After the last bullet is fired 作:蓮太郎
この世界に産まれ28年、とある名家に産まれたが戦火により自分以外死んでしまい、運び屋となった人生の終着点が見え始めてきた。
んなわけあるかい、まだ28年やぞ。
そう言わんばかりに迫ってくるディルシア帝国の兵士をアサルトライフルでバッタバッタと蹴散らしていく。
「あっ、そこ右から3人来ます!盾持ちとスナイパーです!」
「…………!」
運が良いのか悪いのか『アンダー・タクティカル』の主人公であるオルカ・ドリムと共に地獄をあっけ巡っては居る。
オルカはこの戦火によって『異能』を覚醒しており、俯瞰的に
その能力を生かして中立地帯で起きた戦火からとある会社に合流し、波乱万丈の運命をたどっていくのだ。
なお、戦地に身を投じる覚悟を決めたのはチュートリアルで共に戦った名もなき兵士が身を挺して『ある人物』の囮となり消息不明になったからである。
そう、彼である。
過去に喉を負傷したせいで喋ることが出来ないため『くそったれ!』の言葉を発することもできない。
ただ、奇跡的に自分が転生者であるという事実を漠然と覚えていた為に地力を高めることには成功した。
「…………!」
「あの敵、防壁の『異能』を使ってます!気を逸らしたら解除できるかも…………」
「うわぁ!?閃光だと!?ぎゃぅ!」
「あ、あっさりと…………」
兵士が全員『異能』を持っているわけではないが、『異能』を持っている者は相応の扱いがされている。
種類によっては天下無双となるのだが、残念なことに先ほど現れたディルシア帝国の『異能』使いはあっさりと倒れた。
閃光グレネードによる光と音の妨害で混乱させた瞬間に射殺したのだ。
明らかに手慣れた動きをする彼に若干引きながらも、これほどの判断力を持つことに恐れおののいた。
「こっちだ!誰か戦っている!」
「…………」
「待ってください!あの人たちは味方です!」
何をもって味方と言えるのだろうか、混乱する現場で少女1人の言葉は響くはずはない。
しかし、彼は転生者であった。
「…………」
「あ、ありがとうございます。助けてください!この人と一緒に襲われています!」
原作通りなら合流してくれる、後にオルカが所属する会社の一員である『教官 リスティ』がオルカの声を聴き接近してくる。
その間にもディルシア帝国の兵士たちが襲い掛かってくるが、オルカの適切な位置把握と彼の数多にわたる武器の切り替えによりしのいでいく。
「よく頑張った!大変だっただろう、だがまだ気を抜くなよ。敵はまだ来る!」
陳腐で典型的な鼓舞の言葉だ。彼は心の中でそう吐き捨てながら、改めて向かってくる敵に向かい合う。
「はあああっ!」
射線に入るな、撃てへんやろが。
リスティの『異能』は盾となる武装に爆発属性を付与するモノだ。
爆発反応装甲の能力を付与したといえばわかりやすいだろうか。相手の攻撃に合わせて爆発、近くにいたら大ダメージ、離れていたら爆発による目くらましからの突貫攻撃が来る。
敵にしても恐ろしいが、味方としても恐ろしい存在だ。
だって必然的に戦地のど真ん中に飛び込むのだから。
「お兄さんはあっちのスナイパーを!えっと、お姉さんはあっちに突撃!えーっとそっちのお姉さんは…………」
「アタシはココ!あっちはリスティ!呼び捨てで言ってね!」
「そ、そんな馴れ馴れしく」
「時間の無駄になるからね!」
「アッ、ハイ」
リスティと共に乱入したココと名乗る白髪ロリはパラパラとサブマシンガンの弾をばら撒きながら、幼く馴れ馴れしいように見せかけて合理的な言葉を投げてくる。
もちろん認識という類では人を名前で呼ぶのは合っている。○○の▽▽と呼ぶよりも短くなるのだから。
こうして戦闘メンバーが3人、補助1人と戦力を増強しながら敵兵士を蹴散らしていく。
こうしてみたら順調にしか見えないだろう。
忘れてはいけないのが、中立地帯という戦うことを禁じられている地区に戦争を仕掛けているのに弱い兵士しか居ない訳がない。
そして何よりも男は知っている。
このチュートリアルの最後に立ちはだかる怪物を、『世界最強の肉体』の異名を誇る女が現れることを。
「あの!そっちは遠回りになります!こっちがいいです!」
「……………………!!」
「この子の言う通りだ。我々は一秒でも早くこの場から離れることだ」
「…………」
「まーまー、信じてやりなって」
こっちは未来を知っているから動いてるのに、何も知らないから甘い事を言っている。
そう思っていても口には出せないことが惜しすぎる。
彼とて歴戦の運び屋、現場の空気と勘の鋭さは後から合流した二人よりもある、つもりではあった。
喉さえやられてなければ、そう思いながらも原作主人公を見捨てることもできずにいるのも事実。
というかオルカが居ないと詰みorバッドエンド直行というソシャゲにあるまじきシナリオの作りなので絶対に死なせるわけにもいかない。
ヘルメットの中で大量の冷汗をかきながら、4人はチュートリアルの面子として脱出に進んでいく。
前衛を張るリスティ、中衛として支援するココ、そして状況に応じてあらゆるロールへと変更していく名も知らぬ男。
『異能』である異空間からの武器の出し入れによって、戦闘中に全ての役割を担うという唯一無二の特異性故にチュートリアルでしか使えないことを、男は覚えていなかった。