弊ワット戦記 〜愛しの雷神と偽旅人の夫婦旅〜   作:マクロソラックス-03(旧っっt)

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1日遅れですが、雷電将軍生誕記念作品です。もともとpixivで書いていた作品の進化形になります。

あと、主人公はホモじゃないです。ネットミームが好きなだけです。雷電影に一途な男です。


フォンテーヌ編 プロローグ

ースメール キャラバン宿駅ー

 

知恵の国と名高いスメールには広大な国土を真っ二つに隔てる巨大な樹皮の壁が存在している。この壁を境に様々な物が大きく変化する。気候も、経済の豊かさも。数千年前に不毛な土地になって以降、壁の東側の雨林に住む者たちは砂漠側に元から住む者たちや、追いやった者たちを棄民と嘲り、砂漠側に住む者たちは、豊かな暮らしを送る雨林側の人間に憎悪の眼差しを向け続けた。だが、そんな歪な社会はいずれ、過去のものになるであろう。7ヶ月前に俺たちが関わった政変とそれに伴う改革で、雨林と砂漠の人々を隔てる経済的、心理的な壁が取り払われつつある。今すぐには無理であろう。それでも人々は変わっていける、どんなに歩みが遅くとも......

 

「あ〜つ〜い〜ぞ〜!いい加減に抱っこはやめてくれ〜!」

 

俺の腕の中の小さな怪獣の喚き声でいい感じの回想が中断されてしまった。ブルんという音と共に頬っ被りを頭に被った3年来の相棒が器用に抱っこ紐の中から抜け出し、大空に向かって飛び出すとグルンと宙返りして俺の頭に抱きついた。そう、コイツこそが旅人たちに毎度お馴染みの”非常食”、パイモンだ。

 

「おい!オイラのことまた非常食って思っただろ!」

 

「そうだよ。非常用かどうかは別として、パイモンはそもそも食材枠だから。なんか謎空間に収納できるし。」

 

「ムキー!なんでだよ!」

 

「だって、パイモンさんはモチモチでいつも美味しそうな匂いしてるじゃないですか。」

 

あまりの扱いに憤慨して飛び回るパイモンを振袖を纏った女の腕がキャッチして優しく抱きしめる。

 

「影ちゃん、ありがと。買い物済んだんだね。」

 

「はい!日用品も非常食もたくさん買ってきました!ほら!」

 

         ずずずずず......ぶるん!

 

豊満な乳房の間の魅惑の四次元ポケットから引きずり出されたのは......まさかのデーツナンだった。それも大量の。

 

「なッ!よりによって食べられる乾燥剤として悪名高き...ッ!デーツナンだと?!なんでこんなに大量に!?」

 

「だって、お買い得だったんです♩10包買ったら半額って。こういう時は素直に買えって、神子も言ってました。」

 

「......!」

 

「ん?どうかしました?」

 

少しも悪気のない愛する人の、人外特有の危機感の無さ(彼女にとっては些事なのだろう)に目眩を覚える。俺のそばに戻っていたパイモンも「げぇ...」と嫌そうな顔をしていた。でも、彼女はこの旅になくてはならない存在だ。むしろ、俺の心は彼女がいなければ燃え尽きてしまう...

 

 

彼女と旅をする前、俺たちは一人のスメール人冒険者と旅をしていた。神の目を持たないがノエルあたりなら一捻りで倒せるほどの猛者で、自分と違って根明で兄や姉のような人間だった。層岩巨淵で弟子を失った俺を慰めてくれたアイツはその後、故郷であるスメールの案内を兼ねて旅に同行してくれた。そして俺たちはともに死線を潜り抜け、教令院や大賢者への蜂起に加担して大活躍し、短パンを履いた執行官を殺害した。俺たちは最強だった。俺たちは栄光に包まれていた。だけど、あいつは死んだ......

 

いや、俺が死なせたんだ。

 

風花祭に参加するためにアイツとモンドに行った時、アイツはウェンティに出会った。そして二人は恋に落ちた。俺はそのことをしらなかったんだ!二人がそんな関係に発展していたとは知らずに、ウェンティの秘密を喋った時のアイツの絶望した顔は今でも覚えている。その後、アイツは俺の元から去った。すぐに追いかけても見つからなかった。そして3日後、アイツの死体が見つかった、よくモンドの恋人たちが逢瀬をしている崖の下で。アイツの葬式の時、ウェンティはずっと泣いていた。俺は彼と話す勇気も、顔を見る勇気も出せず、モンドから逃げ出した、パイモンを置いて。

 

 

そしてスメールと璃月の国境地帯でカリベルトの一件に関わった際に俺の心は完全に壊れた。俺は恨んだ。しがない凡夫でしかなかった俺の死体を面白半分で降臨者の残骸と合成してキメラを作った錬金術師を、俺が産み落とされたこのテイワットを。それからは荒んで八つ当たりを繰り返す日々だった。酒乱や冒険者協会の受付嬢への恫喝、衛兵への暴行など可愛いもので、正式な許可を得て駐留していたファデュイの殺害、スメールの北部の川の土手で失脚した賢者たちを洗脳してスカトロAVを撮影して売り出したりまでした。スメールでの俺の名声は地に堕ち、冒険者協会から半年間の除名処分を受け、遂にはスメール男子を秘境に閉じ込めてラッコ鍋を盛ったところを30人団に捕縛されて投獄された。

 

 

そんな堕落しきって牢屋の奥で腐っていた俺を身元引受人として迎えにきてくれたのは故郷で俺の旅の終わりを待っているはずの雷電影を連れて。彼女は俺のことをパイモンから手紙で聞いて、倉庫の奥で埃を被っていた予備の人形に意識を移してここまできたのであった。牢屋から釈放されて、影に抱きしめられた時、ガキのように泣いた。周囲の目も気にせず泣いた。彼女の胸の温もりに救われたような気がした。

 

 

そして彼女がここまでの道中で見つけた純水精霊が生み出した幻想世界で2ヶ月もの療養生活を送り、ようやく回復したところで旅を再開したのだ......

 

 

 

 

 

「こんなところで会うとは思わなかったぜ。豚箱にぶち込んだ時以来だな。」

 

カフェで軽食をとっていると背後から棘のある言葉と殺気が向けられる。この声には聞き覚えがある。そうだ、彼女にも迷惑をかけちゃったな...

 

「あっ、ディシアだ!っておいおい!刀を下ろしてくれ、影!おいら達の友達だ!」

 

いつの間にかディシアの横に立っていた影の刀が彼女の首に添えられていた。先ほどまで纏っていたほんわかした雰囲気も息を潜め、表情はもはや百戦錬磨の武人のソレであった。

 

「ううっ...なかなか腕が立つな、姉ちゃん。」

 

「あら、皆様のお友達でしたか。」

 

パイモンに宥められて彼女達はようやく殺気を解き、武器を納める。

 

「ほら、二人とも落ち着けって。席に座れよ。あ、そうだ!お前はここで何してるんだ?」

 

「さっきまで、砂漠でお得意さんの依頼をこなしてたのさ。特に語れるようなこともない、普通の護送。今から報告に戻るところだ。そしたら男色好きの元英雄サマを見かけたんでね。また乱暴を働く前にとっちめないといけないと思ってな。ハハハハハ...」

 

俺の反対側の席、パイモンの隣に座りながら喋る彼女の口調は明るいが目は一切笑ってない。

 

「本当に、ごめん。あの時は...本当に迷惑をかけた。本当に取り返しのつかないことをしてしまった...ごめんなさい。」

 

「謝るならアイツらに謝れよ。まだティナリはラッコ鍋の副作用に苦しんでいるんだ。」

 

「ああ...」

 

どうしよう...アイツを年中発情期にしちまったのか。アイツだけじゃなくてその周り、コレイや他のレンジャー達にも酷い迷惑かけちゃったんだな。本当に俺って...俺って...

 

   どろり...

 

層岩巨淵のアビスの汚泥みたいに、ドス黒いものが、思考を、染め上げていく......

 

「そこまでにしてください!彼はまだ万全な状態じゃないんです!」

 

頭にそっと当てられた温もりが、柔らかさが、眩い光界の力のように優しく俺の心を浄化していく。あぁ...影ちゃん...貴女は本当に...

 

「待ってくれ、あたしだって旅人を苦しめたい訳じゃないんだ!ただ、その......ただ......」

 

「ただ......?」

 

「あたしは悲しかったんだ。背中を預けて戦った誇り高き戦友が堕落していくのも......苦しんでいる友人に何もしてあげられなかったのも......」

 

「ディシア、お前......」

 

ディシアは悲しそうな目で呟く。それと同時に自分の頭の中にディシア達との思い出がよみがえり、次第に申し訳なさが込み上げてくる。あたり一面が重苦しい空気で包まれる。

 

 

 

しばらくして、

 

「ごめん、取り乱した......あたしはもう行くよ、仲間が待ってるからさ。その、ごめんな......」

 

「待てって。ディシアは悪くないって。」

 

「ありがとうな、パイモン。あと、旅人......」

 

ディシアが悲しそうな顔で俺の肩をギュっと掴む。

 

「なにか辛いこととか悲しいこととかあったらアタシにも言ってくれ。力になるから。」

 

「ありがとな、ディシア。お前さんの旅に幸在らんことを。」

 

「じゃあな、旅人。そこのお姉さんも旅人のこと頼むぜ。」

 

そう言ってディシアは人混みの中に去っていった。その様子を見つめている俺の手をぎゅっと影が握る。

 

「?どうしたの、影ちゃん?」

 

「辛そうなお顔をしてたので......」

 

影ちゃんの顔も心なしかつらそうに見える。ダメな奴だな俺は。2年前のあの日、俺は影ちゃんを笑顔を取り戻すって約束して、彼女に立ち向かったのに。

 

「本当にダメな亭主だよ、俺は。本当にごめんよ...ごめん......」

 

その時、俺の手を握りしめていた影ちゃんの手が俺の背中に周り、そっと抱きしめられる。

 

「そんなことないですよ、あなた。あの日、あなたは何百年も引きこもってウジウジしていた私に人の心の温もりを見せて引き上げてくれた。だから今度はあなたを助けたい。あなたの心に寄り添いたい......」

 

「ああ...影ちゃん、愛してる...」

 

俺は影ちゃんを強く抱きしめ、顔を落としてそっと唇を奪う。互いの舌が絡み合い、何十秒も密着する。そして影ちゃんと視線を合わせる。その眼差しは潤み、表情は惚けてる。その表情は語っている、

 

「キて」

 

と......だから俺は手をそっと......

 

スパアァァン!

 

「お前ら、往来でなにやってんだよ!」

 

気がついたらパイモンにハリセンで後頭部を引っ叩かれていた。周囲のカフェの客からもガン見されている。失礼だな。なにってナニのことだよ。夫婦の時間をそんなまじまじと見るもんじゃないってジジイから習わなかったんか?

 

「おい、パイモンさ、何してくれるのさ。良いところだったのに。」

 

「お前こそ何してんだよ!フォンテーヌまで長いから今日中に距離を稼げるだけ稼ごうって話だったろ!オイラは先に行くからな!ふん!」

 

そう言ってパイモンは飛んでいってしまった。心なしか顔が赤かった気がするが気のせいだろう。八重神子に変な本読まされているパイモンがキスを目撃したくらいで顔が赤くなるはずがないであろう。

 

「じゃあ、パイモンも行っちゃったし俺たちも行くか。」

 

「はい、行きましょう。」

 

 

こうして俺と影ちゃんの旅が始まった。この先、どんな困難が巻き起こるか分からない。影ちゃんの同行でどんな影響が出るか分からない。だけど、2人なら何処までも行ける気がする。

 

 

弊ワット戦記 〜麗しき雷神と偽旅人の夫婦旅〜

 

 

 

 




なんか暗い話とよく分からんオリジナル要素が急に湧いてきましたが、本作は基本的に明るく、純愛イチャラブで、原作沿いな話になります。

あと、高評価してくれると執筆の励みになりますので、どうか宜しくお願いします。
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