好きなメイドさんがオレを殺そうとしてくるけど、構わずアピールし続けようと思います。   作:砂タハ

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4「新人メイド」

 

『やっほ〜今日から雇われることになりました!タマキって言います。たっくさんご主人様に奉仕しちゃうゾッ!』

 

 ユヅキとは異なったギャルのような見た目ーー耳にはピアス、煉獄の如く情熱的な赤い髪色、短いスカート、肩を出している服装ーー名をタマキと名乗った少女の私服は如何にも場の空気を盛り上げるザ・陽キャというものだろう。

 タマキはユヅキとは違い、最初から距離感が近く感じる言葉遣いで屋敷の全メイドが整列する前で、挨拶をする。その隣には屋敷の当主であるシンが立ち、朝の朝礼を行っている最中の紹介だった。

 

「ということで、みんなタマキくんと良い関係を築いてあげてほしい。教育係はーーユヅキ、頼んだよ」

 

『かしこまりました。シン様専属メイドを代表し、私、ユヅキがタマキさんの教育係に就任いたします』

 

 最前列の中央に立っていたユヅキが一歩前に出て、言った後、丁寧なお辞儀を披露した。其れを見たタマキは何か感化されたのだろうかーー彼に対し耳打ちをしてきた。

 

『ご主人様ぁ〜ユヅキさんめっちゃ可愛くないです!?!?あたし惚れちゃうかも、、!』

 

「そうだろ?マジで可愛いんだよな!まぁ、オレは順位をつけない主義だから、メイドとしては全員平等に接しているけど、、其れでも可愛いよなぁ」

 

『ーーなのに、あたしには「くん」で、ユヅキさんには「呼び捨て」なんすね』

 

 無意識的に呼び方を差別化していたことを一瞬で見抜かれてしまい、彼は内心狼狽えるも、表情には其れを出さない。然し、其れさえも見透かすようにタマキはぶっ込んだことを聞いてきた。

 

『まぁまぁ大丈夫ですよ!お似合いです♡』

 

「……タマキくん。オレを揶揄うなんて度胸あるな」

 

『あぁ怖い怖い。ま、この辺にしますよぉ…』

 

 彼の中でタマキに対する不安要素が募った。高い洞察力、相手との駆け引きーーメイドという立ち位置が全く似合わない能力を持ち合わせている。

 とは言ってもそれはユヅキも同じだがーー

 

 彼は早々に朝礼を切り上げんと、声を張り上げる。

 

「はい!これで今日の朝はおしまい!!今日も君たち頑張ってなぁー!」

 

 耳打ち会話の2人からすればごく自然な流れかもしれないが、整列しているメイドからすればかなり強引な終わらせ方だ。

 謎の切り上げ方にメイド達は困惑するも、やはり1人だけ反応は異なった。

 

『みんな!持ち場について!朝食の支度がまだ済んでないのだからさっさとするよ!』

 

 ユヅキはやはり優秀だ。どれだけ場を乱しても一瞬で修正にかかる。この屋敷随一で状況を俯瞰して見ることができると言っても過言ではないだろう。彼女の掛け声により他のメイドたちの意識も一瞬で変化し、それぞれ持ち場に行こうと行動を開始する。

 

『じゃ、あたしもユヅキ先輩と仕事開始してきーす』

 

 隣にいたタマキもそう言って去っていくユヅキの後ろをせっせと追いかけていった。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

『ユヅキさーん。ご主人様のことってどう思ってるんですかぁ?ユヅキさんだけ呼び捨てだしーー』

 

 新人メイドが最初に習う仕事である屋敷の掃除をユヅキから教わっている最中、タマキがユヅキに一つ問いかけていた。いつの時代、どの世界でも思春期の女子は恋バナというものが大好物だ。タマキの何気ない一言に彼女の仕事を止める。

 

『ーー殺してやりたいです。出来るなら私の手で』

 

『ーーーーは?』

 

 ユヅキが淡々と衝撃的なことを言ったことにより、タマキは驚かざるおえなかった。まさか自分のご主人様を殺したいと思うメイドがいるだなんて想定外すぎるだろう。答えるとユヅキは何事もなかったかのように仕事に戻る。

 

『じゃ、じゃあーーあたしが狙っちゃっても良いんですかぁ?』

 

『んぇ!?』

 

 意地悪く、相手を挑発するかのようにタマキがユヅキの後ろから問いかけた刹那ーーユヅキがタマキの後ろに現れ、頬を人差し指で優しく刺す。目の前から一瞬で姿を消し、相手の背後に回ったのだ。俊敏性で言えば屋敷随一かもしれない。 

 目の前にいたはずなのに一瞬で消えたユヅキに対し、少々タマキは恐れ慄くもこの反応は普通とは違うと、推測ーーそしてユヅキの返答が其れを正解だと裏付ける。

 

『ーーダメです』

 

『でも殺したいくらい嫌いなんですよね?』

 

『ーー別に。嫌いで・は・ありません』

 

『えぇ、、どういうことですかぁ??』

 

 ユヅキのよくわからない主張に流石のタマキも困惑している。どうやらユヅキはご主人様を殺したいが嫌いで・は・ないようで、其れがどういう意味なのかが今わからない。

 ただ普通は殺したいと思うのは憎悪から来る願望なのではないだろうかと、タマキの脳内では交錯していた。

 

『ーーとにかく、、ダメです』

 

 ユヅキの顔が崩れる。勤務時間から今まで表情を崩すことなく、完璧なメイドとして振る舞ってきたユヅキの弱い部分が露見してしまった。其れをタマキが逃すはずもなくーー

 

『なーに照れてんすか!!!』

 

 無論、騒ぎ立てるのは承知である。ここで終わらないのが新人メイドであるタマキだ。

 

『ご主人様ぁぁぁぁ』

 

 刹那ーータマキは走り出し、シンのいる書斎に猛スピードで向かい始める。此処から書斎までかなり近く、タマキの大声は鮮明に彼の耳に届いていた。其れ故に彼が書斎から出てきて、走ってくるタマキに向かって声を飛ばす

 

「よ、よんだ!?」

 

 なんとも腑抜けただらしない声だ。だがーーご主人様とタマキの接触を本能的に拙いと理解したメイドが一人いた。

 

 ーーユヅキだ。

 

 別に拙いことは言っていない。だが、女性としての本能が警鐘を鳴らしている。と、思い立った瞬間、ユヅキも走り出していたーータマキの数倍も速い速度で、距離を潰しにかかる。

 だが、悲しいかな。接触を果たしたタマキと彼が会話を始めようとしていた。

 

「はぁはぁ、、それでなんの用だい??」

 

『ご、ご主人様!!もしかしたらの話ですよ!?もしかしたらユヅキさんは、ご主人様のことがーー』

 

『す、好kーーー』

 

 刹那ーー彼の顔面に凄まじい飛び蹴りが飛んできて、彼がその衝撃を全て受け取り、高速で吹っ飛んでいく。鼻血を撒き散らしながらせっかく掃除した廊下が一筋の赤色で彩られた。

 まさに一瞬の出来事にタマキは理解が追いつかない。ただ一つ感じ取ったのは明らかに本気の殺意が向けられていたということ。そして、飛び蹴りをするユヅキの顔を一瞬見た時ーー顔を赤くし、本気で焦っていたということ。

 

『え?え?ええええええええ!?!?!?』

 

 タマキがリアクションをとる。決して大袈裟ではない。自分が思い描いていたメイドとはあまりにもかけ離れた所業にタマキは開いた口が塞がらないと言った具合だ。

 

『た、タマキさんーー』

 

『ひゃい!!』

 

『こ、これがメイドわたしの仕事ですので.....秘密事項ですよ....?』

 

 ユヅキがタマキの方を向き、タマキの口元に人差し指を当て、目を逸らしながら言う。その言葉は何処か震えていた。無論タマキはその意図を読み取っていた。

 

 

 一方その頃

 

 

「きょ、今日は黒だった、、、」

 

 数十m飛ばされ、壁に埋もれていた彼は、何も疑問に思わず、自分が見た絶景を鼻血を出しながら振り返っていた。

 

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