異世界配信 ~スマホ一つで地球へ配信しながら元の世界を目指します~   作:JOJI

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疲れた…次回からはもう少し文字数減らさないともたねぇ。


第4話 質問多すぎる!

 翌朝、部屋のドアがノックされる。

 

「坊主、朝だぞ!」

 

「…んん…はい…」

 

 大きく欠伸をするとベッドから起き上がり、寝巻きを脱いで昨日借りた服へ着替える。足の調子は悪くない、薬草とやらのおかげだろうか。最後に、枕元へ置いていたスマホを手に取った。

 

 何気なく画面を点けた、その瞬間――。

 


登録者:7,412人

視聴者数:21,280人

次回、配信視聴予約数:1,860人

 

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・昨日の配信が話題になっています

・「異世界ライブ配信」が急上昇1位になりました


 

 「……え?」

 

 思わず二度見した。昨日の配信が終わった時は、確か登録者は百人ちょっとだったはずだ。

 

「な、何これ……」

 

 寝ぼけている訳じゃない。画面を何度見返しても、数字は変わらない。

 

(一晩で……何があったんだ?)

 

「坊主ー!飯にするぞー!」

 

「あ、はい!今行きます!」

 

 とりあえず、これのことは後回しにしよう。スマホをポケットに突っ込むとリビングへと足を進めた。

 

 

 リビングに行くと二人が食事の準備をしていた。

 

「あ、手伝います。」

 

「あら、ありがとう。じゃあ、料理を並べておいてくれる?」

 

「わかりました」

 

 伊織はメリーナの指示に従って料理を机の上に持っていく。並べ終わると、二人も支度が終わったのか席に着いた。

 

「よし、それじゃ」

 

 二人は顔を合わせると、両手を合わせる。

 

「「いただきます」」

 

「っ…いただきます。」

 

 ホントにやるんだという感情と、感動のような言い表せない感情を抱きながら食事を始める。メニューは燻製肉がない以外は昨日と同じだ。朝には十分な量だ。

 

 二人が他愛ない話をしている中、勇気を出して切り出す。

 

「…あの、この後少しだけ話があります。」

 

「なんだ?」

 

「…僕のことについてです。」

 

 二人は一度顔を合わせると頷いてくれた。

 

 

 食事の片づけが終わり、二人と向かい合う形で座る。

 

「……実は、僕はこの世界の人間じゃないんです。」

 

 一瞬、部屋の中が静まり返った。カジートもメリーナも驚いた様子は見せるものの、口を挟まず続きを待ってくれている。

 

 伊織は小さく息を吸った。

 

「僕がいた世界には魔法も魔物もありません。エルフも……存在しません。」

 

「ふむ……」

 

「三日前まで、日本っていう国で暮らしていました。でも気が付いたら森の中にいて……そこからは、お二人が知っている通りです。」

 

 言い終えると、伊織は頭を下げた。

 

「正直、自分でも何が起きたのか分かりません。でも……嘘は言っていません。」

 

 しばらく沈黙が流れる、やっぱり信じてもらえないか。

 

 そう思った時だった。

 

「……なるほどな。」

 

 カジートが腕を組みながら頷いた。

 

「え……?」

 

「普通なら、とても信じられる話じゃねぇ。」

 

 伊織は苦笑する。同じ立場なら、きっと自分もそうだ。

 

「ですよね……。」

 

「だがな。」

 

 カジートは伊織の目を真っ直ぐ見た。

 

「お前さんの目は、嘘をついてる目じゃねぇ。」

 

 その一言だけで、胸の奥が熱くなる。

 

「それに、森で見つけた時のお前さんの格好も見たことがない服だった。持っていた道具も不思議な物だったしな。」

 

 カジートが机に置いてあるスマホに目を向けながら話す。そして、メリーナも優しく微笑む。

 

「最初から普通の旅人じゃないとは思っていたの。」

 

「……信じて、くれるんですか?」

 

 思わず聞き返してしまう。メリーナは当然のように頷いた。

 

「全部を理解したわけじゃないわ。でも、困っているあなたを助けたい気持ちは変わらないもの。」

 

 カジートも豪快に笑う。

 

「そういうことだ。異世界だろうが空の上だろうが、お前さんが困ってることには変わりねぇ。」

 

 伊織は言葉を失った、昨日会ったばかりの二人だ。それなのに、自分の話を笑い飛ばすことも、疑い続けることもしない。

 

「……ありがとうございます。」

 

 自然と頭が下がる。そんな伊織を見て、カジートはふと何かを思い出したように顎へ手を当てた。

 

「そういや昔、旅をしてた頃に妙な噂を聞いたことがある。」

 

「噂……ですか?」

 

「ああ。『空の彼方から迷い人が現れた』って昔話だ。本当かどうかは知らねぇがな。」

 

 伊織は思わず身を乗り出す。

 

「じゃあ……元の世界へ帰った人も?」

 

「そこまでは知らん。」

 

 カジートは首を横に振った。

 

「だが、村長なら何か知ってるかもしれん。あの人は若い頃、世界中を旅していたからな。」

 

 伊織の胸に、小さな希望が灯る。

 

「……分かりました。」

 

「よし、全は急げだ!村長のもとへ行くとしよう!そのあとは、村の案内だ!」

 

「はい!…あ、もう一つだけいいですか!?」

 

 伊織はスマホを見て思いだして慌てて呼び止める。

 

「お、おう。どうした?」

 

 伊織は両手でスマホを二人に見えやすいように持つ。

 

「実は、この道具なんですけど…」

 

 二人の視線が伊織のもつスマホに集中する。

 

「僕の世界では、遠く離れた人たちと映像や声を届け合える道具なんです。」

 

「ほう?」

 

「ただ、昨日試したら……向こうと繋がってしまって。」

 

「向こう?」

 

「僕がいた世界です。」

 

 二人は目を丸くする。

 

「つまり、この中にお前さんの世界の人間がおるのか?」

 

「はい。まだ信じてもらえているかは分かりませんけど……」

 

 伊織は画面を見つめ、小さく息を吐く。

 

「だから今日、この村を映したいんです。」

 

「村を?」

 

「この世界が本当に存在するって証明したいんです。」

 

 二人は少し考えると、先にカジートが答える。

 

「そういう事なら、好きに写していいぞ!」

 

「私たちが映っても大丈夫なの?」

 

「嫌なら映しません」

 

 少し困った顔で答えると、メリーナが笑って

 

「私は構わないわ」

 

「村の連中には一応話ておいた方がいいかもしれんな!」

 

とカジートも返してくれる。

 

「分かりました」

 

 

 

支度を整えて、カジートの古い靴を貸してもらう。少しぶかぶかだが、動く分には問題ない。

 

玄関の扉を開けた瞬間、伊織は思わず息を呑んだ。

 

「……すごい。」

 

 朝日に照らされた村が、目の前いっぱいに広がっていた。

 

 石畳ではなく土が踏み固められた道。その両脇には木と石で造られた家々が並び、煙突からは白い煙がゆっくりと空へ昇っている。

 

 畑では農具を持った人々が朝から働き始め、井戸では女性たちが笑いながら水を汲んでいた。

 

 子どもたちは木剣を振り回して駆け回り、その横を大きな荷車がゆっくりと通り過ぎていく。

 

 どこにも車の音はない。

 

 信号も、電柱も、自動販売機もない。

 

 聞こえてくるのは、人々の笑い声と鳥のさえずり。そして風が木々を揺らす優しい音だけだった。

 

「これが……異世界。」

 

 昨夜、月が二つ浮かぶ空を見ても、まだどこか現実と夢の境目にいるような感覚があった。

 

 けれど、この景色だけは違う。

 

 人が暮らし、笑い、働いている。

 

 ゲームでも映画でもない、本当に生きた世界がそこにはあった。思わず空を見上げる。

 

 どこまでも澄み切った青空の向こうには、雲を突き抜けるほど巨大な一本の樹が、遥か遠くにそびえ立っていた。

 

「……あれは?」

 

 あまりにも大きすぎる。森の中からだとわからなかったが、ここからでも首を見上げてもてっぺんがかすかにしか見えないほどだ。

 

「世界樹だよ。」

 

 隣でカジートが当然のように答える。

 

「この辺りからでも見えるくらいだからな。もっと近くで見ると腰を抜かすぞ。」

 

 伊織はしばらく言葉を失ったまま、その巨大な樹を見つめ続けていた。

 

「おーい、行くぞ~」

 

 少し進んだところでカジートが呼び、その声に我に返る。慌ててスマホを取り出す。

 

「少し、待ってください!」

 

伊織はスマホを操作する。

 


異世界ライブ配信

 

タイトル

【異世界】村長さんに会いに行きます【本物です】

 

配信を開始しますか?

 

はい   いいえ


 

伊織は一呼吸置いて、タップする。

 


『配信を開始しました』

 

視聴者数:842

 

視聴者数:1,057

 

視聴者数:1,314


 

配信を開始したとたん、待ってましたと言わんばかりに視聴者がなだれ込んでくる。

 

「えっ、もう千人超えてる……」

 


コメント

「きたああああ!!」

「待ってた!」

「今日は朝配信か!」

「昨日の異世界マジだった?」

「村!?人が住んでる!」

「お兄ちゃん!?」

「なんだ、あのでっかい木!?」

「こんな古い村世界にあるのか!?」


 

「…おはようございます。今日はこの村の村長さんに話を聞いて、そのあと村の案内をしてもらう予定です。人を待たせているので早速行きます。質問は道中で…」

 

 そう断りを入れて、二人のもとへ急ぐ。

 

「ごめんなさい、お待たせしました!」

 

「大丈夫よ」

 

「村長の奴はほとんど暇人だしな!」

 


「筋肉ゴッツ!」

「めっちゃ美人!」

「耳尖ってね?」

「カッコいい」

「誰?」

「見たことない、俳優?」


 

 伊織はコメントの流れからして二人のことを疑問に思っているんだなと読み取る。

 

「こちらの方たちは、俺が森で遭難していたところを助けてくれた夫婦です。カジートさんとメリーナさんです。」

 

「お、おう。ほんとにこの道具の中に人がいるのか?」

 

「い、いえ、この道具と同じものを持っている人にこの道具に映っているのを届けることができるんです」

 

「すごいのね…」

 


「うわ、どっちもレベルたけぇ」

「惚れた」

「ウホッ」

「可愛い」

「そんなドアップに映さないで、惚れちゃう」

「結婚したい」

「夫婦なんだよなぁ」


 

「なんて書いてあるんだ?」

 

「い、いえどうでもいいことですよ。さ、村長のもとへ行きましょう!」

 

村長までの道中を歩いていると、いろんな質問がコメント欄に飛び交った。

 

【その道って舗装されていないの?】

 

「そうですね、土の道です」

 

「舗装された道は、王都みたいなでかい街くらいしかねぇな。」

 


コメント

「王都!?」

「王都あるのか!」

「通信量エグそう」

「画質綺麗すぎ」

「ゲームみたい!」


 

畑が見えたら

 

【何を育てているの?】

 

「なんですか、あれ?」

 

「小麦よ」

 


コメント

「小麦あるんだ!」

「パン文明だった!」

「スマホ何使ってる?」

「親御さん見てるかな…」

「米無いのか…」


 

井戸を通ると

 

【水道水ないの?】

 

「そういえば…水ってどうしているんですか?」

 

「井戸の水を湯がいているな。」

 

「私は魔法で浄化してから飲むこともあるわ。」

 


「インフラ整ってないのか?」

「そもそも水道ないかもしれんぞ、異世界だし」

「魔法!?」

「魔法きた!!」

「まだ信じられん」

「あるのか、魔法!」


 

世界樹が映ると

 


「え?」

「でっっっか!」

「何あれ!?」

「山?」

「大樹ってレベルじゃねぇぞ!」

「木?」


 

「あれは、世界樹らしいです」

 

「私が生まれた時には、もうあったわ。」

 

 

などと、伊織がコメント欄に悪戦苦闘していると道中でおばあさんと出会う。

 

「あら、カジートさん。」

 

「おう。」

 

「その子、元気になったんだねぇ。」

 

「ええ、おかげさまで。薬草、分けていただき助かりました。」

 

「いいのよ」

 

 その言葉でこの人にも助けられたのだと察する。急いで伊織は頭を下げた。

 

「ありがとうございます!助かりました!」

 

「いいのよ!怪我が治ったようでよかったねぇ。」

 


コメント

「いい村だ」

「泣く」

「優しい世界」

「いい人すぎる」


 

 

 

視聴者が一万を突破したあたりでコメント欄がさらに加速して、恐ろしい速さでコメントが流れる。

 

「えっと……『牛はいるんですか?』……え、『トイレどうしてる?』……『あの鳥は何?』……質問多すぎる!」

 

と少し慌てる。そんな伊織の姿を見てカジートが不思議そうに

 

「忙しそうだな、その道具は。」

 

と笑った、それに伊織も苦笑する。

 

「そうですね……。」

 

コメントは止まらない。

 


視聴者数

12,854

 

13,201

 

13,887


 

(まだ増えてる、こんなに見てるのか……。)

 

遠くに今まで見た家より、大きい家が見えた。村長の家までは、まだ少しかかりそうだ…。




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