異世界配信 ~スマホ一つで地球へ配信しながら元の世界を目指します~ 作:JOJI
異世界での生活を始めてから、およそ一か月。
毎朝の素振りと走り込みを終え、昼は村の仕事を手伝う。夕方になればカジートとの組み手。夜はエルビからこの世界の歴史や常識を学び、寝る前にはコメント欄で地球のみんなと話す。
気付けば、それが俺の日常になっていた。
「イオリ、今日は街へ行くぞ」
朝食を食べ終えたところで、カジートがそう切り出した。
「街ですか?」
この村の近くの街と言えば、アントだろう。何回かカジート達が買い出しに行っているのを見送ったことはあるが行くのは初めてだ。
「ここでの暮らしもだいぶ慣れたころだろうし、良い機会だと思ってな。どうだ、来るか?」
「もちろん、行きます!」
そこで、メリーナが何かを思いついたかのように手を合わせる。
「そうだ、ついでに伊織の魔力適正も測っちゃいましょう!」
「お、そうだな。確かに、そろそろ頃合いだな。」
「魔力適正…!」
そこで、伊織はPPショップの魔法の開放条件に魔力適正後という文字が書かれていたことを思い出す。ふとステータスを開く。
|ステータス|Lv|
|筋力|15|
|体力|10|
|敏捷|20|
|魔力|1|
|精神|1|
|スキル|
異世界語翻訳Lv2
ここまで振るとさすがにかなりの恩恵を感じ、昔では考えられないほどの動きができるようになった。コメント欄では、『もうオリンピック選手レベルじゃね?』『いや、これ人間じゃない(笑)』などと言われるほどになっていた。
それと、異世界語翻訳Lv2はエルビと勉強しているうちに解放されていた。
それよりも、魔力適正とやらをやることでようやく魔法を練習できるとのことだ。街に行くのがとても楽しみである。
筋トレと剣術の鍛錬を早めに切り上げて、街へ出かける準備をする。汗を拭き、新品の服に着替えて腰に護身用に持たされたカジートのお古の剣を差す。
「よし」
肩掛けのバックとポーチを腰ベルトに引っ掛ける。準備を終えて、玄関でメリーナと合流するといそいそと配信の準備をする。
___
異世界ライブ配信
タイトル
【異世界】街へとお出かけします。
配信を開始しますか?
はい いいえ
___
配信を開始すると、続々と視聴者が増えていく。
「皆さん、おはようございます。今日は街へとお出かけします。」
───
:おはよう!
:おはよう!
:おはー!
:街キター!
:待ってた!
:村以外見れるのか!
:お出かけ!
:メリーナさんおはよう!
:この近くならアントかな?
:アントか?
:エビル先生との授業の成果がw
───
「準備はできたかしら?それじゃ、行こっか。」
「はい!」
メリーナの言葉に反応し、家を出る。村の出口へと歩いていると、すれ違う村人とあいさつを交わす。
「気を付けてな!」
「お土産話を楽しみにしてるよ。」
「はい!行ってきます!」
___
:完全に村の一員だね
:いい人たちばかりだなぁ
:行ってきます!
:だいぶ、顔も覚えられたね
:村に馴染んだな~
___
途中でカジートが、荷物を運ぶための荷車を引いて合流する。
そうして、村を出ると街道を歩く。村から街への道は、ある程度整備されており。魔物避けの柵が張られ、道は土が踏み固められていて歩きやすい。そこを荷馬車や旅人たちが行き交っていた。
時折、商人らしき一団とすれ違う。馬車には樽や木箱が積み込まれ、中には色鮮やかな果物らしきものまで見える。
そこへ、村へよく品を下ろしている顔見知りの商人と出会う。
「おう、カジート!」
「今日は買い出しか?」
「ああ、ついでにイオリを街へ連れて行く。」
商人は俺へ視線を向けると、気さくに笑った。
「そうかそうか。街は賑やかだから迷子になるなよ!」
「はい、ありがとうございます!」
荷馬車はガラガラと音を立てながら街の方へ進んでいく。
___
:異世界の商人だ!
:馬車きた!
:荷物気になる
:あの果物なんだ?
:普通に物流あるんだな
___
少し進んだ街道の左右には、小麦畑や牧草地が広がっていた。牛に似た四本角の家畜が草を食み、羊より一回り大きな獣がのんびりと寝転がっている。
「うわ……。」
ゲームや漫画でしか見たことのない景色が、目の前いっぱいに広がっていた。
「初めて見る家畜か?」
俺が周囲を見回していると、カジートが笑う。
「はい。どれも日本にはいませんでした。」
「ニホンではどんな家畜を飼っていたんだ?」
「牛とか豚とか羊ですね。」
「ほう、やっぱり世界が違えば似た生き物でも違うんだな。」
___
:四本角!?
:牛なの?
:モ〇ハンにいそうw
:牧場まで異世界だ
:かわいい
___
さらに歩くこと三十分ほど、街道はゆるやかな丘へと続いていた。
その頂上へ差しかかった瞬間だった。
「……あ。」
思わず声が漏れる。丘の向こうに、大きな城壁都市が姿を現した。
灰色の石壁が街全体を囲み、見張り台がいくつもそびえ立つ。城門へ向かう街道には荷馬車や旅人が列を作り、遠くからでも街の活気が伝わってきた。
「見えてきたぞ。」
カジートが指さす。
「あれが、街『アント』だ。」
___
:おおおお!!
:城壁都市!!
:すげぇ……
:ゲームの街みたい!
:鳥肌立った
:ついに街だ!
___
街へ近づくにつれ、人の数はさらに増えていく。荷馬車は列を作り、旅人たちは順番に門をくぐっていた。
城壁の前には鎧姿の兵士が立ち、一人ひとりの荷物を確認している。
「結構、厳しいんですね。」
伊織がそう呟くと、カジートが頷く。
「街は人も物も集まる場所だからな。盗賊や犯罪者が入り込まないようにしてるんだ。」
___
:ちゃんと検問あるんだ
:リアルだなぁ
:RPGだと素通りなのにw
___
少し待つと、順番が回ってくる。
「止まれ。入街の目的は?」
「買い出しと、坊主の魔力適性検査だ。」
門番はカジートを見ると苦笑する。
「なんだ、カジートさんか。」
「今日は新人を連れてきた。」
カジートが俺の肩に手を置くと、俺へ視線が向く。
「初めての入街か?」
「はい。」
「なら説明しておこう。」
そう聞くと、門番は慣れた口調で話し始めた。
「入街税は大人一人、銅貨一枚。商人は荷物に応じて別料金だ。」
「坊主の分も払っとく。」
カジートが銅貨を三枚渡す。
「ありがとうございます。」
「気にするな。」
___
:税金あるんだ
:カジートさんイケメン
:異世界の経済だ
___
門をくぐった瞬間。
「……っ!」
思わず足が止まる。石畳の道が真っすぐ伸び、その両側には木造と石造りの建物が立ち並んでいる。
露店では果物や焼きたてのパン、布や装飾品が並び、客を呼ぶ声が飛び交っていた。
「安いよ安いよー!」
「焼きたてだよ!」
「今日採れた薬草だ!」
鼻をくすぐる焼き立てのパンの香り。香辛料の匂い。鍛冶屋から響く金属を打つ音。
まるで映画のセットへ入り込んだようだった。
___
:すげぇ……
:異世界きたあああ
:パン食べたい
:鍛冶屋!!
:めっちゃファンタジー
___
「うわ……。」
気付けば、歩いている人々も村とは全く違っていた。
猫耳と尻尾を揺らしながら歩く獣人。
大きな荷物を軽々と担ぐ筋骨隆々の背丈の小さいドワーフ。
長い耳を持つエルフ。
さらには、蜥蜴のような顔をした亜人まで見える。
「村じゃ人族とエルフしか見なかったからな。」
「街には色んな種族が集まるのよ。」
メリーナが微笑みながら説明する。
___
:猫耳!!
:ドワーフいた!
:エルフだ!
:ファンタジーだ……
:スゲー
___
見たことのない景色と街並みを見ながら、カジートの横を歩いていると。
「イオリ。」
「……え?」
「さっきから全然前見て歩いてないぞ。」
「あ、すみません!」
「そんなに珍しいか?」
「はい、全部です。」
カジートは豪快に笑う。
「ははっ、最初はみんなそんなもんだ。」
___
:完全に観光客w
:かわいい
:俺でもこうなる
___
しばらく歩いていると、一軒のパン屋の前で思わず足が止まった。店先には焼き立てのパンがずらりと並び、香ばしい小麦の香りが通りまで漂ってくる。
「うわ……いい匂い。」
思わず呟くと、メリーナがくすりと笑う。
「あのお店、美味しいのよ。帰りに寄りましょうか。」
再び歩き始めると、今度はカンカンと金属を打つ音が耳に届いた。顔を向けると、店先に剣や槍、鎧が並ぶ武器屋が見える。
店の奥では、赤く熱した鉄をドワーフの鍛冶師が豪快に打ち続けていた。
「……。」
気付けば自然と足が止まっていた。
「気になるか?」
カジートが苦笑する。
「はい。やっぱり本物の武器屋って格好いいですね。」
「買い出しが終わったら寄ってやる。焦るな。」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
___
:武器屋!!
:テンション上がる
:ドワーフの鍛冶屋きた!
:寄ってくれるの優しい
___
街の中心へ近づくにつれ、人通りはさらに増えていく。やがて開けた広場へ出ると、中央には大きな噴水が設けられていた。子ども達が水辺ではしゃぎ、その周囲では大道芸人が火の玉を操る芸を披露している。
少し離れた場所では吟遊詩人が竪琴を奏で、人々が足を止めて耳を傾けていた。
「すごい……。」
村とはまるで違う。街そのものが、生きているようだった。
___
:雰囲気いいなぁ
:異世界観光してる気分
:吟遊詩人だ!
:こういうの好き
___
広場を抜けた先に、一際大きな建物が目に入る。入口には剣と盾を交差させた紋章が掲げられ、多くの武装した男女が出入りしていた。
「あれって……。」
「冒険者ギルドだ。」
カジートが建物を見上げながら答える。
「イオリもそのうち世話になる場所だな。」
建物から笑い声が聞こえる。傷だらけの鎧、魔物の素材を担ぐ冒険者、酒場のような賑わい。
思わず胸が高鳴る。ゲームなどでは何度も見たことのある施設が、本当に目の前にあるのだ。
___
:ギルドきたーー!!
:王道!
:絶対登録するやつ
:ワクワクする
___
だが、俺がそちらへ歩き出そうとすると、
「こらこら。」
メリーナが苦笑しながら肩を軽く叩いた。
「まずは魔力適性を測りましょう。買い物や見学はそのあとね。」
「あっ……そうでした。」
夢中になりすぎて、すっかり目的を忘れていた。冒険者ギルドを通り過ぎる。
少し歩くと街の喧騒が少し落ち着き、建物も落ち着いた雰囲気になってくる。やがて、一際目を引く建物が現れる。
石造りの三階建て。建物の壁には巨大な魔法陣が彫られ、青白い光がゆっくりと流れている。正面には杖と本を組み合わせた紋章。
「あれは……?」
「魔法協会よ。この街で魔法を学ぶ人は、まずここへ来るの。」
俺が聞くと、メリーナがそう答えてくれる。
___
:ラスボスの館じゃないよな?
:雰囲気ある……
:魔法学校みたい!
:いよいよ魔法だ!
___
カジートは荷車を見張るため外で待つため、メリーナと二人で建物に入る。
「…」
高い吹き抜けの天井に白い石床、広いホールには長椅子が並び奥には木製のカウンターに受付らしきローブの人の姿が見える。観葉植物や本棚が壁際に点在している。
紙をめくる音、羽ペンが走る音、人々が小声で話す声などが静かに響く。
___
:市役所っぽい!
:思ったより普通だ
:魔法学校みたい
:図書館みたいで好き
:こういう雰囲気好き
___
「なんだか、もっと怪しい場所を想像してたんですけど……。」
「魔法は特別なものじゃないもの。勉強や仕事と同じよ。」
「そうなんですね」
そう話しながら歩くと、メリーナが【魔力適正検査】と書かれた看板のあるカウンターに立ち止まる。
「さあ、まずはあなたの魔力適性を調べてもらいましょう。」
「はい。」
受付へ近づくと、ローブ姿の女性が穏やかに微笑んだ。
「魔力適性検査をご希望ですね。」
「はい、お願いします。」
「では、二階の検査室へどうぞ。」
受付係はそう言うと、一枚の木札を差し出した。
《魔力適性検査 第三検査室》
俺は木札を受け取り、メリーナと顔を見合わせる。
検査室の前まで案内される。扉には金色の文字で、『魔力適性検査室』と刻まれていた。
___
:きたあああ!
:魔力測定!
:主人公補正頼む!
:適性なしだったら泣く
___
俺は深く息を吸った。剣を握ることはできるようになった。なら次は、魔法だ。
期待と少しの不安を胸に、俺は検査室の扉へ手を掛けた。
今更ですが、スマホとpcを併用して書いてるので文章の雰囲気が違ったりするかもですがご了承ください
高評価とお気に入り登録よろしくお願いします!