願いの物語シリーズ【立花朝陽】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
お母さんとお父さんが亡くなってから数年が経ち、私は里奈ちゃんと二人で生活していた。
しかし、里奈ちゃんと二人で生活する様になってから気づいたのだが、里奈ちゃんの様子がおかしいのだ。
まるで何かに怯えている様に周囲を見渡したり、不意に知らない人の声が聞こえたりする様だった。
最初は見えないお友達が関わっているのかと思ったのだけれど、誰も何も知らないという。
メリーさんに一日見ていて貰った事もあるけれど、やっぱり何も見えなかったらしい。
となると、見えないお友達ではない何かが関わっているか、もしくは里奈ちゃんが疲れているとか、病気とか?
でも、病院に行っても何も異常はなかったらしく、私は首をひねるばかりだった。
しかし、私では手詰まりな事は確かである。
どうしようかなと考えていたところ、何でも当たる占い師の人が居るという噂を聞いたのだ。
そこで私はその占い師の人に会うべく夜の街に出掛ける事にしたのである。
「という訳で、その占い師という人を探しているのですが、何かご存知でしょうか」
「んー。私は聞いたこと無いなぁ」
「わざわざありがとうございます!」
「いいのよー。また何でも聞いてねー」
「はい!」
道の端で暇そうに立っていた女の人に話しかけてみたけど、何も知らない様だった。
そもそも夜の街に現れるというだけで、他には何も情報が無いのだ。
雲を掴む様な話だった。
どうするべきかと悩み、夜の街を歩く。
そんな中、私は今夜も知らない人に声を掛けられた。
「よぅ。お嬢ちゃん。こんな時間に一人でどうしたんだぁ?」
「どうと言われましても、人を探しております」
「へぇ、人探しかよ。なら手伝ってやろうか?」
「そうですか! ありがとうございます」
私は話しかけてきた男の人たち三人に付いて街を歩き、人が居なそうな路地裏へと入った。
まぁそんな気はしていたけど、どうやらいつもの奴らしい。
私は視線を路地裏の影に向けながら歩いてゆく。
そして、路地裏の奥に入り後ろからも人が来る気配を感じながら私は前を歩く三人に笑いかけた。
「ふ、ははは! コイツ、マジで付いてきたぜ!」
「どうせどこかのお嬢様って感じだろ!」
「じゃあ、世間って奴を教えてやるか。嫌って程な!」
後ろから私の肩を掴む気配に、私は影に潜む見えないお友達に合図を送った。
「はぁ、また外れでしたね」
「何を言ってっ!!?」
影から出てきたお友達が私の後ろに居た人を壁に叩きつけ、正面に居た三人にもそれぞれ影から無数のお友達が襲い掛かる。
命を奪ったり、怪我をさせるつもりはないけれど、動けなくなって貰う。
「さて。大変申し訳ないのですが、このまま質問させていただきますね。私、この街で夜にだけ現れるという占い師さんを探しているんですが、何かご存じでしょうか?」
多くのお友達によって壁に磔の様にされた男の人に首を傾げながら質問をする。
しかし、その人たちは意味のない言葉を発するばかりで何も質問に答えてはくれなかった。
「んー。どうしましょうか。また今日も収穫は無さそうですね」
「お、お前!! まさか、最近この辺りを荒らしまわってる、変な力を使う女か!?」
「変な力じゃ無いですよ。ただお友達に助けて貰っているだけで」
「うるせぇ!! 俺たちを解放しろ!!」
「と言われましても。私としては占い師の情報さえ聞ければそれで」
「知らねぇ! そんな奴は!! 知らねぇよ!」
「そうですか。ではお別れですね」
「ま、待ってくれ! 殺さないでくれ!!」
「別に、殺しませんよ」
私は皆さんを解放して、呆れた様に言葉を紡いだが、どうやら話を聞いては貰えなかったみたいだ。
そのまま全員走って逃げてしまった。
「さて、どうしましょうか」
「お前か? この辺りを荒らしまわっている変な力を持った女ってのは」
「いや、ですから。私は別に」
「確かめさせてもらう」
「っ!?」
路地裏の入り口の方に逃げた男の人の代わりに私の前に現れたのは一人の男の人だった。
とは言っても、私とそんなに年が離れている様には見えない。
でも、その人は何故か私に敵意を向けていて、真っすぐにこっちに突っ込んできた。
私は何とかお友達の力を借りて男の人から離れつつ、影からお友達がその人に手を伸ばすけれど、その全てをかわされてしまう。
しかも、当然の様にゴミ箱を足場にして壁を蹴りながら三次元的に動いて避けていくのだ。
およそ人間技じゃない。
「本当に人間ですか!?」
「お前に! 言われたくは、無い!!」
男の子は信じられない程の速さで私にすぐ触れる様な位置に来て、私の服を掴んで、拳を握りしめた。
でも、私のすぐ後ろから飛び出した無数のお友達がその刃を牙を男の子に突き付けていて、私たちは互いに動けない状態になってしまった。
しかし、男の子は私の服を掴んだまま目を見開き固まった。
そして私の服を離すと、勢いよく頭を下げる。
「す、すまん!! 人違いだった!!」
「えっと、その。事情を聴いてもよろしいでしょうか?」
「あ、っと。そうだな」
男の子が私から離れた事で、私はお友達に離れて貰った。
そして男の子の話に耳を傾ける。
「実は俺、過去が視えるんだ」
「あの、病院をご紹介しましょうか?」
「嘘じゃない!! 本当の事だ! そもそも、変な力を使っているお前に言われたくはない!」
「変な力じゃありません。私にしか見えないですがお友達に協力してもらっているんです!!」
「いや、自分の力だろう? 現実逃避は良くないぞ。あんたの過去を見てればイマジナリーフレンドを作りたくなる気持ちも分かるけどな」
その言葉に私はムッとして、お友達に頼んでこの人の事情を探ってもらう事にした。
そして、それと同時に悪口に言い返す。
「言っておきますけど! お友達は確かにここに存在しています! 幻なんかじゃありません! 貴方だって、過去が視えるとか言って、本当は誰かに教えて貰っているんじゃないんですか!?」
「なんだと!? 俺の力は確かに俺の力だ! 嘘なもんか!」
「どこまで真実か分かったものじゃ無いですね!」
「俺の力は一族に代々伝わる力だ! 母さんも爺さんもそのまた爺さんもみんな同じ力を持っていた!」
「だからそれがお友達の力を借りているんじゃないですか! って言ってるんじゃないですか!」
「んな訳ねぇだろ! なんだ。そのお友達ってのは!」
「お友達はお友達です!」
「何の説明にもなってねぇよ!」
「わかんないんですか!? あなたにだって見えているんでしょう? 見えないフリは可哀想ですよ!」
「見えてねぇ!」
「なら、なーんにも力なんか無いんですよ!」
「そうかよ! なら言ってやる! お前は幼いころからの親友である夢咲里奈に異常を見つけて、それを解決するために占い師を探している! そうだな!? 藤堂朝陽!!」
「なんですか! お母さんを襲った不思議な力を持つ存在を探す為に、その人が現れたという街を捜し歩いている! 立花幸太郎さん!!」
「ぐぐぐ!!」
「むむむ!!」
私と男の子は互いに睨み合って、唸り合う。
しかし、互いに言っている事は正しく、私たちは互いに認める事が出来ず、動く事も出来ない。
そして、私たちはやがて睨み合う事に疲れ離れた。
「少しだけ、お前の言う事を信じても良いぞ」
「えぇ、そうですね。貴方の言う事を少しなら信じても良いです」
私たちは壁に寄りかかりながら見つめ合って笑い合った。
そして、壁から離れて握手をする。
「もし仮に、貴方が過去を視る事が出来るというのなら、お願いしたい事があります」
「俺もだ。アンタがもし多くの場所を同時に視る事が出来るお友達っていう目があるのなら、手を貸して欲しい」
互いに頷きあい、笑って言った。
「えぇ。勿論。任せて下さい」
「あぁ。良いさ。任せろ」
これが幸太郎さんとの初めての出会いだった。