「よっと……!これで問題ないか?」
「凄いわ!ここまで綺麗になるなんて!」
「お〜、肌がツヤツヤだね」
「凄いわね。流石黒トリガーね」
「これからはもっと身嗜みに注意しないといけないですね」
「まあここまでは無理と思うけど」
自室にて、カコの身体に付着する不純物を取り払うと彼女は元気良く喜び、ユウちゃん達は興味深そうにカコを囲む。
「んじゃどんどん行くぞ」
俺はユウちゃん、ツキミ、クサカベ、ヒヤミに対して順番に処置を行うと、元々全員美少女だったが、更に一段階上がっただろう。
俺は圧倒的な美しさを得たハルちゃんによって恋に落ちそうになった事により耐性がついているが、他の男子は5人に恋するかもしれない。
「満足したようで何より」
「ええ。凄く満足よ。それにしてもその黒トリガー、メチャクチャな性能だけど、距離を斬れるって事は一瞬で海外に行く事も出来るの?」
「それは無理だな。例えばボーダーの屋上から見える富士山までは一瞬で行けるが、富士山に着いてからボーダー基地が見えなかったらボーダーとの距離を斬る事は出来ない。帰る際は何回か中継地点を決めて、複数回斬る感じだ」
「なるほどね。つまり海外の国を認識しないと使えないわけね」
「ああ。加えて日本からアメリカに行く際は太平洋を通るくらいの事は覚えているが、海しかないから中継地点の設定が出来ないから行けないな」
海だけでは曖昧すぎるからな。
「何にせよこれで頼み事は終わりか?」
「ええ、どうもありがとう」
「別に構わないがそこまで美しさに拘る必要あるか?全員俺が手を付けるから美少女だったぞ」
「あら、嬉しいことを言ってくれるわね。でも女って生き物は基本的に綺麗でありたい生き物なのよ」
よくわからん世界だ。俺は汚くないならば問題なく、綺麗さを磨き続ける趣味はない。
「そういうものか。まあ何にせよ俺はこれからスマブラをやりに行くから失礼する。ユウちゃん、案内頼む」
「ほ〜い。では行こっか」
俺はユウちゃんに連れられて自室を出て、違う部屋に入るが……
「汚いな」
男物の服や漫画が散乱している。作戦室というよりも完全に自室だ。
「ウチのチームは全員片付けが下手だからね〜、私もゲーム以外の整理は出来てないよ」
そんな風に話しつつ、ユウちゃんはゲームを取り出してテレビに接続する。
「おおっ、ゲームキューブ懐かしいな。相変わらず鈍器な見た目をしてるな」
「でもこの見た目が良いんだよ〜、はいコントローラー」
このコントローラーも懐かしい。昔はハルちゃんをボコしていたが、今日は俺がボコされそうだ。
そう思いながら画面を見る中、対戦キャラを選ぶ画面になる。俺はマリオを選び、ユウちゃんはフォックスを選ぶ。
そして対戦が始まるが……
「えっ、ちょまっ、あ、落ちた」
速攻で1回落ちた。俺自身が久しぶりにやるのもだが、単純にユウちゃんは上手い。開始と同時に銃をガンガン撃ってきて、こっちが寄ればフォックスの細かい攻撃で翻弄して、確実にダメージを蓄積され、隙を晒したら大技を叩き込まれた。
しかも落ちるまでに俺が与えたダメージが13%に対して、ユウちゃんは140%ものダメージを与えてきたのだ。
「せめて1回は落とす」
今回の試合は互いの命の数を5つに設定しているが、せめて1回は落としたい。
「ふっふっふっ、やってみたまえ」
ユウちゃんが笑いながら手招きをしてくるので、俺は復活して数秒無敵なのを利用して急いでフォクスとの距離を詰めにかかった。
数分後、俺のマリオは全ての命を失い、ユウちゃんのフォクスはダメージが120%以上になるが、1回も落とす事が出来なかったのだった。
数時間後……
「ナオ君……寝ちゃったね」
スマブラ以外にもマリオパーティーやカービィのエアライドなどをやっていた2人だが、深夜3時を回ったあたりで直次はコントローラーを手から床に落下させながら床に寝転んでしまう。
近界で傭兵をやっていた頃はいつでも良いコンディションでいられるよう、夜中に闇討ちを仕掛けたり、敵国の夜討ちに対する迎撃がある時以外は早寝早起きと規則正しい生活を送っていた。
しかし玄界が娯楽が乏しい事に加えて、奴隷や傭兵と余裕が無かった直次は8年ぶりのゲームにタガが外れてしまったのだ。
結果は寝落ちとなった。
「とりあえず運ぼっか」
トリオン体の柚宇は直次をベイルアウト用ベッドに運び出す準備をするが、背中に触れた瞬間、妙な触り心地を感じたので、上着を捲る。
「っ!」
同時に柚宇は顔を青ざめる。
直次の背中には大量の拷問の痕が残っていたのだ。切り傷、刺し傷、打撃痕、鞭の痕、火傷などの傷が大量にあって、傷がない箇所が殆どないくらいだ。
(憂さ晴らしによる拷問があったとは聞いてたけど、こんな酷い拷問小学生の子供にやる事じゃない……!)
ゲーム関係以外で余り他人に怒らない柚宇だが、今ばかりは直次を拉致した国に強い怒りを宿していた。
柚宇はゲームをしながらも直次と話をしたが、その時に奴隷だったのは拉致されてから2年くらいと聞いた。
そして直次は高校2年の綾辻と同い年ので拉致されたのは8歳か9歳のときになるが、小学生にこれだけの拷問をするなんてふざけているとしか思えない。
柚宇は拉致した国を皆殺しにしたと直次に言われた際はやりすぎだと思っていた。しかしこのような状況となれば、やり過ぎとは思えない。寧ろ当然の反応だと思えてしまう。
(とりあえず運ぼうっと)
柚宇は起こさないように気をつけながら運ぶ。ただし運ぶ先はベイルアウト用のベッドではなく、柚宇が徹夜する際に利用する自分のベッドだ。
文字通り地獄から生きて帰ってきたのだ。これが酔い潰れた太刀川なら放置するが、ベイルアウト用の微妙に硬いベッドでは満足に休めないと判断したからだ。
柚宇はそのまま直次をベッドに置いてから、労る表情を直次に向ける。
「折角帰ってきたんだし、楽しい時間を作りなよ〜。ゲームだったらお姉さんが一から教えてあげるし、ゲームを買うならお姉さんが見繕ってあげるからね」
ゲームをしている直次は本当に楽しそうだった。願わくばこのままずっと楽しそうに笑っていて欲しい物だ。その為ならば柚宇は協力したいと考える。
「ゆっくり休みたまえよ。明日は今のポケモンについて教えないといけないんだから」
最後にそう言ってから直次の頭を撫でてから小部屋から出て、明日直次と一緒にやるゲームの選定を始めるのだった。