ガチムチアニキと洋楽の女神   作:nelldrip

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ついに国内に踏み込んだ。

偉大過ぎる悪魔教。 「JKがどこまで知ってるか」を試す空気の中、知識で殴り合う。

翌日。
B'z。その名を出した瞬間、溢れ出るロックの衝動。
「夢見が丘」を選んだとき、ガチ勢が本気で降参した。
止まらない選曲列挙に、コメント欄はいつしかB'zファンの集会に。

おっさんホイホイV、ここに本領発揮!


本土上陸作戦

 

 

## 第九話 ついに来た、聖飢魔Ⅱ

 

---

 

今日はいつもより緊張する。

 

今までは知ってる人がほとんどいない、海外のバンドを扱ってきた。

 

今日は違う。

 

国内、それも、地下とかインディーズではない。全国レベルの怪物。

 

中途半端なことを話せば、間違いなく教徒からボコボコにされそう、そう思うと、少し楽しみになった。

 

負けるつもりはない。私だって、あの親から聞かされただけではないのだ。

 

…まぁ、おかげで友達で話が合うやつは一人もいないわけだが。

 

いつの間にか「洋楽の女神」なんて呼ばれるようになってた。誰が言い出したのか知らないけど、気づけばコメント欄で普通に使われてる。おっさんホイホイだの、洋楽の女神だ、好き勝手言ってくれるよね。後者はともかく、前者は喜ぶべきなのか、イラリとするべきなのか。そう言いながら、口元が緩んでいるのに気づく。

 

いけないいけない。もう、配信の時間だ。

 

すでにある程度の、常連の人たちが待ってくれている。

 

この人たちが楽しそうに返してくれるなら、それは素直に嬉しい。

 

そう思いながら、配信ボタンを押した。

 

 今日は何の国?

 また知らない国かな

 

 今日は、国じゃないです。日本のバンドで……聖飢魔Ⅱです。

 

一拍、コメント欄が止まった気がした。

 

 えっ

 待って

 セイキマツ?!?!

 ガチかよ!?!?

 

そこから、雪崩のようにコメントが流れ始めた。

 

 お前マジで聖飢魔Ⅱ知ってんの!?

 JKが聖飢魔Ⅱの名前出すの初めて見たわ

 うわ来たよ来たよ、ついに国内も来た!それも超大御所!!

 

予想していたよりも、何倍も大きい反応だった。今までの「知らないバンド」シリーズとは、完全に温度が違う。

 

---

 

 もう、説明不要かもですけど、悪魔教教祖ダミアン浜田陛下率いる、ヘヴィメタルバンドです。

 

 知ってるに決まってるだろwww

 日本のメタル語って聖飢魔Ⅱ抜きにできないからな

 むしろJKがどこまで踏み込んでくるか見てるわこっち

 

 ちゃんとコンセプトもしっかりしてて、悪魔の布教活動っていう設定で活動してて。曲もすごくキャッチーで、メタルって構えずに聴ける曲が多くて。あの、「STAINLESS NIGHT」とか、「JACK THE RIPPER」とか――

 

 おい、ちゃんとタイトル知ってるどころか選曲がガチじゃねーかwwwww

 なんなのこの子、ガチすぎだろ

 

 あと、ライブの構成美もすごくて。エンターテインメントとしての完成度が、本当にずば抜けてるなって思います。

 

 わかってるwwwわかりすぎてるwww

 お前そろそろ俺らより詳しいんじゃないか説、もう確定だろ

 

---

 

 あ、あと「地獄の皇太子」!「フハハハハ……地獄の皇太子!」って、あの掛け声から入るやつ、もうお約束っていうか、これ抜きに聖飢魔IIは語れないんですよね!

 

 掛け声まで知ってんのかこの子

 なんでJKが聖飢魔IIの初期曲しってんのwwwww

 

あと――「BRAND NEW SONG」。

 ……は?

 ちょっと待って

 蝋人形じゃなくてそっち!?

 

 ふふ。蝋人形の館はもちろん名曲なんですけど、聞かれたら、わたしはこっちで。ルーク篁さんが作詞作曲してて。「例えば明日喉が枯れても」って歌い出しなんですけど、何があっても歌い続けるんだ、っていう曲で。メタルバンドが、こういうまっすぐな讃歌を本気で鳴らすのが、たまんないんですよね。

 

 おいこいつガチじゃねーかwwwww

 蝋人形じゃなくBRAND NEW SONGなのwwww

 ルーク作曲って指定までしてくるな

 

---

 

 あと、シャウト系だと「殺しの現場!!」も大好きで。これ、閣下の超絶ハイトーンシャウトが本当に有名で。「死して屍拾うもの無し」のところとか、曲の締めのシャウトとか、もう人間の声じゃないんですよ。さすが悪魔だなって。

 

 殺しの現場挙げるのガチすぎるwww

 あのhihiCのシャウトな、あれは化け物

 「死して屍拾うもの無し」のとこ分かってるの本物すぎる

 

 「害獣達の墓場」も外せなくて。あと、「BAD AGAIN ~美しき反逆~」!これ、「再び よみがえる 美しき反逆」って歌う曲で。何度解散しても、何度でも蘇ってくる聖飢魔IIそのものみたいな曲で。もう、聴くたびに胸が熱くなるんです……!

 

 BAD AGAINで来たか……

 あれは復活の曲なんよ、わかってるなあ

 害獣達の墓場までさらっと出すのもうおかしいってwww

 

---

 

 あ!あとWho's singing now?もすきです!

 

 ん?そんな曲…

 おまwwww第3惑星隠してんじゃねぇwwwww

 不思議な第3惑星じゃねーかwwww

 不思議なを正しく言うなしwwwwwww

 

---

 

コメント欄の流れが、今までで一番速い。今までの「知らない国行ってきました」というスタンスから一転、「知ってる前提で、どこまで深く語れるか」が試されている空気になっている。

 

 あの、解散したときも、ちゃんと教祖から地球の皆さんへ向けてのメッセージがあって、それも含めてすごく好きで……

 

 うわ解散の話まで知ってんのか

 もう何も言えねぇわ、完敗だ

 

 完敗て、別に勝負してないですよ。

 

 いや、これは完敗の空気だわ

 俺ら40代、JKに負けたわ

 

---

 

そんな会話を続けていると、視聴者数のカウンターが、ずっと右肩上がりに伸びていた。さっきまでとは違う伸び方をしている。

 

 なんか今日、人が多くないか?

 誰か拾ってバズってるんじゃないか、これ

 

(バズってる……?)

 

そう思った瞬間、心臓が少し跳ねた。

 

 あの、今日はありがとうございました! また今度、もっと深い話もしたいです!

 

 次もぜひ頼む

 いやこれもう毎日見るわ

 

そう言ってもらえて、配信を終えた。

 

画面を閉じてからも、しばらく胸がドキドキしていた。

 

(聖飢魔Ⅱだけで、こんなに反応くるなんて……)

 

これが、海外のバンドを地道に紹介していたときとは、明らかに違う種類の熱量だということに、わたしはまだ半分も気づいていなかった。

 

---

 

## 第十話 B'z、その名前だけで

 

---

 

配信を開ける前から、なんとなく予感があった。

 

通知欄の数字が、いつもと違う。チャンネル登録者の増え方も、開始直後からすでに普段の比じゃなかった。

 

 準備中の画面なのに人多くないか?

 昨日の聖飢魔Ⅱの件で来た人だろ、これ

 

待機画面の段階で、もうコメントが流れている。今までこんなこと、一度もなかった。

 

配信を開始する。

 

 今日はどこの国、ですか……?

 

そう聞かれて、すぐに首を振った。

 

 いや、今日もまた国じゃないです。今日は……B'zです。

 

その瞬間、コメント欄が爆発した。

 

 は???

 B'z!?!?

 来たよ来た来た!来たよ!!!

 これは見るしかないだろ!!!

 

その名前を口にした瞬間から、もう鰻登りだった。視聴者数のカウンターが、目に見える速さで増えていく。今まで、こんな伸び方を見たことがない。

 

---

 

 もう知らない人いないと思いますけど、稲葉浩志さんと松本孝弘さんの、二人組のロックバンドです。

 

 知らないわけねぇだろwww

 国民的バンドなんだわ!wwww

 むしろJKがB'zの話するの自体がもう奇跡

 

 わたし、結構ガチで聴いてて。歌詞の世界観とか、メロディの作り方とか、本当に隙がないというか……

 

 いや、それは知ってる。それより

 どの曲が好きなのか聞かせてくれ

 これが聞きたい

 

来た。

 

 え、どの曲がいいか、ですか……?

 

少し溜める。これは、ちゃんと考えて答えなきゃいけない質問だ。

 

 うーん……そうだなぁ……

 

頭の中で、何度も聴いた曲が次々浮かんでいく。有名な曲も、もちろんいい。でも、聞かれて即答するなら、やっぱりこれだ。

 

 夢見が丘!

 

一瞬、コメント欄が止まった。そして。

 

 夢見が丘?!?!

 ガチじゃねーかwwwwwwwwww

 いやー、B'zはやっぱメジャーなのよりこっちでしょ!って言うんかこの子!?

 どんだけ詳しいんだよ、嘘でしょ

 夢見が丘選ぶJK、つちのこよりレアだろwwwwww

 

特にB'zガチ勢らしいリスナーの反応が、明らかに一段違う温度で来ていた。

 

 だからガチもいいとこなんだよwwwwww

 これは認めるしかない、本物だ

 

---

 

 あの、メジャーな曲はもちろん全部好きなんですけど、聞かれたら、やっぱりこれを一番に挙げたくて。

 

 もう何も言えない、降参だ

 今日は時間あるんだろ? もっと聞かせてくれ

 オススメ全部言ってくれ、頼む

 

時間はある。むしろ、止める理由がない。

 

 えっと…じゃあ……ちょっと長くなりますけど、いいですか?

 

 いい

 むしろ望むところだ

 全部聞くまで帰らない

 

---

 

 まず、「恋じゃなくなる日」。

これ、すごく繊細な曲で。恋が恋でなくなっていく、その瞬間の心の機微みたいなものを、稲葉さんの歌詞が本当に丁寧に描いてて。サビのメロディの切なさが、聴くたびに刺さるんですよね。派手じゃないんですけど、わたしの中ではすごく大事な一曲です。

 

 恋じゃなくなる日、わかる人にはわかる名曲

 この子、選曲が渋いんだよな……

 ちょっとまってなんでJKのチョイスがこれなのwwww

 

 あと、「Love is Dead」。タイトルだけ見るとすごく重そうなんですけど、サウンドがめちゃくちゃかっこよくて。退廃的な世界観と、攻めたアレンジが融合してて、B'zの実験的な一面が出てる曲だと思います。あのダークさ、癖になります。

 

 Love is Dead挙げるのガチすぎる

 アルバム曲だぞそれ、JKが知ってるのおかしいだろ

 

 「月光」も、すごく好きで。これは静かな曲なんですけど、稲葉さんの声の繊細さが際立つ一曲で。夜に一人で聴くと、もう、なんというか……世界が変わります。

 

 月光わかる、あれは夜の曲

 情緒の理解度たっか

 

止まらない。コメントの加速に背中を押されるように、次々と曲名が口をついて出てくる。

 

 ロックなら「ギリギリChop」、これはver.51がやっぱり好きですね。「Brotherhood」も、男臭いのに泣けるんですよ。「紅い河」のイントロのギター、何度聴いても震えます。「Pleasure〜91」、「Calling」、「ONE」……ああ、もう全部好きすぎて困る。

 

 待てwwww列挙の速度がプロのそれwww

 ver.51って指定してくるの、もう完全に同類じゃん

 

---

 

 で、「SNOW」。これ、冬になると絶対に聴きたくなる曲で。切なくて、あったかくて。雪が降る情景がそのまま音になったみたいな曲で、わたし、毎年冬に必ず聴いてます。

 

 SNOW、季節限定で命削られるやつ

 冬の必聴曲だわ、わかってる

 

 「YOU & I」も、すごくいい曲で。これはもう、まっすぐなラブソングなんですけど、まっすぐすぎて逆に照れるくらいで。でも、そのまっすぐさがB'zの真骨頂だと思うんですよね。

 

 YOU & I、名曲すぎる

 この選曲、もう古参の俺らが負けてる

 なんでJKのチョイスが超マイナー初期曲なんww

 

 あと、「DEEP KISS」。これはちょっと艶っぽい曲で……えっと、JKが語っていいのか分からないですけど、楽曲としての完成度がすごく高くて。グルーヴ感が癖になります。

 

 DEEP KISSをJKが語る画、字面がもうやばいwww

 いや楽曲の話してるだけだから!って自分で言ってるの面白いw

 

 「キレイな愛じゃなくても」も、タイトルからして好きで。完璧じゃない愛を肯定する歌詞が、すごく人間的で。きれいごとじゃない感じが、逆に沁みるんですよね。

 

 キレイな愛じゃなくても、歌詞が刺さるやつ

 大人になってから刺さる曲を16歳が語ってる恐怖

 

 そして、「君を今抱きたい」。これはもう、ストレートな衝動を歌った曲で。激しいのに、どこか切実で…聴いてると、その瞬間の感情の高まりがそのまま伝わってくるんです。B'zって、こういう生々しい感情を、ちゃんとかっこよく仕上げるのが本当に上手くて。

 

 君を今抱きたい、名曲

 もうこの子に語らせとけば全部解決する説

 

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止まらない。もう一気に行く。

 

 他にも、「I'm in love?」とか、「どうしても君を失いたくない」、「となりでねむらせて」、「NEVER LET YOU GO」、「ある密かな恋」、「きみをつれて」、「It's Raining」、「さよならなんかは言わせない」、「挑めよ儚いこの時に」、「孤独のRunaway」なんかは外せないですね。

 

 待て待て待てwwwww

 息継ぎしろwwwwww

 

 あとアルバムだとACTIONとTHE CIRCLEもいいですよね。

 ACTION!だと「光芒」が、すごく好きで。闇の中で光を求めて、もがいて、さまよって……どん底の中で、それでも光を渇望する、みたいな曲で。THE CIRCLEだと「睡蓮」、「パルス」、「X」「Sanctuary」……ああ、もう全部好きで、本当にキリがないです……!

 

 全曲制覇する気かこの子はwww

 なんでJKのチョイスでよりによってACTIONとTHE CIRCLEが出てくるんだよwwww もっとメジャーなアルバムあるだろwww

 

 睡蓮は稲葉さんの描く世界観が、もう本当に見事なんですよね…歌詞の一語一語が情景になってて、聴いてると頭の中に絵が浮かぶんですよね。

 

 睡蓮挙げる時点でガチすぎて引くわwwww

 しかもリード曲外してくるあたりがもう

 

 あと、Xとパルス!これはもう、松本さんのリードが泣きすぎてて、神、神、神ですよ!その上に稲葉さんの俺はここにいる!帰ってきたって叫びが乗ってるようで、ほんっとうにたまらないですよね!

 

 待てwww語彙が「神神神」になってるぞwww

 さっきまでの理性どこ行ったwww

 でもわかる、Xのあのリードは泣く

 

 Sanctuaryは、逆なんです。松本さんの哀愁表現と、稲葉さんの渇望の叫び。さっきとは反対の組み合わせで、これがまた、たまらなさ過ぎるんですよね……。

 

 なんでJKが拗らせB'zオタクやってんだよwww

 松本と稲葉のどっちがどう効いてるか分解してくるJK、地球に何人おるんwww

 

 いや、もう、THE CIRCLEは全曲が神なので……一曲なんて、選べないです……!

 

コメント欄を見て、ふと気づく。

 

さっきまで「JKがB'z知ってる!」と驚いていたリスナーたちが、いつの間にか全員、自分のB'z愛を語りはじめていた。

 

 いやもう完全にB'zファンの集会になってるじゃんここwww

 ガチ過ぎて草wwwww

 古参より古参wwwww

 おっさんホイホイ過ぎるwwwwww

 B'z好き過ぎワロチwwwwww

 俺ら、JKに布教されに来たおっさんの群れwww

 

---

 

視聴者数のカウンターを見る。さっきまでとは、もう桁が違っていた。

 

(これ、なんかとんでもないことになってる気がする……)

 

そう思ったが、止まる理由はどこにもなかった。

 

配信が終わる時間になっても、コメントは止まらなかった。

 

 もっと聞きたい、まだやってくれ

 次回も絶対来る

 これ拡散していいよな? みんなに教えたい

 

 あ、はい! ぜひ……!

 

そう答えて、配信を終えた。

 

画面を閉じた瞬間、スマホの通知が、見たことのない速さで鳴り続けていた。

 

(おっさんホイホイって言われたけど……)

 

ふと、思う。

 

(わたし、ホイホイされてるおっさんたちと、同じ熱量で語ってたな……)

 

それが嫌じゃない自分に、ちょっとだけ笑ってしまった。

 

---




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

第九話・第十話、「本土上陸作戦」でした。



海外バンドを一つずつ語っていた今までとは、完全に温度が違う2話。

聖飢魔Ⅱで火がつき、B'zで溢れ出すロックの衝動。

コメント欄のおじさんたちが、知識で殴り合うどころか、いつの間にか自分の推しを語りはじめてしまう様子は、書いていてこちらも楽しかったです。

ここから、彼女は完全に「洋楽の女神」の階段を上っていきます。

次からワールドツアー編!乞うご期待!

使用楽曲コード:01145533,03035522,04088204,04934920,07528159,08235562

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