外郭防衛を生業とする企業「
ゾディアクスの襲撃、高濃度のイドラ粒子等内地よりも危険は多い。
ただその分だけ諸々の規制は緩く、実績豊富なパイロットも多数常駐していることからここへの居住希望者は後を絶たない。
イドラ関連産業以外の業種も続々と参入しており、活気に満ちた空間を形成していた。
「びっくりした?」
「そうね、こんなに栄えてるなんて知らなかった。あっヨネダ珈琲……」
エレベーターから見える街には整備場やパーツ屋といったイドラに関連する施設だけでなく、娯楽施設や飲食店もそれなりに揃っている。様々な施設に目移りしていたマリの視線が、彼女の住む内地の街には出店していない喫茶チェーンで止まった。
「戦闘後やしお腹空くわな……後で奢ったるわ。悪いけど、先に社長に会ってもらうで」
街の中心部にそびえる本部ビルの中を、マリはナズマの案内で進む。ナズマの社員証でゲートをパスし、エレベーターで社長室のある最上階へ。エレベーターを出て右に折れ、廊下の突き当り。無骨な白い扉をナズマは軽くノックする。
「雲飼ナズマです。ご連絡した新人の件で伺いました」
「入りたまえ」
返ってきたのは、芝居がかったハリのある女性の声だった。
「入ります」
「失礼します」
ナズマがドアノブを捻り、マリも続く。部屋の左側に本棚、中央に仕事用のデスクと応接用のソファが置かれただけ。ビルの見た目と違わぬ地味……落ち着いた部屋だった。
「社長。ただいま戻りました」
「おかえりナズマ君。その子だね?」
部屋の主はソファの前で腕を組み、不敵な笑みを湛えていた。ワインレッドの長髪をポニーテールにまとめ、赤いジャケットと第二ボタンまで開けたグレーのシャツ、黒のパンツに抜群のプロポーションを押し込んでいる。
派手な服装と、それに負けずギラつく金色の瞳にはマリも映像で見覚えがあった。
「星鞍マリと申します」
「初めまして、カーレット・サールスベリーだ。しっかしナズマ君が休日返上でスカウトに動くとは、随分な買われようだね、
人懐っこく細められたカーレットの目の奥に、獲物を見定める肉食動物のような鋭さをマリは感じ取る。
「ナズマさんに誘われて、ここ……あ、御社に」
「はっはぁー! これでも私はフランクで親しみやすい上司を自負しているんだ、そんなに怖がられると傷ついてしまう。外郭の部隊で人が欲しくないところなんてないんだよ。特に若いパイロットは大歓迎さ」
そう言って歩み寄ってきたカーレットはマリの肩に手を置く。洒落た白手袋程度では到底覆い隠せない、ベテラン整備士もかくやという硬く分厚い手の皮の感触が伝わってきた。
「ってことで、面接はパスだ。おめでとう」
「名乗っただけなんですけど。良いんですかこれで……」
「まあまあ。そこら辺は僕が
「内地で普通に暮らしていたんだ、中身の心配はしてないよ。しかし、これでも私は生涯現役を自負しているんだ。ずっと言葉だけの存在だった革命種……君をこの目で見て、思ったんだよ」
口調こそ変わらなかったが、カーレットはもう闘争本能を隠そうともしない。
「『戦ったらどうなるのか』ってね」
「えっ」
「さあ、行くよ。我が社自慢のアリーナまで案内しよう」
大股で歩き出すカーレット、首を振りながらナズマも続く。マリが慌てて付いていくと、ナズマは苦笑いで囁いた。
「ごめんなぁ。うちの社長、ええパイロットを見るとすーぐ味見したがるねん」
「人聞きが悪いぞナズマ君。今からやるのは『実技テスト』さ」