帰還者、玄界の生活を満喫するってよ   作:ユンケ

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第6話 帰還者、話をする②

 

 

 

「何でも斬る……あの瞬間移動の正体は距離を斬ったという事だったのか……」

 

「信じられないなら、新しいものを斬ってやるよ。そうだな……よっと」

 

絶牙を持って立ち上がり、振る。同時にこの部屋にいる俺達に加えて、椅子やペットボトル、煙草の箱が浮かび上がる。

 

「わわっ!ナオ君、何をしたの?!」

 

宙に浮かんだハルちゃんが驚きながら聴いてくる。

 

「この部屋に働く重力を斬った。それによりこの部屋は無重力空間となった。俺の基本戦闘戦術は敵の重力を斬って戸惑わせてから、距離を斬って近づいて、防御を斬る一振りで仕留める感じだな」

 

他にも戦術はあるが、基本はこの戦術だ。

 

「能力についてはわかったが、この状態から戻れないのか?」

 

「2、3分待ってくれ。そうすれば元に戻るから」

 

シノダの質問にそう帰す。あらゆる存在を斬れると言っても、現象などに対して永続的に斬ることは出来ない。寒さや暑さを斬っても数分間しか効果はないからな。

 

「他に質問があれば答えるぞ」

 

「んじゃ俺から。玉狛支部の支部長の林藤だ。感情を斬れると言ったが、それはつまり心のない人形に変えるって事か?」

 

「それも出来るが、俺が向こうで使ったのは尋問の時だな。俺を雇った国が捕まえた敵の捕虜に対して、忠誠心や敵対心を斬ってたな」

 

そうすることによって簡単に情報を得れるようにしてたからな。

 

「便利だな……あ、じゃあ体内に取り込まれた毒とかも斬れるのか?」

 

「毒については試した事ないけど多分出来るな。以前ある国の王女から身体付きを良くしたいから、余分な脂肪を取っ払ってくれって頼まれて、肌や髪の汚れなども斬って、最終的に女性としての美しさを数段引き上げられたからな」

 

「え?そんな事も出来るの?強過ぎじゃない?私にも後でやってくれないかな?」

 

ハルちゃんは興奮しながら頼んでくるが、あの時も王女の姉妹も前のめりに頼んできたな。やはり女性からしたら美しく在りたいのだろうか。

 

「別に構わない」

 

と、ここで重力が戻って俺達は落下して席に座る。

 

「それと強過ぎると言ったが、それは超直感の副作用を持つ俺や未来視の副作用を持つジンが使ったらの話で、他の連中が使った場合は普通の黒トリガー使いと大差ないと思うぞ」

 

他の人が使った場合は奇襲とかに対応出来ないだろう。

 

「話を戻すぞ。確か俺がディボロのマザートリガーを斬った所まで話したよな。その後は奴隷仲間をそれぞれの故郷に帰して、全員返してからこっちに帰っている途中に補給の為にシュルツの星に寄って、さっきも話したけどそこで遠征艇がぶっ壊れたんだよ」

 

「で、その後は傭兵稼業を繰り返してこっちに戻ってきた、と。ちなみに日本人は確認出来たか?」

 

「残念だから出来なかったな」

 

まあ近界民もこっちの人間も見た目は大差ないから何とも言えないけど。

 

「何にせよ俺の来歴はだいたいこんな感じだが、俺はボーダーで何をすれば良い?」

 

入隊する以上、貢献して価値を示すつもりだ。

 

「君がこっちに帰ってきた時、私達は近界に遠征に行く為の試験について話していた。遠征に行くメンバーは決めてないが、君が献上してくれた黒トリガーも利用できないから調べる必要がある。君は渡してくれた黒トリガーは使えるのか?」

 

「ああ。両方とも適合したぞ」

 

「では後日、遠征参加候補生に説明を頼みたい」

 

「了解した。ちなみに俺は遠征に行けるのか?」

 

「もちろん実力は確認するが、参加資格はある。8年間近界にいた君の知識は貴重だ」

 

キドが了承する。今直ぐ復讐出来るとは思わないが、情報収集も大事だからな。後この世界じゃ酒が飲めないのが痛いし。

 

「ねぇナオ君。復讐を提案したのは私だけどさ、少しくらいはこっちで心を休めたほうが良いんじゃないかな?」

 

と、ここでハルちゃんが不安そうな表情を浮かべて上目遣いで見てくる。その目はやめて欲しい。

 

「綾辻隊員の言うように休むのも問題ない。遠征は強制ではないし無理強いはしない」

 

「ま、一応考えとく。とりあえず今やるべきことはまだあるか?」

 

「今日はもうないから君が使う部屋を教えておく。それと綾辻隊員」

 

「はい」

 

「当面の間、彼の世話を任せたい。嵐山隊には私から話しておくし、広報活動の時間を減らしても構わない」

 

ハルちゃんが世話係か。まあ知り合いがやるならありがたいが……

 

「広報?ハルちゃん、新聞作ってるの?」

 

「新聞?何で新聞?」

 

「小学校の時に広報委員会でハルちゃんと学校新聞を作ってたような気がしたから」

 

で、ハルちゃんの絵が酷いことを知ったからな。8年前だが、ハルちゃんの絵と歌の酷さは今でも覚えている。

 

「あー、そうだったね。でも今の広報はそういう意味じゃなくて、ボーダーの顔としては世間に宣伝するって意味だね」

 

なるほど。つまり世間から仲間を集めるというわけか。

 

「でも大丈夫なのか?さっきカホちゃんに言いがかりを付けた馬鹿みたいな奴が出てこないか?アイツもハルちゃんを知ってたみたいだし」

 

「ん?さっき三上がトラブルに巻き込まれたのか?」

 

「あ、はい。ちょっと当たり屋に絡まれていて……ナオ君が助けました」

 

「なのに随分と困った表情だな。何か問題があったのか?」

 

シノダが俺を見ながら聞いてくるが、真面目っぽい雰囲気だし、話したらハルちゃんのように怒りそうだ。

 

よって特に問題がないと答えようとするが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶつかった事で腕の骨が折れたから歌歩ちゃんに所持金を全額要求していたら、ナオ君が本当に腕の骨を折って歌歩ちゃんのお金を渡そうとしました」

 

ハルちゃんが話してしまった。

 

それから俺はジンとリンドウの笑い声を聞きながらキドとシノダに物凄く怒られてしまった。恨むぞハルちゃん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後……

 

「ここがナオ君の部屋だよ」

 

ハルちゃんがある一室のドアの前に立ってそう言ってくる。

 

「しかし周りのドアや廊下が同じ造りだからわかりにくいな」

 

「私も入隊したばかりの時は何回か迷ったけど、直ぐに慣れるよ」

 

ハルちゃんのドアを開けて中に入ると、それなりに広い部屋だった。ベッドに机、冷蔵庫やトイレ、バスルームなどがあるし、充分だ。

 

「じゃあまずナオ君に対する当面の規則を話すけど、大きくわけて2つある」

 

「内容は?」

 

「基地の外に出る時は必ず私と一緒に出る事、部屋から出る時は黒トリガーはケースの中に入れる事だね。ご飯を食べたい時はこのリストから選んで、食堂に繋がっている電話を使って食べたい料理の番号を言ってね。電話の使い方は大丈夫?」

 

「大丈夫」

 

そのくらいなら覚えているから問題ない。

 

「じゃあ私からの話は終わりだけど質問はある?」

 

「今のところはない。じゃあ約束通り女性の魅力を引き上げるからトリガーを解除してくれ」

 

「うん、わかった」

 

ハルちゃんが黒い服から白い服に変わったので俺は絶牙を抜いて、そのままハルちゃんに振るう。

 

そしてハルちゃんの身体をすり抜けると……

 

「わわっ!凄い凄い!髪がこんなに触り心地が良くなってるし、肌も綺麗になってる!身体もスッとしてるし、ありがとね」

 

ハルちゃんは自身の変化を感じて喜びながら礼を言ってくるが……

 

「お、おう……」

 

俺は目を逸らしながら返事をする。

 

(や、ヤバい……久しぶりにあったハルちゃんは可愛かったけど、今のハルちゃんはヤバ過ぎる……)

 

可愛さに加えて美しさと色っぽさも凄く、心臓が高鳴るのが嫌でも理解する。

 

近界でも様々な女性に頼まれて魅力を上げてきたが、ハルちゃんのそれは別次元だった。

 

ヤンチャだったハルちゃんがここまで変わるなんて……顔が熱くて仕方ない。

 

俺はただただハルちゃんを直視出来ずに自分の心臓の鼓動を必死に鎮めるように努めることしか出来なかった。

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