あの日、同期が目の前で死んだ。戦場で死んだ。頭を撃ち抜かれ左右に血を吹き、喋るまもなく死んだ。俺は見殺にした。横から敵を突いて首を斬れば仲間が助かった。だが、立てなかった。立つ度胸が俺にはなかった。助かりたい、逃げたい、死にたくない。そのことで必死だった。だがそんな畜生でも涙が出て悲しみを受け入れ、そして、情けない声を上げながら命乞いをする。
「やめろ、やだ、助けて、、、だずげでぐれぇ!!」
灯台の先に一人の男が立っていた。顔は焼けた後と切り傷、見るだけで寒気がするような顔だ。だが彼にとっては大切で忘れてはならない傷だった。あの日のことを忘れないためにも。周りに嫌がれ煙たがれようと、決して忘れない。いつ来るか分からないその日まで。
「提督さん、お疲れ様なのです。」
タバコを咥えた電が突如現れた。だが提督は頷きもせずただじっと死んだ目で見つめる。
「またサボってるんですか?タバコ休憩というなの。」
「お前も同犯だろ」
苦笑いをしてその場を乗り切る。
「また、あの日のことを思い出したのです?」
「さぁ~な、気づいてたらここにいた。このクセもあの日以来ずっとだ。」
「そろそろ許してあげてもいいのではー」
そう言うと提督はすぐこっちを見てきて険しい顔で睨んできた。鬼でも悪魔でもない何かに睨まれたようなきがして、少し驚いた。この言葉を吐くといつもこうである。最初は怖かったが、だんだんと慣れていった。だが今でも少し驚く。
「と...とりあえず......そろそろ戻ってきてください。業務はたくさん残っていますよ。」
そう言って電は去っていく。少し海に溶ける夕日を見つめ提督も口に加えていた煙草を靴で踏んでその場を去った。」
提督は、元から無愛想などではなかった。むしろ逆で優しく頼もしい存在だった。だが、あの日以来笑顔は消え、恨みと重圧責任に駆られていた。もし、あの日、彼がその場に居なかったら、未来は、変わっていたのかもしれない。
その日の夜、山積みの書類を終わらしていた所に天龍が入ってきた。
「よぉ、まだやってんのかぁ?」
「それ以外に何をやってると?てか何やってんだよこんな時間に」
「それが聞いてくれよぉ」
「無理だ。どうせろくでもない話だろ?そんな話つきやってやれるか。」
「まぁそう言わず聞いてくれよぉ〜」
山積みの机に手をかけ体を預ける。
「忙しいのがわかんねぇか?んな事龍田にでも言えばいいだろ。」
ようやく諦めたのか、自分の部屋に帰っていく。ドアを開けた直後とんでもない情報を天龍が低く真面目な声で打ち明けた。
「お前の探してる奴、見つかったぞ。」
それに食いついた提督はすぐに椅子から飛び立ち、勢いをつけながら天龍に向いて走った。捕まえた天龍の両肩を強く持ち、180度回して洗いきを立て脅すかのように問いかけた。
「そいつは....どこで........何をやっている!.......」
少し引き気味になってしまったが、天龍はなだめたが逆効果で強く押し返した。
「そいつを殺して俺も死ぬ!あいつは俺の....おれの!ー」
そう言って提督は倒れた。声をかけて見るが疲労で体が絶えれなくなり熱くなっている。急いで部屋まで連れていった。
2日後、ようやく目を覚ました。そこには見覚えのないへやが縦長になっていた。恐らく、いや絶対に自身の部屋ではないことはわかった。どこか匂ったことがある。恐らく病棟内だろうか。するとようやく目が覚めましたかと声がした。右を見ると明石がいた。
「あか.....し?なんで」
「いやぁ~急に天龍さんが連れてきてここで2日ほど寝ていたんです。」
「天龍.....あっ!あいつはどこに!?」
ベットを飛び上がろうとして明石に抑えられた。だが、聞きたい情報を聞けてない提督は飢えた狼のようになっていた。そこに待っていましたと言わんばかりに天龍が現れた。提督は情報を教えろと、ただそれだけしか頭になかった。
「とりあえず落ち着け」といってデコピンをして躾けをした。ていとくが頭を抑えると落ち着いて話し始めた。
「まずは聞いて驚くなよ、あいつはあの日以来、年を取っていない。逆に若返っている可能性がある。」
それを聞いて二人は驚いた。
「...d...どう....いう...ことだ........そんなはずはない!あいつは、じゃああいつは人造人間か不死身なのか?なんなんだ....」
「さぁな。俺も詳しいことは調べ中だ。ただ、悪魔で考察だが、あいつは深海棲艦に似ている構造をしている。いや、深海棲艦の可能性が高い。」
「詳しく聞かせてください」
天龍はポケットから煙草を取り出し火をつけ一息ついて話始めた。
「こちらから送り込んだ工作員に様子を伺わせて密かに情報を共有していたんだ。で、丁度奴が自室に入った瞬間の隙間から覗いたんだとさ。そしたら、人間の姿から身を変えて灰色の体になって角が突如生えてきた。だが見ていたのがバレてその日は命からがら帰ってきた。」
「で、肝心の居場所を教えろよ。」
すると天龍は吸い尽くした煙草を灰皿に押し付け新しい煙草に火を付けながら語った。
「場所は.......樋口少尉【ひぐちしょうい】が奴に殺され、お前にも因縁がある、ガベーラ島だ。」
大佐は鼓動が急に強くなり発作が起こるほど驚いた。同時に怒りが込み上げてくる。
「近々俺とチビども四人と水陸機動団少数連れて討伐する予定だ」
天龍がゆっくりと近づいて強く右肩を叩く。
「もちろん、お前に最前線を任せる。因縁と冥土の土産、同時に終わらせるぞ。」
大佐は目の色を変え睨み返した。
「当然だ。あいつを刺し違えても殺してやる。そしてあいつの墓に首を供えて謝らせてやる。」
「.......まぁそこはお前に任せる。悪魔で俺等がやるのはせいぜいお前の手助けぐらいだ。あっ、手も貸すまでもないかぁ!」
それに苛立ちを覚え近くにあった物置台を叩き割る。明石は驚いて足をすべらせてしまった。
「あぁ、いらねぇよ!むしろ邪魔でしかない!お前らの出る幕はないと思え!」
天龍は振り向くこともなくそのまま部屋を後にした。
一九八五年 呉基地
天龍率いる艦娘部隊と陸上自衛隊レンジャー中隊を連れて輸送艦みうら・ねむろ・さつまがガベーラ島に向けて出港した。提督は装備を整えて岩国基地に空挺団5名を引き連れてKC-130に搭乗した。この時提督の体には復讐心と安心感などがが混ざり合い複雑な気持ちで俯いて座っていた。隣の空挺隊員がなだめて声をかけてみるが応答がないと同時に触れれば首を折られ殺されると悟りなだめるのをやめた。
どんどんと降下のカウントダウンが迫ってくる。だがそれを提督自身楽しみに変えていた。なぜか急に笑い始め周りも血迷ったのではないかと肝を抜かしてた。すると機内のアラームが激しく鳴り響く。降下一〇分前の知らせである。各自最終身支度を行い最終点検を終え今か今かとその時を待つ。赤いライトが緑のライトに切り替わり提督が降下してそれに続いた。
作戦はこうである。まず空挺部隊が降下し海に着水する。陸地に着地する案もあったが、周りには無数の敵がうじゃうじゃと湧いており攻略する前に死ぬ恐れがあった。その後着水開封ボートに乗り敵が少ないであろう海岸に乗り込み、警戒をしつつ攻略していく。その後あらかた片付いたら本部隊である輸送艦部隊を呼び上陸させ一気に攻め込む。敵の指揮官である人型深海棲艦は提督に任せ情報を吐かせた後に殺すよう命令している。だか彼に優秀な判断は見込めないため、そこに関しては提督自身に委ねられた。
空挺部隊は降下を終えゴムボートを展開し、穴場海岸まで迫った。初攻略時もここから攻め入ったが、殆どは壊滅し今でも生々しい砲撃後が残っている。提督もここから攻め入り見事に難を逃れたが今でも鮮明に覚えている。人の死体がどんどんと足元に転がり血が返り足や手、内臓や頭が吹っ飛ぶ。自分でもどうやって乗り切ったか覚えていない。気がつけば山の中に倒れていた。その直後に眼の前で例の悲劇が起きた。思い返すだけで頭に電流のような痛みが走る。だが、それを乗り切らねばここを乗り越えることができない。
空挺部隊は海岸に到着し各自銃を構えて立て一列になりながら警戒を厳とした。すると前方の砂浜から灰色の深海棲艦が何十体現れた。
「深海棲艦....!?コイツラ、いつの間に陸地を克服して下から生えてきやがったのか!?.......いいだろう。あの野郎をぶっ殺す為の腕鳴らし台となってもらおう。お前ら!行くぞ!」
小隊は迫ってくる深海棲艦を排除しつつ徐々に進んでゆくが敵の銃撃にさらされ次々と怪我を負ってしまう。
「やろう!...こうなったら...」
左胸に突けていた手榴弾を外し遠くに投げた。周りの敵は瞬く間に倒れ飛び散った。回路を開いた小隊は、怪我を負っている味方を担ぎ、後方を守りつつ走った。
丁度走った所に少し底深い洞窟を発見しひとまず避難した。敵も近づいてきていたので手榴弾を二つばら撒き敵の足を遅れさせる。提督は一人重機関銃を持って味方の救護の時間を稼いだ。だが次々に出てくる深海棲艦と新たな脅威が迫る。なんと地中からゾンビのような人型が現れたのだ。
「くっ....野郎!英霊の遺体までも兵器に変えやがって!おい誰か手伝える奴は手を貸せ!」
「っはっh..はい!」
隊員一人が小銃を持って提督の横に並び左右にばら撒くがどんどん敵が増えていく。もうダメかと思われた瞬間、海岸沖から何発かの雷の様な鋭い轟音な鳴り響き砂浜に着弾する。
「まに...あった...フッ...ハハッ!ハハハハァー!あぁ~!ーあと一歩で死ぬところだったぞ!てんりゅうー!!」
艦首の飛び出し防止柵に片足をかけ、堂々と立っている。煙草を一息吸った後艦首のバウ・ドアが開きLCACが飛び出す。天龍は勢いよくジャンプしてLCACに飛び移る。
「全員よく聞け、今から提督の手助けをする。扉が開いた瞬間一斉に敵が襲いかかってくるだろう。だが、アイツの為にも必死に食らいつけ!いいな?」
全員が息を合わせ返事をした。士気は完全に盛り上がり血が騒いでいた。
CLACが出たのを確認した提督は敵の隙をみて前に出てナイフを取り出し次々と切り刻んだ。残りの隊員も隙を見て応戦した。そうこうしてるうちにLCACが到着し次々と敵が押されていく。
「お前ら全員CLACに乗り込め!ここまでようやってくれた。」
「でも、提督は!」
「俺は上にいる敵の首叩き落としてくる。ゲガもなく血が騒いでいる奴は天龍の部隊に参加しろ。いいな?」
「了解!武運を!」
そう言って小隊は2つに別れた。
治療していた隊員と負傷者一名は応援隊員に守られながら乗り込んだ。
「提督!ここはチビどもと応援部隊に任せろ!お前は残りの隊員連れて復習を果たしてこい!」
俺は天龍を見つめ頷き、その場を後にした。
提督は奴を殺すため必死に駆け上がる。途中で先の戦の残骸が目に入る。一瞬立ち止まり、大破した戦車に手を差し伸べ心のなかで鑑賞した。その瞬間頭の中であの日の光景が映る。周りで体や臓器が吹っ飛び無惨にやられていく隊員、次々と破壊されれいく戦車や高射砲。一瞬にして火の海になる森林。思い出すだけで頭痛が走る。すると背後から何者かに頭部を殴られ気絶し倒れた。目は見えないが何処かに引きずられて行く感覚がした。
だいぶ時間が立ったのだろう。俺は水をかけられ正気に戻った。服は脱がされパンツ一枚の姿で3畳半の部屋で手と足を縛られ横になっていた。立とうとするが強くロープで縛られていて身動きが取れず必死に解こうとするが、他の所も殴られていて目が腫れ左が見えず関節も痛くて耐えれずもがいた。
「下手に動くと後遺症になるぞ」
窓側を見るとナイフを回しながら座ってこちらに注意を促してくる何かがいた。俺は開きにくい目を名一杯に開いた瞬間絶望した。そこには敵討ちの相手がいるではないか。
「お前は....!」
「よぉ、久しぶりだなぁ。まるで鳥のようにノコノコ現れたと持ったら、海岸は荒らして....うちの可愛い可愛い戦士をたくさん可愛がってくれたようだねぇ」
「死んだ兵士を改造して、自分の手駒にし侮辱した罪は死に値する。だがお前は....それを平然とやってのけた!」
「ここで勝手に死んだのだから私のモノ同然だ。そして、お前に語られる筋合いはない!」
俺は薄汚れた床に這いつくばって言った。
「うるせぇ!死んだんだろうと自分のもんだろうと俺はその行為自体を許さねぇ!!お前が別の生命体だろうと深海棲艦だろうと、同じ仲間がそうされたら憎むだろうが!」
奴は目を鋭く開き殺意が湧いて早歩きでこっちに向かってくる。次の瞬間、顔と腹を思いっきり蹴られ、殴られながら暴論を語られた。
「何が仲間だ!何が同族だ!我々を41年前の戦いに送り込んでおいてお前ら上層は、人の死を名誉として語った!その結果負けを悟ったら自分だけ逃げ出したり自殺して部下には特攻を命じる?ふざけるな!あの時、何十万の兵士がやられたと思う!?あの時、何十万の兵士が無事に帰って家族を思いたかったか、貴様は知っていってるのか!!」
奴はひたすらにボコした後、手に持っていたナイフを俺のう左肩関節に殺意を込め刺した。痛みに思わず声を上げてしまう。奴は更に続ける
「そして帰ってきたら周りからは疫病神や特攻くずれなどと言われて軽蔑される始末。職にはまともに就けやしなかった。中には傷痍軍人が道端で物乞いするのをこの目で見た。俺はそんなクソみたいな世の中がや嫌で身を投げた。だが不幸中の幸いとでも言うのか、俺は生きていた。そこは暗くて肌寒いまるで深海のような場所だった。俺がそこで彷徨っていると、奥から黒い髪と鬼のような角が生えた女とフードを被って顔はよくわからなかったが、尾が生えた女に出会った。一瞬殺されるかと思ったが、彼女らは優しく俺を受け入れてくれた。」
それを聞いた瞬間、重要指名手配深海棲艦の事を思い出し問い詰めようと話しかけたが、ナイフを更に右肩に刺して黙らしてきた。俺はさらなる痛みに耐えれず咆哮し、奴は更に話を続ける。
「そして彼女らに付いていくと、そこには大量の円柱の水槽があり、中には生命体が生成されていた。俺はここで深海棲艦になって世界を滅ぼすか、成仏するかの二択を迫られた。もちろんこんな世の中を滅ぼえるのなら!と思い深海棲艦あることを選んだ。そして俺も円柱の水槽に入れられ、気がつけばここの砂浜に打ち上げられていた。起きた直後、脳内に村と住民を皆殺しにしろと命令が入ってきた。命令通り皆殺しにしたさ!その時の感覚は最高にハイになったよぉ!今でも鮮明に覚えている、昨日のことのようになぁ!」
俺は段々と意識が朦朧し始め死なないよう目をつむらないことに必死で話についていけない。それを見たのか、奴は刺してたナイフを抜き、服で吹いた後椅子においていた拳銃を取った。
「その感じではもう立ち上がることすらできず数分足らずで死んでしまうだろう。いわゆるショック死だァ〜。あぁ~たまらねぇなぁ!ハハッハハハッ.....アハハハハハ!」
俺は脳内で助けを求めるが、どうせオチは決既に決まっている。ここであの日の事を思い出し自分に問いかけた
「なぁ、お前は、何しにここに来た?死んだあいつのための供養戦をするためだろ!何してんだ!起きろ!また同じように泣いて命乞いするのか!違うだろ!」
「今すぐあいつに合わせてやる。よかったなぁ」
覚悟を決めたその時、引きが目を引いた音がして悟った。だが、痛みは感じず何なら一発しか撃たれてない。ゆっくり目を開いて扉の方を見た瞬間、天龍がタバコを咥えてゆっくり入ってきた。
「ねがいが.....かな.......った!.....っくぅっ......!」
俺は力が抜け咽び泣いた。すると第六駆逐隊も後に続いて入ってきて俺に何倍にも薄めた高速修復材を体にかけた。高速修復材は人間が普通に使うとアナフィラキシーショックで死んでしまうが、何倍にも薄めることによって人間が使ってもある程度治すことができる。
「司令官、助けるわ!」
「意識は...かろうじてあるわ。」
「みんな......すまん...!」
「謝る暇があったら黙って治療させやがれなのです!」
「うぅ....きびしい....」
「お前らそっちは頼むぞ。こいつには大仕事があるから絶対回復させろぉ。........さて、うちの提督をぼろぼろになるまで可愛がってくれてありがとなっ。」
「黙れ!何者だ!」
打たれて左手が吹っ飛び強く抑えながら問いかけた。だが手首からは大量の血が床に落ちていく。
「俺か?お前は知っているはず....あっ、そうか!うちの提督にしか目が無い奴には覚えラ得ていないか。いやぁ〜残念だぜ。」
「っっ.....くっ.....!貴様ぁ!」
左手を抑えていた手を離して、深海棲艦特有の艤装が生成され殴りかかった。天龍はご自慢の刀を片手で握り華麗に当て跳ね返した。奴は強さに便乗したのか吹っ飛んだ方の手にも艤装を生成し、今度は連続攻撃を加えた。だが天龍の剣裁きには無力ですべて跳ね返され、左の艤装の先の部分が斬れ床に落ちた。その隙に腹に蹴りを入れ壁ごと突き破った。辺りには砂埃が舞い地面がえぐれていた。結構効いたのか奴はゆっくりとゾンビのように立ち上がり、みぞおち辺りを艤装の付いた手で押さえ血泥を吐いた。
「さぁ~て、だいぶ弱らせたみたいだなぁ」
「だ...まれっ....!おまえ....如きに....っがはっ!.....やられるほどバカで.......はないわ!」
「おぉ~そうかそうか....だってよ、提督!
「.......!何だと....」
突き破られた壁の中から灰色のミリタリーパンツと緑色の防弾ジョッキを着た提督が現れた。
「ありがとな天龍、そして第六駆逐隊。応急だがな、80%まで回復したぜ!」
「フフッ、そのご様子だと、俺の援護は必要なさそうだな」
「もう十分活躍しただろ。こっからは何があろうと俺一人で片付ける。なんせ目的を果たさないといけないからなぁ」
その様子を見ていた奴は、ふと脳裏で何かを思い出す。それは12年前の戦いであり、その戦いこそ提督の言う供養戦そのものであった。
「そうか、そうかそうか!ようやくお前らがここに来た理由がわかったぞ!お前らは、12年前この島で俺を倒し、島を奪還するためここに来た。だがその時の指揮官が無能だった為結果俺に何十万も殺されたのだ!そのうちの一人、つまりお前がが指揮官として、軍人として12年前の戦いのリベンジを果たしに来たというわけか!いやぁ〜実に愚かで無能だ!どうせ私に負けるのだというのに!」
その時提督も脳裏であの日の無惨な光景を思い出し、突然として自分に対してと奴に対しての怒りが込み上がった。
「あぁ、そうかもなぁ。だが、今回はこの島奪還なんかじゃねぇ!お前に殺された奴らの為の供養戦だ!だからお前をこの手で殺し、その首を墓前に供えて初めて任務遂行になる!」
「そうか、この首を取る.....か。フフッ....フハハハハ!取れるもんなら取ってみろやぁ!」
奴は俊足な動きでこちらに突進し降り掛かった。それを跳ね返し左手を殴り軽く吹っ飛ばし隙をついて顔に攻撃した。だがそれでも無傷化のように笑みを振る舞い提督に照準をあわせ撃ってきた。提督は持ち味のあしで左右にかわし奴に近づいた。だが斬りかかろうとした瞬間右手の艤装に気づかずあと一歩の所で吹っ飛ばされうずくまった。
「っく...いってぇ、、、」
死のカウントのように奴が近づいてくる。
「もう十分だろ、大人しく死んだらどうだ?今なら楽に殺せるぞ。」
「ハハッ....お気持ちだけいただくよ」
「なにぃ?」
提督はゆっくりと立ち上がりながら言葉を続ける。
「お前もチャカ使うなら、俺も使っていいってことだよなぁ。いいぜ、短期で銃撃戦に挑んでやるよ!」
奴は軽い身のこなしで飛び距離をおいた
「ルールは簡単、ナイフ、銃、拳、足を使って戦うこと。それ以外は無しだ。お互いが倒れるまで続ける。以上だ。」
「フッ、自分に振りとわかっていってるのか?」
「俺は不利な方が勝率が上がるんだよ。つまり、お前の負けは確定みたいなもんだ!」
「ならばその勝率が上る前に殺せばいいまでだ!」
そう言って艤装から弾を連射し始めた。二発が着弾し砂煙が上がり、見ていた第六駆逐隊が思わず声を上げる。だが天龍は口の広角を少し上げた。天龍は地面に着弾して提督がその前に回り込んでいるのを見ていた。その予想は的中し、敵の左艤装に弾が三発打ち込まれ内部で破裂し破壊した。奴は辺りを捜索しおどおどしてる間に右の艤装にまた三発打ち込まれ破壊された。
「クソ!一体どこに!」
「後ろだよ」
奴が気がついた頃には既に後頭部に銃口を突きつけていた。
「さぁ、この世界に最後の挨拶を言うんだな。五秒待ってやる。
「............勝っている気ならまだ早いぞ」
「ん?」
すると急に叫んだと思えば、後ろから尻尾のようなモノが生え提督は咄嗟に突きつけていた銃口を離しその場を離れた。破壊したはずの艤装も更に強化され尻尾にも口のような艤装がつき厄介なった。
「今度はルールなんぞ関係ない!次はお前が遺言を残す番だ!」
その瞬間、地面から無数の深海棲艦らしきゾンビが出現した。流石に一人では無理と判断し、天龍と第六駆逐隊に援護を頼んだ。
「お前ら、さっきはイキって悪かった!だから周りのゾンビどもを片づけてくれ!」
「しょうがねぇなぁ。お前らはゾンビを一人残さず片付けろ。」
「天龍はどうするの?」
「俺は、敵の隙を付いてあの口の付いた厄介な尻尾を叩き落としてくる!」
四人は頷き急いで清掃にあたった。
「提督、これつけろ!」
天龍はイヤホン型無線を投げ渡した。
「いいか、お前は眼の前の的に集中しろ。それはその隙をついて尻尾を切り落とす。そうすれば奴の攻撃力は下がるはずだ。」
「わかった。そっちは頼んだぞ」
俺は目を閉じ神経を研ぎ澄まし攻略法を探す。何度も、何度も[もしもの場合]を考える。そして出口が見つかり目を開いた。
まず左手を攻撃して隙を探りつつ視線を俺に向けさせる。そして林の方におびき寄せ対深海棲艦自動拳銃を構え攻撃する。だがさっきよりも装甲が厚く弾が貫通しない。予想外な事に顔が戸惑い敵がどんどん近づいてくる。
「まずい、これ以上来られると戦いにくくなる。こうなったらアレをやるしかねぇ!」
そう言って防弾ジョッキについていた煙幕弾を投げ3秒後爆発し周りに煙が立ち込む。
「っく、前が見えん!奴め、何を仕掛けた!?」
その間に茂み隠れて手榴弾を3つ取り口でピンを抜いて3秒持った後一斉に的に向いて投げた。こうすることによって、敵に投げ返されるのを防止し、もし手にとっても握った瞬間手が吹っ飛ぶだけでこちらとしては奇跡に過ぎない。
「頼む、散れ!」
「......!?」
5秒後、敵の周りで爆発し爆風で煙幕も消えた。敵は後方に吹っ飛び倒れていた。立ち上がろうとするが茂みから銃弾が襲って来る。その間に天龍が背後から忍び寄り尻尾を切り落とした。天龍の予想通りさっきまでのオーラが嘘のように減少し尻尾は咆哮した後、自然消滅し周りのゾンビも消えた。
「っく...!どうやらきずかれたようだなぁ」
「動くな。死にたくなかったらな」
「なぜ尻尾が弱点だと気づいた?」
「ゾンビが出てくる時、尻尾が叫んだのを見て本体は尻尾だとわかった。最初からお前にはそんな力なんざなかったし、叫ぶなら己の口から叫ぶはずだ。違うか?」
「........あぁそうだ。俺は予備軍人ほどの力しか無い。12年前の戦いも尻尾のお陰で何万と無き者にできた。だが一度切られたら復活もできないし攻撃力も皆無だ。あの日、唯一あと一歩まで追い込んだのが、あいつの言う仲間の一人だ。そいつのネームタグには、ヒグチ ソウマと書いていた。そして、やつもまた、俺の目と首に銃弾を打ち込んだ唯一の戦士だ。」
その奴こそ隠れていた提督ほんにんであった。茂みから警戒を解除してゆっくり姿を表す。
「さぁ、もう無防備だ!殺すなら殺せ!」
提督は冷ややかな目線を送り、銃口を向けた。沈黙した後銃声が4発なった。だが痛みが感じず本当に死んだんだなと思っていたら生きていた。提督は両手に付いていた艤装を破壊し、深海棲艦としての奴を殺したのだ。
「.....えっ」
「天龍、ワッパになる紐のようなものがはないか?」
「おう、お前毎回殺す殺す言ってこうやって活かすよなぁ。もう言うのやめれば?」
「それは無理だ。じゃないと心が持たん。」
「な....何故生かした!まさかこんなところまで来てなさけか?お前は俺の首を備えるために来たんじゃないのか!?」
「あぁ〜うるせぇ耳元で騒ぐなよ。とりあえず、墓まで案内しろ。話はそれからだ。」
数時間後、島の裏まで来た提督たちは、ここで亡くなった者たちの墓に訪れた。
「久しぶり、お前ら。随分キレイじゃないか。えぇ~?全く誰かが来て手入れしたかのようだなぁ?」
提督は奴の顔を下から見上げアホズラ口調で言った。
「そいやぁ。名前聞いてなかったなぁ。何ていうんだ?」
「分からない。もう忘れた。」
「そうかぁ。そうだなぁ、てかお前性別どっちなの?」
「ん?見てわからんのか?どう見ても男だろ」
「それにしては下の膨れがねぇな。」
「h...はぁ!おまえ!でりかしーとか無いのか!?」
すかさず響が説明した
「提督はどうしようもないド変態なので、その言葉がわからないんだ。」
「響、変な噂はやめような」
「ん?、本当のこと言って何が悪い」
「っだってよ!て・い・と・く・さん」
「おいこら天龍、メスガキすんな。痛いぞ」
もちろん顔を真赤にして頭をすかさず殴った。提督はうずくまって倒れた。そこに暁が名前の提案をして「じゃぁ、レーベってどうかしら」と言った。
「いいわねぇ!」
「良いと思うなのです」
「ハラショー」
「後は、お前次第だが、どうする?」
少し沈黙した後、「名前など何でも良い」といい了承した。その光景をタバコを吸いながら見ていた提督は口の口角が上がっていた。それに気づいたレーベはすかさず提督にさっきの答えを問いかけた。
「ん?もう出てるじゃないか。墓の手入れお前一人で欠かさずやってたんだろう。普通の奴らだったらこんな手間のかかることはしない。お前の部屋を見た時ほこりや荒れた形跡が全く無かった。深海棲艦になる前の名残だろう。村人を殺害したのも自分の意志じゃなく奴ら2人に操られ本体である尻尾のほうが主導権を握って、気がつけば殺していた。正気に戻ったお前は深く悲しみ、丁重に弔った。12年前のお前の姿を見た時、どこか助けを待っているような顔だったんでなぁ。でお前の中の深海棲艦をぶっ殺して墓に持っていこうと思ったが消滅しちまった。41年前のお前の心情はわからないが、二つ言えるとしたら、お前は元々優しい人間ってことと、俺とお前はすごく似ているということだ。」
するとレーベはハッとなり思わず泣き崩れた。天龍が背中を撫でて落ち着かせる。
「さて、本体との供養戦も終わった。お前に2つの選択肢がある。1つは俺らと一緒に本土まで帰った後、一般人に戻り普通に暮らすか、2つ目は俺らと一緒の軍に入って人助けをするか。自分自身で決めろ。」
レーベは少し考え質問した。
「まだ、俺みたいな子がいるのか?」
「.............残念ながら。」
「なら......決まってるじゃないか!」
その後、レーベは帰国した後、明石の検査を受け詳しい検査がなされた。DNA鑑定により、日本人とドイツ人のハーフであることがわかった。性別は男だと主張していたが結果的には女子だったことが判明し、トランスジェンダーと診断された。また体の中に深海棲艦の一部と細胞が残っているため、手術で摘出した後、人間のパーツに改造し、細胞は深海細胞撲滅剤を2週間服用して直した。その時昔の記憶がリプレイされてうなされる副作用があるが、薬が自動的に悪いデータを消しているので体に害はない。
そしてあの戦いから3年後、レーベは本来の人の姿に戻り提督たちとともに人助けする道を選んだ。選んだ理由として、社会に馴染めないことと、ここにいれば自分を理解してくれる仲間がいるということが主に挙げられる。こまたこの頃には性格も丸くなり、優しくかわいい女の子になっていた。
「よぉ、久しぶりだなぁ。すっかり性格も丸くなって」
「あ...ありがとう....提督。僕、今日から提督と共に戦うよ。」
「そうか、明石に預けてはや三年、あの日の選択は、間違ってなかったようだね。フフッ。」
「提督、どうかしたの?」
「いや、別に。それじゃァ改めて、駆逐艦Z1ことレーベレヒト・マース。貴艦の着任を認める。これからの活躍を期待してるぞ。」
「ワァァ......はい!」
「来た所悪いが、急いでくれ、天龍たちが待ってるんだ。あいつ時間にはうるさいからなぁ〜。ほれ、行くぞ!」
「うぇぁ、ちょ...マッテヨォ!」
この日、「俺」・「僕」の新たな人生が、静かに始まった気がする。
短編小説 END