After the last bullet is fired   作:蓮太郎

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チュートリアル③

 

 最後に立ちはだかるのは強敵だ。

 

 道中で弱い兵士を倒して万能感を得るのはいいが、弱い者が居なくなれば残るのは強い者である。

 

「リスティ!もうすぐ合流地点に着くよ!」

 

「流石の『異能』だな」

 

「ででで、でも今初めて発現したのでまだ使い勝手が分らなくて…………」

 

「それでも大したものだ。私は最初なんて持つ物すべて壊していた。最初から『異能』を制御できない奴もいる」

 

「…………」

 

 リスティとココの所属する勢力が待っている合流地点までもう少し、絶えずにディルシア帝国の兵士が襲い掛かってきては返り討ちにしているため多少の疲労は認めている。

 

 それでも生きて地獄から脱出できるという希望は見えていた。

 

 中立地帯から徐々に外へ向かい、遠くに救助用のヘリらしきものが飛んでいるのが見えてくる。

 

 希望の箱舟だと思うだろう。

 

 実際、今の時点で何の問題もなく進むことが出来ていた。

 

 むしろ不気味なくらいに順調だった。

 

「よし!見えてきた!」

 

「ヘリに乗ったら脱出するよ!」

 

 援軍2人は喜びの感情を見せながら突っ走る。

 

 その背中を追うようにオルカも走り―――

 

「…………あれ?」

 

 1人だけついてきていないことに気づいた。

 

 そう、最初にオルカを助けた男だけ反対側に銃を向けていた。

 

 何故、そのような事をしているのかと疑問に思った瞬間、オルカの『異能』が大きく反応した。

 

 全身の毛穴が開くような警戒が全身に襲い掛かる。

 

 今から何か途轍もなく恐ろしい『誰か』が来る、その警告を伝える前に彼女達の頭上を何かが飛んだ。

 

 大きな鉄の塊、一瞬の出来事だが車が宙を舞い迎えに来たヘリをかすめたのだ。

 

 墜落ことしなかったものの、大きな危険が迫っていることを認識したヘリのパイロットは地上へ降りることを中断し一時的に浮上、これで脱出手段が消えてしまった。

 

「な、何が起きた!」

 

 リスティも異常な攻撃に振り返る。

 

 ココ、オルカ、そして名もなき運び屋の順で奥へと向かっていき。

 

 1人の女が立っていることに気づいた。

 

 軽装どころか露出が多すぎてむしろ目のやりどころに困りそうな服、しかし美しき筋肉を見せつけるかのようなデザインである事が一目でもわかった。

 

 むしろ、彼女は己の筋肉を自慢する為だけに痴女じみた服を着ているのだ。

 

「ほー?最初に気づいたのは2人か。しかもそのうちの1人はどうみても一般市民…………やっぱり戦争ってのはこういうのがあるから面白い」

 

 身長は2mはあるだろうか。胸のふくらみも女性3人と比べてはるかに大きかった。

 

 戦場で軽装というのはどう考えても『異能』持ちである証拠。

 

 そして攻撃してきたという点で敵であることに間違いはなかった。

 

「よお、アタシのとこの雑魚を蹴散らしてる奴がいるって聞いたんだが、お前たちだな?」

 

 美人であるはずなのに獰猛な笑みを浮かべ、今から戦いを楽しもうとする獣にしか見えない。

 

「…………ディルシア帝国の者か」

 

「おうともよ!!ま、あいつらからしたらアタシは雇われなんだけどな」

 

「や、雇われたからって、何でこんなことを!」

 

 一般市民として生きていたオルカの悲痛な叫びはパチパチと残る戦火と同じように場に響く。

 

 彼女にとって命のやり取りは遠い場所の物語であった。故に、否、だからこそ人間として考えて当然の言葉が口に出た。

 

「戦いたいからだ」

 

 その常識は獣には通用しない。

 

「当然だろ。アタシは強者として産まれた。まあ、頭に関しては自分でもバカよりなのは認めるさ。だがな、アタシには『これ』がある」

 

 唖然とする空気の中で笑いながら女性でありながら丸太のように太い腕をバシンと叩こうとして。

 

 タタタ!チュンチュン!

 

「…………お前、アタシと同類か?」

 

 問答無用でアサルトライフルを発砲したがまるで効いた様子がない。なんなら腕の筋肉だけで弾かれてしまっているではないか。

 

「そういうこった。アタシは大好きなんだよ、暴力が!」

 

 だん、と踏み込んだと思った瞬間に空気が弾ける音と共に突っ込んでくる。

 

 その目標は一番前線に立っている男。

 

 いつ取り出したのかも分からない盾を斜めに向けて衝撃を逸らそうとするが、接触した瞬間に大きく弾き飛ばされてしまう。

 

 一瞬の出来事であったが、リスティが即座に走り出す。

 

 銃弾を肉体だけで弾き返し、音速を超えるレベルでの移動を可能とする化け物が相手なのだ。

 

 オルカはもちろん、ココの『異能』もあまり役に立たないかもしれない。

 

 そして何よりも、リスティにとってこの女は仇である。

 

「クリセリアァァァ――――――ッ!」

 

「おう、アタシだぜ!」

 

 ドグァン、と筋肉と爆発がぶつかり合う。

 

「アンダルで起きた事、忘れたとは言わせんぞ!」

 

「どこだよ。覚えてないなぁ、そんな僻地のつまらん戦いは!」

 

「この、下種がぁっ!」

 

 女性がしてはいけないほど険しい表情で盾と拳がぶつかり合う。

 

 リスティの『異能』によってぶつかり合うたびに爆発が起きるのだが、クリセリアと呼ばれた筋肉女に効いているような節は見当たらない。

 

 肉体を強化する『異能』といえど限度がある。普通ならそう思うだろう。

 

 だが、クリセリアは特別だった。

 

 チュートリアルで最後に立ちはだかるボスであり、負けイベントで『アンダー・タクティカル』内でも最強とされている女。

 

 男が転生する前の時点で完結していなかったとはいえ、一度も倒されていない。

 

 それを今からどうにかして気を引いて退けなければならない。

 

 復讐で暴走するリスティを押さえ、これから死地に飛び込まなければならないことに吹き飛ばされた後に突っ込んだ家屋で考えるのであった。

 

 時間切れまで、後5分。

 

 

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