「じゃあ私は帰るね。また明日ナオ君」
夕食を済ませて部屋でハルちゃんとダラダラ話していると夜も遅くなり、ハルちゃんと別れる。
「ああ、また明日ハルちゃん」
ハルちゃんに手を振って、ハルちゃんがエレベーターに乗るまで見送る。
「さて、ドラクエやるか」
俺は部屋に戻ってドラクエを起動する。寝るまでに結婚するところまでは行きたいな。
と、ここで部屋に備え付けられている電話が鳴る。もう電話の取り方はわかるので受話器を取る。
「誰だ?」
『私だ。今時間は大丈夫かね?』
電話してきたのはキドだった。
「問題ない。何か事情聴取か?」
『事情聴取ではあるが、君自身の事ではない。近界からやってくる人に対する対応について聞きたい。君の件では初手を誤ったからな』
「まあそこは否定しない。もしかして俺が渡した記録装置で何か見たか?」
あの中には過激な記録も入っているからな。
『ああ。君とシーザーという男のやり取りを見せて貰ったが、もしもこの世界に君ではなく、シーザーを来ていたら大惨事になっていただろう』
「だろうな。シーザーとアンカーは黒トリガーに呑まれて、自分に害する人間は誰だろうと何人だろうと殺しても問題ないと思うようになったからな」
しかもソイツが所属する集団や国にも容赦なく攻撃するからな。
『黒トリガーに呑まれる?黒トリガーが所有者に干渉するのか?』
「俺達ディボロの奴隷が得た黒トリガーは10年以上奴隷として虐げられた人達だからか、起動すると強い憎しみが雪崩れ込んでくるんだよ」
俺の絶牙はリーダーが優しさを兼ね備えていたからか、まだ耐えられるレベルだ。
しかしシーザーの「枝の神」とアンカーの「嵐獄竜」は一回起動したが、流れてくる憎しみが桁違いだった。俺が「枝の神」か「嵐獄竜」を所有したら10回使ったあたりで呑まれていただろう。
『君が持ち帰った2つの黒トリガーはどうなんだ?』
「特に問題なかったな。元の持ち主が大人しかったんだろうな。話を戻すが、こっちにやってくる人間に対して初っ端から攻撃はやめた方が良い。この世界に来たのは俺じゃなくてシーザーだったらボーダーどころか三門市が壊滅していたぞ」
冗談ではなくて本当に。俺も幾つかの星を滅ぼしたが、絶牙が殲滅力が高くないからマザートリガーを破壊するやり方を取っている。
殲滅力が高い黒トリガーを持つシーザーやアンカーは星に住む人間を皆殺しにして星を滅ぼしているからな。
『それはこれまでの会議で同じ意見が出た。問題として侵略以外の目的で来た人間に対する対応について聞いておきたい』
「とりあえず使者として扱うのは前提だな。実際俺が傭兵として売り込みをしたら、一定以上の待遇だったしな。もちろん悪意のある人間が売り込みにくる時もあるだろうが、俺とジンなら見抜けるだろう。遠征に行く際は俺かジンの片方をこっちに残しとけば良い」
俺の直感がジンの未来視はかなり使えると言っているから信用出来るだろう。
『了解した。ただ近界の知識が多い君が多く行く可能性が高いが、大丈夫かね?』
「構わない。ただ頼みがあるんだが、ハルちゃんがいるチームは遠征に行かせないでくれ」
近界には色々な国があるが、危険な国もある。今まで俺は何十人も黒トリガーを狩ってきたが、これからも負けないという絶対はない。
そしてハルちゃんが遠征に行った際に絶対に守れる保証はない。それならばハルちゃんを行かせないようにしたい。ハルちゃんは今の俺にとって唯一な存在だ。ハルちゃんが死んだら俺は完全に壊れるだろう。
『それについては問題ない。元々綾辻隊員が所属する嵐山隊は仕事柄、遠征に参加することは無い』
なんだ、それなら良かった良かった。ハルちゃんが行かないなら俺が行くくらい何の問題ない。
「なら良い。とりあえず近界の文化とかは後日纏めるぞ」
『頼む。それと明日、君の検査やトリガーについて開発室に呼ばれているが、その後に君が持ち帰った黒トリガーの適性検査をしたいが構わないかね?』
「全然問題ない。大分落ち着いたし、いつでも言ってくれ」
久しぶりに帰ってきたが、この世界は気が休まる。傭兵として雇われている時は、偶に俺の絶牙を奪おうと考えている輩とかもいたくらいだ。まあそういう奴等は全員殺したけど。
『よろしく頼む。明日も綾辻隊員を迎えに行かせる』
その言葉を最後に通話が切れたので受話器を置いて、ドラクエを再開する。
しかしシーザーの戦闘記録を見たのか。アイツもそうだが、俺の知り合いはこっちの世界に来る気を持っているし、気をつけた方が良いな。
そんな事を考えつつも、ゲームを進めていくが……
「んんっ?コイツこんな強かったか?」
ラインハットのボスのニセたいこうに追い詰められてしまう。何とか回復は出来ているが、かえんのいきが全員に50くらいのダメージを与えてくるのだ。
拉致される前の記憶は殆どないが、ファミコンの時は手こずってなかった気がする。
ピンポーン
と、ここで音が鳴る。これは確か来客だったな。
俺はコントローラーを置いて、ドアを開けると、そこにいたのはユウちゃんとカホちゃんだった。
「ユウちゃんにカホちゃん?どうした?何か用事か?」
「いやー、マリオパーティーをやろうと声をかけたんだけど、ドラクエ5やってるね?」
部屋に流れる音で分かったようだ。
「よくわかったな。今ニセたいこうに追い詰められてる」
「あ〜、アレはリメイク版だと体力も攻撃力も強くなったよね」
「リメイク?どういう意味だ?」
「作り直しって意味だよ。新しい客に買ってもらえるように古いゲームを時代に合わせて作り直すの」
「なるほどな。ユウちゃんは詳しいみたいだし助言をくれ」
「良いよ〜、部屋に入るね」
「お邪魔します」
2人が部屋に入ってからモニターを見る。
「ん?イエッタ仲間にしてるんだ。じゃあ簡単だけど」
「え?MP少ないからヒャダルコは全然打てないし、攻撃は余り通らないぜ」
ニセたいこうは防御力がかなりあるぞ?
「おたけびを使えば楽勝だよ。他にもなめまわしとか魔物のえさも使えるよ」
そうなのか?ボスだから無効だと思っていたわ。
試しに使ってみると、本当に行動を止めることが出来て……
「あ、死んだ」
4回連続で動きを止めて倒せた。
「んふふ、そうでしょ〜」
「私の弟は確か、火の息に強いスライムナイトとドラゴンキッズを軸にしてたね」
ユウちゃんとカホちゃんがそう口にするが、凄く呆気ないな……次からはボスにも妨害技を撃ってみるとしよう。
呆然とする中、ラインハットに平和が戻り、ヘンリーが離脱したので教会でセーブする。
「待たせたな。じゃあマリオパーティーをやるか」
「じゃあ行こっか」
ユウちゃんが千度するので俺とカホちゃんはそれに続く。
「カホちゃんは望遠任務とやらまでの時間潰しか?」
「ううん。防衛任務が終わって帰ろうとしたら、国近先輩がナオ君とゲームしないかって誘ってきたの」
「それはありがたい。ゲームは大人数でやるのが楽しいからな」
俺がそう呟くとユウちゃんもカホちゃんも目をパチクリしたかと思えば笑顔になる。
「ふふっ……そうだよね」
「後1人追加するからね〜」
笑いながらそんな風に言ってくる。今俺は変な事を言ってないが、笑う要素があったか?
疑問に思いながらも俺はマリオパーティーを楽しみにしながら廊下を歩き続けるのだった。