「しっかしお前、殺意をぶつけんなよ。大半がビビってたぜ」
会議室を出るとコウヘイにそう言われる。
「あのミワって奴は言葉だけじゃ止まらなそうだったからな。それにいざ戦場に立って人を殺せずに敵を逃したって事もあるからな。アイツが復讐したいなら遠征で経験を積む必要がある」
戦場に立ったのならば、殺す時は殺すようでないとダメだ。確実な殺す覚悟がないならば復讐に参加する資格はない。
「なるほど……けどアイツは遠征試験じゃ真っ先に落とされるからな〜」
「遠征の目的は近界におけるトリガー技術の交換だからね〜、復讐心を制御出来ない内は無理だね」
コウヘイとユウちゃんはそう口にするが、俺も同意見だ。アイツは近界全体に敵意を持っているタイプの人間だ。感情を抑制できない人間は時として国全体に被害を与えるからな。
「ま、経験が積めないならばそれまでだ。オレはわざわざ待つつもりはない」
他人の復讐の為にオレの復讐を止めるつもりはない。土俵に立てないならば諦めてもらうしかない。
「それより今はゲームの続きだ」
宝くじの話の為に会議室に行ったが、元々ゲームをやっていたからな。
「あ〜、悪い。俺はそろそろ帰らないといけないんだわ」
「私も、ごめんね」
どうやらコウヘイとカホちゃん帰らないといけないようだ。
「なら仕方ないね。みかみかを送ってあげなよ〜」
まあ夜遅いし、カホちゃんは前に当たり屋に絡まれたからな。俺はハルちゃんの同伴抜きだと外出禁止だからコウヘイに任せるしかない。
「もちろんっす」
コウヘイとカホちゃんは去っていく。
「じゃあ私とスマブラをやるかね?それてもドラクエをやるのかね?」
「や、ドラクエは1人用だろ」
「他人がどんなプレイをするのも見るからね。あ、ちなみに結婚したらラインハットに行ってみなよ。バニーガールとぱふぱふプレイが出来るよ」
「ぱふぱふ?何だそれ?」
「女性の胸に男性が顔を埋めることだよ」
「それ、主人公問題じゃないか?」
結婚してないならともかく、結婚して嫁を連れている時にやるのは問題だろう。
「だから面白いんだよ」
「そういうものか?しかしぱふぱふと言うのか……ユウちゃん、ぱふぱふしてくれないか?」
ユウちゃんの大きな胸なら気持ちよさそうだ。
「お〜、堂々と要求してきたね〜。じゃあお姉さんにゲームで1回でも勝ったらやってあげるよ」
それは中々厳しい条件だ。俺はまだユウちゃんに勝ったことがないからな。まあ8年の空白期間があるから当然だけど。
「了解。じゃあ最初はスマブラストック三機な」
「オッケー」
さて、楽しんで勝つとしようか。
俺とユウちゃんはタチカワ隊の作戦室に向かった。
4時間後……
『ボンビラス星では金はいらぬのだ!オレ様が捨ててやろう!』
「あ〜!私の物件がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
キングボンビーによる暴虐がユウちゃんは叫ぶ。
現在俺達は桃太郎電鉄をやっている。最初はユウちゃんが物件を買いまくっていたが、今年に入って前のターンにスリによって全額盗られたユウちゃんに防ぎようがなく、大量の物件が売却される。借金は無くなったが、30件以上の物件が消える。
俺になすりつけようとしたが、1足りなかったのがラッキーだった。
「じゃあユウちゃん、悪いけど、コイツを使わせて貰うぞ」
俺はうんちカードを使う。それによりユウちゃんは俺の後を追えなくなる。しかもここは海の上で回り道する事が出来ない。
「ナオ君の鬼ぃぃぃ!」
ユウちゃんが涙目になって怒るが、手加減はしない。
俺が出た目は1だが、もうユウちゃんは俺を追ってこれない。
「こうなったらぶっ飛びカードで目的地に行ければ……!」
ユウちゃんはぶっ飛びカードを使う。今現在俺達がいるのは山形が近い日本海で、目的地は札幌だ。どうなる……あ、真逆の方角……京都に到着する。
「そっちは違うから!」
ユウちゃんが叫ぶ中、キングボンビーの追撃が来る。
『キ〜ングボンビー!ボンビラス星では金はいらぬのだ!オレ様が捨ててやろう!』
それにより大量の金を奪われる。一度ハマったら抜け出せないな……
「あぁぁぁぁ!もう殆どないよぉぉ!」
ユウちゃんの声が涙混じりになる中、俺はサイコロを振ると青マスで多少の金が入る。
次にユウちゃんがサイコロを振ると、カードマスに止まり……ピッタリカードを引き当てる。
「来たぁぁっ!これでナオ君にくっつけば逆転の目があるね」
ユウちゃんはそう口にするが、それは困るので……
「悪いがそれはいかない。刀狩りカード」
カードを奪うカードを使う。成功してくれ……
「あ、ぴったりカードをゲット」
「もぉぉぉぉっ!」
叫ぶユウちゃんは次のターンにサイコロを振ってからキングボンビーに金を捨てられて……
『ユウ社長!残念ながら売れる物件はありませんぞ!』
遂にユウちゃんの所有する物件は全て失ってしまった。年の初めには200億円近く負けていたが、これで逆転だろう。
それから20分して、ゲーム終了となるがユウちゃんは巻き返す事が出来ずに敗北となった。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
するとユウちゃんは泣きながら首を絞めてくるが、トリオン体だから問題ない。というかゲームで負けただけで泣かないで欲しい。こっちが悪い事をしているようだ。
俺は暫く首を絞められるが、ユウちゃんはある程度すると落ち着いて離してくれる。
「次は負けないから!」
「了解。次も負けないから」
「リベンジはするから……っと、その前に」
するとユウちゃんは俺の後頭部に手を回して、胸に抱き寄せてくる。
「約束通り、ぱふぱふしてあげるから」
「あ、ゲームに夢中になってたから忘れてた」
スマブラ、マリオパーティー、マリオゴルフ、マリオカート、桃太郎電鉄とあらゆるゲームをやっていたから忘れていたわ。
「忘れるなんてナオ君はドジっ子だね〜、よしよし」
ユウちゃんはそう言って俺の頭を撫で撫でしてくるが、この撫で方は……
「……母さん」
「ん〜、私の撫で方がお母さんに似てたのかね?」
「ああ。拉致されて地獄を見ていても、心には残っていたのかもな」
かつてこの世界にいた頃、母さんに撫でられた事を思い出す。俺はよく泣いていたが、母さんに頭を撫でられて元気を出していた。懐かしい話だが、このタイミングで思い出す事になるとはな。
「そっか〜、なら思う存分甘えたまえ。もうナオ君を縛るものはないんだから」
ユウちゃんは俺の後頭部に手を出しながら頭を撫でて、胸を俺の顔に押し付けてくるが、ユウちゃんの圧倒的な包容力に俺は抗う事が出来ず、そのまま眠気に押し切られて、視界を真っ暗にするのだった。