次の日の入学式の日。朝、舞風は起き上がると、「むー…」と唸りながら布団から出た。朦朧とする意識の中、ふらふらした足取りで自分の部屋の洗面所へ。顔を洗うとようやく目が覚めた。ついでに自分が今日から寮で暮らすことも思い出す。
「……ふわぁ」
欠伸が出た。今日から高校生かー…なんてしみじみ思いながら着替える。
「ちゃんと提督起きてるかな…」
小学生の頃から朝に弱い提督はほぼ毎日学校に遅刻していた。そんなことを思い出しながら舞風は自分の部屋を出て306号室へ向かった。
朝の食堂。提督は一番人のいない端っこの席を一人で座り、鳳翔の作った朝食を食べる。
「ゲッ、スクランブルエッグ…」
あの黄色い何かだ。いやこれ本当にスクランブルっつーかスクラップじゃね?と、いつも提督は思うのだった。これを食べなきゃいけないわけだが、とてもじゃないが食えたものでもない。しかし、鳳翔は食べ物に関しては厳しいという。
どうするのが最善か。遅刻寸前までここにいれば、少なくとも今すぐに食べることは回避される。幸い、舞風は昨日、早くも友達になった古鷹と一緒にいるので提督の逃げ道は十二分にある。
それまでの間は具合の悪い振りして肘を机の上についておでこを抑えてればいいだろう。と、思った矢先、提督の横に誰かが座ってきた。
「おっす」
木曾だ。ちなみに姉妹である北上と大井もいる。
「……なんで?」
「いやなんも言ってねーよ。北上姉、こいつが昨日俺を男とかほざきやがった提督だ」
まるで仕返しにでも来たような口振りだった。
「へぇーあたしは北上、まーよろしく」
「……どうも」
それは相撲部屋的な意味でのよろしくなのか?と、内心ビクビクしながら挨拶する提督だった。ジロジロ見てくるので本当に殺されるかもと覚悟を決める提督の気も知らずに北上は言った。
「結構イケメンじゃん。っていうか、どっちかっていうと可愛い系?」
「は?」
「やったじゃん木曾っち。彼氏GETだね」
「は、はぁ!?なに言ってんだよ!そもそも俺はそんな恋愛なんて…!」
「えーでも昨日寝言で提督って呟いてたよ?」
「嘘付くんじゃねぇ!北上姉のその手の嘘はもう効かねぇぞ!」
なんてじゃれ合う姉妹を提督はぼんやり眺めてると、後ろから肩を叩かれた。さっきのが北上姉ならこっちは大井姉かな?なんて考えながら振り返ると、顔が近い。なにされるんだろうと緊張しながら大井を眺めてると耳打ちされた。
「北上さんは私のものだから」
あぁ、そっち系か…と一発で落胆する提督。大井はそれだけ言って満足したのか、すぐに離れる。で、食事タイム。
だが、隣に三姉妹が来てしまったおかげでスクランブルエッグを食べなければならなくなってしまった。とりあえず他の物だけ食べ終わり、残りはゲル状の黄色い何か。どうしようか悩んでると、木曾が声を掛けてきた。
「どうした提督、それ食わないのか?」
「え?あー…それってどれだよ指示語だけで会話すんなよ」
「いや一瞬考えてたじゃねぇか…それだよ、えーっと…スプラッシュエッグ?」
「なんの必殺技だよ。いや別に食うよ?食うけどほら、食事ってのは生命の命を奪って俺達の栄養にしているわけだからある程度、この命を尊重しなきゃいけないわけだから、俺は今、この命が俺の体の一部になることを願うと共に食義並の感謝をしているわけであって…」
「ていうか、食べれないだけでしょ」
北上に言われて二秒くらい固まる提督。だが、すぐに切り返した。
「いや食べれますよ?ていうか食べれないわけないでしょう。いい歳こいて好き嫌いなんて…」
「じゃあ食べてよ」
こいつら絶対イジメに来ただろ…と思いつつ提督は固まる。にやにやする北上、苦笑いの大井、不思議そうな顔をする木曾。やがて木曾が手を伸ばした。
「食わないなら俺にくれよ」
結局、木曾が食べてしまい、提督はなんとか助かった。