異世界配信 ~スマホ一つで地球へ配信しながら元の世界を目指します~ 作:JOJI
という事で、できるだけ書いていきますが週に1,2話くらいのペースになるかと。
魔法を使えるようになってから、数日が過ぎた。
朝はカジートとの剣の鍛錬。昼は村の仕事を手伝い、午後はメリーナとの魔法の練習。
夜になれば勉強をして、寝る前に地球の視聴者たちと雑談をする。
昔では考えられない、そんな忙しい日々にも慣れた。
「今日はこの辺で終わります。また明日!」
配信終了のボタンを押す。スマートフォンの画面が切り替わり、いつものホーム画面へ戻る。
「さて、今日はもう寝るか……」
そう呟いた、その時だった。
――ピコン。
聞き慣れた電子音が部屋に響く。
「ん?」
画面の右上に、小さな赤い通知マークが浮かんでいた。
【配信者ランクがアップしました】
「……あ。」
思わず間の抜けた声が漏れる。
「そういえば、こんなのあったな……前は二回目の配信の後だっけ…」
異世界に来たばかりの頃は、通知が来るたびに一喜一憂していた。だが、この一か月以上は剣や魔法の修行に夢中で、すっかり存在を忘れていた。あれから、だいぶ期間が空いたのもあるだろう。
「えーっと、今回は何が増えたんだ?」
伊織はベッドへ腰掛けると、通知をタップした。
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配信者ランクアップ
Rookie
↓
Amateur
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解放内容
・GGシステム
・GGショップ
・メンバーシップ
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「…なんだか、色々と増えたな。」
メンバーシップは何となく分かる。しかし、GGとは何なのかがわからない。伊織はとりあえず上から順に見ていくことにした。
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GGシステム
視聴者から送られたスーパーチャットやギフトを、GG(Gift Gold)へ変換します。
GDはGDショップでアイテムや配信機能の購入に使用できます。
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:GGショップ
GDを消費して配信用デバイス、便利機能、アイテムを購入できます。
デバイスの機能は、配信者ランクの上昇に応じて順次解放されます。
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メンバーシップ
視聴者がメンバーになることで、毎月GGを獲得できます。
配信者ランクが上がると、限定特典を設定できます。
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「なるほど…スパチャで色々買えるって事か。」
確かにスーパーチャットは配信の醍醐味だが、異世界にいる伊織にとっては地球のお金を受け取っても使い道がない。だが、こうしてGGとして活用できるなら話は別だった。
「だけど、俺なんかにスパチャ送る物好き要るかな。ましてや、メンシプなんて…」
伊織は異世界にいる以外は、普通の青年だ。アイドルのようなイケメンでもなければ、そのスポーツで活躍もしていない。よほどの物好きでもなければ、金を使う理由もないだろうと伊織は思った。
「まぁ、期待半分くらいにしとくか…母さんとかがお小遣いとして送ってくれるかもだし」
そう思い、伊織は床に就いた。
翌日、朝にいつも通り配信を開始してストレッチをしていると
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:あれ、スパチャできるくね?
:スパチャ送れるようになってる
:ようやくできるようになったんか
:ホントだ
:スパチャ送っても使い道無くない?
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コメント欄でスパチャが出来るようになったことが話題になっていた。
「そのことなんだけど…」
伊織は視聴者に配信者ランクが上がり、GGシステムなどが解放されたというのを話した。配信者ランクについては、以前にステータスのことを話したときに説明していた。
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:なるほど
:スパチャで色々買えそうなのか
:都合のいい機能
:便利やな
:¥10000 とりあえずご祝儀
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「…え?」
突然、一万円の文字が流れてきて伊織は固まってしまう。
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:¥15000 先越された
父:¥15000 頑張れよ
:¥8000 おめでとう!
:¥10000 色々買いな
母:¥10000 頑張ってね
:¥5000 いつも楽しんで見てるよ!
:¥15000 とりあえず送っとけ
手毬(妹):¥5000 もってけドロボー!
:¥10000 お前ら、金の貯蔵は十分か?
:¥8000 スパチャにビビってるやついるー?
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「…え、え、ちょちょ待って待って!」
どんどん送られてくるスパチャに慌てて止めに入る伊織だが、その様子に面白がったのかその後もスパチャの勢いは止まらず。最終的に…
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現在GG:352000
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「…なんか、凄い量になっちゃった…」
嬉しいというより、怖いが勝つ伊織である。
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:草
:反応が楽しくて
:後悔はしていない
:とりあえずショップ見たら?
:何が買えるか気になる
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「そうだね…皆、ありがとうございます。こんだけあれば何でも買えそう。」
むしろ買えてくれ頼む、と祈りながらGGショップを開くと…
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GGショップ
▶配信コーナー
配信デバイス・配信機能
▶デパート
食品・飲料・日用品
▶ホームセンター
工具・アウトドア用品・生活用品
▶娯楽コーナー
書籍・辞典・娯楽
▶期間限定
季節商品・イベント商品
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「お、おおお!」
並んでいる文字列に伊織は思わず声が上がり、背筋が伸びる。
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:思っていた以上にしっかりしてる
:配信コーナー気になる
:期間限定めっちゃ気になるんだが
:娯楽コーナーは何があるんだろう
:デパートやホームセンターは地球産か?
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どうやら、視聴者側からも見えているようだ。
「とりあえず、一番上から見ていこう。」
伊織は配信コーナーをタップすると、ズラーと文字が並ぶ画面へと移る。ゆっくりとスライドしながら見ていく。
「マルチカメラ…配信ドローン…配信コンタクト?…画質向上…いろいろあるな」
一つ一つ確かめながらスライドするが、見たことのない機能や物が買えるようだ。だが、共通していることが
「どれも高い…」
一万GGは当たり前、五万や十万、中には五十万など到底手が届かないような物が売ってある。
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:30万あっても買えないのあるのか
:ドローンとかいいんじゃない?
:配信コンタクトいいな
:これ以上画質上がるのか
:これはさらにスパチャ送るチャンス?
:スッ(財布)
:俺のクレカが火を噴くぜ
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「ありがたいけど、今日はもうスパチャ禁止!!」
続いてデパート欄を開くと、文字と共に写真が乗せられた画面が映る。そこには懐かしの地球の商品が並んでいた。
「おお、期待してたけど…本当に…。」
レトルト食品やカップ麺、缶詰めにお菓子、飲み物にシャンプーなど懐かしのラインナップにテンションが上がる。
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:加工食品しか無さそうやな
:生鮮食品ないのか
:しょうがないのかな?
:でもこんだけあれば困らなそう
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ホームセンターにはロープや寝袋やランタンなど、異世界でも役に立ちそうな物が売ってある。そして、娯楽コーナーにはボードゲームや本などが売ってあった。
「…漫画とラノベが無い…。」
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:残念
:さすがに無いか
:漫画とラノベは異世界から帰ってからやな
:料理本やサバイバル本とか役立ちそうじゃない?
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そして、最後の期間限定には
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期間限定
▶梅雨特集
▶初夏フェア
▶母の日特集(終了)
▶父の日特集
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「これは…」
伊織の目を引き付けたのは、母の日特集と父の日特集だ。どちらも売っているものがカーネーション(造花)にメッセーカードとギフトセットだった。母の日の物はもう買えないが
「…母さん、ごめん。忘れてた…。」
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:急に泣けるんやが
:それな(;;)
母:気にしないで
父:気にするな
手毬(妹):兄ちゃんの分まで母さん祝ったから!
:仕方ないよ
:この状況で気にするのが無理がある
──────
少し、しんみりとした空気になってしまったが伊織は気を取り直して他のラインナップを見てみると、梅雨特集には防水や傘が初夏フェアには虫よけや冷感商品などその季節になるとあったら嬉しいものが売っていた。
「さて、これで全部見れたかな。」
気になるのは、やはり配信コーナーだろうか。ぱっと見でも気になるものばかりだった。
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:試しに何か買ってみたら?
:安いやつとか買って試そう
:どんな感じで出てくるんだろう
:食品系とか試そう
:ジュースかなんか買ってみたら?
______
「確かに…」
伊織は視聴者のコメントに賛成してデパートの欄にある、お茶を試しに買ってみる。すると、手元に光の輪が現れてスッと物が落ちてきた。伊織は落ちてきたぺットボトルを手に取る。
ラベルを見た瞬間、思わず笑みがこぼれた。
「……本物だ。」
キャップをひねる。
――カチッ。
小気味よい音、伊織はそれだけで胸の奥が熱くなる。ゆっくりと口へ運ぶ、冷たい緑茶が喉を通り抜けた。
「…………。」
渋み。ほのかな甘み。飲み慣れた、何の変哲もない味。
なのに、その一口がたまらなく懐かしかった。
「……うまい。」
思わず漏れた一言に、伊織は自分でも苦笑する。
「コンビニで百円ちょっとで買えたお茶なのにな。」
異世界へ来る前は、何とも思わず飲んでいた。こんな当たり前の味が、これほど恋しくなるなんて伊織は思ってもみなかった。
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:その一口が沁みるんよな…
:日本のお茶はうまい
:普通が一番ありがたい
:帰ったら好きなだけ飲もう
母:今度帰ってきたら、いっぱい淹れてあげるね
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伊織は最後の一口を飲み干し、満足そうに息を吐く。
「ふぅ……。」
手元には空になったペットボトルだけが残った。
「……あ。」
そこで伊織はあることに気付く。
「これ、ゴミどうしよう。」
異世界には当然、ペットボトルの回収所などない。適当に捨てるわけにもいかず、困っているとスマートフォンが小さく震えた。
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GGショップ
空容器を検知しました。
回収しますか?
はい
いいえ
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「そこまでやってくれるのか。」
試しに「はい」を押す。すると、空のペットボトルは淡い光に包まれ、音もなく消えていった。
「……便利すぎる。」
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:神機能
:ちゃんと回収されるんか
:環境にも優しいw
:異世界にペットボトルをばら撒かなくて済むな
:システム有能
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「……よし、とりあえずは日課を終わらせてから考えよう!」
伊織は立ち上がって大きく伸びをする。GGショップには、まだ見切れていない商品が山ほど残っている。どんな物を買うべきか。それを考えるのは、今日一日を終えてからでも遅くはない。
そうして伊織は、いつも通り剣の鍛錬へ向かった。
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