化身は恩に報いるために繰り返す。   作:つゔぁい

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第5話 人の趣味はそれぞれだよね

「つまり、セリカ様が行方不明であると、そういうことでございますね。」

 

”うん。たまたま連絡が付かないだけならいいけど、なんだか胸騒ぎがしてね。”

 

 

はーい、始まりました、というより始まってましたセリカさん誘拐フェーズ。

朝方に馬鹿どもをボコったせいで襲撃が少し遅れ、現在深夜2時。いや遅くない??まぁ連絡来た時間はそれなりに早かったけど、あまり早く合流したら怪しまれるからって理由でその辺散歩してたけどさ。まーだ見つかってないの?よっわぁ♡

 

2人きりなら少し煽ってやるところだけど、今はセリカさん以外全員いるし、余計な事は言わない。私は学習できる子。

 

このアビドスの連中は、良くも悪くも仲間想いだ。だから今回仲間の安否が不明とあってか、比較的温厚なアヤネさんやノノミさんまでピリついている。戦闘民族は言わずもがな。

その少人数故の結束力の高さを今回は逆手に取られた訳だけど、その辺分かってるのかしら。

下手すりゃ2度目がありまっせ。次は誰かなー?

 

ま、そうならないように今回は完膚なきまでに壊滅させに行くんですけどね。ホシノさんが。

どうせ場所さえ分かれば何もしなくても、先生とアビドスのメンバーで十分に救出可能だ。

だけどねぇ。金さえあれば何でもする物事の分別が付かない奴はさらなる凶行にだって及ぶ。

 

どっかのアウトローみたいに金を積まれても、自分らで考える力があれば見逃すけど、今回相手するのはそんな高潔な精神の持ち主じゃない。だから潰す。徹底的に。二度とバカが出来ない様に見せしめになってもらおうと思う。

 

……その前に居場所をそれとなく教えておこうかな。

 

 

「先生、これは緊急事態と判断いたします。連邦捜査部シャーレの権限を行使し、対象者の端末が発する微弱な電波を特定することをお勧め申し上げます。」

 

”……そうだね。生徒のプライバシーがとか言ってる場合じゃない。シッテムの箱でアクセスしてみるよ。”

 

 

 

ほどなくして行方不明者の居場所が特定される。最初からさっさと使えばいいものを。

いい加減その優しさは、毒にも薬にもなるという事に、気が付いてほしいものだね。

勿論、私の端末は常に偽装データが流れている。コソコソ動いてるときに興味本位で特定されたらたまらないからね。

んじゃぁまぁ、行きますか。戦闘は青筋立ててる彼女たちに任せて、私は先生を守りながら見せしめの一撃を準備しましょうかねー。

 

 

 

「予想以上に多いねこりゃ。おじさんまいっちゃうよ~。」

 

「確かにこれはすごいですね!アヤネちゃん、目標地点まではあとどれくらいですかー?」

 

『推定距離1200mほどです!もうひと踏ん張りです!」

 

”じゃあラストスパートだね!皆、気を引き締めて!”

 

 

破竹の勢いで前進する少女たち。まぁそれも当然である。彼女たちには先生の指揮に加え、仲間を助けるという精神的なブーストまでかかっているのだから。

先生の指揮は言わずもがな。指揮を受け入れた生徒は、シッテムの箱を介して先生と繋がる。そのれによって先生の類まれなる指揮能力で戦場においての無駄を省く。

シッテムの箱は接続されている生徒の認識能力を大幅に引き上げ、尚且つ彼女たちの脳の処理速度を上げるのだ。これだけでもオーバーキルになりえるのだが、今回は精神のブーストが凄まじい。

 

未だどうゆう理屈なのか分からないし、興味もあまりないのだがここキヴォトスの生徒は現在の精神状態によって、神秘の出力が大きくぶれる。本人たちはその自覚がないのかもしれないが、これが意外と先生を救うためには厄介になる事がある。

 

何故か。その出力のブレというのは、一定のラインを超えるとそこが神秘総量の下限になる事があるからだ。元々内包している神秘が強い生徒は確かにいる。だが一部の最強は繰り返し壁を越えたことで出力が安定し、高エネルギーを常時使えるようになっている。これだけ聞けば強いに越したことはないと思うかもしれないが、問題は先生の方にある。

 

先生はシッテムの箱の補助を受けているとはいえ、処理するのは先生自身だ。

なので指揮する生徒側が強すぎると、指揮が間に合わずに互いの認識に齟齬が生じてしまうのだ。

だからこそ生徒のレベリングだけでなく、先生のレベリングも重要になってくる。どちらか一方だけ強くてもダメなのだ。まぁあれ。出撃コストってやつだね。知らんけど。

 

どうでもいいが、私は生徒として世界に定義されていないので、先生の指揮を受けてもメリットは1mmも無かったりする。寧ろ先生のリソースを使うだけなのでデメリットの方が大きかったり。

 

 

さーて、そんなどうでもいい事を考えていると見えてきました。セリカさんを飼育しているトラック。うん、いつも通りだけど…なんか逃げそう?

トラックぐらいなら私か、盾を捨てたホシノさんなら追いつける。けど今回は徹底的に潰すつもりで、私が同行している。ラストアタックは悪いけど貰うね。派手派手に行こー!

 

 

”まずい、トラックが動き出した!”

 

「ん、あれはちょっと追いつけない…!」

 

 

今更ながらアビドスって、遠距離攻撃得意な生徒っていないよね。せいぜいアヤネさんがヘリで攻撃するくらいだけど今は校舎でサポート中。生徒人数が圧倒的に少ないから仕方ないけど、明確に弱点だと思う。…まぁ皆殺意マシマシでこんにちは、死ね!だから性に合わないんだろうけど。

 

だから私が誰かさんが突撃する前に、殺意マシマシの狙撃を見せてあげよう。

へへへ、何も殺意って言うのは近くに行って全力で殴る事だけじゃないんだよ、ホシノさんや。

 

 

 

「わたくしにお任せを。」

 

”えっ?何する気か知らないけど任せた!”

 

 

さーて、準備はできてるし、あとはイジメるだけ…おろ?

逃げるトラックを守るように、戦車が3両も立ち塞がるように出てきた。くふふ、一緒に殺してあげる♡

照準よーし、装甲圧の計算よーし、弾道の入射角よーし。……だんちゃーく、今ッ!

 

 

「そんなのあーしの前では紙切れと変わんないし。打ち砕け!偽アン〇ルタ・キガルシュ!2連」

 

 

突如鳴り響く轟音と巻き上がる砂煙。たった2回の音で戦車3両と逃げるトラックが鉄くずと化した。普通ならこれらを撃破するのに4回の音が鳴らなければ数が合わないのだが、砂煙が晴れる事によって、数が合わない理由を理解する。

 

鉄くずとなり果てた戦車。その正面装甲には先ほどまでなかった大穴が開いており、()()()()()()()見えていた。つまり一撃で戦車の正面装甲を撃ち抜き、そのあまりある運動エネルギーはさらに後方の戦車を同じく穿ったのだ。これが二つ。トラックの方は運転席が綺麗になくなっていた。

制御を失い、惰性で進むトラック。それも長くは続かずに路肩の電柱へ突っ込み、その場で沈黙するのだった。

 

たった1,2秒で起こった現象。メイド服の少女が何かしたというのはアビドスの生徒も理解はしていた。だがまるで分らない。彼女の目に見える装備はHGが1丁だけであり、ここまでの破壊活動が行える装備など一切ないのは、先日の模擬戦で理解していたからだ。

しかし呆気に取られ、混乱するだけの生徒とは違い、今の現象を正確に理解している者も確かに存在していた。

 

 

 

(何今の…?辛うじて見えたけど何か…砲弾?それが戦車に当たった?)

 

 

辛うじて認識できていたホシノと、完璧に観測した先生の持つスーパーAI。

認識の度合いこそ違う両者であったが、どちらも今口にすることではないと空気を読み、救出を優先するのであった。

 

 

 


 

 

 

ん、かんぺき~。無事にバイト戦士を救出できました。最後トラックが事故ったせいで、積み荷が頭を打ったみたいですが、生きてるからモーマンタイ☆沢山先生に看病されて愛を育んでね♡

はい?勿論、絆をって意味だけど?つーか誰―?保護対象に余計な傷付けたの?ははっ、あーしじゃん。じゃあ無罪ってことで。へーてー。

 

見た所、ホシノさんと腐れAIにはバレたっぽい。先生なんかは確認のため()()()()にドローンまでよこしやがった。勿論何も聞かれなかったのでドローン撃ち落して逃げましたよっと。

これでホシノさんの警戒度上がっちゃったけど、まだ大丈夫。どーせその内バレるし。実際のところ、この辺はバレたからって今後に影響するものではないし。どうせ捨て札のカードだし。

 

 

さて、奪取した積み荷はアビドス組に任せたし、また暗躍の時間。というより趣味の時間だね。

道中倒した不良も含めて、先生が見ていないところで手足を折っておきます。丁寧に、ゆっくり悲鳴を上げさせて。

 

大丈夫だよ、ヴァルキューレが中々来ない辺鄙な場所を君たちが態々選んだんだ。邪魔もされなければ助けにも来ない。お前らが選んだ道だ、受け入れろ。

こうゆう事は先生どころか、生徒にも見られる訳にいかない。こいつらは根が腐ってるから、怪我が治ったらまた同じ過ちを繰り返す。だから復讐の連鎖は発生する前に摘み取る。こんなことは優しい君たちじゃ絶対できないから。

 

 

「私は先生の命を救うためなら、何だってやるよ。お前たちは私のシナリオには不必要だ。殺してもいいけど面倒な事が起こるから殺さない。感謝して悲鳴を上げてね?」

 

 

悲鳴は丁度ヴァルキューレが到着するまで辺りに響き渡るのだった。

その後、セリカさんを休ませるために、解散と連絡が入った。先生は看病のため学校に残るらしいから私はシャーレへと帰還するのだった。

 

 

 

 

次の日、私は少し遅れて先生と合流する。場所は柴咲ラーメン前。そして店の暖簾をくぐる直前、丁度赤髪の生徒が出てきた。

 

 

「あら?ごめんなさい、邪魔しちゃったわね……メイド?」

 

「アルちゃーん、店の出入り口で止まったら危ないよー?」

 

 

柴咲ラーメンから出てきたのは、私にとって愛すべき馬鹿、便利屋68の4人だった。

 

時間的には大将の優しさに触れた後。いつもならこの後学校に襲撃しに来て複雑な思いをする彼女たちだけど、そんな君たちを私は嫌いじゃない。彼女たちは紆余曲折ありながらカッコいい所も情けない所も見せてくれる、そんなアウトロー(笑)。

特に先生の生死にまず係わることがないのが高評価ポイントだ。

しかしそれはそれ、これはこれ。この後一旦敵対することになるから、彼女たちが敵対しやすいように、今回はヒールを演じて見ようと思う。手始めに―――。

 

 

「なぁにー?なんか恩を仇で返しそうなアウトロー(笑)っぽいのが居るんですけど―。」

 

「えっあっ、ふ、ふふん!貴女にもわかるかしら?こんな小さな子にも分かるほど、私たちの悪のカリスマ的なオーラは凄まじいのね。貴女見る目あるわ!」

 

「アルちゃん……。」

 

 

どうやら私がバカにしたことは理解できなかったらしい。くそっ、この女無敵か?そんな君も好き。

しかしバカにされたのに上機嫌な間抜けとは違い、言葉の意味を理解している社員たちからは圧を感じる。特に後ろの爆弾魔その1。流石に場所が場所だから、いきなり爆弾投げつけてこないだろうけど、そのさらに後ろにいる爆弾魔その2はその限りではない。

 

と、どうやってギリギリの地雷原タップダンスを踊ってやろうと考えていると、後ろからアビドスメンバーが出てくる。

 

 

”あれ?アヤ来てたんだ。ちょっとタイミング悪かったかも、先に食べちゃったゴメン。”

 

「えー、先生ひっど!あーし凄い傷ついたから代わりに今度、高級焼き肉驕ってよねー!」

 

”君の方が大分金持ちだよね…ところで何か話してたみたいだけど知り合いだったりするのかな?”

 

「うんにゃ?初めまして、だよ。」

 

 

うん、嘘は言ってない。私の中では親の顔より見た面だが、ここでは初めましてなのには変わりない。そしてそれを知る者も、一人を除いていない。

場合によってはアビドスのメンバーよりも長い付き合いになるのだ。先生も今のうちに仲良くしておくといいよ?この人たちと関わってる間は結構平和だから。周りは平和じゃないけど。

 

 

「初めましてではあるよ?でもなんだかー、近いうちにまた会いそうなそんな絆を感じるんだよねー?ハッ…!これが運命…?」

 

「アヤちゃん若いもんね~。おじさんにはそういうのもう分かんなくなっちゃったから羨ましいなぁ~。」

 

「先生より枯れてて草。こんな人畜無害な面してても、さりげなーくシャーレのパソコンでアレな調べ物を……」

 

”ちょっと待ってストーップ!!それ以上はダメ!焼き肉驕るからお口チャックして!”

 

「ん、少し気になる、教えて?」

 

”高級!高級な焼肉驕るから!!”

 

 

必死に止めにかかる先生。しょうがないからそれで手を打とうじゃないか。まったく、最初から高級焼き肉を貢いでいれば私の口も滑らなかったのになー?

 

というか先生、良い大人が勤務中に見てんじゃないよ。小賢しく最小化しても、私の電脳部分は多少プロテクトされた程度の先生のパソコンは除き放題なんだから。勿論シッテムの箱にアクションは無理だけど。だから先生の趣味は把握済み。これからも定期的においしいものを貢ぎたまえよ?

 

 

「うわー、先生も男の人だね~、そうゆうの見るんだ~?でも勤務中はダメだと思うな~。」

 

”何の事かな、ホシノ。アヤはまだ何も口にしていないよ?”

 

「お昼ごはんも口にしてないんですけど~。」

 

「アヤちゃんがそこまで言ったら、口にしたも同然な気が……。」

 

”いい事を教えてあげる、アヤネ。最後まで明言していないという事は、言っていないと同義なんだ。私の財布が犠牲になる事で、大人としてなけなしの尊厳が守られるのなら安いものさ。”

 

「この大人情けなさすぎます…!?」

 

「あ、トリニティのティーパーティー名義で前行ったところがいいな。」

 

”君に人の心はないのかい??”

 

 

ある訳ねぇだろダボが!と言いたいところだけど、先生の懐事情は知ってるし、それで飢えられてリンさんに泣きつかれでもしたら私が詰むから、その辺の焼き肉で勘弁してしんぜよう。

店選びのセンスは先生に任せるし!おいしければアヤちゃんどんな店でも気にしないけど、なんか雰囲気あるところの方が好感度は上がるっしょ!頼むよ~?

 

なんて先生イジメて楽しんでいると、いつの間にか便利屋の姿が消えていることに気が付く。

うーん、こうやって気配を消すのが上手い所、見習いたいね。どうせこの後すぐ会うけど。

そして彼女たちが居なくなったことで、店の前で屯するのは邪魔だという事になり校舎まで戻ることになった。因みに私はスカートの内側に着けているポーチから栄養食を出して昼を誤魔化した。

 

 

固まって歩くこと暫し。私たちがラーメン屋の前で無駄に時間を潰したせいか分からないが、記憶と微妙に違う光景が校門前に出来上がっていることに気が付く。あれは―――。

 

 

「せーんーせー?なんか校門前に沢山いるくない?」

 

”えっ?よく見えるね……あ、ほんとだ。なんだろ?”

 

「あれって…さっきの奴らじゃない?それにヘルメット団まで!私たちが居ない間にあいつら!」

 

 

言うが早いか、静止の声をかける前に走り出してしまうセリカさん。続くホシノさんとシロコさんに完全において行かれた中衛、後衛組。まぁ―でも先生無しでおっぱじめられても困るし、先生は運んであげよう。感謝して?後の二人?過酷なアビドスで平気な顔して生きてるならすぐ追いつくでしょ。

 

 

”うぐっ、おぇ゛っ……!つ、次からはもう少し優しく運んでね…!”

 

「は?いつ戦闘が起こるか分からないのに、アヤちゃん無視してたらふく食べたのが悪いっしょ。反省して?」

 

”ごべんなざい…。”

 

 

肩に担いで運んだせいで、ゲーしちゃいそうな先生をよそに、すでに言い争っている先行組。

うーん、これはあれかな?アルちゃん正々堂々学校を攻めようとしたけど、誰も出てこなくて、しょぼくれてたって感じかな?そう思うと可愛いね。

しかし現状の構図だと、私たちが校舎に攻め入ってるみたい。アルさん達便利屋がそれを阻止するために守ってるように見えなくもない。……いいね、利用しちゃおう。その方が彼女の罪悪感もいくらか違うでしょ。

 

 

「ひゃっはー!今日こそアビドスを倒すし!そこにいる生徒達を倒せば、アビドスはあーしらのもんっしょ!!」

 

「「「えっ」」」

 

「な、なんですって!?だ、ダメよ!アビドスをやっつけるのは私たちの受けた依頼!邪魔はさせないわ!」

 

「ちょっと社長!?」

 

「あはっ、なんだか面白そーじゃん?」

 

「あ、アル様の邪魔はさせません!」

 

 

私がふざけて突っ込んだことで、乱闘が発生してしまう。話し合い?前口上?今はいらんいらんそんなものは!暴力はすべてを解決するんだよって、いつだったかホルスが言ってた気がする。

うん、きっとそう。

 

それによって奇しくも、アビドス組が校門に攻め入り、便利屋側が校舎を守るという、「逆だったかもしれねェ…」が発生する。

しかしこれにはちゃんと考えあっての事。

 

一つ目は経験上何度か配置が逆になる事はあった。その際に戦闘が始まるのが遅くなれば遅くなるほど、爆弾魔その2がしれっと爆弾を設置して回るのだ。

そうなれば先生に危害が及ぶことはなくても、校門や下手すれば校舎そのものにダメージが入る。このダメージは借金苦に喘ぐ彼女たちには辛い。だからこその速攻。

 

二つ目は戦闘を長引かせないようにするため。どのような戦局であっても、アビドスのメンバー全員と先生が指揮を執っている限り、勝ちはしないでも負けもない。その場合は雇った傭兵が時間切れで撤退する。実質勝ちの流れができるけど、その場合も大分消耗してしまう。今後の事を考えると、さっさと終わらせるに越したことはないのだ。

 

そのためには、ホルスがホルスするか、私が全員病院送りにするか、アルさんを人質にするか。

いや、全部悪手じゃない?とくに最後。じゃあどうするかって言うと…こうします。

 

 

「んー、威勢はいいけど君じゃ私の相手には少し足りないっしょ。前世の敵じゃないけど愛して許してね?偽:森羅〇象第十四楽章、因果転変。」

 

「うぐっ!?」

 

「ハルカッ!?」

 

 

単身突っ込んできて私の顔面目掛けてSGをぶち込もうとするハルカさん。うーん、殺意が高すぎるっぴ。

痛そうなので発射直前の銃をひねり上げ、同じように本人の顔面にSGを返す。いんがおほー!

 

それによって怯んだ彼女の横をすり抜け、一直線に目標確保に目指す。

そう、私の標的は便利屋68のブレイン、カヨコさんだ。ポジション的に少し離れた彼女を確保することはそう難しい事ではなく、簡単に捕まえる事が出来た。そしてそのまま校舎の中へと引っ張り込むのだった。

 

 

 

「ぐっ…!私と1対1に持ち込んでどうゆうつもり?」

 

「大変失礼いたしました。あの場におきましては冷静なお話し合いが叶わぬと判断いたしまして、比較的お話の通じそうなあなた様をこうしてお招きした次第にございます。手荒な方法を取りましたこと、誠に恐縮ではございますが、私の頭一つでご容赦いただければ幸いに存じます。」

 

「は、はぁ…?」

 

 

仕事モードに切り替えてとりあえず頭を下げる。すると思った通り毒気が抜かれたのか、元々今回の依頼に積極的でないカヨコさんはすぐに戦闘態勢を解いた。警戒はしてるけど。

 

 

「そんなに警戒しないで?えへへ、さっきぶり。こんなすぐ会っちゃうなんて、あーしら運命の赤い糸で結ばれてるのかも?これってディスティニー?」

 

「ふざけている場合じゃないと思うけど?」

 

「ヘイ、ニャンコスキー・カヨコフさん。そうカリカリしないでほしーんですけど?抵抗しない辺り、彼我の戦力差が分かってるって事っしょ?」

 

 

そう、普通の生徒ならまず間違いなく攻撃してくるところだが、頭の切れる彼女はこの状況下ではいちいち行動しない。降りかかる火の粉は全力で払おうとするかもしれないが、私がふざけている間は睨みつけるだけで無駄な行動はしない。だからこそ話し合いに向いており、便利屋を裏から制御するためのパイプ役にはうってつけなのだ。

 

…どうでもいいけどこの睨むだけで人を殺せそうな眼付いいよね。一定のマニアにウケそう。過去には癖になって困り果てた先生もいたっけな。あ、困ったのは私ね。

 

 

「…そうだね。悔しいけどハルカをあの速度で落とせるなら私じゃ無理。抵抗しても時間稼ぎが関の山。で?ふざけてるのか真面目なのか分からないメイドさんは何が目的?言っとくけど社長が口を割らない以上、雇い主の情報は吐かないから。それと私は女だから。」

 

「ごめんねごめんねー☆雇い主は大体分かってるからどうでもいいしー?あーしが態々カヨコさんをキャトったのは無用な争いをしたくないから的な?」

 

「……はぁ。わかった。どっちにせよこうなった以上、こちらの負けだしね。何とかするよ。」

 

「話が早ーい!あ、お近づきの印として、これ私の連絡先ね?シャーレじゃなくて個人のだから何かあったら使ってくだち?」

 

「…はぁ。」

 

 

そんなに溜息ばかりついてたら幸せが逃げちゃうよ?まぁ、私に目を付けられた時点で優秀な貴女の幸せが少し減るのは、確定しちゃってるんですけどね。私は私の我儘の為ならなんだってするし、手段は選ばない。それだけ私はあの人間が欲しくてたまらないのだ。

 

あの人間が望むハッピーエンドを用意したら何を対価に貰おうか?従属にしようか?信用を勝ち得てから殺して、希望と絶望の落差に顔を歪ませようか?肉欲のまま貪るのもいいかもしれない。

ふふふ、妄想が捗るなぁ。

 

まぁまずは彼の望むハッピーエンドってやつを実現するために、生かさないとね。

 

その後私達はある程度の話し合いをしてから、いまだドンパチやってる校門前に戻るのだった。

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