異世界配信 ~スマホ一つで地球へ配信しながら元の世界を目指します~ 作:JOJI
―進捗率100%―
―異世界ライブ配信システム―
―初期設定完了―
そんな文字が浮かんだ後、画面はいつものホーム画面に移らずに見慣れないアイコンが並び中央に大きく【配信を開始しますか?】の文字と、【はい】【いいえ】の選択肢が表示されていた。
「…これって、地球につながってるって事だよな…。」
迷いは一瞬だった、これ一つで何かが変わるのであれば躊躇はない。伊織は【はい】をタップする。
接続中…
地球のネットワークに接続しました
各配信サーバーに接続中…
接続しました
各配信のコメント欄を同期しました
配信を開始します
配信が開始されました
タイトル:【異世界から助けを求めています】
カテゴリ:雑談・異世界
「…タイトル、勝手に決められてるし…。まぁ、いいや」
画面が切り替わり、フロントカメラに切り替わる。少し顔色の悪い自分の顔が映り、画面端にコメント欄やら視聴者数やらが並んでいる。
視聴者:0人
コメント:0人
まだ誰も見に来ていない、当然か。こんな突然配信しても誰も見に来ないだろう、それでいい。とりあえずは配信を残すことが目的だから。
「俺の名前は田中伊織です。おそらく、三日前に行方不明になっていると思います。今から話すことは信じられないと思うけど…」
そうして、伊織はここまであった事を振り返りながら話し出す。2日間森を彷徨ったこと、魔物に襲われたこと、優しい夫婦に助けられたことを。
視聴者:1人
コメント
「テスト配信?」
視聴者:4人→10人
「新しい配信者?」
「釣り?」
「ネタ配信?」
「背景暗くて分からん」
「急におすすめに出てきたんだけど」
話している最中にもさらに、20人、30人と増えだす。伊織は話すことに集中していて気が付かない。
視聴者:33人
「釣りだろ」
「でも話がなんかリアルな感じがする」
「気が付いてないのか?」
「録画?」
「こいつ、どこかで見た気がする」
「内容はリアルじゃないだろ」
話が今日のことに差し掛かった時にようやく気が付いた。
「…え?、見えているのか…?」
そう思わず漏れた言葉にコメント欄も疑問符が飛び交っているが、伊織は希望が見えた。
「あの!そっちでは、今何日何月ですか!?」
視聴者:40人
「急に変なこと聞くな?」
「1月14」
「もうすぐ15だけどな」
「まだ21時だろ」
「コメント欄で会話すな」
1月14日、転移した日は1月12日だからちょうど三日…向こうは21時くらいでこっちも夜が耽ってそれなりに立つから、時差はほとんど無いと見ていいだろう。
このスマホはほぼ間違いなく地球に繋がっている。
「あの、信じられないかもしれませんが俺本当に異世界にいるんです!」
視聴者:106人
「おすすめから来た」
「面白い設定だな、新人V?」
「でも3Dじゃないぞ、背景も合成っぽくない」
「面白そうだから拡散した」
「調べた、こいつ3日前に行方不明になっている学生だ」
「高校生じゃん」
「今日ニュースで見た、行方不明になっている子だ」
「マジかよ、配信やっている場合か?」
「異世界だっていう証拠はw」
「まず親に連絡しろよ」
「親御さん見てる?」
「通報した(警察)」
「こいつら…いや、証拠か…」
伊織はあたりを見渡して手っ取り早く証拠になりそうなものを探す。しかし、頑張れば現代でも再現しようと思えばできる家具と部屋で証拠になりそうなものがない。
「…ん?」
そこで窓の外に視線を移すとありえないものが見え、思わず窓を開ける。窓を開けた瞬間、夜風が頬を撫でた。
夜の暗闇を明るく照らす大きな月、それが二つ見えたのだ。しかも片方は青白く、もう片方はほんのり赤く見える。
視聴者:143人
「?????」
「月二つある」
「え?」
「CG?」
「合成?」
「待って」
「え、本物?」
「赤い月って何?」
「加工じゃね?」
「鳥肌立った」
「これどこ?」
「月二つあるんだけど」
「え、鳥肌」
「CGなら凄すぎる」
「待って保存した」
「…どこなんだろうな、ホント…」
コメント欄が高速で回り出す。月が二つあることに一気に規模感が増し、ホントに異世界に来てしまったという実感が湧いてくる。
「これ以上騒げば、眠っている二人を起こしてしまう…」
そう思い、短く断りを入れると一旦配信は停止した…雑に閉めてしまったがまぁいいか…。100人くらいの視聴者がいたし10人くらいは拡散しているだろう、これで俺の生存が家族に伝われば良いが…
そう思いながら、今日は眠りに着いた。
この夜、たった百数十人が見ていた配信は翌朝には日本中を、そして世界中を駆け巡ることになる。
それを、伊織はまだ知らない。
短いですが、落ちが着いてしまったので…今日中には4話上げると思います。