蜂ガイル〜蜂は再び恋をすることが出来るのだろうか〜   作:龍造寺

15 / 15
第14話です。


第14話ー三浦優美子と麦野静乃。

 

千葉県・昼休み・総武高校・2ーF組。

 

それから数日が経った、雨の日の昼休み。いつものテリトリー(特別棟の階段のところ)は雨が降るとびちゃびちゃになってしまうから、仕方なく教室でお弁当を食べることにした。

 

あの場所は麦野さんにも教えたから、最近は時々一緒に食べていたんだけど、今日は雨のせいで無理ねぇ。

 

私は鞄からお弁当を取り出した。麦野さんは購買部にパンを買いに行っているみたい。周りを見回すと、いつもの見慣れた光景が広がっていた。

 

比企谷君は1人でパンをかじりながら

『この教室にいたくない』という顔をしている。

 

携帯ゲーム機をいじっている子もいれば、クラスメイト同士で雑談しながら食べている子もいる。

 

そして、騒がしい中心にいるのは——三浦優美子を中心としたグループ。そこにはイケメンの葉山隼人君もいて、もちろん由比ヶ浜さんも所属している。

 

葉山君を見ていると、なんだか上坂君を思い出してしまう。あの頃の彼も、最初は人の良さそうな顔をしていたけれど……結局は違う人だった。

 

私はお弁当箱を開きながら、ぼんやりと彼らの会話を聞いていた。

 

「いやー、今日は無理そうかな、部活あるし」

 

「別に1日くらい良くない? 今日ね、サーティワンでダブルが安いんだよ。あーしチョコとショコラのダブルが食べたい」

 

「それどっちもチョコじゃん(笑)」

 

「えーっ。全然違うし。ていうかお腹超減ったし」

 

由比ヶ浜さんと三浦さんは、スイーツ会話をしていたところに

 

「悪いけど、今日はパスな」

 

葉山君が仕切り直すように言った。三浦さんは不満げな顔で彼を見ている。すると、戸部君が髪をかき上げながら続けた。

 

「俺ら、今年はマジで国立狙ってっから」

 

「俺たちは冗談は言ってるつもりはない。本当に国立を目指しているんだ」

 

スポーツ刈りの島津君が、鬼のような真面目な顔で言った。

 

サッカー部では『鬼島津』と呼ばれているらしい。

 

「サッカー部が国立を目指してるように、野球部だって甲子園目指してるんだぜ」

 

クマのような見た目の龍造寺君が、豪快に笑いながら言った。彼は2年生ながら野球部の4番を任されているそうだ。

 

葉山君は三浦さんに向かって

 

「それにさー、優美子。あんまり食いすぎると後悔するぞ」

 

……葉山君じゃなかったら、かなり危険なセリフよねぇ。

 

「あーしいくら食べても太んないし。あーやっぱ今日も食べるしかないかーね、ユイ?」

 

「あーあるある。優美子、スタイルいいよねー。でさ、あたしちょっと予定があるから」

 

「だしょ?もう今日食いまくるしかないでしょー」

 

三浦さんがそう言うと、周りが追従するように笑った。でもなんだか空虚な笑い声に聞こえる。

 

「食べ過ぎて腹壊すなよ」

 

「だーからー、いくら食べても平気なんだって。太んないし。ね、ユイ」

 

「や〜ほんと優美子マジ神スタイルだよねー脚とか超キレー。で、あたしちょっと」

 

「えーそうかなーでも雪ノ下さんとかいう子の方がやばくない?」

 

「あ、確かに。ゆきのんやば」

 

「……」

 

由比ヶ浜さんが雪ノ下さんの名前を出した瞬間、三浦さんの笑顔がピキッと固まった。由比ヶ浜さんもそれに気づいて慌てた。

 

「あ、や、でも、優美子の方が華やかというか」

 

三浦さんは爪で机をカツカツと叩き始めた。教室の空気が一気に重くなる。

 

「それじゃわかんないから。言いたいことがあんならはっきり言いなよ。あーしら、友達じゃん。そういうさー隠し事?とかよくなくない?」

 

由比ヶ浜さんはしどろもどろになりながら

 

「ごめん……」

 

「だーからーごめんじゃなくて。何か言いたいことあんでしょ?」

 

その瞬間、教室の空気が凍りついた。私はお弁当を食べる手が止まってしまった。

 

これはただの友達同士の会話じゃない。由比ヶ浜さんは『仲間』であることを強要されているように見えた。

 

すると、突然——

 

「三浦、あんたいい加減にした方がいいわよ」麦野静乃さんが、購買部から戻ってきたところで声を上げた。

 

「は? 麦野? 別にあんたに用はないけど?」

 

「あなたがしていること、はたから見ていれば気分が悪くなるのよ。そうやって1人の人間を……三浦、あなたは自分の力を見せつけたいのかしら?」

 

「だーからーなんであんたが出てくるわけ?」

 

「あなたがこのクラスの空気を悪くしてるんでしょ? その辺、自覚持った方がいいわよ。由比ヶ浜、あなた誰かと会う約束があるんでしょ。さあ、行きなさい」

 

「む、むぎのん……ありがと」

 

由比ヶ浜さんは麦野さんに頭を下げて、慌てて教室から出ていった。

 

「何勝手なことしてんの? あーしはユイとまだ話してたんだけど?」

 

「話すですって? あれは一方的にヒステリーを起こして、自分の意見を押し付けてるようにしか見えなかったけど? あなたはあれが会話だと本当に思ってるのかしら?」

 

「なっ!?」

 

麦野さんはそれだけ言うと、自分の席に戻っていった。購買部で買ったパンを手に、平然とした顔で。

 

「大将気取りで虚勢を張るのは別に結構なことだけど、自分の縄張りの中だけにしていた方がいいわよ。そうじゃないと化けの皮が剥がれるかもよ」

 

「はっ……何言ってんの? 意味わかんないし」

 

三浦さんは麦野さんに言い返す言葉が見つからず、苛立った様子で携帯をいじり始めた。

 

教室の空気が一気に悪くなり、クラスメイトたちが次々と理由をつけて外に出ていく。私は静かにお弁当を食べ続けた。

 

(……麦野さん、やっぱり熱い人なんだな)

 

雨の音が教室に響く中、私は小さく微笑んだ。

 

 

千葉県・放課後・総武高校・2ーF組。

 

今日は一日中、雨が降り続いていたわねぇ。

 

もうすぐ梅雨に入るのかしら。昼休みの三浦さんと麦野静乃さんのやり取りは、正直新鮮だった。

 

今までの麦野さんなら、由比ヶ浜さんが困っていても、あそこまではっきりと助け舟を出すことはなかったかもしれない。でも……私が彼女の背中を少し押してあげたから、本来の彼女が少しずつ表に出てきているのかもしれないわねぇ。

 

「麦野さんは……今日は雨の日だから、屋上や校舎裏にはさすがに行かないよねぇ」

 

そう思いつつ、私は奉仕部へと向かった。

 

千葉県・放課後・総武高校・廊下。

 

奉仕部の活動を終えて、雪ノ下さんや由比ヶ浜さん、比企谷君といつも通りのやり取りを繰り広げたわ。由比ヶ浜さんによると、昼休みに会っていた相手はやはり雪ノ下さんだったらしい。

 

「むぎのんがかばってくれて、ちょっとびっくりした」

 

由比ヶ浜さんがそう言うので、私は『麦野さんは元々、困っている人をほっとけないタイプなのよぉ』と答えた。

 

すると比企谷君が怪訝な顔で聞いてきた。

「なんでお前がそんなこと知ってんだよ」

 

「それは私と麦野さんとの秘密ですっ!」

 

そう言い切ると、雪ノ下さんが興味深そうにこちらを見た。

 

「食蜂さん、あなた麦野さんと知り合いだったの?」

 

「知り合いというか……友達だよぉ」

 

「そうなの。彼女はあまり他人と話すことはなかったんだけど、あなたと友達なのは意外ね」

 

「意外って……そんなに意外ですかぁ?」

 

「意外ね」

 

比企谷君が横から口を挟む。

 

「雪ノ下、お前こそ麦野と話したことあんのかよ?」

 

「昔、小学生の頃だったかしら……1人でいた彼女と、少し話したことはあったわ」

 

「金持ち同士のアレか」

 

「下品な言い方ね。社交界と言った方がいいわ」

 

「庶民からしたらどっちでもいいわ」

 

そんなやり取りをしながら、私は雨がザーザーと降りしきる窓の外を眺めていた。

 

雪ノ下さんも雪ノ下グループのご令嬢だし、麦野さんと話していてもおかしくはないわねぇ。

 

千葉県・放課後・総武高校・靴箱。

 

上靴から靴に履き替えようとした時、制服のポケットに入れていた携帯が振動した。メールの着信だった。

 

内容を確認すると……スパムメール。

 

「スパムメール……こんなの送ってこないで欲しいんだけどぉ……」

 

クラスの連絡網から送られてきている。

誰かがこんなメールを流しているってことかしら?私はすぐに麦野さんにメールを送った。

 

『クラスの連絡網からスパムメールが来たんだけど、麦野さんにも来てる?』

 

2、3分後、麦野さんから返信が届いた。

 

『私にも来たわ。風俗の広告や、うちのクラスの男子が海浜総合高校の女子と遊んでいる、とか……食蜂も?』

 

私はすぐに返信する。

 

『私のは、うちのクラスの男子の誰かが他校の生徒に暴力をふるってる、って……これって何なのかしらぁ?』

 

メールを閉じ、上靴から靴に履き替えて傘をさした。外はまだ雨が強く降っていた。

 

傘の下で、私はもう一度携帯の画面を見つめた。

 

(……クラスの連絡網から、こんなメールが流れるなんて……誰が、何のために?)

 

少し不安になりながら、私は雨の中を歩き出した。

 

 




今回は昼間投稿です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:10文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

やはり俺の青春ラブコメはまちがっていない(作者:Krito )(原作:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。)

もしも比企谷八幡が中学時代に告白して成功していたらと言うif物語▼八×オリが苦手な人はブラウザバックをお願いします!


総合評価:48/評価:-.--/連載:13話/更新日時:2026年07月05日(日) 12:00 小説情報

コードギアス 転生のルルーシュ(作者:よみや)(原作:コードギアス)

気がついたらルルーシュに転生していた男が、ハーレムエンドを目指して頑張る話。


総合評価:16064/評価:8.68/連載:23話/更新日時:2026年07月26日(日) 21:00 小説情報

六眼と無下限持って生まれたけど何か世界観が違う(作者:杏鷲)(原作:僕のヒーローアカデミア)

呪力もなければ呪霊もいない世界で生まれた転生者が、高額納税者ランキングに名前を刻むためにヒーローを目指す話。▼───なお、その肉体は常に魔王に狙われているものとする。


総合評価:13753/評価:8.33/連載:11話/更新日時:2026年08月05日(水) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>