「はぁーあ」
つつがなく銀行強盗が終わり、ちょっと嫌な過去を思い出してネガティブになった私は、犯罪行為によって手に入れた情報精査を先生と現地生徒に任せ、一人アビドスの市街地、ちょっと小高いビルの上で古ぼけた狐面を見つめる。
何度も繰り返した中で、片手で数えられるだけ先生が生き残り、ハッピーエンドを迎えたことがあった。数々の問題を解決し、ゲマトリアと和解まではいかないでも良好な関係を築き、あの色彩すら撃退した。だがその平和に喜ぶも束の間、必ずあの影がキヴォトスに現れるのだ。
まるで大団円など許さないとばかりに、全てを飲み込み書き換える底の見えない闇。
何度か敗北すればわかる。あれは色彩を撃破した後確定で襲来し、私とクロコさん以外抵抗すら許さず一方的に蹂躙される。…正体は何となくわかっているけど対処方法がまるで思いつかない。
今のところ最終目標は影の撃破だけど何度やっても勝てるビジョンが浮かばず、少しブルーになっていた。
だから気分転換と八つ当たりのために、次の小競り合い…もといイベントが発生しやすい場所へ赴いていた。
見下ろすはセリカさんのバイト先である紫関ラーメン。これから爆破されるであろう哀れなお店だ。そこにアウトロー(笑)が入っていくのが見えたのでお昼を一緒に食べるつもりで飛び降り後を追う。
本来であればこの後すぐ爆破されてしまうのだが、これはあれだ。ちょっとセンチな気分でむしゃくしゃしているので、暴れる大義名分が欲しいのと、暫く紫関ラーメンを食べられないので食べ収めという奴だ。大将には悪いけど、この店の爆破は必要なイベント。風紀委員会と委員長のヒナしゃんが先生やアビドス組と面識を持つために出来れば欲しいイベントだ。
「ちゃおっすぅ~。…あぁー!アウトロー(笑)がいるじゃーん!なんか運命感じる!ご一緒しよ♡」
「あ、あなたはアビドスの生徒と一緒にいた…!」
「ひぃ…!ア、アル様に指一本触れさせませんっ!」
「きゃはー☆面カタ因縁カラメ敵意マシマシ状況ヤバメな感じ?安心しなよ、あーしは今
「社長、追い払ってもしつこいと思うから諦めた方がいいと思う」
「んー、私はよく知らないし、面白い方で!」
「かんしゃぁ~」
そうして予備の椅子を持ってきて便利屋と一緒に暫く食べられなくなるラーメンをすする。
もしまた1杯のラーメンを4人でつつく程の経営難に陥っていたら驕ってあげようかと思ったが、以外にも今回はしっかり余裕があったようで1人一杯の好きなラーメンを注文できていた。
食べている間終始ボマーに警戒されていたが、社長になんかカッコ良さそう(笑)な割のいい仕事を進めて機嫌を取ったことでとりあえずは収めてくれた。うーん、狂犬すぎるっぴ。
因みに斡旋した仕事は運び屋と護衛という名の配送のバイト。頑張って健全に働いてね♡
「それにしてもあんた、トリニティの生徒じゃないのにどうしてそんなにテーブルマナー良いわけ?」
「へぇー!ニャンコスキーさん興味ありますぅ?本当は秘密だけどお近づきの印に教えてあげちゃうー。実はあーしぃ、ホストのメイド兼裏の護衛だったんだぁ!どう?カッコいいっしょ!」
「前も言ってたけどなんでニャンコスキーなの…」
「えー?それはね…ふっふっふ。教えてあげなーい!」
「あはは!連邦生徒会って言うからめんどくさそうって思ったけど、結構愉快な子じゃーん!ねぇねぇアルちゃん、この子持って帰らない?ちゃんとお世話するからさー?…アルちゃん?」
「かっこいい…」
「アル様…?」
「カッコいいわ!!」
「うわうるさ」
「かっこいい、かっこいいわ藤城アヤ!表はメイドとして君主に仕え、裏ではその君主を守るために人知れず手を汚す…クール!最高にクールよ!!」
「やべ、ダイナマイトに火つけちゃった。ここ爆弾多くない?」
これで
なんてラーメンに舌鼓をうちながら火遊びして楽しむのも束の間、目的の時間がやってくる。
「ん…何かあーしの直感が危ないって言ってる。テンチョ、テンチョ、ちょっと身をかがめて?」
「お?なんだい嬢ちゃん。こんな年寄りにくっついてもいい事なんて―――」
小さい身体で店長に覆いかぶさると、爆音とともに一瞬で視界が白く染め上げられるのだった。
◆
「いいったいなぁ!なんか弾多いんですけど!というか誘爆したっしょ!?爆弾取り上げるの忘れてたし!マジこいつら弾薬庫なんですけど!」
瓦礫を持ち上げてちょっとした想定外に憤る。
しかし我が身を犠牲にした甲斐はあったようで、店長は瓦礫に押しつぶされることなくかすり傷だけで済んでいた。いやー、悪いねテンチョ。店は吹き飛んでもらわないといけないからせめてもの詫びだよ。だからここが戦場になる前に退散してねぇ。
テンチョを見送ってから振り返ると
「きゃはー☆大分盛大にやってくれるじゃん?」
「あなた凄い怪我…!カヨコ!救急箱あるでしょ!出して!」
「ん?あー、お構いなく?多分これからそれ必要になるだろうから自分たちのために取っておいてほしーんですけど。」
「舐めないで頂戴。私達は確かに悪党よ。でも自分たちより幼い子の怪我を見過ごして我が身可愛さのために物資の温存なんて、そんなの悪党じゃなく外道よ!私はそんなものに憧れたんじゃない!」
そのために助けたんじゃないんだけどなーなんて思いつつ、こうなったアルちゃんは絶対に曲げないので言われるがまま治療を受ける。私的にはナノマシンが自動修復するのでさして気にしていないんだけど。
「あい、ありがとー。じゃあ~、あーしは馬鹿な事をやったツンデレツインテちゃんをシバキ回してくるから~。…あとよろっ☆」
「あ、ちょっと!」
そう言って全速力で走り、便利屋と距離を置く。そしてしばらく走れば見えてきました、今回の下手人たる風紀委員会の集団が1個中隊ほど。そんな彼女らの前で止まり、一応は挨拶をする。
「ごきげんよう。ここより先は両学園におきましてグレーゾーンの区域にございます。少数であれば見逃すことも吝かではございませんが、それほどの部隊となりますと、この地に住む無辜の民にご迷惑がかかります。責任者の方は所属と目的をお示しくださいませ」
「ん?誰だお前」
「失礼しました。私は連邦生徒会所属、連邦捜査部シャーレ補佐の藤城アヤを申します。以後お見知りおきを」
「メイドが?冗談だろ。ミレニアムのって言われた方がまだ納得できるぞ」
「イオリ、彼女は嘘を言っていません」
「そうなのかチナツ?だとしても各自治における権限は連邦生徒会にはないはずだろ?それに今は厄介者どもをとっつかまえるための時間と労力が惜しい。邪魔するなら連邦生徒会と言えどまとめて叩きのめす」
「…はいそうですか、とはまいりません。こちらも務めがございますので。もし進まれるおつもりであれば、相応の覚悟をもってお進みになることをお勧め申し上げます」
「は、はぁ!?連邦生徒会が口出しするってのか?馬鹿馬鹿しい、いくぞ!」
「忠告はいたしましたよ…と言う訳で、貴女―のケツに狙いをきーめて♪…偽:致命〇術【水鏡の月】」
「なにを…い゛い゛ったぁ!?」
あくまでも関係ないとスルーする風紀委員会の特攻隊長に、正面でキメポーズを取りながらそのプリティーなお尻をシバく。見える範囲に私しかいない為、背後からの攻撃は予想外故に悲鳴を上げる。
…うふふ、君たちは知らないかもしれないけど、私と正面切って戦うなら360度全てを警戒しないとだめだよ?
「おい!私の尻を撃ったのは誰だ!?」
「え?イオリ、誰も構えてなど…」
「へい、ヴォーパル魂の足りないツインテのネーちゃん。今のは警告だし?一応ゴム弾使うけど、素直にハウスできないなら地獄を見るよ?」
「っくぅ~…伏兵でもいるのか?舐めるなよ!公務の妨害として排除してやる!総員…」
「バーン☆」
「あひぃっ!?」
再度そのケツをゴム弾でシバく。怒って振り返るが、さらに尻を別の角度からシバかれる。何処を警戒しても必ず背後からゴム弾で執拗にケツだけを狙い撃ちされ、だんだん涙目になるイオリさん。
さらに怒りに任せて、只々キメポーズを繰り返すだけの私に射撃命令を出したが、私に銃口を向ける生徒はその悉くがイオリさんと同じようにケツをシバかれ撃沈する。構えるのが遅かった生徒達は生徒達で士気がガタガタにり、撃たれてもいないのに自身のケツを両手で守るという治安部隊にしては最悪のシュールな光景を作っていた。
それを続ける事10分強。ケツが体格に似合わぬナイスバディに膨れ上がり気絶したイオリさん以下数名と、ケツを隠して涙目で降伏する残念な風紀委員会が出来上がっていた。
「きゃはー!よっわぁ♡本当に風紀委員会?」
「うう…なんて情けない負け方なのでしょうか…強引にでもイオリを止めておけばよかった…」
「それで、チナツさん。これだけの部隊を学区外で活動させる理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
私は他風紀委員と同じくお尻を抑えて後悔を口にする顔見知りの生徒に、形式上の質問をする。
勿論理由など聞き飽きるくらい知っているが、公務を妨害したのは事実なので一応は彼女たちの顔を立てておくためだ。それにちょっと八つ当たり気味にケツだけ執拗にシバいちゃったからね。
一応謝意もなくはない。
『その質問は私から答えさせていただきます』
そして記憶の通り、風紀委員なのに風紀を乱しまくる牛チチがホログラムで現れる。
この牛チチ、今回の騒動の黒幕ではあるんだけど、どうやってシバいてあげようかな。ホログラムだからこちらからは何も出来ないし、本人は恐らくゲヘナの部室で流石に射程範囲外。
と、中々有効打が浮かばずうんうん唸っていると、恐ろしい事を考えられているとは知らずに話をそのまま進める。
『こんにちは、シャーレの雑用係さん。私はゲヘナ学園の行政官、アコと申します』
「これはこれはご丁寧に。学区外で民間人の営む平和な飲食店に、警告なしで迫撃砲を撃ち込む野蛮な組織の行政官様は、随分とマナーがよろしいのですね」
『なんて生意気な子供なのでしょう。私は子供相手でも容赦しませんよ?』
「きゃはー!子供のおふざけにいちいち青筋立ててたら治安維持なんて難しいっしょ?カルシウム足りてないんじゃない?」
『…トリニティの子供は化けの皮が剥がれるのも早いですね、実に癇に障ります。教育が足りていないのではないですか?……シャーレの先生?』
私との会話は無駄だと言わんばかりに、ホログラム越しに視線を私の背後へと移す。
近くで様子を窺っていたのは知っていたけど、それをしっかり把握できているあたり今回の風紀委員会の索敵能力は優秀なようだ。そして毎度トリニティではないとツッコむのも面倒なので今回は訂正しないで放置することにした。
そしてうまく隠れていたつもりの先生とアビドス&便利屋の生徒達がぞろぞろと建物裏から現れる。どうやら一応の和解は出来たようだった。
”そうだね、それは日ごろから実感しているよ…。でもそれが個性であり子供らしさでもあるから私は否定しないよ。ムカつくのは同意するけどね”
「あれ?先生は味方なの?敵なの??」
『…あなた方に常識を求めた私が間違いでしたね。それで?シャーレ所属の生徒が公務の妨害をして、あまつさえ被害まで出したわけですけどどのようにお考えでしょうか?』
”それについてはこちらに非があるだろうね。だけど会話ログには警告をしたうえで戦闘になっている。それにアヤも言っていたことだけど、ここはゲヘナの自治区内じゃないよね?であれば正当性の主張は難しく、痛み分けって所じゃないかな”
『邪魔をしたことを認めた上で擁護すると?』
”そうだね、少なくとも多勢に無勢で先制攻撃して尚も銃口を向けている相手と話し合いはできないかな。それに便利屋68との問題は今はアビドスが当事者だから、それが解決するまで彼女たちを渡すわけにはいかないね”
『そうですか…もう少し話の通じる人だと思っていましたが仕方ありません。実力行使で…』
「あれれ~?おっかしいぞ~?風紀委員会は校則違反者である便利屋68を捕縛するために来たわけっしょ?こんな4人しかいないグループに
”え?3個中隊?”
「あれ、気が付いてなかったかんじ?うちら全員だいぶ前から囲まれて絶体絶命でマジヤバなんですけど?」
『…あら…物分かりは悪くとも勘が鋭いのは褒めてあげます。では不良生徒の処理
「モチのロンよ!そちらの本当の目的は便利屋じゃなくて、あーし等”シャーレ”の行動を抑制、もしくは保護、軟禁してその影響力を抑える事…でしょ?」
バレてないと思ったのか、バレても問題ないと思ったのかは知らないけど、やり方が随分乱暴だし稚拙さが目立つ。3個中隊…いや後詰でもう1中隊、つまりはアビドス5人と便利屋4人、最後に私を入れてたった10人に対して大隊の投入をするなんて。これでは私たちを高く評価しているのか見下しているのか分からないね。
でもその過剰ともいえる戦力評価は実は慧眼だと褒めてあげよう。
確かに互いに大将がいない状況。如何にアビドスや便利屋が少数精鋭のトップ層だとしてもこの人数差では先生の指揮アリでも難しい。
じゃあなんで慧眼なのか。それはキヴォトス広しと言えどセイアさんと連邦生徒会長しか知らない私の戦い方に、ある程度戦闘という形を取れる人数だから。
ま、たかが1個大隊程度の人数じゃ雑魚専のアヤちゃんを止める事なんてできないけどね♡
只の蟻がいくら集まっても象には敵わない様に、圧倒的な個の前では数の利など意味をなさない。
私と戦うなら特級を連れてこなきゃねー。
『話が早くて助かります。では予定通り、目障りな不良生徒諸共制圧して先生を確保します。』
初めての治安部隊という大組織との戦闘の予感に緊張の色を隠せない先生とアビドス組。
元々争いが苦手なアヤネさんは勿論の事、圧倒的戦力差に喚きながらも腰が引けているセリカさん。2年生組は冷や汗を流しながらも覚悟は既に決まっているらしく、正しくアビドスを守るという小さな先輩の背中に恥じない立派な顔つきをしていた。
そんな中、これまで一言も発さず黙って成り行きを見守っていた一つの影が、己の信じる義を通すために声を上げる。
「…藤城アヤ。私達も協力するわ。こんな扱いをされて尻尾巻いて逃げるなんて格好悪い事はできないわ」
「便利屋68参戦!これは激熱!…なんて冗談は置いておいて、気持ちはありがたいんだけど~大雑把には私がやっつけちゃうから撃ち漏らしだけお願いしたい的な?」
「アビドス組はくそ雑魚ナメクジの先生を守って?」
『…随分な自信ですね。これだけの戦力差が分からないなんて、哀れを通り越して可哀想ですね」
「きゃはー!大丈夫っしょ!だって君ら…弱いもん☆」
『っ!風紀委員会!イオリ!いつまで寝ているんですか!』
「アコちゃん人使いが荒いって!!お尻ばっかり狙いやがって、覚悟しろ!!」
「何度でもケツを狙い撃つよ!去ね、神の八つ当たりに焼きシバかれて。偽:神〇怒!」
静かに復活していたイオリさんと風紀委員が圧倒的物量で包囲制圧を図る。
だが次の瞬間、己の優位を信じて疑わない行政官の表情が一変する。
私の叫びと共に腕を振り下ろす。それと同時此方に銃口を向け発砲する者から順に先ほどと同じくケツにゴム弾がねじ込まれあまりの衝撃に悶絶して崩れ落ちる。
先ほどと似た光景に流石に学習したのかイオリさんが建物を背後に構えを取るが、それでもなおその無防備なケツをシバく。
「あ゛あ゛っ!?」
「イオリっ!?」
ありとあらゆる場所と角度に的確に射撃をする。その秘密はゴム弾にあった。
実弾に比べ柔らかいゴム弾。だが柔らかいと言えど非殺傷
私はそれを王女譲りの演算能力でもって弾道を計算し、四方に仕掛けたセントリーガンを操作し、
場所が露見しても互いが互いのカバーをするため、容易に撃破できない単純明快な嫌がらせ兵器。
それが障害物の多い市街地で圧倒的に数で勝る風紀委員会をケツを蹂躙していた。
最終的には地面に尻を下ろして守る所謂体育座りの姿勢で、せめてもの抵抗を試みる生徒が散見されたが、移動できない置き砲台など脅威にはならず、便利屋とアビドス組に丁寧に制圧されていった。
最後に残ったのはチナツさん他非戦闘員だけで、物の見事に先ほどのリテイクになっていた。
だがそれも通用するのは一定以下の生徒だけ。云わば”篩”のような物。それが通用しない上位者がこのカオスに終止符を打つべく現れる。
『くっ…こんなふざけた子供に…ですがここまで来て引き下がるわけには―――』
『―――アコ』
『え…ヒ、ヒナ委員長!?』
「委員長…?あの通話相手が風紀委員会のトップ…?」
そうだよセリカさんや。何処から湧いてくるか分からないけど、アレがゲヘナの最強であり実質的なトップ風紀委員長の空崎ヒナしゃんダヨ。
え?なんで震えてるかって?やだなぁ、セリカさん。これは武者震いだよ?本当だよ?
『アコ、今どこ?』
『わ、私ですか?え、えと、ゲヘナ近郊の市内を風紀委員のメンバーとパトロール中で…』
「嘘ばっかり!」
『そ、それより委員長予定より早いですね…出張はどうなったのですか?』
『早めに終わらせて返ってきた』
『そ、そうでしたか…その、すいません。私、すぐに処理しなくてはいけない案件がありまして…後ほどご連絡いたしますので…』
焦るゲヘナヨコチチハミデヤンとやはり無許可の活動だったのかと憤るアビドス組。
尚も必死に己の失態を隠そうとするが既に遅く、只々墓穴を掘るだけになる。天雨アコにとって予想外だったのは藤城アヤの奇天烈さでもなく、便利屋68とアビドスの意気投合の速さでもなく、今まさに通話している上司が一番いてほしくない場所に居た事だった。
そしてそれは通信機からではなく
「すぐに処理しないといけない案件って、他の自治区で風紀委員会を独断で運用すること?」
『……え?』
「ぎょわ゛ぁぁぁぁ!!??」
「い、委員長!?いつからそこに…!?」
お、驚かせないでよ!!音もなく激おこフェイスで通信していた相手が、いきなり後ろに立ってたら恐怖なんですけど!?私リアルホラー嫌い!!しかも何か左手に持ってる!
例に漏れず私は特級が嫌いなんだからマジ勘弁してよね!ヒナしゃん究極仕事人だから親近感沸くし、自治区最強にしては珍しく指にトリガーがかかるのが他と比べて重いから、ホルスとかダブルオーみたいに積極的に襲い掛かってくるわけじゃないけど、それはそれ。
睨まれたらマジ怖いし、戦闘になったら最も相性が悪いのが彼女だったりする。私は温泉開発部の部長かもしれない。ひ、ひ、ひえええぇっ!!
「それで?この状況、ちゃんと説明してもらう」
『こ、これはその…校則違反者を捕まえようと…』
「便利屋68の事?それはどこにいるの?現状を見ればシャーレとアビドスに因縁付けているようにしか見えないけど」
そう言われて社長ちゃんがいた方を見ると、いつの間にかいなくなっており、まるで忍者のように姿を消していた。
…その逃げ足の速さと危機察知能力は普段から生かされないのかなぁ…。
『えっ…!?あ…その…じ、事情を説明します』
「いや、もういい。大体把握した。詳しい処分は帰ってから伝えるから。今は通信を切って謹慎していなさい」
『…はい』
流石に直属の上司であるヒナしゃんの言葉には逆らえず、素直に通信を切りこの場からホログラムが消える。
それによって現場には微妙な空気が流れるが、
「…そっちの話は終わり?じゃあやろうか」
うっそでしょこの人!?某サイヤ人でも現れた圧倒的強者に戦闘続行の宣言なんてしないと思うよ!?それに無理!絶対無理!フルアーマーおじさんいない状態で戦ったら全滅するよ!?
だってよく見れば左手に持ってる謎のガラクタ、あれ私のセントリーガンだよきっと!ひしゃげて原型ないけど間違いなくそう!私のセンサーに引っかからずに壊すとかまじ何なの?
「ま、待とうシロコさん…?む、無駄な争いは良くないってゆーかぁ…ほ、ほら、あーし等シャーレってば問題を解決するのが本分で目の前の問題は見過ごせないってゆーかぁ…」
”その割にはノリノリで風紀委員のお尻をいじめてたよね?”
「シャラップ先生!!あれは戦場において前だけでなく後ろも警戒しろってゆう、あーしからの優しい教えだし!」
”それなら背中とかでもよかったんじゃないかな…”
えぇい、うるさいうるさい!余計な事を言うではないわ!!変なこと言って目の前のアルティメットワーカーホリックの敵意買ったらどうするのさ!!他と比べてトリガーハッピーではないけど一度面倒くさいって思ったら、他の誰よりも指が軽くなるんだよこの女はぁ!
私は知ってるんだ詳しいんだ!!あの独特なSEが聞こえる度にちぃかわになるカスミさんの気持ちが!!*1
「…風紀委員のメンバーがお尻を抑えて転がっていることに、思うことがないわけではないけれど…今は戦闘の意思はない」
えぇ?まじ?やったぁ。へへへ、アヤちゃん大勝利。ぶいぶい。
「だけど先に撃ってきた「コレ」は正当防衛で破壊させてもらった。…「コレ」は貴女の?」
意味深に、それまで持ち続けたスクラップとなった私のセントリーガンを突きつけ、目の前で落として私を睨みつける。バレテーラ。
「チガイマスヨ」
「…………そう。もし貴女のなら私の味わったお礼を考えていたのだけど…違うなら今は保留にしておく」
うそですやん…これ遠回しに今は時間ないからあとでシバくって言うてますやん…。
どうやらヒナさんが近づいたときに、セントリーガンの自動カバー機能が作動して、私の意図しないタイミングでそのお尻をシバいて破壊されたんだと思う。……ここから入れる保険は無いんですか?
最後の希望として先生に助けて貰おうと、アイコンタクトを送ってみるが、それに気が付いた彼はとてもいい笑顔で微笑、言外に人のケツをシバいたのだから、自分のケツは自分で拭けと伝えてくる。役に立たないなぁ!!
そして己の辿る末路に涙しながら絶望していると、意外にもアビドスとの話し合いが進んでいるようで、ヒナさんが「小鳥遊ホシノ」という人物に興味を示していた。
「アビドスのホシノって…まさか小鳥遊ホシノ……?」
『え?はい、そうですけど…お知合いですか?』
「いや…直接の面識はない…だけど、そう…まだアビドスに在籍していたのね」
『それはどういう―――』
意味深に顔をしかめる風紀委員長に疑問顔のアビドス組。だがその疑問を投げかける前に、噂の主、アビドスの最高学年にして最強の盾がゆっくり歩いてくるのだった。
アヤちゃん兵器の一つ自動迎撃機能付きブローニングM2セントリーガン。
暴徒鎮圧兼嫌がらせ専用のゴム弾のみが装備可能な兵器で、設置しても良しそのまま使っても良しの優れもの。
人体における指定箇所のみの狙撃が可能で、跳弾などの精密動作を行う際はマニュアル操作を必須とする。
最大9丁あったが全てヒナに回収されてしまった。後日三脚とカメラを取り外した装備で美食研究会のケツをシバいていた姿が見られたとか見られなかったとか。