帰還者、玄界の生活を満喫するってよ   作:ユンケ

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第14話 帰還者、ボーダーの在り方を知る

 

 

 

「ふぅ……とりあえずここまでにするか」

 

俺はモニターから目を逸らしてそう告げる。買ってきたドラクエ5についてだが、パパスがゲマに殺されて、主人公が拉致されたタイミングで一旦やめることにした。もう少しやりたいがこのあとは夕食を食べてユウちゃんとマリオパーティーをやらないといけないからな。

 

「じゃあ夜ご飯を食べに行こっか」

 

ハルちゃんにそう言われて俺達は部屋を出て食堂に向かうが、ハルちゃんが美人になり過ぎてて目立ってしまう。

 

そして目的地に到着する直前だった。見知った顔が出てくる。

 

「あっ、那須ちゃん。お疲れ様」

 

出てきたのはこっちに帰ってきて最初に関わったナスだった。

 

「お疲れ様遥ちゃん。遥ちゃんは……井口君のサポート?」

 

「そんなところ」

 

「ハルちゃんには世話になってるな。それはそうと昨日は悪かったな。向こうにいた頃の癖だが、可能な限り改善していく」

 

向こうでは戦争ばかりだから殺しに対する抵抗は少なかったが、こっちでは殺しに対して罪が重過ぎる存在だ。ナスもかなりの恐怖を抱いただろう。

 

「ううん。上層部から拘束命令が出たとはいえ、こっちから仕掛けたのが悪いわよ」

 

「まあそれについては先走り過ぎたな。先ずはやってきた人間から目的を聞いた方が良い」

 

これが奴隷時代の親友だったシーザーやアンカーだったら、ボーダーどころか三門市が滅んでからな。アイツら、黒トリガーを先輩から引き継いでからは敵意を向けた人間を国諸共滅ぼしている。何せ俺の絶牙以外の5つの黒トリガーは殲滅に特化してるし。

 

「言いたいことはわかるけど、ボーダー隊員からしたら近界民ってかなり悪い印象だから、一部の人には難しいのよね」

 

まあ4年前には大量の被害が出てるからなぁ。けど実際、近界には良い奴も沢山いるし、そのあたりの連中と上手くやれるようにするべきだ。でないと発展速度が早くならないだろうしない。

 

「そうか……まあこっちはこっちで考えてみる」

 

俺はナスに一礼して、食堂に入り、カレーを頼み席に着く。

 

「なあハルちゃん。さっきナスが言っていた一部の人……向こうの人に対する恨みを持つ人はどれくらいいるんだ?」

 

「え?あ、うん。ボーダーには3つの派閥があるの」

 

「派閥?」

 

「うん。近界民の排斥を強く望む城戸司令派閥、街の安全を最優先とする忍田本部長派閥、近界民にも良い人がいるから友好的な玉狛支部派閥の3つだね」

 

「それ、組織として大丈夫なのか?」

 

少なくともキド派閥とタマコマ派閥は真逆の方針だぞ。

 

「大丈夫だよ。普段の考えは違っても最優先事項は街の平和だから、協力する所は協力するからな」

 

「なら良いけど。ちなみに俺、キドの親類扱いだけど、タマコマ派閥に入るのは問題ないか?」

 

「え?!それは……わからないけど、ナオ君は玉狛希望なの?」

 

「そりゃ向こうの世界で仲良くなった友人や国もあるからな。まあ敵対する国は全て叩き潰してきたけど、タマコマ派閥もこっちの世界に害を与える連中には容赦しないんだろ?」

 

そこまで甘くはないだろう。

 

「まあそうだろうね。でもナオ君、強過ぎるからパワーバランスの問題で認めて貰えないと思うな」

 

パワーバランスね……面倒臭いな。

 

「いっそ忍田本部長派閥は?私もそこに所属してるし、ボーダーとして一番大切なのは街を守ることだから」

 

理念だけ見ればそうかもしれないが……

 

「俺別にハルちゃんが平和なら街の平和なんかどうでも良いし」

 

「っ……!それは反則だよ……!」

 

するとハルちゃんは真っ赤になって震え出すが、美しいハルちゃんがそんな行動を取ると、こっちもドキドキしてしまう。

 

「まあ話はわかった。俺の存在がデカいから無所属にしてくわ」

 

そうすれば角は立たないだろう。

 

「そ、そうだね。ナオ君が決めたならそれが良いよ」

 

ハルちゃんは真っ赤になりながらもそう口にするので、そうするとしよう。

 

俺はカレーを食べるのを再開するが、ハルちゃんは食べるのが遅かったので頬をプニして遊んだら怒られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻……

 

「城戸司令。先日井口直次に攻撃した件について話があります」

 

会議室にて鬼怒田開発室長が口を開く。

 

「その件については私の責任だが、彼からは許しを貰った。何か問題があったのかね?」

 

「彼そのものには問題はありませんな。ただ人型近界民と判断して攻撃した事に問題があり、今後人型近界民が現れた場合、いきなり攻撃を仕掛けず、対話をするべきですな」

 

鬼怒田の言葉に城戸の横に立つ三輪秀次は眉を顰める。憎むべき近界民と対話など考えるだけで虫唾が走るからだ。

 

「何故そう考えたのかね?」

 

「彼から渡されたトリガーの中に記録用トリガーがあって、中身を確認したのですが、余りにも過激な存在を見たからです」

 

鬼怒田が黒い箱を取り出してパソコンを介してトリオンを流すと、モニターのような物が大量に出る。

 

その中の1つのモニターをピックアップすると、金髪の男が映っている。

 

『んじゃナオツグ、チィルニの兵士は俺が全員ぶっ殺すぜ』

 

『チィルニのトリガー使いは約300、黒トリガー使いは3人だし、5分で済ませろよ、シーザー』

 

『はいよ……「枝の神」』

 

金髪の男がそう呟くと、足元の地面から大量の枝が生えて、物凄いスピードで伸び始める。

 

視点が変わる中、枝はどんどん伸びて、映る街を次々に破壊して、2人の元に近づこうとする兵士はすぐさま串刺しになることでトリオン体を解除されて、枝に埋め尽くされる。

 

黒トリガーと思われる攻撃が奥側から飛んできて、枝を吹き飛ばすが直ぐ様再生して、押し切られている。

 

それから数分、モニターには街の崩壊、トリオン体の崩壊による爆発、赤い飛沫が映る。

 

そして遂に巨大な都市は無限に近い枝によって全てが崩壊してしまった。

 

この光景に会議室にいる皆が絶句している間にも映像は続く。

 

『ほいっと。一丁上がり、黒トリガーは壊れたかどっかに流されたかもな』

 

『相変わらず雑な仕事だな』

 

『ナオツグこそ黒トリガーを壊しまくってるだろ。大体チィルニの兵士は俺に攻撃したんだぜ?雑に皆殺しにされても仕方ないって』

 

『そう言うと思ったわ。何にせよ仕事は終わったし、報告しないとな』

 

『おう。終わったら飯な。あ、そうそう。お前が前に言ってたカレーとかいうものを香辛料を使って作ってみたから味見してくれ』

 

『ああ。全然違ったら、いつか俺の世界に来て勉強しろ。美味いものが沢山あるからな』

 

『楽しみにしてるぜ』

 

このあとは雑談なので記録を止める。

 

「今見たように危険な人間がこっちの世界に来る可能性が高い。よって人型近界民が相手とはいえ、いきなり攻撃を仕掛けるのは反対するっ!」

 

鬼怒田の言葉に反論するものはいない。

 

「うんっ、俺も絶対反対だね。というか力づくでも鬼怒田さんの意見を通すから。記録に映る彼を見たから新しい未来が見えたけど、最悪の未来だと基地が壊されて直次と綾辻ちゃん以外が全員殺されるね」

 

迅が普段のおちゃらけた雰囲気を消して強い口調でそう告げる。それだけで本気だと嫌でも認識させられる。

 

「……良いだろう。後日直次と打ち合わせをして、近界の人間の来訪に対する応対を考える。三輪隊員も従ってもらう」

 

「悪いけど、呑まないならどんな手を使っても従わせるからね」

 

「っ!」

 

城戸と迅の有無を言わさぬ眼差しに三輪は気圧されてしまうが、迅は容赦しなかった。記録に映ったシーザーがこっちに来た場合、彼に攻撃を仕掛けるのは三輪隊か香取隊が仕掛けていたのだから。

 

こうして会議は重苦しいまま続いていく。

 

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