願いの物語シリーズ【立花朝陽】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第2話『ふふふ。今日も正義をしっこーしたなり!』

人間関係は悩ましい。

 

見えないお友達から、里菜の家の事情を聞かされて、私は唸りながら考えていた。

 

「あら朝陽ちゃん。お悩みみたいですね」

 

「うん。困ったさんなんだよ」

 

「そういう時はお友達に相談すると良いってテレビでやってましたよ」

 

「……はぁ。お母さんはまったく、ダメダメだね」

 

「えぇ!?」

 

「テレビの人は大衆的で、個人の悩みには向かないんだよ」

 

「まぁ、そうなんですね! 朝陽ちゃんは物知りで天才ですね!」

 

「えへへ。それほどでも、あるけどね!」

 

「じゃあその物知りな朝陽ちゃんは誰に教わったんですかー?」

 

「お父さん!!」

 

「あらー。あの人はまったく。困ったさんですねぇ」

 

「お父さんも困ったさんなの?」

 

「えぇ。とっても困ったさんです。お母さんが折角朝陽ちゃんの役に立てる好機でしたのに」

 

「そんなの! お母さんはすっごい人だから、私はいつも尊敬してるよ」

 

「朝陽ちゃん! ひしっ」

 

「アハハ。あつーい!」

 

私は笑いながらお母さんに抱き着き返した。

 

二人で笑いながら話していると、何だか悩みもどうでも良い事の様に思えてしまうが、そういう訳にも行かない。

 

だってこの話は、私の話ではなく、里菜ちゃんの話だからだ。

 

「ねぇ。お母さん。お話聞いてもらっても良い?」

 

「えぇ。構いませんよ。どーんと私を頼って下さい」

 

「うん。じゃあ、聞くねー」

 

「はいっ」

 

「実は、里菜ちゃんの事なんだけど。里菜ちゃん、お母さんとかお婆ちゃんとかお父さんと上手くいってないみたいなの」

 

「そうなんですか」

 

「うん。だからね。里菜ちゃんが悲しくない様にしたいなって」

 

私はお母さんに話しながら、里菜ちゃんの事を考える。

 

見えないお友達から聞いた話では、里菜ちゃんは凄く寂しい思いをしているとの事だった。

 

「分かりました。ではお母さんが朝陽ちゃんに良い案を授けましょう」

 

「うん!」

 

「朝陽ちゃん。里菜さんともっと仲良くしましょう」

 

「……? それならもうやってるよ?」

 

「えぇ。勿論分かっています。今まで以上に。という事ですね」

 

「今まで以上に?」

 

「そう。どんな悩みも相談出来る様なお友達に、親友になりましょう。そうすれば里菜さんも朝陽ちゃんに悩みを相談できる筈です」

 

「どんな悩みも相談できるお友達……分かった! お母さん! 私、頑張る!」

 

「その意気ですよ。朝陽ちゃん。私も微力ながら協力させていただきますね」

 

「うん!!」

 

 

 

それから私は里菜ちゃんと一緒に過ごしながら、里菜ちゃんが相談したいと思える様な関係を目指して試行錯誤を繰り返した。

 

言動に気を遣い、里菜ちゃんの変化をよく見て、里菜ちゃんに寄り添ってゆく。

 

それが上手く行ったのか、少しずつ里菜ちゃんは悩みを打ち明けてくれるようになった。

 

最初は日常のちょっとした事とか、ジョージ君の事とかだったけど、段々と家族の事も話してくれる様になり、久しぶりに里菜ちゃんの落ち着いた表情を見る事も出来るようになったのだ。

 

流石お母さん様様である。

 

そして、里菜ちゃんの話を聞いていると、里菜ちゃんがどれだけジョージ君の事が好きか分かり、いつか二人はお母さんとお父さんみたいになるんだろうなと何となく考える様になっていた。

 

「里菜ちゃんはジョージ君といつ付き合うの?」

 

「っ!? 朝陽!!? なに言ってるの!?」

 

「だって、好きな人同士はお付き合いするもの。なんでしょ? テレビでやってたよ」

 

「そりゃ、そうかもしれないけど。ジョージは私の事なんて、別に好きじゃないよ」

 

「好きだと思うけどなぁ」

 

「私は友達みたいなモンでしょ。だって幼馴染だもん。ジョージは朝陽の事が好きになるよ」

 

「それを言うなら私も同じじゃないかなぁ。でも私は良いお友達って感じだよ?」

 

「まだジョージは子供だからよく分かってないだけ! すぐに朝陽の方が良いって言い始めるもん」

 

「そうかなぁ」

 

「そうなの!」

 

実に素直じゃない。

 

見えないお友達からの証言で、里菜ちゃんがジョージ君の事を想っている事は確認済みだ。

 

布団に隠れながら、ジョージ君の名前を呟いてぬいぐるみを抱きしめていたし。ほぼ間違いないだろう。

 

でも、それを言う訳にはいかないし。

 

難しい問題だ。

 

私は椅子に座りながら足をブラブラと揺らして、腕を組みながら悩む。悩む。悩む。考える。

 

「朝陽」

 

「なぁに? 里奈ちゃん」

 

「足。はしたないよ」

 

「えー、良いじゃん。考え事してる時はこうやって体をゆらゆらさせると落ち着くんだよ」

 

「それでも! 見えちゃうから!」

 

視えちゃうと言われ、私は見えない筈のお友達に何となく視線を走らせた。

 

当然周りからは自然に見える様に振舞う事も忘れない。

 

しかし、誰も彼もよく分からないという様な雰囲気だった。

 

ふむ?

 

「ほら。ボーっとしない。足、閉じて、動かない!」

 

「えー。窮屈だなぁ」

 

「だぁー! から、見えちゃうって言ってるでしょ! 動かないで!」

 

「ぷー」

 

「はぁ、ったく。朝陽は本当にボーっとしてるし、放っておけないわね」

 

「いやいや。私ほどしっかり者な人はそういないよ? 里奈ちゃん」

 

「はいはい。そうですねー」

 

「ぷー」

 

本当なのになぁと呟きながら、見えないお友達からの言葉を聞いて、私は勢いよく立ち上がる。

 

遠巻きに私達を見ていた子たちは何だなんだとばかりにこちらを見ているが、知った事じゃない。

 

正義の出番だ!

 

「里奈ちゃん! 私、ちょっと行ってくるねー!」

 

「なに? また?」

 

「うん!」

 

何も言わずとも察してくれる里奈ちゃんはやれやれ。なんて言いながら椅子から立ち上がって私に行くんでしょ? と言いながら手を引いてくれる。

 

こうしていても分かるけど、里奈ちゃんは最高の親友だと思う。

 

私は大きく頷きながら、里奈ちゃんと一緒に現場へと向かう事にした。

 

場所は音楽室。

 

一人の男の子が何人かの男の子に虐められている!

 

助けなくては!

 

 

 

私達は廊下を走り、問題の音楽室の扉を勢いよく開けると、叫んだ。

 

「御用だー!」

 

「っ!?」

 

「なっ、誰だ!」

 

「ふふふ。語る必要はございませんな!」

 

「あぁ!?」

 

「待て。こいつら確か……四年の夢咲と、藤堂朝陽だ」

 

「藤堂朝陽ってあの、藤堂朝陽か!?」

 

「ふふふ。見てみて、里奈ちゃん。私ってば有名人。これも正義活動のお陰だね!」

 

「いや、違うと思うけど」

 

「え?」

 

里奈ちゃんとお話をしていると、不意にイジメをしていた内の一人が私たちの所に来た。

 

私より頭二つ分くらい大きい。

 

横も縦もとにかく大きな男の子だった。

 

「へぇ。お前が藤堂朝陽かよ。それなりに可愛いじゃん?」

 

「はぁ。私より里奈ちゃんの方が可愛いと思うけど」

 

「フン。まぁどっちでもいいさ。お前ら二人とも俺のモンにしてやるよ!」

 

男の子はそう言うと、私の腕を掴んできた。

 

私はいつもの様に男の子の腕を掴むフリをして足を男の子の足に掛けるふりをすると見えないお友達に頼んで、男の子を勢いよく転ばせた。

 

そして、そのまま眠らせて貰う。

 

「た、武山を倒した!?」

 

「まさか!?」

 

「どうやら、私の方が強かったみたいだね。正義は勝つ! このいんろーが目に入らぬかー!」

 

「朝陽はまだやる気みたいだけど、そっちの子たちはどうするの?」

 

「や、やる訳ねぇだろ!」

 

「逃げろ!」

 

「ふふふ。今日も正義をしっこーしたなり! むむむ。また、つまらぬものを切ってしまったか!」

 

「朝陽さぁ」

 

「ん? なぁに!?」

 

「最近やってるその物まね、何なの?」

 

「テレビでやってた侍! 格好良いんだー! ズバッ、バサッって悪者をやっつけちゃうの!」

 

「へぇ。朝陽ってば侍が好きなんだ」

 

「うん。だって格好良いモン! 私も将来はケンゴーになるのだ」

 

「いや、朝陽はどう考えても姫でしょ。侍は無理無理」

 

「えぇー!? いやいや、見てよ! こんなに強いんだよ!? 私!」

 

「インチキしてるくせに」

 

「う……それは言わない約束だよ。おとっつあん」

 

「誰がおとっつあんか!」

 

「あいてっ!」

 

私は里菜ちゃんに頭を叩かれながらケラケラと笑った。

 

里菜ちゃんはそんな私を見て笑う。

 

ごく当たり前の日々だ。

 

普通の日だ。

 

そんな日常が、愛しいと私は思う。

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