「んんっ……」
目を開けると視界が真っ暗だった。
「お〜、ようやく起きたかね」
と、ユウちゃんの声が聞こえてきたので顔を動かすと柔らかな感触が顔に伝わってくる。
同時に後頭部にあった重みが消えたので、顔を後ろに動かすとユウちゃんの胸が目に入る。
(そうだ。ユウちゃんのぱふぱふを受けたら気持ち良くなって寝たんだった)
「済まないユウちゃん。寝てしまった」
「全然良いよ〜、私も眠かったしね。それに寝ながら甘えてくるナオ君は可愛かったしね」
「え?俺どんな姿を見せたの?」
「何度もお母さんって呼んで抱きついてきたね〜」
そ、それはかなり恥ずかしいな……確かにユウちゃんの撫で方は母さんの撫で方に似ていたけど。
「あまり気にしなくて良いよ〜、ナオ君の境遇なら仕方ないし、好きなだけ甘えたまえ」
ユウちゃんはそう言って胸を顔に押し付けてから頭を撫で撫でしてくるが、それだけで穏やかな気持ちになってくる。
暫くの間、ユウちゃんの母性に包まれていると俺の腹が鳴る。
「朝ごはん、食べに行こっか?」
ユウちゃんが俺から離れ、笑いながらそう言っているが、日常生活においてはユウちゃんには勝てないだろう。
まあ悪くない気分だから良いけど。
数時間後……
「さて、そろそろナオ君の様子を見にいかないと」
綾辻遥はボーダーの廊下を歩きながら直次の部屋に向かう。今日の直次の予定は開発室に行ってから身体の検査やノーマルトリガーの支給、訓練室にて直次が持ち帰った黒トリガーのテストだ。まだ時間は早いが、直次に会いたいと部屋に向かっている。
部屋に着くとIDカードを使ってドアを開ける。すると……
「よしよし、ナオ君は頑張ったね。いい子いい子……」
「ユウちゃん……」
直次が国近の豊満な胸に顔を埋めながら、頭を撫で撫でされていた。
それを認識した遥は額に青筋を浮かべ部屋に入り……
「ナオ君?何をしてるのかな?」
「ナオ君?何をしてるのかな?」
ドラクエ5の結婚イベントのボスキャラのようがんげんじん3体に1回負けてから、2回目の挑戦で勝つと、ユウちゃんが頑張ったと甘やかしてくれて、ユウちゃんの母性を堪能しているとハルちゃんの低い声が聞こえてきた。
顔を上げると笑顔のハルちゃんがいた。ただし口元や額はピクピクしている。怒っているのが丸分かりで、メチャクチャ怖い。
「えっと、ハルちゃん?怒ってるよな?」
「怒ってないよ。で?何をしてるのかな?」
いや、絶対に怒ってるよな。とはいえ誤魔化したらヤバいことはわかるので正直に言おう。
「ぱふぱふだな。昨日ユウちゃんにやって貰ったんだけど、頭の撫で方が母さんの撫で方に似ててな」
「まあナオ君は苦労してたし、甘やかしてあげようと思ってね〜」
言いながらユウちゃんは俺の頭頂部を撫で撫でしてくる。やっぱり落ち着くなぁ……
するとハルちゃんは口元を引き攣らせたかと思えば、こっちにやって来て……
「でしたら私もやります……!」
背後から俺に抱きついてくる。同時に後頭部には柔らかな感触が伝わってくる。こ、これは破壊力が……
「お〜、現実でダブルぱふぱふなんて初めて見るよ〜、大胆だね〜」
「た、ただナオ君をより甘やかすべきと思っただけです……よしよし」
ハルちゃんも俺の頭を撫でてくる。二つの母性が俺の気を抜いてくる。
それから俺は開発室に行くまで2人からダブルぱふぱふを堪能するのだった。
「失礼する」
「おっ、来たね」
ハルちゃんとユウちゃんに案内された開発室に入ると小太りの男性がいた。
「君が例の帰還者だね。俺は寺島雷蔵。開発室のチーフエンジニアの1人だ」
「キド直次だ。今回は身体検査とノーマルトリガーの支給だよな?」
「ああ。早速だけど、あの部屋の椅子に座ってくれるかい?」
「了解した。服は脱ぐか?」
国によっては身体検査をする為に服を脱いだりするが、傷だらけの身体をハルちゃん達に見せるのは目に毒だろう。
「いや、脱がなくて大丈夫だよ。基本はトリオン能力の観察だからね」
「了解」
俺は小部屋の椅子に座って楽にする。
『検査が終わるまで5分くらいあるからノーマルトリガーの支給の準備をするね。太刀川と模擬戦したって聞いたけど、ボーダーのトリガーは一通り知ってるの?』
「ハルちゃんに聞いたから問題ない」
『なら良かった。じゃあ決めるけど、メインは弧月?』
「いや、レイガストで頼む。タチカワと戦った際はコゲツを使ったが、絶牙に比べたら軽かったからな」
別にコゲツでも悪くないが、使いこなせるとしたらレイガストの方だと思う。
『おっ、レイガストか。開発者としては使用者が増えるのは嬉しいね』
どうやらレイガストを開発したのはテラシマのようだ。見た感じ20代なのに開発に携わるなんて凄いな。戦うことしか能がない俺なんか全然だからな。
『そうなるとシールド2枚とスラスターは必須だね』
「ああ。後サブにスコーピオンとグラスホッパーとスパイダーを頼む」
『OK。後メインに1つ入るよ』
「とりあえず今はこれで良い。今決めた構成も変えるかもしれないからな」
とりあえずは今は……
メイントリガー
レイガスト
スラスター
シールド
サブトリガー
スコーピオン
シールド
グラスホッパー
スパイダー
こんな感じだが、色々試してみるつもりだ。まあ最優先事項は鈍った剣の腕を治すことだけど。
『……良し、セットしたから、検査が終わるまでもう少し待ってね』
テラシマにそう言われたのでのんびり待つこと数分、部屋にピーって音が鳴る。
『良し、検査は終了。部屋を出て良いよ』
言われて部屋に出るとテラシマがノーマルトリガーを渡してくる。
「はい、これ。もしも紛失したら開発室に連絡を入れてね」
「わかった。じゃあ今から訓練室に行けば良いのか?」
「うん。だからこれを持っていてね」
テラシマは俺が持ち帰ってきた黒トリガーの『縛の輪』と『鳥の巣』を渡してくる。
「アンタは適合試験には参加しないのか?見た感じかなりの手練れだろ?」
俺の直感が言っている。テラシマがかなりの実力者であると。
「俺はエンジニアに転向したからね。現役の戦闘員が持つべきだよ」
「そうか。まあアンタがそう決めたなら了解した。トリガー感謝する」
「構成について悩んだらいつでも相談に乗るからね」
俺達はテラシマに会釈をして開発室を出る。
「それにしてもナオ君、雷蔵さんが強いってわかったね」
「長年の経験とサイドエフェクトで、強いか弱いの判断は出来る。じゃあ訓練室の案内を頼む」
「「うん」」
ハルちゃんとユウちゃんが先導して暫く歩くと広い場所に出る。中央には3つの独立した空間があるが、アレが訓練室だろう。
「あ、もう集まっているね」
ユウちゃんが指差した先には40人くらいの人間がいるが……
「思ったより粒が揃っているな。ボーダーが出来てから4年の短さを考えると、人材育成は充分みたいだな」
言いながら集団の元に歩くと、向こうもこちらに気づく。
「おっ、来たか直次。柚宇さんと綾辻ちゃんもお疲れ」
最初にコウヘイが手を挙げて話しかけてくる。
「お疲れ〜。とりあえずナオ君は自己紹介しよっか?」
「自己紹介?別に構わないが、名前と向こうでの戦歴でも話せば良いか?」
「いや、名前と年齢、好きなもの、黒トリガーの特徴くらいで良いんじゃない?」
「なるほど、了解した」
俺は部屋にいる全員を見据えてから息を吐き……
「キド直次だ。年齢は16、好きなものはドラクエ、ラーメン、ハルちゃんとユウちゃんによるダブルぱふぱふだ。黒トリガーは「堂々と言うな馬鹿ぁぁぁぁぁっ!」っ」
なんかいきなりハルちゃんに顔面を殴られてしまった。トリオン体だから良いけど、いきなりはやめてほしい。