送信したメッセージを見つめている間、大喜は更衣室のベンチから立ち上がれずにいた。
『今日、このあと少しだけ出かけない?』
家に帰れば会える相手を、わざわざ外へ誘った。理由を聞かれたら何と答えるかまでは決めていなかったが、送ったことを後悔しているわけでもなかった。スマートフォンが震いたのは、それからそれほど経たないうちだった。
『うん。行きたい』
返事を待っている間、知らないうちに力が入っていたらしい。実際に「行きたい」と返ってくると、大喜は息を吐いて背中をベンチへ預けた。続いて千夏からもう一通届く。
『今、会場出たところ。みんなと駅まで戻るね』
大喜も練習を終えたことを送り、互いに駅へ着く時間を確認した。千夏の方が少し早そうだったが、大きくは変わらない。駅前で待ち合わせることにしてスマートフォンをしまうと、さっき体育館で出した答えが改めて自分へ返ってきた。ちーちゃんに、伝える。
実際に言葉にすれば、千夏がどんな返事をしても今までとまったく同じではいられない。それでも伝えたいという気持ちは変わらなかった。ただ、千夏を呼び出して、会ったらすぐに気持ちを伝えて、それで今日を終わらせるような時間にはしたくなかった。今日はクリスマスで、千夏は大事な大会を一つ勝ち抜き、自分も練習を終えた。そのあと二人で過ごせるのなら、まずはその時間を大切にしたかった。
大喜は制服へ着替え、ベンチの周りを確認してからバッグを持った。体育館へ戻ると、針生や匡たちも帰り支度を始めていた。シャトルは片づけられ、ネットも端へ寄せられている。大喜がバッグを肩へ掛けると、匡がその様子を見て口を開いた。
「もう帰るの?」
「うん。先に行く」
「忘れ物ない?」
「え?」
大喜は反射的に足元を見た。ラケットバッグ、鞄、スマートフォン。タオルも入っている。
「……大丈夫」
「ならいいけど。さっきみたいに考え事しながら帰って、何か置いていかないでよ」
「それは気をつける」
匡はそれ以上何も聞かず、自分の荷物へ手を伸ばした。大喜も針生たちへ挨拶をして体育館を出る。外はすでに暗くなり始めていた。練習後の身体に冬の空気が触れ、大喜はコートの前を閉めながら駅へ向かった。改札の近くに千夏を見つけたのは、約束していた時間よりほんの少し前だった。
千夏はコートを羽織り、大きなスポーツバッグを足元に置いていた。大喜に気づくと一瞬だけ動きを止めたものの、すぐに声をかけてくる。
「大喜くん、練習お疲れさま」
「ちーちゃんも。二回戦突破、おめでとう」
「ありがとう。でも、それメッセージでも言ってくれたよ」
「二回言ってもいいでしょ」
「じゃあ、私も二回ありがとうって言う」
「そこ合わせなくてもいいのに」
「大喜くんが二回言うからでしょ」
千夏が笑い、大喜もつられて笑った。昨夜のことを意識していないわけではない。それでも、顔を合わせて最初に話したのは、昔から何度も交わしてきた競技のことだった。改札前を行き交う人の邪魔にならない場所へ移動し、大喜は千夏に試合のことを尋ねた。
「最初ちょっと苦しかった。相手が守備の受け渡し上手くて、こっちが合わせるまで時間かかったかな」
「後半は?」
「みんなで確認してからは結構よくなったよ。私も最初、次の人に任せるの遅れてたし。そこ直してからは前より守れた」
千夏は自分の得点ではなく、チームの中で噛み合わなかったところから話した。実際の試合を見ていない大喜は、分かったような評価をせずに聞く。
「途中でちゃんと変えられたんだね」
「うん。でも次はもっと早く気づかないと。今日より強い相手になるし」
「もう次考えてる」
「そりゃ考えるよ。大会中だもん」
「それもそうか。一つずつだね」
「うん。一つずつ」
勝った試合の話をしているのに、千夏の意識はもう次へ向かっている。その感じは、大喜がよく知っている千夏そのものだった。今度は千夏が尋ねる。
「大喜くんは? 練習どうだった?」
「俺?」
「うん。今日はいつもより早く行ったんでしょ?」
「なんで分かったの?」
「メッセージ来た時間考えたら、それくらいかなって」
互いの練習時間や大会の日程は昔から大体分かっている。大喜は今日のことをどこまで話すか考え、競技の部分だけを選んだ。
「最初、一人でサービス打ってたんだけど、匡に力入りすぎって言われた」
「大喜くんが?」
「うん。自分では全然気づいてなかった」
「珍しいね」
「俺もそう思う」
「で、直った?」
「途中からは。針生先輩にも一回休めって言われたけど」
「それ、思ってたより重症じゃない?」
「身体は普通だったんだよ。集中できてなかっただけ」
千夏は大喜の顔を見たが、何に集中できていなかったのかまでは聞かなかった。
「直ったならよかった」
「うん」
大喜が駅前へ目を向けると、広場には小さな屋台が並び、街路樹や建物の縁にイルミネーションが灯っていた。
「ちーちゃん、あっちちょっと歩かない?」
「クリスマスマーケット?」
「うん。やってるって聞いてて」
「行きたい」
二人とも大きなスポーツバッグを持っていたため、まず駅のコインロッカーへ向かった。千夏はバスケットシューズや着替えの入ったバッグを、大喜はラケットバッグを預ける。広場へ出ると、冷たい空気に焼き菓子や温かい飲み物の匂いが混ざっていた。家族連れや学生のグループの間を歩いていると、千夏が湯気の上がるカップを持った人へ目を向ける。
「何か飲む?」
「温かいのがいいな。今日ずっと体育館だったから、外出たら急に寒くて」
「俺も」
少し先にホットチョコレートの屋台があり、二人は列へ並んだ。順番が来ると、大喜が二つ注文して財布を出す。千夏も横から自分の財布を取り出した。
「私、自分の分出すよ」
「今日は俺が出す」
「なんで?」
「二回戦突破のお祝い」
「そんなので毎試合払ってたら大変だよ」
「毎試合とは言ってないし」
「でも私だけっていうのも悪いよ」
「今日誘ったの俺だし。これくらい出させて」
店員が二つのカップを用意し始める。千夏はまだ財布を持っていたが、やがて諦めたようにしまった。
「じゃあ、次は私が出すね」
「うん」
大喜は二つのカップを受け取り、一つを千夏へ渡した。
「熱いから気をつけて」
「ありがとう」
歩きながら一口飲むと、想像していたより甘かった。千夏も同じだったのか、カップの中を見て笑う。
「思ったより甘いね」
「疲れてるからちょうどいいかも」
「大喜くんも?」
「練習したし」
「私は試合した」
「じゃあ、ちーちゃんの方が必要そう」
「そういう問題?」
笑いながら屋台をいくつか見て回り、大喜は学校へ向かう途中であったことを思い出した。
「そういえば、今日夢佳さんに会った」
「夢佳に?」
「学校行く途中。校門の前にいた」
「あ、栄明に寄ったんだ」
予想していなかった返しに、大喜が千夏を見る。
「知ってたの?」
「夢佳からも連絡きたよ。今の学校の女バスに入るって」
「そっか」
「うん。でも栄明に行ったことは聞いてない」
大喜は夢佳が昔ここで真剣にバスケをしていたから、もう一度始める前に見ておきたかったと話していたことを伝えた。千夏はホットチョコレートを一口飲み、前を向いたまま笑う。
「夢佳らしいかも」
「そう?」
「うん。自分の中でちゃんと区切りつけてから始めたかったんじゃないかな」
「今日も、そのあとボール触りに行くって言ってた」
「そっか」
昨日とは違う、肩の力が抜けた声だった。
「連絡来た時、嬉しかった?」
「すごく」
千夏は迷わず答える。
「同じチームには戻れないけど、二人とも続けてたら、いつか試合で当たるかもしれないし」
「夢佳さんも、いつかちーちゃんとまたプレーできるくらいには続けたいって言ってたよ」
「本当?」
「うん」
「じゃあ、私も負けないように頑張らないと」
千夏の口元に競技者らしい笑みが浮かぶ。
「今度は、ちゃんと競いたいな」
大喜も頷いた。夢佳が戻るから昔と同じになるわけではない。違う学校で、それぞれが今の自分としてバスケットボールを続け、その先でまた同じコートに立つ。それなら、きっと昔とは違う試合になる。しばらくして、千夏が大喜へ顔を向けた。
「夢佳とは、他に何話したの?」
「昔の話とか」
「小学生のころ?」
「うん。夢佳さん、俺がちーちゃんにバド褒められた次の日、分かりやすいくらい張り切ってたって覚えてた」
「え?」
千夏が足を緩める。
「そうだったんだ」
「夢佳さんには分かってたみたい」
「私、全然気づいてなかった」
千夏は笑った。
「大喜くん、昔からそういうところあったんだ」
「どういうところ?」
「褒めるとすぐ頑張るところ」
「ちーちゃんに褒められたの、嬉しかったからだよ」
千夏の笑いが一度止まる。大喜も、自分で口にしてから少し恥ずかしくなった。それでも言い直そうとはしなかった。
「……ほんとに?」
「うん。あの頃は特に」
「じゃあ、もっと褒めておけばよかった」
「十分褒めてもらったよ」
「本当?」
「それでバド好きになったわけじゃないけど、最初に続けたくなった理由の一つだったと思う」
そっか、と千夏が笑う。大喜もそれ以上は続けなかった。バドミントンそのものを好きになり、ここまで続けてきたのは自分だ。それでも、その始まりの近くに千夏の言葉があったことまで否定する必要はない。さっきまで体育館で一人考えていた昔のことを、今はその本人と笑いながら話している。
マーケットの奥へ進むと、焼き菓子やチョコレートを並べた屋台が増えてきた。小さな箱に詰められた菓子を見ていた千夏が笑う。
「こういうの見ると、もうバレンタインみたい」
「確かに」
「まだクリスマスなのにね」
並んでいるチョコレートを見て、大喜は毎年二月になると千夏からもらっていたものを思い出した。小学生の頃から続き、いつの間にか当たり前に近いものになっている。けれど、大喜にとっては完全な当たり前ではなかった。
「実は、二月になると毎年ちょっと気にしてた」
「何を?」
「今年もちーちゃんからもらえるかなって」
「え?」
千夏が大喜を見る。
「そうだったの?」
「うん」
「全然知らなかった」
「言ったら催促してるみたいじゃん」
「だから何も言わなかったの?」
「そりゃ言えないでしょ。『今年もチョコくれる?』とか」
「私は毎年渡すつもりだったけど」
「それも知らなかった」
今度は二人とも笑った。千夏は屋台のチョコレートへ目を戻したあと、何でもないことのように続ける。
「じゃあ、今年も忘れないようにしないとね」
「楽しみにしてる」
大喜はそのまま千夏と歩き出した。今年も。次のバレンタインまで二か月もない。その時、自分たちが今と同じ関係なのかは分からない。それでも、今まで千夏からチョコをもらってきたことも、それを毎年楽しみにしていたことも変わらない。
マーケットの中央には、大きなクリスマスツリーが立っていた。学校のものよりずっと高く、枝には電飾と飾りが隙間なくつけられている。二人で見上げたところで、自然に会話が途切れた。
大喜は昨夜の体育館を思い出した。小さなツリーの前で背後から抱きしめられ、近くで自分の名前を呼ばれた。続きを聞こうとは思わなかった。千夏が何を言おうとしていたのかを確かめてから、自分の気持ちを決めたいわけではない。隣にいる千夏も黙ってツリーを見ていた。やがて千夏が上を向いたまま声を出す。
「……あ」
「何?」
「あの星、ちょっと曲がってない?」
「どれ?」
「一番右の方」
「あ、本当だ」
金色の星が一つだけ斜めに傾いていた。
「学校のツリーの方がきれいに飾れてたかも」
「いや、あれも西田先輩たち結構適当だったよ」
「そうなの?」
「見えない裏側とか、飾りほとんどなかったし」
「前から見えればいいってこと?」
「たぶん」
「それは西田君らしいかも」
二人は笑い、また歩き出した。マーケットを回っているうちに、話題は昔の朝練へ移っていった。
「大喜くん、小学生の頃、朝すごく眠そうだったよね」
「ちーちゃんが早すぎたんだよ」
「そんなことないよ」
「俺、家出る時まだ半分寝てたもん」
「でも体育館着いたらすぐ元気になってた」
「それはバドできるから」
「現金だね」
「ちーちゃんだって、バスケ始めたらずっと動いてたじゃん」
同じ時間を過ごしていたはずなのに、二人が覚えていることは少しずつ違っていた。大喜は、自分の試合を千夏が練習後に見ていたことをよく覚えている。千夏は、勝った日の大喜が帰り道でいつもよりよくしゃべっていたことを覚えていた。
「じゃあ、負けた日は?」
「大喜くん、全然しゃべらなかったよ」
「そうだった?」
「うん。私も何言えばいいか分からなかったから、あんまり話しかけなかったけど」
「俺もたぶん話したくなかった」
「じゃあ、ちょうどよかったんじゃない?」
「ただ隣歩いてただけじゃん」
「それでいい日もあったよ」
千夏はそう言って、残っていたホットチョコレートを飲んだ。大喜はその横で、自分が告白したあとについて何度も考えることをやめていた。先の答えはまだ分からない。それでも、こうして一緒に競技の話をし、互いに違う昔の記憶を笑いながら埋め合わせている時間を、これからも残したいと思う。これまでの関係を終わらせるためではない。
その先へ行きたいから、伝える。マーケットを一通り回る頃には、二人のカップは空になっていた。広場の時計を確認した大喜は、千夏が試合帰りであることを思い出す。
「ちーちゃん、疲れてない?」
「大丈夫だよ。今日は移動もそんなに長くなかったし」
「明日もあるでしょ」
「うん。でも帰ったらちゃんと休む」
「それならいいけど」
大喜はマーケットの出口へ目を向けた。ここから家へ帰ることもできる。けれど、今日はまだ帰りたくなかった。
「ちーちゃん、もう一か所だけ付き合ってくれない?」
「もう一か所?」
「うん」
「どこ?」
「着いたら分かるよ」
「教えてくれないの?」
「すぐ分かると思う」
千夏は不思議そうに大喜を見る。
「ここからそんなに遠くはないんだけど、疲れてたら今日はやめるよ」
千夏は首を振った。
「ううん。連れて行って」
その返事に、大喜は一度だけ頷いた。二人は駅へ戻り、ロッカーからスポーツバッグを取り出した。駅前のにぎやかな通りを離れ、住宅街へ入ってからも、大喜は行き先を説明しなかった。
「本当に教えてくれないんだ」
「もうちょっと」
「さっきからそればっかり」
「でも、そんな遠くないでしょ」
「それはそうだけど」
しばらく進むと、小さな公園が見えてきた。昔より遊具が減り、空いた場所が広くなっている。千夏も公園を横目に見て、歩調を緩めた。
「ここ……前からこんな感じだったっけ」
「滑り台、昔はもう一個あった気がする」
「あった。あと、あっちにブランコ」
「それは覚えてない」
「大喜くん、あんまり公園で遊んでなかったもん」
「たしかに」
道路沿いには昔と違う家も増えていたが、曲がり角や細い道の形は残っている。千夏が周囲を確かめるようになり、やがて大喜へ顔を向けた。
「この道って……」
「何が?」
「何でもない、秘密なんでしょ?」
「じゃあ言わないで」
「まだ言わないよ」
その声には、さっきまでとは違う懐かしさが混じっていた。曲がり角を抜けた先に、建物が見えた。子どもの頃はもっと大きな場所だと思っていたのに、今見ると記憶より小さい。入口からはちょうど練習を終えた子どもたちが出てきていて、バスケットボールを抱えた子やラケットケースを背負った子が、それぞれ家族と暗い道へ帰っていく。千夏が足を止めた。
「……やっぱり」
「うん」
「公園の辺りで、もしかしてって思った」
「もう少し隠せると思ってたのに」
「さすがに道までは変えられないよ」
千夏が笑いながら、建物を見上げる。二人が小学生の頃に通っていた体育館だった。最後の子どもたちと保護者が出てくると、館内の照明が一部ずつ消えていった。
「もう閉まるんじゃない?」
「まだ大丈夫なはずだよ、ちょっと聞いてみる」
大喜は受付へ向かった。閉館作業をしていた管理人に、以前ここへ通っていたことと、久しぶりに来たので中を少し見てもよいか尋ねる。管理人は壁の時計を確認した。
「施錠までまだ少しあるから大丈夫だよ」
「ありがとうございます」
「使ってた子?」
「はい。小学生の頃に」
「それなら懐かしいだろうね。照明はもう落としちゃったけど、それでよければ」
「大丈夫です」
大喜が頭を下げると、そばに来ていた千夏も礼を言った。体育館の中へ入る。メインの照明はすでに消えていた。非常口の緑色の灯りと、高い窓から入る外の明かりだけが床へ落ちている。先ほどまで使われていた場所とは思えないほど静かで、二人の足音だけが広い館内へ返った。千夏はゆっくり周囲を見回す。
「……懐かしい」
「やっぱり中も小さく感じる」
「大喜くんも?」
「うん。もっと広かった気がする」
「私も」
二人はコートの近くまで歩いた。床にはバスケットボールとバドミントンのラインが重なっている。千夏は昔自分が走っていた方へ進み、大喜は別の方向に目を向けた。あの頃はそこにネットが張られていた。最初は千夏と同じバスケットボールをやりたくて来たのに、別のコートで初めてラケットを握った。
シャトルを打つのが楽しくなった。千夏にかっこいいと言われた。それから何年も、自分はバドミントンを続けてきた。
「こんなに静かなの、初めてかも」
「いつも何か音してたからね」
「私たちが帰る頃も、誰かしら残ってたし」
「完全に静かになるまでいたことはなかったね」
千夏はバスケットボールのラインを辿るようにしばらく歩いた。ゴールがあった方向を見上げ、壁際へ目を向け、昔の場所を確かめている。
「こっちでよく夢佳と練習してた」
「うん」
「大喜くんはあっちだったよね」
「最初はもうちょっと近くで見てたけどね」
「バスケやりたがってた頃?」
「そう」
千夏が笑う。
「懐かしいね」
「うん」
千夏は少し先まで歩き、また立ち止まった。
「昨日夢佳と話したからかな。今日、昔のこといっぱい思い出す」
「俺も。夢佳さんと話して、久しぶりにここのこと思い出した」
「三人とも、あの頃とは全然違うのにね」
「夢佳さんもまたバスケ始めるし」
「うん」
千夏はもう一度、自分が走っていたコートを見た。大喜はその少し離れた場所から千夏を見る。昔も、こんなふうに別々のコートから互いの姿を見ていた。千夏がゆっくり戻ってくる。床の上では、バスケットボールとバドミントンのラインがいくつも交わっている。その近くで足を止めた千夏の隣へ、大喜も立った。
館内から音が消える。大喜は一度息を吸った。それから、隣にいる千夏へ向き直ろうとした。