異世界配信 ~スマホ一つで地球へ配信しながら元の世界を目指します~   作:JOJI

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初のオリジナルです。衝動で書き上げたので荒いと思いますが、良かったら読んでいってください。


第1話 知らない天井だ

――ピコン。

 

 静かな部屋に、聞き慣れない電子音が響いた。

 

『異世界ライブ配信システムを起動します』

 

「……は?」

 

 音の出所は手に持ったスマホだった。

 

 そこには見覚えのない文字が次々と表示されていた。そして、その文字が日本語に変換されていくと

 

『地球との通信経路を検索中……』

 

『接続完了』

 

『配信者登録を開始します』

 

「いやいやいや、待て待て待て。」

 

俺は思わず腰を掛けていたベットから立ち上がる。

 

三日前まで、ごく普通の高校生だった。そう、だった…。

 

 それは俺が帰宅途中、突然霧に包まれ――気が付けば、この異世界にいたのだから。

 

 

 

 

──3日前─

 

 

「ここ、何処だ?」

 

田中伊織(18)は、ついさっきまでコンビニ行った帰りだった。

 

卒業も決まり、大学生活を楽しみにしていた普通の高校生。それが今は、見知らぬ森の中にいる。

 

「な、なんでこんな所に…そうだ、携帯!」

 

ポケットからスマホを取り出すと当然の如く圏外、地図を開いてみても何も表示されずGPSが機能していないようだ。

 

「どうなってるんだ…」

 

現在の持ち物は携帯とお茶1本とお菓子とパン、コンビニ帰りなのが幸いしたか今すぐ餓死という訳ではなさそうだ。

 

「とにかく、早くこの森から出ないと…!」

 

暗く不気味な森に恐怖を覚えて歩き出す、森の中は不気味な程に静かだった。

 

「……こんな森、日本にあるのか?」

 

中学生の頃にいやいや参加したフィールドワークで経験した森の中とは全く違う雰囲気に戸惑う。それに、歩いても歩いても人工物が一向に見えない。

 

電柱も、道路も、自動販売機も…

 

──時刻14:24 充電81%─

 

 

 

 

…ガサッ

 

目の前の茂みが微かに揺れる。

 

「な、なに!?」

 

身が竦み、すぐに逃げれる姿勢を取りながら茂みを凝視する。そこから現れたのは、角の生えた兎だった。

 

「…兎か…、ん?」

 

─角が生えている。

 

兎の額部分に真っ直ぐと聳え立つ用に1本の角が生えていた。伊織の記憶違いでなければ、日本にというか世界に角の生えた兎はいなかったはずである。

 

その兎は伊織を一目見ると、また茂みの中へと消えて行った。

 

「なんだ…あれ…」

 

─充電:70%

 

 

腹が減ったため持っていたパンを食べる。腹は減っているが、今後の為に半分だけだ。賞味期限が心配だが、今日に森を抜けれなかった時の為に明日の分を取っておく。菓子もある、ポテチだがないよりはマシだ。だが、最悪なのは持っていたお茶がもう半分しかない。ただでさえ歩くのに持っている食料はどれも水分を取る…

 

「喉が乾いた…」

 

─充電:61%

 

 

当たりが完全に闇に包まれる、夜になったのだろう先も見えずこれ以上動くのは危険と判断して近場の木に登る。見たこともないほどに枝がしっかりした太い気であり、横に離れないが背中を預けて寝る分には問題ないかもしれない。

 

「……いや、寝れるわけないだろ…!」

 

ここはどこなのか、日本なのか、海外なのか、この森広すぎるだとか言葉にはしないが心の中で愚痴を零す。この暗闇に包まれた森のように、伊織は自分の未来が暗く先が見えない。自分は家に帰れるのか、不安に包まれながらも疲労を抱えた身体を抱きながら眠りについた。

 

─時刻21:30 充電46%

 

 

「…はぁ…はぁ…」

 

翌日になり、伊織は水を求めて彷徨っていた。お茶は朝起きた時に飲みきってしまい空だ。方角が分からず、ここは通ったことの無い道なのかも分からない。無理な体勢で寝たせいか疲れは全く取れていない、すぐに体力が尽きてきた。

 

─時刻09:16 充電30%

 

 

 

水場が見つからない、川の流れる音も聞こえない。たまに何なのか分からない動物の鳴き声と茂みが揺れる音に時々聞こえる遠吠え、あとは草を踏みしめる自分の足音だけだ。

 

「…くそ…!」

 

朝にパンを食べきったため昼には菓子を食べたが、口の水分を奪うだけで何の腹の足しにもならなかった…

 

─充電19%

 

 

「…あっ…」

 

バサッと音を立てて倒れる。足がもつれてしまった用だ、すぐに立とうとするが体がクタクタで起き上がるのも億劫だ。近くの木へと這って背を預ける。足の裏がヒリヒリして痛い、恐らく剥けている事だろう。

 

「…はぁ…」

 

もう、木に登る気力も湧かない。こんな所で休んだら危ないだろうか、クマとかが出てきたら喰われるのだろうか。死にたくは無いが、せめて遺せるうちに何か残しておこう。そう思ってスマホを取り出す。

 

─時刻18:20 充電5%

 

「…電源…切っとけば良かったな…」

 

遺言を残すには心もとない充電量に後悔しながらも、カメラを回し録画ボタンを押す

 

「…母さん父さん、これを見ていたらもしかしたら俺は死んでるかもしれない。急に訳分かんない森に飛ばされて彷徨って、このまま行き倒れるかもしれない。」

 

─充電4%

 

「何言ってるか分かんないと思うけど、俺も何が起こったのか分からないんだ。急に霧がでて気がついたらこんな所に飛ばされちゃった。」

 

─充電3%

 

「大学卒業して良い仕事に着けたらめっちゃくちゃ親孝行するって言う約束、果たせなくてゴメン、ここまで育ててくれてありがとう。死亡保険とかってかけてるかな? もし、俺の死体見つかったら葬式は安いやつでいいから。これ、今際で親に言う言葉で合ってるかな?」

 

─充電2%

 

「手鞠、良い兄ちゃんじゃ無かったかも知れなかったけど、俺お前のことはちゃんと好きだぞ。習字、太郎、俺の数少ない友達でいつも馬鹿なことやったな、こんな俺に付き合ってくれてありがとう。」

 

─充電1%

 

「あー、他に誰かいたかな…多和田先生、大変お世話になりました。卒業まで生きていられなくてごめん。えと…隣の席の岩田くん、筆箱とか教科書とか忘れた時に貸してくれてありがとう…あと、それと…」

 

─充電1%

 

「…母さんの唐揚げ…もう一度、食べたかったなぁ…」

 

─ガサッ…

 

「!?」

 

突然、近くの茂みが揺れて大きな影が現れる。暗くてよく見えないが、荒重い足音とい息使いのようなものが聞こえる。

 

『グルルルッ』

 

見えてきたのは、赤い体毛の身の丈以上の猪のような化け物だった。額に3本の角を拵え、長い牙を覗かせ涎を垂らしている。理性があるか分からない目を伊織に剥けている。

 

「…あ、あぁ…くっ」

 

急いで背を預けていた気に登ろうとするが、足に力が入らず登れずに落ちてしまう。振り返ると猪がもうすぐ側まで来ていた。

 

─充電1%

 

「くそ!来るな…!来るなよ!! 誰か!!助けて!!」

 

『グォン!』

 

─充電1%

 

伊織の大きな声で刺激してしまったのか、猪が伊織に向けて勢いよく走り出した。大きな角を伊織に向けて突き出して迫り来る。

 

「っ!?」

あまりの迫力に息を飲む、足がすくみ思考が止まる。ようやく頭が動き出した頃にはもう手遅れなほどに距離が近い、様々な思い出が脳を駆け巡る。

 

(あ、これダメなやつだ…)

 

─充電0%

 

 

 

バァンッ!!

 

『ブギぃ!?』

 

突然、猪の横っ腹が跳ね上がり横へと吹っ飛ぶ。

 

「あなた!」

 

「任せろ!!」

 

猪が吹っ飛んだ逆の方向から、声がすると人影が飛び出してくる。剣を両手に持った壮年の男だ。勢いよくその剣を猪に振り下ろすとイノシシの首を真っ二つに切り裂いた。

 

「ふぅ…坊主、大丈夫か?」

 

助けてくれた壮年の男は伊織に振り返ると、剣を収めて近寄り声をかけてくる。

 

「…はは、助かっ…たぁ……」

 

しかし、人に助けられたことにより極限の緊張感から解放されたのがスイッチになったのか、糸が切れたかのように気を失ってしまった。

 

「お、おい!坊主!…気を失ったのか。仕方ない、メリーナ!この子を家へ運ぼう!」

 

男は伊織を担ぎあげるとメリーナと呼ばれた女性と合流し、勝手知ったる道のように森の中を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「…ん…」

 

窓から差し込む光によって、伊織は目を覚ます。木造特有の落ち着いた木の香りが鼻を擽り、微かに甘い香りも漂う。

 

「…知らない天井だ…」

 

と言うことは、あの悪夢のような出来事は夢じゃなかったと言うこと…微かな絶望を抱えながら伊織は起き上がる。周りを見渡すと、本棚と机に何かを収納するための箱などが置かれた簡素な部屋だった。

 

「ここ、何処だろ…確か、俺は…」

 

気を失う前の記憶を辿り、猪の化け物に襲われたところを誰かに助けられた事を思い出した。おそらく、その人の家に運ばれたのだと当たりをつける。すぐ側の台に伊織の来ていた私服とスマホが置かれていた。伊織はスマホを手に取る。

 

─充電0%

 

「だよなぁ…」

 

ここ、電気通ってるかな…と思いながら身体を動かそうとすると身体の節々が悲鳴を上げて痛みが走る。全身筋肉痛のようだ…特に足は酷い、もうしばらくベットに世話になりそうだ。

 

「はぁ…」

 

とりあえずは命の危機は脱したと思う、助けてくれたしおそらくあの男性は良い人だろう。お礼できるものは何一つ持ち合わせていないが、土下座して暫く面倒見て貰って親に土下座してお礼出来る品を用意してもらおう。そう、算段をつけながら意味もなくスマホを弄る。

 

─充電0%

 

「しかし、何が起こったんだろう…」

 

突然霧に包まれたかと思えば森の中に放り出され、いくら歩こうとも開けた道路や人工物のようなものが何一つ見えずに彷徨い。たまに角の生えた兎や、やけに鮮やかな小鳥を見かけ終いには自分の身長以上の角の生えた猪である。さらにいえば、助けてくれた男が持っていたのは、気のせいでなければ銃ではなくアニメや映画で見た西洋剣のように見えた。

 

「…家に帰れるかな…」

 

そう、言葉を零した時だった。

 

──ピコン─

 

静かな部屋に、聞きなれない電子音が響いた。

 

『異世界ライブ配信システムを起動します』

 

「……は?」

 

 音の出所は手に持ったスマホだった。

 

 そこには見覚えのない文字が次々と表示されていた。そして、その文字が日本語に変換されていくと

 

『地球との通信経路を検索中……』

 

『接続完了』

 

『配信者登録を開始します』

 

「いやいやいや、待て待て待て。」

 

俺は思わず腰を掛けていたベットから立ち上がる。

 

スマホには見たこともない画面が映し出されていた。

 

俺はまだ知らない。

 

この画面一つが、地球と異世界を繋ぐ唯一の窓になることを。

 

 

 

 

 

 

 




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