そんなことよりセパタクローをしよう!   作:セパさん

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そんなことよりセパタクローをしよう!

 わたしはA級冒険者パーティー春告げ鳥のリーダー、女騎士ファウナ。いま、わたしたちのパーティーは絶体絶命の危機に陥っていた。

 

「ウィーサ!まだ動けるか!?……レイネ!返事をしろ!……くっ!」

 

 仲間である魔術師も戦士も意識を失っているらしい。春告げ鳥はダンジョン内に生息するオークの討伐依頼を受けた。並みのオークであれば10や20束になっていても問題ない。だがダンジョンの深部へ近づくにつれて不穏な空気が漂い始めた、オークはハイオークへ進化しており、その数は100を優に超える。

 

 更に悪いことに、気が付けばダンジョンは一方通行となっており、退路を辿るには急斜面を登らなければならない。今のわたしに仲間2人を担いでこのオークたちから逃げおおせるだけの力は残っているだろうか……。

 

「ぐへっへ……。」

 

「うっ……。」

 

 ハイオークたちの下卑た目がわたしたち3人を舐めまわす。このまま辱めを受けるくらいならば、いっそ自害したほうが……。そんな考えが過った瞬間、溌剌とした声が鼓膜に響き渡った。

 

「争いなんてやめるんだ!そんなことより、セパタクローをしよう!」

 

 精悍な顔立ち……というには可愛らしい、青年というより少年という風貌の……それでいて肩を出した奇妙な上着から見える上半身や半ズボンから見せる健足は余程の修練を積んだと物語る謎の人物がそこにいた。

 

「A級冒険者パーティー春告げ鳥リーダー、ファウナというものだ!同じ冒険者として要請する、仲間2人を担いで逃げてほしい!」

 

「ファウナさんっていうのか!もう大丈夫だ!どうやらこのオークどもには紳士の精神が足りない。ならばあるのは討伐だけだ!」

 

「まて!!これだけの数のハイオークだ!お前も無事では……」

 

 わたしの声が届く前に、ハイオークの標的はその少年へと移る。オークの群れが少年を襲うが……

 

「セパタクローパンチ!」

 

 わたしの目の前に飛んできたのは拳圧で吹き飛ばされたオークの首だった。

 

「セパタクローブロー!セパタクローアッパーカット!セパタクロースマッシュ!」

 

 あれほど手こずったオークたちがまるで綿菓子を千切るように四散していく。彼の織り成す技はまさにどれも洗練された武の極致にあった。

 

「グググウググ!!」

 

「危ない!後ろにオークロードだ!」

 

 ハイオークの3倍はあろうかという巨躯が少年の後ろから組み付く。しかし少年は全く動じず、その圧倒的跳躍力によってオークロードごと洞窟のギリギリまでを飛び、身体を反転させた。

 

「必殺!セパタクロー飯綱(いづな)落とし!」

 

 そのままオークロードの首はありえない方向に曲がり、泡を吹いて二度と動かなくなった。

 

「大丈夫ですか?ひどいケガです、早く地上にあがり教会で診てもらいましょう。」

 

「貴君はさぞ高名な武術家と推察する、この恩は誠に感謝してもしきれない!名を伺ってもよろしいか?」

 

「僕の名はシオン!セパタクローを全世界に広めるため旅をしている者だ!」

 

「セパタクロー?というのはシオン殿の扱う武術の名称か?確かに聞かぬ名前ではある。」

 

「それも含めて地上で話がしたい。二人は片手で担ぐことができるけれど、ファウナさんも一緒に運びたい。僕の背中に掴まる体力は残っているか?」

 

「ああ、それくらいならば大丈夫だ。大変に迷惑をかける。この礼は地上に出てから形あるものでお返ししたい。いや、命の恩人だ……望むのならばその……何でも。」

 

「今はまずここを抜け出すことを考えよう。さぁ僕の背中に掴まって!」

 

「あ、ああ。」

 

 そう言ってシオン殿はわたしたち3人を担いだまま急斜面の崖を一足飛びに駆け上がっていった。

 

 

 ●  ●  ●

 

 

「ウィーサもレイネも治療を受けられ、2,3日眠れば無事に動くこともできるようだ。シオン殿、改めて感謝を申し上げる、貴君の助けが無ければ今頃3人とも命はなかった……いや慰み者にされより屈辱的な生を受けていただろう。この恩は返しても返しきれない。」

 

「気にしないでくれ、たまたまランニングをしていたら助けられただけだ。」

 

「それにしてもあの数のハイオークを苦も無く四散させ、オークロードを一撃で屠るその武勇、さぞ名のある武術家とお見受けする。しかし不勉強ながらシオン殿の名は初めて聞いた。そしてセパタクローなる武術もだ。シオン殿はその武術を世界に知らしめるため旅をしていると言っていたな。異国の武術か?」

 

「いや、それが……僕にもよくわからないんだ。少し長い話になるが大丈夫かな?」

 

「ああ、貴君の助けになるならば傾聴しよう。」

 

「僕の一族は古くから神官の家系でね、召喚・憑依を生業としてきた。6つ上の兄がいて、父から修業を受けていた時の話だ。兄が異国……いや、もっと遠いどこかだろう。強い未練を残した悪霊に取り憑かれた。最初は言語も異なったため手も足も出なかったが、父と僕の解析で、その悪霊はセパタクローという国か部族の代表であり、〝さっかー〟なる大国に迫害され辛酸を舐める人生を歩んだらしい。」

 

「大国に迫害された小国の英雄か……確かに未練も多いだろう。」

 

「父も僕も兄の除霊を行うため試行錯誤をしていたのだが……その悪霊は父と兄を生贄の媒体として悪魔と契約を結び僕に呪いをかけた。〝セパタクロー〟を全世界に広めること、そして〝さっかー〟を駆逐するようにと。その呪いを受けて以来、身体能力は著しく向上し、肉体的な修練を積む衝動を抑えられない状態が続いている。」

 

「ふむ……しかし、〝セパタクロー〟も〝さっかー〟も寡聞にして存じ上げない。そもそも国という認識であっているのか……、もしも宗教的な概念であれば歴史が違い太古の昔に滅んでいる可能性もある。」

 

「ファウナさんの言う通り、僕も雲をつかむような話でね。旅を始めて1年、まるで進捗がない。そもそも呪いの影響で肉体の修練に1日を費やし調査どころではない日も少なくない。」

 

「シオン殿、もし邪魔でないのならば我々春告げ鳥がシオン殿の呪いを解くため協力させていただけないだろうか!?先ほどは醜態をみせたが、我々はA級冒険者。王族や神殿との関りも深い。きっと力になれるはずだ。」

 

「本当かい!?実は一人で調査をすることに限界を覚えていたんだ、そういってくれると心強い。是非お願いしたい。」

 

「貴君は命の恩人だ、何だってしよう。こちらこそよろしく頼む。……って痛い痛い痛い!!」

 

「ああ、ごめん!握手なんて久々にしたから……、力の加減ができなかった!骨にひびが入っているかもしれない!神殿にいかなければ!」

 

 

 ●  ●  ●

 

 

「春告げ鳥が生還した!?」

 

「はい、ハイオークの異常発生並びにオークロード出現の情報を隠蔽し虚偽の討伐依頼を出したのですが、3人とも生還し、2人は神殿で治療を受けているそうです。」

 

「第三王女と懇意にしているあの手駒を潰しておきたかったのだが……。うまく逃げられたか。」

 

「それが……ハイオークの全てが討伐され、オークロードも一撃で屠られたとのことです。」

 

「バカな!?ハイオークならまだしもオークロードともなれば1個師団に相当する戦力がなくては勝負にもならないはずだ!?春告げ鳥がいくら手練れの冒険者とはいえ、討伐……まして一撃で屠るなど!」

 

「ええ、そのため間諜から話を伺ったのですが……討伐したのはシオンなるこの国に一週間前やってきた旅人であると。」

 

「賢者か?魔術師か?剣士か?……何故そんな危険人物がのうのうと入国出来た。入国審査官の目は節穴か!?」

 

「それが……荷物も最小限に、無手で入国したそうです。ハイオーク・オークロードの討伐も格闘術で行った可能性が高いと。もし間諜の報告が本当であれば、相手は……バケモノの中のバケモノです。」

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