「さて、ジンが女に縁がないから誘ったのは理解できたし、次の対戦相手は誰だ?」
「言い方!言い方に気をつけような!」
ジンが叫んでいるが知らん。
「私です」
手を挙げたのはクロエだった。
「了解。3本勝負で良いな?」
「問題ありません」
俺達は訓練室に入り、俺はレイガストを展開して、クロエは弧月を展開して構えを見せる。
『模擬戦開始!』
アナウンスが流れると共に俺は前に出る。彼女も前に出て袈裟斬りを放ってくる。
俺はレイガストで受けてから腕を動かして受け流す。続く第二撃も受けながら腕を回し、逸らしつつ足払いを仕掛ける。それにより彼女はこちらに倒れてくる。
バランスを崩した彼女の首を刎ねようとしながらスパイダーを展開する。
クロエは首を刎ねられる直前に体勢を立て直して後ろに跳ぶが、そのタイミングでスパイダーが右手と両足から地面に刺さり、動きが鈍くなる。
「なっ!」
「先ずは一本」
目を見開くクロエを真っ二つにする。
『黒江ダウン』
アナウンスと共に仮想戦闘モードの効果によってクロエのトリオン体は修復される。やっぱりこのシステムは便利だな。
「いつスパイダーを?」
「お前に足払いをかけた直後。そのままレイガストで斬れれば良し、避けられてもスパイダーで動きを鈍らせる二段構えだ。常に自分が有利になる一手を打ち続けるのが戦闘の定石だ」
基本的に物事が全て上手くいくなんてあり得ないからな。別の手段を講じておく必要がある。
「はい。次、お願いします」
そう言われたのでスタート位置に戻る。すると二戦目はクロエはいきなり弧月を水平に振るってくる。同時に刀身が伸びるのでオプショントリガーの旋空を使ったのだろうが……
「無意味だ」
俺は後ろに大きくジャンプして回避する。乱戦ならまだしも、遮蔽物がないここでそんな単発は何の意味もない……ん?
見ればクロエは刀身が元の長さに戻ると同時に俺から距離を取る。距離にして30メートルくらいだが、射撃戦を仕掛けるつもりか?
そう思っていると彼女のトリオン体は光り輝く……いや、トリオンが活性化している。
同時に俺の直感が大きく跳べと告げているので、俺は右に大きく跳ぶ。
「韋駄天!」
しかし次の瞬間、クロエが物凄いスピードでこっちに向かってきて、通り過ぎた瞬間、俺の左腕が斬られ、トリオンが漏れる。
斬り落とされてはいないが、ダメージがそれなりに深くレイガストを両手で握る際に力が入らない。
(あの速さ、一時的とはいえボルグの「武の神」を使った時の機動力に迫っていたぞ。中々面白いトリガー……っ!)
またクロエのトリオン体が活性化したので直感に従って跳び……
「韋駄天!」
俺を囲むように高速移動するクロエの攻撃を流すが、トリオンが漏れてしまう。やはり受けに回ったらヤバいな。
(まあなんとなく読めてきたし、反撃に出るとしようか)
正確な能力はわからないが、あのトリガーはノーマルトリガーとしては規格外な速度だが、攻撃そのものは割と単調だ。
それを考えると使用中は意識が追いつかず、事前に動きの軌道を設定しているのだと思う。
と、ここで彼女のトリオン体が活性化する。これ以上食らったら不味いし、次で終わらせる。
そう思いながら俺は彼女を見据え……
「韋駄天!」
「グラスホッパー」
クロエが韋駄天を発動すると同時に自身の前方に大量のグラスホッパーを展開する。するとクロエはグラスホッパーにぶつかり、活性化が消えて地面に叩きつけられてバウンドする。
「スラスター」
当然そんな隙を見逃すつもりはなく、右手でレイガストを投擲してクロエの身体を貫く。
『黒江ダウン』
アナウンスが流れて互いのトリオン体が修復される。
「そのトリガー、強力だが癖が強過ぎるし、大規模侵攻や遠征ではトリガー使い以外に極力使わない方がいい。使い過ぎると向こうも慣れて今みたいにカウンター取られるぞ」
「はい……肝に銘じておきます」
言いながら弧月を構えるので、俺も構える。
「スラスター 」
そして今度は一気に距離を詰めてレイガストを振るう。クロエは受けるが、俺は構わずに攻め続ける。
上段、水平斬り、斬り上げ、袈裟斬りと次々に剣を振るう。更に反撃されないように攻撃の際はぶつかって体勢を崩していく。
「もっとだ。もっと凌いで反撃の糸口を見つけ出せ。さっきのイダテンみたいに一撃必殺に頼ってばかりだと、強くなれないぞ」
「っ……はいっ!」
実際俺も一撃必殺の絶牙に頼り過ぎて剣の腕が鈍ったからな。同じ組織に所属する人間が俺のようになって欲しくないからな。
そのまま攻撃を止めずにいるとクロエはこの状況を打破する為か左手を犠牲にしながらも強引にレイガストを受け流して俺の間合いに入る。
しかし動きはわかりやすいので、右手首を掴んで動きを止める。
「強引過ぎて動きが読めるぞ」
言いながら足払いをかけて、そのまま薙いでトリオン体を破壊する。
『模擬戦終了、勝者城戸直次』
アナウンスが流れて俺の勝利が告げられる。俺は倒れているクロエに手を差し伸べる。
「ありがとうございます……やっぱり強いですね」
「年季が違う。とはいえボーダーの仮想戦闘は極めて便利だし、これから伸びるぞ」
安全に何回も訓練出来るのは非常に大きい。
「ありがとうございます……あの、また訓練に付き合ってくれませんか?」
「全然良いぞ。俺は基本的に暇だからな」
「暇といえば学校については通う予定なんですか?確か拉致されたのは小学生の時らしいですが」
そういやこっちじゃ中学までは行かたいといけないんだったな。で、俺は今高校に通う年齢だったはずだ。
しかし……
「今のところは通う事は考えてないな。まあ日本語と社会と計算があれば上手くやっていけるだろうし」
仮に通ってもボロを出してしまい面倒なことになる可能性もあるからな。それなら通わない方が良いと思う。
「そんな訳で戦いたくなったら、気軽に話しかけろ」
「宜しくお願いします……って、城戸先輩と呼べば良いですか?」
「そんな堅苦しくしなくても、ナオ君で良いぞ」
「と、歳上にそれは礼儀知らずじゃないですか?」
そんな風に言ってくるが、この世界じゃ年齢が偉さの基準なのか?今まで実力が全ての世界で生きてきたかはよくわからん。
「じゃあナオさんで良いぞ」
「ではナオさん。今後も宜しくお願いします」
「ああ、宜しく」
俺達は互いに礼をしてから訓練室を出る。
「待たせたな。で、次の相手は誰だ?」
「あたしよ!」
次に出てきたのは短髪の女子……確かコナミキリエだったな。俺の直感ではこの場にいる人間ではトップクラスの実力と言っている。
「わかった。じゃあやろうか」
俺とコナミは訓練室に入り、スタート位置に立つ。
「やる前に聞いて良いか?」
「何よ!」
「お前とタチカワってどっちが強いんだ?」
俺の直感だと2人には大差がないように感じるので聞いてみる。
「それはあたしよ!」
「なるほど。それは楽しみだ」
タチカワより強いならば、より俺の剣の腕を伸ばせるだろう。
言いながら俺はレイガストを展開するとコナミは両手に手斧を展開する。剣の二刀流は見るが、斧の二刀流は初めて見るな。
そう思いながらも構えを崩さずに彼女を見据えて……
『模擬戦開始!』
アナウンスと同時に前に突っ込んだ。