『勝って……勝ったらご褒美として……い、一緒にお風呂に入ろ?』
ハルちゃんからそんな通信が入った瞬間、俺の中で昂りが生まれ、それが剣に乗る。
ジンは後ろに下がるが、今までより鋭い踏み込みだったからか、ジンの左肩に掠り僅かだがトリオンが漏れる。伝達系にダメージはないだろうが、試合が始まってから初めて生まれたダメージだ。
俺は更なる追撃を仕掛けようとスパイダーを大量に展開してジンに射出する。対するジンはエスクードを地面から生やしてガードする。
回り込もうとしたら、足元から嫌な予感を感じたので横に跳ぶと、地面からスコーピオンが生えてくる……っ!
ここで更に嫌な予感がしたので着地してから再度跳ぼうとするが、それより早く足元からスコーピオンが出て俺の足に掠る。
(野郎……地中でスコーピオンを分裂させて、未来視で回避出来ないタイミングで仕掛けてきたか)
「やるじゃねぇか」
「いやいや、こっちは伝達系を狙ったんだけど。中々上手くいかないもんだ」
話しながらも距離を詰めて斬り合いを始める。ジンが鋭い連撃を仕掛ければシールドモードと直感でガードしつつ、反撃を仕掛けようとしたら、エスクードによって出鼻を挫かれる。
そのままエスクードを消してスコーピオンを投げてきたのでシールドモードのままガードしつつ、スパイダーを飛ばす。
ジンが回避すると同時にレイガストをブレードモードにしつつ、前に斬り込み、足元から嫌な予感を感じた瞬間だった。
「スラスター」
今度は前に出て嫌な予感を振り切り上段斬りを仕掛ける。それに対してジンは最小限の動きで横にズレるが逃しはしない。
「グラスホッパー」
「エスクード」
俺はグラスホッパーを自身の腕に当てて、強引に剣の軌道を変えるが、同じタイミングでジンはエスクードを展開して……
ガァンッ!
ジンの脇腹を少し斬る事は出来るが、途中でエスクードがレイガストを跳ね上げてしまう。徒手空拳となった俺はすかさず距離を取るが、直ぐにエスクードを消したジンが斬り込んでくる。
直感に従って回避するが、スコーピオンの形状変化によって少しだが攻撃を受けてしまい、トリオンが漏れる。
同時に跳ね上がったレイガストが落ちてくるので拾ってスコーピオンを防ぎ、スラスターでジンを弾き飛ばす。
しかし弾いた直後にジンの背後にエスクードが展開されて勢いが止まる。これはスラスターで飛ばされることを未来視で読み取ったから、飛ばされる直前に自分の背後にエスクードを出したのだろう。つくづく未来視って面倒だな。
内心舌打ちしながらもジンを見る。互いにトリオンを少し失っているが部位欠損はしてないし、伝達系やトリオン供給機関には影響はないので殆ど万全だ。10分近く戦って万全とはな。
太刀川とやり合った際は剣の腕により負け越したが、向こうにとって予想外の攻撃をすれば勝ち星を獲ることは出来たが、ジンはこっちを全て読んでくるから厄介極まりない。
(こうなったら仕方ない。少しずつ、本当に少しずつ削っていくしかないな)
方針を決め、再度突撃を仕掛ける。こちとら2年以上、拷問を受けた身だし、我慢勝負では負ける気がしない。
そう思いながら迎え撃つ構えをするジンに水平斬りを仕掛けた。
10分後……
「なぁ直次。ドローにしないか?鈍った腕を取り戻す役には立っただろうし、俺も疲れた」
ジンのスコーピオンをガードしていると話しかけてくる。
「わかった。ドローにするか」
俺はジンの提案を受け入れる。戦って20分近く経過して、互いのトリオン体は傷は増えているが余裕で戦闘続行可能だ。こっちの攻撃も少しずつ、ほんの少しずつ通ったが、向こうの攻撃も同じように通ってくる。
しかしこのペースだと勝敗が決まるまで1時間くらいかかるだろう。
俺はこれまで絶牙で簡単に勝ってきたが、久しぶりの長時間の集中戦闘は正直言って疲れている。ジンもやる気が削がれているなら、その提案を受け入れよう。
俺がそう口にするとジンは空間にウィンドウを展開して操作をする。
『模擬戦、終了!』
同時にアナウンスが流れるので俺とジンは入口に戻ると、入口には何人もの隊員がいる。
「悪いが少し疲れた。次の相手は誰か知らないが5分休ませろ」
「それは良いですが、もう少し休んで大丈夫ですよ」
金髪女子……カコの所のクロエフタバがそう言ってくる。
「いや、精神的な疲れだし、ぱふぱふで全快出来るだろう……というわけでハルちゃんとユウちゃん、頼む」
俺はハルちゃんとユウちゃんがいる所に向かいながら頼む。
「ほ〜い、来なよ」
「国近先輩!……もう!人前でやるのは今回だけだからね!」
ユウちゃんはいつも通りの表情で、ハルちゃんは怒りながらも了承してくる。そしてハルちゃんは前から俺の顔を胸に抱き寄せて、ユウちゃんは後頭部に胸を押し付けてくる。
「よしよし、ナオ君は頑張ったよ〜、偉い偉い」
「勝ってはないけど、お疲れ様……あと、ナオ君。ぱふぱふは幾らでもやってあげるけど、次からは他の人がいない所でしかやらないからね?」
2人はそう言って俺の頭を撫でながら更に胸を押し付けてくる。それだけで精神的な疲れはどんどん無くなっていく。
俺はその頭を前後に揺らして2人の胸に押し込もうとすると2人はギュッと抱きしめてくる。
「ナオ君、あんまり動いちゃダメだよ?」
「ギュッとしてあげるから落ち着こうね?」
2人はそう言ってくるが、この母性には抗える気がしない。人前でお母さんと呼ばないように注意しないといけないな。
そう思いながら俺は2人のダブルぱふぱふを5分間堪能して、2人の胸から顔を出す。
「もう大丈夫だ。希望を受け入れてくれてありがとな」
「どういたしまして〜」
「部屋に帰ったらまたしてあげるからねっ」
2人にそう言われながら見送られ、俺は訓練室の入口に戻る。
「待たせたな……って、なんだその顔は?」
戻ってみれば大半が戦慄したような表情を浮かべている。
「いや、何というか大物だなって……」
「向こうでも女を口説いて手を出したのか?」
そんな風に言われているが……
「口説いた覚えはない。ただ数年後にジンとタチカワを連れて、エルドラドって国の神姫を抱く申請はするつもりだ」
『っ!』
「え?どういう事?」
ジンが興味深そうに聞いてくる。この場にいないタチカワにも後で話す必要があるな。
「近界には風俗国家エルドラドって国があってな、ある黒トリガーを持つ女を抱きたいんだよ」
言いながら俺は持っている指輪にトリオンを注入すると惑星国家の軌道を展開して、エルドラドの国を触る。
同時に沢山の情報が展開されるがある、枠を触れると……
「うおっ!凄い美人じゃん!」
銀髪の美しい美女が現れる。
「フィーナ……21代目神姫だ。神姫はエルドラドで1番美しく、1番教養があって、黒トリガー「神姫」を起動出来る人間に与えられる称号だ」
「その黒トリガーはどんな効果があるんだ?」
カザマが聞いてくる。
「「神姫」の効果は特殊で、起動した状態で男性と性行為をした場合、男性のトリオン器官の性質が高まり、トリオン体と使うトリガーの性質が上がる」
言いながら俺は更に情報を開示して、二つの枠を大きく展開する。枠には同じ黒髪の男性が映る。
「コイツは俺の奴隷時代の友人のアンカーで、黒トリガー「嵐獄竜」を持っているが、フィーナを抱く権利を得た。右が抱く前で左が抱いた後の記録だ」
記録を再生すると、右のアンカーが手を突き出すと周囲に直径20メートルくらい竜巻を8つ飛ばしているが、左のアンカーは直径50メートルくらいの竜巻を16つ飛ばしている。
「えっ?!変わりすぎだろ?!」
「ああ。こんな感じで神姫を抱くと別次元の強さを得られる」
「へー。そんな珍しいタイプのトリガーもあるんだな。でもそんな凄い能力の恩恵を得られるには厳しい条件があるんだろ?」
フユシマが手を挙げて質問するが、当然ある。
「条件は単純で、トリガーの使い手の強さだ。トリガーが強くて使い手が弱いとかじゃ却下される。2年前に仕事で行った際に、審査官と話した際に5年後が楽しみと言われたからな」
「なるほどね……あれ?二宮さんや風間さんは?行く行かないは別として、ダメなの?」
サトミが聞いてくる。確かに俺の直感的に2人も適性があるかもしれない。
しかし……
「2人は実力はあるが美形で女にモテそうだからな。復讐の為に利用する俺、実力があって女に縁がなさそうなジンとタチカワが適任と思っただけだ」
『ぶっ!』
周りから笑いが生まれ、ジンが焦る。
「ちょっと待て直次!人を勝手に女に縁がないなんて決めつけるなよ!」
「いやだってお前、タチカワに聞いたけど、未来視を使って、触っても問題ない女の尻を厳選してるじゃねぇか。縁がないと思ったんだよ」
「畜生……!言い返せない」
ジンが項垂れるが尻を触りたいなら許可を得てからにしろ。
(しかしエルドラドは今こっちから近いな。次の遠征でタチカワの師匠の忍田にエルドラドに行ってくれないか聞いてみるか)
多分シノダなら合格出来るだろうからな。
俺は隣の訓練室で黒トリガーのテストを見ているシノダに目を向けながらそう考えるのだった。