異世界配信 ~スマホ一つで地球へ配信しながら元の世界を目指します~   作:JOJI

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第7話 帰ろう、絶対に

 

 

村長宅からの帰路を歩く、思っていた以上に話し込み日が暮れ始めていたため村の案内は後日に持ち越された。歩きながら今後の目標を頭の中に思い浮かべる。

 

まずはこの世界を知ること、これは村長のエルビが時間がある時に教えてくれるとの事だ。村長としての仕事もあるため申し訳なかったが、人に物を教えるのは好きらしくとても張り切っていた。

 

次に身を守る術を身につけること、こちらは元冒険者であるらしいカジートとメリーナが教えてくれるとの事だ。

 

最後は旅の資金を貯めること。

 

村の手伝いでも多少は稼げるが、それだけでは王都までの旅費を用意するには時間が掛かる。

 

村長曰く、近くの街で冒険者登録をして依頼をこなせば、資金を稼ぎながら実戦経験も積めるためカジート達の指導が落ち着いたら冒険者になるのがいいだろう。

 

そんな事を考えている間に、カジート夫妻宅に着いた。カジートが腹減ったと言いながら家に入りメリーナも続いて入っていった。その後に入る前に、スマホに顔を向ける。

 

「すみません、自分の事でいっぱいで配信の事に気が回りませんでした。ごめんなさい。」

 

───

:いいって事よ

:これから大変だね

:がんばれよー

:頑張れ

:今度、剣術家の友人配信誘ってくる

:トレーナーの知り合い誘ってみる

:視聴者凄い

:ランキングから来ました

:仕事で見れんかった

───

 

「暖かいコメントありがとうございます。これから、地球へ帰るために頑張っていきます。それじゃあ、次の配信は明日の朝になると思います。それでは…」

 

そう言って、配信を切ろうとしたら。「お疲れ様」というコメントの間に複数のアカウントが「待って」とコメントしているのを見つける。

 

それで、少し待ってみると──

 

:伊織、お母さんよ。読めてる?

:お兄ちゃん!気づいて!

:父さんだ。気づいてくれ

 

「っ!?」

 

そのコメントを見つけ、思わず息を飲んだ。見てくれてるかもしれないとは思った、だがいざ見つけるとスマホを握る手が震えた。

 

「……母さん。」

 

「父さん……。」

 

「手毬……。」

 

震える声で呟く、コメント欄が一瞬静かになる。

 

そして──

 

母:良かったわ

手毬:ずっと皆で見てたんだよ!

父:元気そうで安心した

 

「ご、ごめん。気が付かなかった…コメントが早くて…」

 

:すみませんでした

:気が付かなかった

:すまんと思ってる

:これフィクションちゃうの?

:静かに

:家族だぞ

:お前ら静かにしとけ

:傾聴!

 

 

一瞬、視聴者の謝罪コメントが流れるがすぐに流れが止まりまた静かになる。民度が良すぎる、未だに視聴者1万人超えの配信なのか疑わしくなるがこの際はありがたい。

 

母:本当に生きてて良かった

 

「心配かけて、ごめん…」

 

父:怪我は無いか?

 

「足を少し怪我していたけど、もう大丈夫だよ。」

 

手毬:馬鹿!

手毬:どれだけ心配したと思ってるの!!

 

手毬:でも本当に良かった

 

「ごめん、本当にごめん」

 

母:帰ってこれるの?

 

その母のコメントに、一瞬声が詰まる。だが、正直に答える。

 

「…分からない、でも帰る。絶対に帰るから」

 

父:分かった

父:焦らなくていい

父必ず生きて帰ってこい

 

「うん、必ず帰る。」

 

手毬:お兄ちゃん、余裕あったら異世界のお土産お願い!

 

「…お前…余裕があったらな。」

 

:妹ちゃん図太いw

:俺も異世界のお土産欲しい

:転売して♡

:本当に心配してた?w

:転売ヤーは絶許

 

妹のコメントで空気が崩れたのか少しづつコメントが戻ってくる。

 

母:ご飯ちゃんと食べてる?

 

その母のコメントが見えて思わず笑いが漏れる。

 

「うん、今日も食べたよ。」

 

:母ちゃんwww

:そこかよw

:泣いてたのに笑った

:異世界の料理気になる

:正直気になるw

:ご飯も配信して♡

 

「ごめん、流石にそれは配信できないかも。でも、写真が撮れたら撮るよ。」

 

「坊主、飯だぞ〜」

 

「はい!あ……、もう行かなきゃ。」

 

父:優しい人達なんだね

 

「うん、命の恩人。」

 

母:迷惑を掛けないようにね

父:お礼を伝えておいてくれ

父:息子を助けてくれてありがとうと

手毬:頑張ってよ!お兄ちゃん!明日も見るから!

 

「多分、もう沢山迷惑掛けてるしこれからも掛けると思う。でも、それ以上に恩返しするつもりだよ! 父さん、必ず伝える! 手毬、余裕があったらでいいからな。」

 

:泣くわ

:家族と繋がれた…

:よかった…

:今日は何も言えねぇ

:本当に生きてて良かった

:泣いた

:頑張れ伊織

 

「それじゃあ、これから頑張って行きますので応援よろしくお願いします!」

 

そう言って、伊織は配信を閉めた。

 

伊織は家族との会話を思い出し、深呼吸する。

 

「よし」

 

涙を拭き取る。

 

家族と交わした約束だけは、絶対に守ろう。

 

─ピロン、ピロン、ピロン─

 

と、不意にスマホから通知が複数鳴り響く。

 

「な、なんだ?」

 

気になった伊織はスマホを見ると─

 

─────

通知

:配信結果

獲得PT:2200

*PTが蓄積されました

 

:配信PTが規定数を突破しました。

配信者ランクが上がります

━━━━━━━━━━━━━━

配信者ランクアップ

 

Beginner

 

Rookie

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

解放内容

・PTショップ

 

───

 

「な、なんだこれ…」

 

急な情報にそう言葉を漏らすしか無かった。

 

PT?配信ランク?PTショップ?

 

「これは、一体…」

 

「おーい!坊主、まだかー?」

 

「あ、すみません!今行きます!」

 

気になってその欄をタップしようしたが、カジートに呼ばれたため後回しにし家の中へと入って行った。

 

 

 

 

「さて、これだな?」

 

夕ご飯を食べ終わり、一通りの片付けや湯浴みが終わり床に就く準備が整って部屋に戻った伊織は早速スマホの先程の機能を開く。

 

━━━━━━━━━━━━━━

PTショップ

 

現在PT:2790

 

利用可能カテゴリ

 

▶ステータス

▶魔法

▶サポート

???

???

━━━━━━━━━━━━━━

 

「…ショップ?」

 

どうやら、PTなる通貨を使ってこの欄にある何かを買う機能のようだ。 今日の配信で獲得したPTは2200だったはずだが

 

(……2790?)

 

よく見ると履歴には初めて配信した昨日の配信結果も残っていた。

 

『獲得PT:590』

 

昨日は気付かないまま寝てしまっていたらしい。

 

「ふむ…」

 

伊織はとりあえずステータスという部分をタップした。

 

━━━━━━━━━━━━━━

ステータス

 

筋力   Lv1 +50PT

 

体力   Lv1 +50PT

 

敏捷   Lv1 +50PT

 

魔力   Lv1 +50PT

 

精神   Lv1 +50PT

━━━━━━━━━━━━━━

 

「これは…能力を上げられるのか?」

 

ステータスという名前だから、自分のステータスを見れるのかと思ったがどうやら違うようだ。この項目にある5つの能力を上げられるようだが、敏捷、精神とはなんだろうか。

項目をタップしても何も表示されない、そこまで親切ではないようだ。

 

「説明くらい付けてくれてもいいだろ……。」

 

ステータスの欄を静かに眺める。

 

「なにか、試しに1つ振ってみるか……いや、だがどういう効果なのか分からないのに振るのは…でも、何も試さないままなのも不安だ。」

 

この中で、1番腐らなそうなものは…

 

━━━━━━━━━━━━━━

ステータス

 

筋力   Lv2 +100PT

 

体力   Lv1 +50PT

 

敏捷   Lv1 +50PT

 

魔力   Lv1 +50PT

 

精神   Lv1 +50PT

━━━━━━━━━━━━━━

 

「少なくとも力があって困ることはない……はず、筋肉は裏切らないって言うしな…誰が言ったかは知らんけど…うぉ!?」

 

スマホから淡い白い粒子が溢れ出し、蛍のように宙を舞う。その光はゆっくりと伊織の胸へ吸い込まれていった。

 

「い、今のは…あれで俺の筋力が上がったってことか?」

 

試しに軽く体を動かすが、変わった感じはしない。レベルが1上がるくらいじゃ実感が湧くような変化はないようだ。

 

「でも、確かに何かが俺の中に入った。何かは変わっているはずだ。よし、次を見よう…」

 

━━━━━━━━━━━━━━

魔法

 

利用条件未達成

 

配信者ランク:

Rookie

 

解放予定:

魔力測定後

━━━━━━━━━━━━━━

 

「使えない?」

 

いや、よく見たら魔力測定後と書いてある。どうやら、まだ使えないだけでいずれ使える可能性があるようだ。思わず口元が緩む。

 

━━━━━━━━━━━━━━

サポート

 

共通語翻訳

 

Lv1

(取得済)

 

詳細を見る

━━━━━━━━━━━━━━

 

「これは…」

 

━━━━━━━━━━━━━━

共通語翻訳

 

会話

 

読解

 

筆記

×

 

Lv2で解放

━━━━━━━━━━━━━

 

「なるほど、俺が言葉を理解できたのはこれのおかげか…」

 

どうやら、レベル2で筆記が解放されるようだが… どうやら今は、レベルを上げる方法すら分からない。

 

そして最後の?の欄はまだ配信者ランクとやらが足りないらしく見れなかった。

 

伊織はショップを閉じようとし、ふと現在のPTを見る。

 

現在PT:2740

 

「まだ、こんなにある…」

 

ふと、このままもう少しだけステータスを振るかを考える。だが、すぐに考えを否定する。

 

「いや、まだやめておこう。」

 

戦ったこともない俺が、何を伸ばすべきかなんて分からない。そんな状態で勢いだけで使うべきじゃない。

 

カジートさんに剣を教わって、魔法も見て、この世界を知ってからでも遅くはない。

 

──ピロン─

 

ショップを閉じてホーム画面に戻ると、通知が鳴る。そこには

 

:配信者へのアドバイス

 

現在の推奨目標

おすすめ

・剣術を学ぶ

・魔力測定を受ける

・冒険者登録を行う

 

「…アドバイスまで出るのか…。」

 

だが、今更言われるほどのことでもない。そう気にせずにスマホを置いてベッドに寝転がる。

 

「母さん…父さん…手毬…」

 

一人一人、家族の顔を思い浮かべ、そして配信での会話を思い出す。

 

「帰ろう、絶対に」

 

 

部屋の窓から、異世界の二つの月が静かに部屋を照らしていた。その光を見上げながら、伊織は静かに目を閉じた。




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