「……「縛の輪」の適合者は13人、「鳥の巣」の適合者は21人……思ったよりも多いな。どうすんだ」
適正試験が終わり、多数の適合者が出たのでシノダに確認を取る、
「「縛の輪」については並列処理が多い隊員に訓練させ、大規模侵攻や遠征の時の状況に合わせて使わせたい。「鳥の巣」については本部預かりにして、基地で待機している隊員にローテーションで使わせて、大規模侵攻時には、待機している他の隊員が翼を生やしてもらう体制だな」
「ま、妥当だな。実際「鳥の巣」の前任者も、俺が他の黒トリガー使いを殺すまでは前線に出てこなかったしな」
3人殺したタイミングで敵戦力の偵察のつもりで出てきたのが運の尽きで、出てきた瞬間、奴との距離を斬って殺したからな。
「しっかし本当に強過ぎだろ。斬れないものとかあるのか?」
コウヘイが聞いてくる。
「そりゃあるぞ。俺が認識出来ないものは斬れないし、海みたいに広大な存在は視界に映る範囲しか斬れないし」
「つまり不意打ちでしか……いや、超直感のサイドエフェクトを持つお前に不意打ちは効かないんだったな」
「ああ。奴隷時代に先輩達が遺してくれた黒トリガー6本の5本は大量虐殺に特化しているが、俺の絶牙はかなりピーキーで俺以外じゃ完璧に使えないから俺が持つことになった。多分ボーダーじゃ未来視を持つジン以外は完璧には使えないぞ」
実際3年前に盟友の1人であるボルグに絶牙を貸し、俺がボルグの所有する所有者のトリオン体の性能を極限まで高める「武の鎧」を借りて模擬戦したら、あっさり俺が勝ったからな。俺は直感で反応できるが、サイドエフェクトを持たないボルグは反応出来なかった。
「かもな。逆に直次が俺の風刃を持てばとんでもない事になるな。起動出来るみたいだし、ちょっと試してみろよ」
ジンはそう言ってトリガーを差し出してくるので試しに起動すると、トリガーから刃が展開されて、光の帯が13本浮かび上がる。
「風刃の効果は物体に斬撃を伝播させ、目の届く範囲ならばどこにでも攻撃ができる事だ。けどお前の超直感のサイドエフェクトなら目の届かない範囲でも狙うべきポイントはわかるだろ?」
ジンがそう言ってタブレットを操作すると家の向こうから複数の気配を感じるが……
「大丈夫だ。全部わかる」
言いながら風刃を振るい、斬撃を地面や壁や屋根を伝って……
ガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!
家の向こうにある的を破壊する。
「うん、13個全て破壊出来てるな。場合によっては風刃を使ってくれよ」
「どんな場合だよ」
「他所の国が攻めてきたら、基地の屋上から直感に従って要所要所に風刃を飛ばすみたいな感じだな。敵が寄ってきたら絶牙で蹴散らせば良い」
「えげつないな、おい」
タチカワがわらいながらそう言ってくるが、確かに便利だな。絶牙は一騎打ちなら無敵に近いが、敵の位置がわからないと距離を斬って接近が出来ない。
逆に風刃は敵が見えない場所にいても直感に従えば蹴散らせるが、単体の戦闘力は絶牙には大きく劣る。
それなら遠距離戦では風刃を使って、近距離戦では絶牙を使うのは合理的だ。
しかし俺としちゃ、近界の強い国と同盟を結ぶのが1番だと思う。仮想戦闘訓練は良いシステムだし、アレをカードにすれば強い国と同盟を組める可能性はある。
個人的には盟友のアンカーとアイリーンが帰還した事により急激に成長しているシンシルとアルテリアと同盟を結びたいのが本音だ。
まあこっちの世界について少し調べたが、近界に対する評判は最悪だから厳しいだろうな。
「ま、備えはしておく。とりあえず今日やる事は終わったが、一旦解散か?」
俺はキドを見ながらそう尋ねるとキドは頷く。
「予定がある隊員もいるだろうし解散とする。ただ今から2時間は訓練室を貸し切っているので、両黒トリガーを試したい隊員は好きに使ってくれ」
「あ、訓練室は1つ余るし、貸してくれないか?」
早く鈍った腕を直したいからな。
「良いだろう。好きに使え」
「感謝する……と、いうわけだ。ジン、ちょっと付き合え」
俺は風刃をジンに返しながら模擬戦の要求する。
「良いぜ。じゃあ俺もノーマルトリガーで相手をするな」
ジンが笑いながら了承する。
「じゃあ次はあたしと勝負しなさい!」
「俺とも付き合えや」
「俺も俺も!」
「私も戦いですっ」
次々に勝負の要請が入る。これは長引きそうだな。
「人数が多いし、三本先取な」
言いながら俺とジンは訓練室に入る。俺がレイガストを起動して、絶牙と同じ形状に変える。対するジンは右手にスコーピオンを起動する。
『模擬戦、開始!』
アナウンスが流れると同時に俺が前に出て上段斬りを仕掛ける。対するジンは前に出てギリギリで回避しながらスコーピオンを振ってくる。
それに対して俺は首をずらして回避するが、いきなり足を狙われると嫌な予感がしたので、足元にシールドを展開する。
同時にジンの膝からスコーピオンが出てくるが、ガードに成功する。
反撃とばかりにレイガストを水平斬りしながらも周囲にスパイダーのキューブを6つ展開して、ジンと地面に向かって飛ばす。ワイヤーで動きを鈍らせれたらラッキーだ。
それに対してジンは足のスコーピオンを消して、レイガストの一撃をスコーピオンで受け流しつつ、シールドを左右にスライドしてスパイダーをガードする。
スパイダーから生まれたワイヤーはシールドと地面に繋がるが、ジンがシールドを消すと地面にポトリと落ちてしまう。
俺は追撃を仕掛けようとするが、一歩踏み出した瞬間、これ以上進んではいけないと警鐘が鳴るので後ろに跳ぶ。すると同じタイミングで地面から盾が生えてくる。
(野郎……さっきのスコーピオンもそうだが、未来視のサイドエフェクトを使って絶妙なタイミングで仕掛けてきてやがる)
こいつを崩すのは難しいぞ。見た感じ身のこなしも俺と大差ないし、面倒臭い相手だ。
内心舌打ちしながらも俺はジンの振るうスコーピオンを迎撃し始めた。
「おいおい。もう5分だぞ」
訓練室には呆然した声が聞こえる。この場にいる全員、迅と直次の試合を見ているが、5分経過しても最初の1本目が終わっていないのだ。
それだけならまだしも、互いに一撃も食らってないのだ。
互いに斬り結んでもトリオン体には当たらず、迅のエスクードによる崩しは直次には全く決まらず、直次のスパイダーとグラスホッパーによる崩しを迅は軽々と回避している。
剣の腕が互角、対人戦で無類のアドバンテージを誇る未来視と超直感のサイドエフェクトが千日手の状況を作っている。
「うーん。まだまだ長引きそうだね〜」
柚宇は試合を見ながらそう呟く。太刀川は直次達より強いので実力で未来視や超直感を出し抜いているが、実力が互角だとここまで長引くとは思わなかった。
「そうですね。出来ればナオ君に勝って欲しいです」
隣に座る遥が頷く。個人的には大切な幼馴染に勝って欲しいのが本音だ。
「うーん……あ!ナオ君にモチベーションを上げて貰うのはどうかね?」
「モチベーション?どうやってですか?」
遥がそう呟くと柚宇はニヤリと笑って遥に耳打ちする。
「っ!そ、そんな事で?!」
瞬間、遥は真っ赤になる。
「大丈夫だって。ほら、さっきのナオ君の怪我を大義名分にすれば恥ずかしくないって」
柚宇は笑いながらそう言ってくる。それに対して遥は顔に熱を溜めながらも直次に内部通信を入れる。
『ナオ君、ちょっと良いかな?』
『どうしたハルちゃん。他の人が待てなくなったのか?』
『そ、そうじゃなくて……ええっと……』
一息……
『勝って……勝ったらご褒美として……い、一緒にお風呂に入ろ?』
瞬間、直次の剣のキレが増した。