弊ワット戦記 〜愛しの雷神と偽旅人の夫婦旅〜 作:マクロソラックス-03(旧っっt)
諸都合により、主人公が稲妻に辿り着き、雷電影と分かりあうまでを描くことになりました。削除したフォンテーヌ編は後日復活させます。
弊ワットにおける原作との時系列のズレは作者のプレイ開始時期によるモノです。作者は2021年の4月からプレイを始めました。それに合わせて風魔龍の襲撃事件も延長され、鍾離やファデュイの計画も遅れて起こりました。
『目覚め』
強烈な陽ざしで目を覚ます。起きたら知らない天井どころか大海原だった。正確に言うと絶海の孤島だった。どこだかは分からない。だけど周囲の岩山の形が璃月でクソキツネが買った絵葉書に写っていたものに似ている。あれ、クソキツネって誰だ?俺は誰だ?自分が着ていた和服の羽織のような上着の裏を確認する。
そこには
『源 平等』
と、稲妻の文字で刺繍されていた。この名前が本当に自分のものかはっきり思い出せない。なんとなくそんな感じがする程度だ。だけど自分がテイワットに何故か迷い込み、ある人に救われて、恩を返すために幕府で数年間働いていたことは覚えている。でも何でこんな所に...
ザザザ...
いきなり記憶の蓋が開いて少なくない記憶が流れ込んでくる。そうだ、宴の席で酔った勢いでやらかして、情けで即時切腹にならずに外国への偵察に送られたのだ!その国にドス黒い血のような月が昇り、異形の魔物が溢れて潜伏先の国が滅んだ!そして一部の魔物はその国を蹂躙すると他国へと向かい始めた!
ザザザ...
また記憶の蓋が開いて、気の良い同僚たちやお世話になった上司たち、そして自分のことを救ってくれたあの人の顔が脳裏に浮かぶ。あいつらはどうなった?みんな無事なのか?あの災害はまだ続いているのか?みんなの安否を確かめないと!
そうして俺は島を探し回り、放置された小舟の中から一番状態がいいものを見つけると、そのまま遠くで朧げに光る影向山らしきシルエットに向かって船を漕ぎ出したのであっだ。
だが、悲しいかな。その努力は虚しく、途中で嵐に見舞われ、さらには櫂を失って北に流され、挙げ句の果てには海面から飛び出してきた謎の白い物体が頭に直撃し、意識を失った。
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「それで、お前は世界の外から来た異邦人で、稲妻に住んでて、帰れなくなっていて...ちなみに、妹が謎の神に攫われたってのは妄想だったてことだな?」
「痛いヤツを見るような目をすんじゃねえ。てめえが頭にぶつかった瞬間に知らんヤツの記憶が流れ込んできたんだよ!」
呆れた表情で確認してくる小さな妖精に苛立つように俺は返事する。コイツはパイモン。荒波と共に俺の頭にぶつかってきた白い物体の正体だ。白い髪と肌にガラス玉のようなまんまるな黒い目、頭の上に浮かんだ冠や七天神像に似た意匠の装飾、まさしくコイツは故郷の世界でプレイしていたゲーム『原神』の案内人兼非常食である。そして先ほどの妹が云々の記憶というのは『原神』のストーリーの冒頭ムービーのことだ。よく分からないがパイモンと接触した瞬間にコレが”存在しないはずの記憶”として流れ込んできたのだ。
「はぁ、細かいことはもう、どうなってもいいや。(calm down)ところでココどこだい?」
「ここは多分、モンドの望風海角の浜だぞ!」
「へー、知ってるんだ!」
「オイラは物知りだし、こんなことも出来るからな!」
パイモンが手を叩くと不思議な効果音と共に、広げたバンダナサイズの地図が出てきた。
「おおお!すげ...え?なにこれ?」
だが、その地図はパイモンのマフラー(?)のように黒く煌めく何かで塗りつぶされているだけで、現在地と七天神像と大まかな地名が浮かび上がっているだけだ。
「うう...実はオイラは力を失っててな。地図の情報もほとんど消えちゃったし、見えない空間に出し入れできる物の量も減っちゃったんだ...」
「ダメじゃん。これじゃあフライムの方が役に立つわ。さっきなんてスライムに食われかけてたし。」
「失礼だな!オイラは元々絶世の美少女だったし、もっと凄い力を使えたん......かもしれないぞ!(うろ覚え)」
「あ、ふーん(コイツなんか重要な情報隠してるな)。ま、いいや。地図使えなくてもある程度はモンドの地理のこと知ってるんだろ?」
「おう、そうだぞ!」
「じゃあ、モンド城だっけ?大きい街まで案内してくれよ。それに道中七天神像に寄ろうぜ。もしかしたら、テイワットの情報にアクセスしたら地図が復活するかもしれないしな!」
「おう、任せろ、旅人!」
「頼んだぜ、パイモン!」
そして一人の男と白いチンチクリンは忘れ去られた浜辺を後にし、荒れた街道を歩み始める。これが偉業と苦難に満ちた旅の始まりになるとはまだ、誰も知らなかった。
『南十字の船に乗って part1』
パイモンと出会ってから半年が過ぎようとしている。いや、まだ半年しか過ぎていないと言いたい。何せ、立て続けに未曾有の危機から国家2つを救い、変態みたいな仮面の男と協力してアビスの強大な陰謀に立ち向かったら何故か面識がない謎の美少女(原作主人公の双子の妹?)に一方的に激しい憎悪を向けられた。そのあとは新生ベニー冒険団と前人未到のドラゴンスパインを登頂し、そのまま休む暇もなくアリスさん特製のリゾートで大冒険だ。
......今思ってみれば記憶がかなり欠落した状態で異郷に放り出された人間が半年で経験する量じゃない。本来一年弱で経験するはずの分量だったはずなのに。
旅の途中で自分たちの本来生きていた時代から五百年も経っていると言われてかなりショックだったのに心を整理する間もなく戦いが始まって連戦に次ぐ連戦。なんで原作より目覚めるのが遅かったんだろうか。その癖、どうして原作と同じイベントに同じ順番で巻き込まれるのか。全く運命の収束という名の詰め込み教育つうか恣意的なモノを感じるよ。なあ、アストロギースト・モナ・メギストス先生。
「あの...旅人さんの運命を捕捉するのは不可能ですって。これ言うの何回目ですか?ああ〜原稿の文字どこまで数えましたっけ...」
輸送気球の座席に腰をかけるモナに話しかけてみたが原稿のチェックの最中だったせいか素っ気ない返事が返ってきた。
ここは帰離原。アカツキワイナリー〜璃月港北門を定期的に走る輸送気球(護衛任務でヒルチャールから守ってたアレ)のキャラバンに護衛として便乗して俺とパイモン、モナは璃月に向かっていた。パイモンと俺は二人で稲妻に渡航する為に、モナは雑誌の取材と編集者との会議のためだ。
「なんかずっと詰め込みだ、詰め込みだとか言ってますけど貴方一人で悠々とバカンス行ってたじゃないですか。私たち新生ベニー冒険団の仲間たちをおいて。」
「それは悪かったって。オイラたちだって急に行くことになったんだから。」
今度は俺の代わりにパイモンが申し訳なさそうに言う。確かに、クレーにドド大魔王からのお手紙が届いて俺たちが調査に乗り出した時、ベネットとフィッシュルは秘境の罠に数日閉じ込められていたし、モナは怒涛の論文と記事の締め切りラッシュに追われて缶詰状態だった。それでも急にトワリンタクシーに乗車することになったし、金リンゴ群島なる島々からモンドにいる彼らに連絡する手段が多分なかった。だからしょうがないのだ。
「すまんが、いつもの如くベネットの不幸に巻き込まれたと思ってくれ。」
「はぁ、なんですかそれ。」
「まあ、言葉の通りだぞ。^_-☆」
俺の言葉に呆れるモナに、パイモンはウィンクしながら茶化す。この半年強でパイモンも随分俺のノリと言うものを覚えてくれた。もう、俺たちは息ぴったりの相棒なのだ。
なんてやり取りをしていてダラダラしていたら車列の11時の方向が何やら慌ただしくなってきた。
『Ika, Yaaaaa!』
『ブモおおおおおおお!』
『ランラン、ルー』
「うわっ!敵襲だ敵襲!護衛は前に出ろ!」
「アビスの魔術師がいるぞ!誰か神の目を持ってるやつ!対処してくれ!」
かなりの団体客のお出ましのようだ。黙示可能な範囲でヒルチャールが弓持ち含めて4体、シャーマンと暴徒が一体ずつ、アビスの炎魔術師が一体。奴さんたちもかなり本気と見た。何を狙っているかは知らないが俺たち冒険者がやることは一つ。
「よし、俺たちの出番だ!貨物を盾にして近づけ!」
「「「おう!」」」
俺の掛け声と共に護衛の冒険者たち(モナ以外)が駆け出す。今回参加した護衛の中でトップクラスの戦力を持つモナが原稿にかかりきりで戦闘に参加できないが、他の冒険者たちもかなりの手練れだ。だが、誰一人として神の目を持っていない。だからこそ元素の相性が悪いが元素力を使える自分がアビスの魔術師を相手にしなければならない。
「シイィ!」
刀を抜いてアビスに狙いを定め、一気に距離をつめる。だが、相手もなかなか反応がいい。
『ランラン・ルー!』
すぐさま俺に気づいて火の玉を複数発放ってくる、が、全て俺の真横を掠めるようにそれる。何かの陽動とか別の目的というわけでなく、本気で俺を殺すつもりでいてこの精度らしい。いわゆるストームトルーパー効果だ。だが、悲しいかな。この加護を受けていない奴が俺の背後にいた。そう、モナの原稿用紙である。
ジュウウウウウウウ!
俺を逸れた火の玉が一つ、後方の輸送気球に座っていたモナの原稿用紙を擦り、紙の端を黒焦げにする。それと同時だった、殺意に満ちた水元素の奔流が戦場を包み込んだのは。
ズズズズズズズズズズ......
車列の後ろの方から漏れ出る憎悪と漆黒の意思にヒルチャールも冒険者も逃げ惑う商人も思わずその発生源に目を向けてしまう。
「あの、旅人さん...」
「ア、ハイ」
「あの畜生を私に任せていただけませんか?」
「ウン、オカノシタ。」
「ありがとうございます。では始めますね」
......ニコリ......
「おどれ何してくれとんじゃ、このボケ!徹夜で仕上げた原稿だぞ、おめえ!ぶっ殺したる!」
「GYyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
「お、おい旅人ぉ...」
「俺たちゃ何も見ていない。いいな、パイモン。」
.......ひとまず、書くに耐えないような容赦のない大虐殺があったとだけは述べておこう。モナを怒らせてはいけないことをよく覚えておいて欲しい。彼女を怒らせるならベネットのデバフ盛りで裸一貫、マラカスだけでトワリンと殺し合ったほうがまだ安全そうだ。
こうしてテイワットに、また一つ新たなトリビアが生まれた。
あれ、予定したところまで書けなかったな。
あと、熱にうなされながら書いたので色々おかしいところがあるかも知れません。誤字脱字報告、その他の訂正のご指摘、感想などどうかお願いします。
あと、モナのファンの皆様に対し、深く謝罪の意を表します。