋上に着地して、出入口のドアとの距離を斬ってドアの前に立つ。
「実際に瞬間移動したけど、本当に凄いね。開けるからちょっと待って」
ハルちゃんはパネルに手を当てる。するとドアが開いたので中に入る。
「今日はわざわざ付き合ってくれてありがとな」
「私も楽しかったから気にしなくて良いよ。ナオ君はこれからどうするの?」
「この雨じゃ外出は出来ないし、ドラクエをやるつもりだ?あ、その前にボーダーのトリガーの勉強って出来るか?複数のトリガーを使って状況に応じて戦う事は知っているが、詳しい性能とかは知らないからな」
「もちろん出来るけど、私で良かったら教えるよ?」
「じゃあ頼むわ」
ハルちゃんならわかりやすく教えてくれるだろう。小学校に通っていたころよく勉強を教えて貰っていたからな。
俺とハルちゃんは部屋に戻って俺が椅子に座るとハルちゃんがモニターを操作すると、3種類の剣が表示される。
「じゃあまずは刃トリガーから紹介するね」
そう前置きしてハルちゃんは説明を始める。それによればブレードトリガーは……
脆いが、軽くて身体のどこからでも出し入れ可能で変形出来るスコーピオン
変形出来ないし、それなりに重いが、斬れ味と強度が高いレベルの弧月
重いし斬れ味が若干劣るが、変形出来るしシールドモード存在するレイガスト
この3種類だが……
「俺はレイガストとスコーピオンで行くか」
「レイガストとスコーピオン?初めて見る組み合わせだね?何で?」
「さっきタチカワとやりあった際はコゲツを使ったけど、絶牙に比べたら若干軽かったからな。レイガストの形を絶牙に合わせて、スコーピオンをサポートとして使う」
まあレイガストの重さが予想よりも重かったならば考え直すけどな。
「なるほどね。じゃあ次に弾丸トリガーの話に移るよ」
次にハルちゃんが紹介したのは弾トリガーだ。
特殊な効果はないが威力の高いアステロイド
着弾した瞬間に爆発するメテオラ
弾道を自在に決めれるバイパー
追尾性能を持ったハウンド
この4種類についてだが、俺としては……
「俺、トリオン操作能力はあまり高くないからなぁ……無し、使う場合はハウンドだな」
奴隷になった直後にトリガーのテストをさせられたが、遠距離攻撃の適性が低かったから、最前線で戦うように命じられたし。
少なくともバイパーは絶対に無理だ。弾道を設定しようとしている最中に隙を晒してしまうのがオチ。仮に設定出来ても焦って制御を失って、変な方向に飛ばしてしまうだろう。
「ハウンドはハウンドで難しいよ。追尾するタイミングの設定とか追尾性能の強弱の設定とかもあるからね」
マジか。シーザーの持つ「枝の神」みたいに自動でどこまでも追尾するとかじゃないのか。まあアレは黒トリガーだけど。
しかしそんなに設定があるならば一回使って、実戦で使えるか試す必要もあるな。
「まあそれは試してみる。これでトリガーは全部か?」
「ううん。他にも狙撃トリガーとオプショントリガーがあるね」
「じゃあオプショントリガーの説明を頼む。狙撃は素質無しだ」
何回か練習したが、100メートルくらい離れてる的にも余り当たらないし、適性はないだろう。
「オッケー。じゃあまずはシールドから話すね」
ハルちゃんはそう前置きして説明を始める。
レイガスト専用でトリオンの噴出を可能にしたスラスター
弧月専用で起動中は刀身を伸ばせる旋空
サイズ調整が可能で虚空に召喚できるシールド
地面や壁から強固な盾をせり出すエスクード
使用中はトリオンを消費して探知に引っかからないようにするバッグワーム
使用中は他のトリガーを使えないが透明になれるカメレオン
弧月専用で刀身の形を変える幻踊
踏むと思い切り飛べるジャンプ台を展開するグラスホッパー
少量のトリオンでワイヤーを射出するスパイダー
弾丸トリガーと併用して使い、敵に重しを撃ち込める鉛弾
他にもまだまだあるが、名前と効果は理解した。
思ったよりも敵を崩す手段があるし、悪くないな。
そう思いながらも俺は記録を見直して自分にとって理想的なトリガー構成を考えていく。
「ありがとう。トリガー構成希望は決まったし、明日開発室で話してみるわ」
「役に立ったなら良かったよ。これからドラクエ?」
「その予定だが、見るのが退屈なら上がっても良いぞ?」
「ううん。ナオ君の横で見てる」
ハルちゃんが了承したので早速起動する。
「ああ、この音楽、懐かしいな」
「ドラクエをやってなくても知ってる人は多いよね。そういえばナオ君はドラクエ5はどこまでやったの?」
「結婚する直前だな。だから全然進んでなかった」
まあウチの母親は長時間ゲームをするのを認めない人間だったからな。他の家の友だちよりあらゆるゲームで遅れていたのが当たり前だった。
そう思いながらもハルちゃんと話しながらゲームを進め、レヌール城を攻略を済ませて、ビアンカと別れてサンタローズに帰ろうとする。
「今思えばこの主人公とビアンカって、俺とハルちゃんの関係に似てないか?」
やっているうちに思い出したが、この後主人は悪役に拉致されて奴隷となり、10年間働かされた後にビアンカと再会する。
で、俺はディボロの連中に拉致されて奴隷となり、8年ぶりにハルちゃんと再開したからな。
「そ、そうだね。言われてみれば似てるよねっ」
俺がそう口にするとハルちゃんは若干気恥ずかしそうに返してくるが、若干顔が赤い。
「おいハルちゃん。顔が赤いが大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよっ、心配しないでっ」
そう口にするが焦っている。ハルちゃんって強がりだし体調不良を我慢しているのか?
「本当か?熱測るぞ」
俺は自分の額をハルちゃんの額に当ててみる。するとほんのりと温かいが……ん?徐々に熱が上がってきてるぞ。
距離を取ってハルちゃんを見ればさっきより真っ赤になっている。
「……大胆になってるよ。ナオ君の意地悪……」
ハルちゃんはそう言いながらもよろめいてベッドの上に尻もちをついてしまっている。
(俺は今、なにかしらの地雷を踏んでしまったのだろうか?)
俺は不思議な動きをするハルちゃんに疑問を抱いてしまうのであった。