俺はカビ猫と生きていく!~魔法の世界で、猫型カラクリと歩く~ 作:ねこねこてんちゃん
*
【ハルン視点】
「ちょっと! ハルン! 降ろしなさいアンタ!」
バッと担いだルミエルネが肩で暴れてやがる!
ジタバタジタバタしやがって! もがくなようるせぇな!
「もがくなよっ! うるせぇな!」
「アンタね! あそこに二人で置いてったら危ないでしょうが! ああいう時は半分に分けるでしょうよ!」
「バカヤロー! あのデカ包帯の速度で寄られて、お前なにが出来るんだよ! お前を守る勝負になっちまうよ!」
豚もそうだったけどよ。突進系の相手とは相性悪いだろ!
オレが残ったほうがマシ! だーが、ルミエルネとラージスだけでウロウロさせるのも危なっかしいぜ。
ミツイだけじゃ荷が重ぇってのもわかる。
「人のことを足手まといみたいに言って! バカバカバカバカ! このおバカ!」
ルミエルネのヤロー。せっかく運んでやってんのに、オレの頭ドカドカ殴ってきやがって。
「痛ってぇな暴れんじゃねぇよ! 足場悪いんだから大人しくしてろ!」
そういやそうだな。この螺旋階段はなんか歩きにくいぜ。
段の幅が無駄に広くて、高さも無駄にある。巨人用かよ。
……あのデカ包帯専用か? 妙なもんつくってんなぁ。
「……お前らも背負ってやろうか?」
「結構ですよ。ほら、ようやく着きました」
へっ。ラージスが可愛くねぇのはいつも通りだぜ。
さて、言ってた通りやっと下まで着いた。さっきの廊下より殺風景で、ここも無駄に天井が高くて白い。
一本道で、突き当たりまで見通してもモノ一つねぇぞ。奥まで行ったら曲がるのか?
「なにこれ……不思議」
ミツイもきょろきょろしてらぁ。あれか? 物置とか、そういうのか?
匂いがしねぇし、音も階段の上からしかしねぇ。牢屋とかなら見回りとか、なんかしら音聞こえてもいいけどな。
「とりあえず奥に走ってみるか! ラージス! 手分けするか?」
「いえ、固まっていきましょう。敵に急襲されてはいけない。それと、歩いていきましょう。ハルンの速度と並んで動くのは大変なので」
りょーかい。オレがお前らに合わせる方がいいわな。
あ、もう一個聞こう。
「降ろしていいか?」
「この先の突き当たりまでは担いでいてください。首輪がないと逃げるので」
「……ハルン。アンタ眼鏡に寄りなさい」
ほらよ。わざわざ隣に立ってやらぁ。
――ビュン。
担がれたまま、振られたルミエルネの拳は空振り。
「……降ろして」
「目印あそこだってよ。うし、いくぜー」
ったく。オレがせっかく与えたチャンス、ふいにしやがって。
なんだかんだ相変わらずモヤシなんだルミエルネは。ラージスもだけどな。
しっかし気味悪ぃな。真っ白幽霊とか出んじゃねぇか?
「……お師匠たち、いないねぇ」
ミツイだけ、ちょっとせかせかしてんな。歩くのがはえぇ。
ただ、オレの前に出んなよなぁ。危ねぇぜ。抜いてやろ。
「ミツイ! 大丈夫だ! たぶん死んでねぇよ。理由は……ルミエが知ってる」
「……殺す理由はなさそうよね。こんだけ白い場所で死なせたら、掃除大変そうだし」
「いや、そうかもねぇ……。うん……」
担がれたまま、突き当たりをまーっすぐ見て、ルミエルネは呟きやがった。
伝えられたミツイが困ってんだろ! 励ませよ!
なんのためにラージスじゃなくて、お前に振ったと思ってんだ!
「ほら。突き当たったわよ。降ろしなさい」
「……ここまで何もなく、ここから先の分かれ道もないとは」
あっさりたどり着いちまったなぁ。ラージスも困り顔だぜ。
オレはポイっとルミエルネを投げると、風がびゅっと吹いて、ルミエルネはふんわり着地した。
身体能力系は全部魔法でカバーしてんな。実際どんだけ動けんだか、怪しいもんだ。
「……もしかして、騙された?」
また、ミツイが不安げにポツリ。
ラージスが口元に手をやりながら答える。
「あまり騙す意味もないかと。ここに僕らを監禁する程度にしかなりません」
「で? ラージス。なにか一手は?」
「ルミエルネ。あなたはライトの探知用電気輪、使えますか?」
「みんな死んでいいなら」
オレもルミエルネとおんなじ感じだったら出来る! つまり、使えねぇってこった。
しかしまぁ、わかんねぇな。なんだここ。あのデカ包帯がウソついてるって、あんまなさそうなんだよな……。
「ラジ! ジジイの言いそうなこと言え!」
「……ハルンが言ってくださいよ。あなたの方が付き合い長いでしょう」
ったく。オレが言えるなら、頭の中だけで済んでんだ!
なんでもいいから、テキトーに言ってみるか。人の困りごとはジジイが何とかしてきたから、困ったときはジジイだ。
「雨は朝降る!」
「そうですか」
「西の山には行くな!」
「あなた何度か破ってますよね?」
「キッチンは、人の高さに出来てるから文句言うな! 道具ってのはそういうもんだ!」
「結局、その問題はどう解決したんですか?」
漫才だなこりゃ。ダイドーゲイニンってのがハヴィーに来た時、やってたぜ。
オレとラージスかぁ。オレがツッコミ入れたら、ラージスぶっ飛ぶんじゃねぇか?
「あれはタイヤ付きのカラクリ足場作ってよ。乗っかって料理してた!」
「脱線してんのよアンタたち。トモリの連中探すんでしょ?」
ほら、ルミエルネに怒られたぞ。漫才すっから。
なんとかなんねぇのかこの問題……。上を見ると、無駄に天井は高ぇしよぉ……。
んあ?
「ラジ。『人の高さに出来て』んだよ」
「……どういうことです?」
「なぁミツイ! ブロカードってのは飛べるんだよな!?」
「ん!? たぶん飛べるね。雲より高く飛べるって言ってる人いるくらいだもん」
そういうことか。見つからないワケだぜ!
ここは、全部デカ包帯用に出来てる場所なんだ! ブロカードは飛べるから高さ関係ねぇしな!
何かがあるとしたら、もう少し上だ!
「ルミエ! なんとかオレたち全員浮かせられるか!?」
「あらハルン。そういうこと。上にいるかもなのね。……ゆっくりと、がっちゃん。どっちがいい?」
「ゆっくり!」
がっちゃんってなんだよ! 天井に頭ぶつける気か?
揃いも揃ってモヤシ側なんだから、あんまり下手なことすんなよな!
「それじゃ行くわよ。動いたら落ちるから、暴れないように」
ビュンと風が吹いて、オレたちは一気に天井近くまで浮いた。
「うわぁあっ! ……おぉ~」
ミツイは飛ばされてスゲェ驚いてる。
上がる速度が速いんだよ!
「ゆっくり!」
「わかってるわよ! 大丈夫だから黙ってなさい」
コイツ! オレの話聞いてたのか!?
さっきと立場逆転だけどよ、落ち着かねぇもんだな!
ふわふわと、来た道を戻る。ただ、あんま変わんねぇな。白い壁だ。
「あると思ったんだけどな! 吊り戸棚!」
「ハルン、主婦脳よねぇ」
少なくとも、ルミエルネよりは主婦脳だろうな。買い物してっとよく言われたぜ。
ハヴィーで一番、嫁に来いって言われたのは、ハルン様で間違いねぇ。
なんて考えてると、ラージスの声がした。
「ルミエルネ。止まってください。……皆さん。見てください。右側の壁に、切れ目のような線があります」
ほう。あったか。
オレがそっち向くと、すぐにラージスは自前のよく伸びる杖でそこを強く殴った。
なんだ急に。珍しいことしてっからルミエルネが睨んでんぞ。
「……ラジ。なにやってんのよ」
お嬢様のお言葉に応えず、もう一度、線のところをコンコンしてるラージス。
――ドンッ!
爆破のおまけつきだぜ……!
「アンッタぁ! 暴れんじゃないわよ! 落ちるでしょうが!」
「……様子が変わりましたね」
魔法で暴れるっていう専売特許を取られて、ルミエルネがお冠だ。
しっかし本当に様子が変わってる。壁の高いところが透けてきた……。
そんで、見えてきたもんはだ……!
「お師匠! マナちゃん! みんな!」
居た! 居た居た居たぜおい! ミツイが喜んで声出してらぁ!
あっちもびっくりしてんな! 声は聞こえねぇ!
ルミエルネがゆっくりと慎重に、オレたちを透けた壁側に寄せる。
慣れねぇもんだから、おっかなびっくりだな。あとでいいもん食わせてやろう。
中の様子を見ると、思った以上に無事そうだな。
マナも薬かご持ってるし、どいつもこいつも武器取り上げられてねぇ。
マジか。ブロカードってのは、どんだけコイツらのこと、どうでもいいんだ?
「はぁ~。とりあえず、生きててよかった……」
ミツイが震えた声でつぶやいてる。ちょっと泣いてんな。ホッとしたんだろうな。
ほんとによかったな! まずはひと段落だ!
「しかし、どうしたものか」
「取っ手とか見当たらないし、これ開かないわよね」
ラージスとルミエルネが、ポツポツと話してる。
うーわ。確かにな。ラージスの魔法でも、なんか透けただけで傷は入ってねぇ。
コンコンと叩いてみるが、ガラスじゃねぇ。壁だ。
「……ルミエルネ! お前の魔法でオレをここにダァンってぶつけられるか!?」
「ハルン! アンタそれしか芸がないワケ!? もっとなんか……道具使ってとか、ないの!?」
あんだ? 壁ぶん殴り突破作戦はお気に召さねぇか?
道具か。その手があったな。
「うし。『ハルンライト』」
――なにも、起きねぇ。
ルミエルネが吹かす風の音しか聞こえなかった。
「いませんよ。ライトも宝箱も」
「だな。ラージスお前なんか道具持ってっか?」
「簡易的なものだけ。多少身軽にしてきたので」
じゃ無理だな。壁剥がしとなりゃ、それなりのもんは必要だぜ。
最後に頼れるもんとなると、やっぱオレの拳だな。
オレは両の拳をパンパンと胸の前で鳴らして、やるって決めたと周りに伝える。腕が鳴るぜ!
ルミエルネはいつも通り、呆れ顔だ。
「……はぁ。ハルンのこの癖はどうにかなんないの」
「まずは一度やらないと気が済まないんでしょうね。ハルン、合図が出るまで待ってくださいね。いろいろと準備があるので」
ラージスがそう告げると、ミツイが必死のボディランゲージで中の連中に指示を出す。
全員、隅に固めて巻き込まれないよう移動させてくれてんだな。助かるぜ。
準備ができると、オレたちは全員で一度、下に降りる。
オレがぶん殴った衝撃の中で、周りの奴らまで飛んでたら危ねぇ。
ルミエルネがびっくりして落っことすぜ。それに、助走の距離も取れるしな。
「よし! あとはオレがルミエルネに吹っ飛ばされながら勢い付けて、透明の壁をぶん殴る! だな!」
「ほんとハルン気を付けなさいよ。お手手取れたら、帰ってからじゃないと直らないんだからね!」
「んなこと言ってらんねぇだろ! 一発で終わらすぞ! 全力で来い!」
オレからそう伝えられたルミエルネは、目を瞑り、両手を広げて魔力を漂わせる。
大したもんだぜ。場所に魔力が揺らめくってのは、ルミエルネとライトくらいしかやってんの見たことがねぇ。
「行くわ! 合わせなさいよ!」
「おう!」
――ドンッ!
音が鳴った瞬間、オレは竜巻に飛ばされて、さっきの透明な壁の前。
右腕に電撃をまとわせて、思いっきりそれをぶん殴る!
バンッと、壁が殴られたところを中心にヒビが入った。
これなら、行けるぜ!
「おぅりゃあっ!」
厚い壁がぶち抜かれ、あり得ねぇほどの破壊音が鳴り響いた。
外と、中が繋がった。
「よう、おめぇら。助けに来たぜ」
閉じ込められてた内側に、入ってきた破片がガラガラとうるせぇ。
ただ、中の奴らは、今のでケガはしてなさそうだ。
「……ハルン!」
マナの少し嬉しそうな声がした。元気そうじゃねぇか。
おーおー半泣きだ。怖かったろうなぁ。
「よし! いろいろなことはあとだ! まずは全員、話を聞け!」
トモリの連中の顔がこわばる。なんだビリビリっとびっくりしやがって。
敵が来てるってことじゃねぇよなって、周りを見てみるが気配はねぇ。
……とりあえず、続けるか。
「今! ライトとユキがデカ包帯魔物と戦ってる! だからここにはいねぇ! とりあえずお前らのこと、ユキとミツイが心配すっから! 全員連れてこっから出る!」
オレもな、ライトたちに加勢したい気持ちがあるけどよ。
とにかく、まずはトモリの奴らの安全確保だ。
「これから、ルミエルネがお前らのこと風の魔法で降ろすから! 暴れんじゃねぇぞ!? 下手なことしたら地面に叩き落とされるからな!」
うしうし。言いたいことは言ったから、上からあいつらに合図を出す。
ルミエルネは風を使って、一人一人トモリの奴らを降ろしていってる。
その間に、マナが話しかけてきた。
「あのね、ハルン。本当にごめん……」
「おう。さっきも言ったけど、あとでな? まずはこの場所から出ねぇと話になんねぇぜ。こっからが踏ん張りどころだ。気張れよ?」
ぽんぽん。こういう時は優しく肩を叩いてやる。
懐かしいな……! ライトが10歳くらいに悪さした時は、こんなんやってた!
その後のジジイの説教はなげぇからな。風呂の用意とか、メシの用意とか。慰められるよういろいろ考えてたぜ~!
「ハルン! あとはアンタだけよ!」
おっ。感慨に耽ってたら終わってんな。
「おう! 今行く!」
オレは、変な牢屋から飛び降りて着地。
こんくらいの高さなら、なんてことねぇな。
「ハルン。こっち来なさい」
んあ? ルミエルネが手招きしてら。なんだ?
――ゴンッ。
「痛ってぇ! なにすんだ!」
「風で降ろしてやるんだから、勝手に飛び降りるんじゃないわよ」
殴られた……。しかも、今のは本気で機嫌悪い言い方だったな。
着地で砂煙でもあげたか? いや風魔法のがヒドそうだけどなぁ……。
「では、これから脱出を行うわけですが、螺旋階段は使えませんね」
うん? ラージスがまた頭を悩ませながら呟いてる。
なんでだ? 壊れたか?
「あ~。ユキたち戦ってるもんねぇ。上がってったら巻き添えだよ」
おー。ミツイ、お前は頭がいいなぁ。
こんな大人数で通れる戦いにゃ、なってねぇだろうな。
「別の出口探すしかないってわけね。……トモリの? アンタらなんか分かる?」
ルミエルネの言葉に、マナたちが遅れて反応する。
そりゃ『トモリの』って言われても、テメーらのこと呼ばれてるなんてピンとこねぇよ。
そんで、マナがルミエルネに向かって口を開く。
「私たち、探知魔法とかはなくて……」
「そうよねぇ……。私もないわ」
こりゃ、また壁ぶち抜きしかねぇかぁ?
地下の壁抜きはそう簡単じゃねぇぜ。出来るだけ試すってのはありだと思うけどな。
「ラジ。なにか案は?」
「洞窟や迷宮であれば、風が通るところが出口です。ここに適用できるかは怪しいですが」
「いいわ。やりましょ。今日の私は団扇だわ」
心底諦めた顔で、ラージスの案に応えるルミエルネ。
本当に風魔法ばっかだな! んお?
うおぉ!? すげぇ!? 尋常じゃねぇ音! 嵐よりスゲェ風が吹き荒れだしたぞ!
オレたちごと飛ばされるっつの! やっぱあれか! イライラしてたんだな!?
「螺旋階段の場所から、左に曲がってだいぶ進むと、天井が開いてるわ。たぶんね」
一瞬で風がやんだ後、ルミエルネは呟いた。
ほかの奴らは、髪がぐしゃぐしゃ。みんな口が開いてるぜ。
「凄まじいな……。それだけ大規模な魔法を使って、魔力は問題ないのか」
トモリの刀おっさんが、思わずルミエルネを心配してら。
ルミエルネは、自分だけサラッと髪を整えながら返事した。
「ここに来てから、連発してるから多少はしんどいわね。ライトと違って私は無尽蔵じゃないのよ」
いや? ルミエルネは無尽蔵みてぇなもんだぞ? 確かにライトよりは、もたねぇけどな。
ミカゲバも言ってた。ルミエルネはよく食べて、よく寝て、すごいいっぱい魔法使えるって。丈夫になんねぇのがかわいそう、だとよ?
「この先、また一仕事お願いしなければならないのはとても心苦しいですね。姫、行きましょう?」
ラージスが、手を差し伸べながら急かしてら。
ゼッテー心苦しくねぇぞ。全然、苦しそうじゃねぇ。
ルミエルネもウンザリ顔でミツイの方を見て、話しかける。
「鬱陶しいでしょう? なんとか言ってやって」
「いやぁ。なにも言うまい。好きな子にはなんとやら、かもよ?」
ミツイ。お前、近所のオバちゃんみてぇなやつだな。
「ですって。ライトは花冠くれたけど、ラジはなにくれるの?」
「健康促進用自転車など、いかがでしょう。体力がつきますよ?」
はっ、とラージスの提案をルミエルネは鼻で笑った。
悪くねぇんじゃねぇの自転車。お気に召さねぇか?
んなこと言いながら、出口に到着。全員また風で浮かされて、天井の吹き抜け越えたら……マジで外だ。
「あっかるいな! もう真っ昼間じゃねぇか!」
草っ原だ! 池の外側だな!
なんなんだろうなここ……ブロカードが入る場所か? それともなんか上から落とす場所か?
ま、なんでもいいか! 魔物の音や気配はしねぇ。脱出成功だ。
「あーっもう! お師匠も、マナちゃんも! みんなして本当に……バカなんだから」
「……ミツイ。世話をかけた。済まなかった」
「ユキが無事戻ってきたら、しっかり怒られな。帰るよ!」
ミツイが泣きじゃくりながら、刀のおっさんの胸を叩く。
とりあえずよかったな! やっとトモリの連中も緊張がほどけてきたって感じだぜ。
そんじゃ、この後どうすっかだな。オレだけで決めて動くと、全員バタバタするから話すか。
「ラジ、この後どうする? お前らだけでトモリの奴ら送り届けられるか?」
「出来ると思いますよ。ルミエは多少疲れも見えます。ブロカードから離れるという意味でも、ここで里に戻るのは悪くないかと」
だぁなぁ。
オレがルミエルネを守りながら、デカ包帯やブロカードと戦うってのも無理じゃねぇが……。
無茶するだろうなアイツ。あんまりいいことねぇか。
「よし! それじゃ決まりだ! オレは、ライトとユキにマナたちが助かったことを伝えに行く! ラージスとルミエルネは、こいつらのお守り!」
「ハルン! またアンタ自分だけで……!」
よし来たな。ルミエルネは絶対絡んでくるよな?
ここはオレの話術で、うまーく説得だ。
「決、め、た! もうこれは決まりだ! これが一番なんだよ」
「……だから!」
「ライトが心配なのはわかるけど、任せときな! このハルン様がお前の分まで、なんとかしてきてやらぁ!」
よぉーし。ルミエルネの奴、頭抱えてるぜ。
言い返す言葉も浮かばない、ってヤツだな!
「待って。……持っていきなさい」
――バチン!
すっげぇ雑な電撃が、オレの胸に入ってきた!
ほんっと雑だよな! 衝撃がかなりあるんだよ! いつかオレのどっかが壊れるってんだ!
「絶対、帰ってくんのよ」
「あったりめぇだろ? 誰にモノ言ってんだ!」
よっし。じゃあ行くか。
とりあえず穴に飛び込んで、そっから道だけ覚えておかねぇとな。
最悪、ライトとユキ抱えてダッシュだ。
「……ハルン」
後ろから、マナの声がした。
「おう、どした」
オレは振り返って、返事する。
声がデカくならねぇよう、気を付けた。
「あのね! 私、その……本当に、ごめん」
「ああ。大丈夫だ。聞くぜ?」
多分、今は急がねぇといけねぇところだ。
でもな……。人間ってのは、ここしかねぇ変わる瞬間ってのがある。
カラクリとして過ごしてきた、オレの考えだ。
「私……! どうしても、どうしてもオーブが、取り返したかったの。あれはね……。みんなが大切にしてた、みんなの宝物なの」
「ん。聞いた」
雪の街いっこぶん。中の人間全部を寒さから守るなんてスゲェよな。
そりゃもう。大事にされてたんだろうよ。
「ブロカードのところにあっても、何の役目もないし……。ずっと奪われたままなんて、我慢できなくて。あれがあれば、みんなで、ハレノヒに帰れるのにっ……」
だまって聞く。
言葉にして振り絞るってのは、難しい。オレも難しかった。
だけどよ、頑張って口にしないと、間違っちまってもよくねぇしな。
「私ね? どうしても……帰りたかったの。ハレノヒのあったかいところに……! ユキや、みんなと。だから……!」
ボロボロに泣きながら、マナは必死にしゃべって、続きが出てこなくなった。
頑張ってるな。頑張ってるぜ。頑張ってるって伝わる。
ま、だからこそ、オレも伝えないとな。
「だからって、死ぬなよ」
しゃがんで、肩に手を置いて、マナの眼をじっと見て、言う。
これはな、生きてる相手にしか言えねぇんだ。
「宝物のために死ぬなよ。大切な人が死ぬって、悲しいんだぜ? モノや街が戻ってきたって、死んでちゃどうにもなんねぇ」
「……ハルン」
ん、ちゃんと聞けてるな。
入るよなぁ。振り絞って伝えた後に、言われた言葉ってよ。
なんでか分かんねぇけど、オレもよく覚えてる。
「お前の母ちゃんがなんで着いて来ちまったか、わかんだろ? 死んでほしくねぇから『なにか出来ねぇか』って、来ちまうんだよ。死なれたら辛ぇから、来ちまうんだよ」
「……っ!」
また、マナの瞳から涙がぽろぽろ落ちる。
たぶん、どうなんだろうな。響いてんのかな。
「大切な人に、辛い思いをさせるなよ。かわいそうじゃねぇか。長生きしろよ。今日生きてんだ。まだ出来るって」
もうマナから、返事は聞こえなかった。
口元を抑えて、泣きながら頷いてる。ん、それで充分だ。
「それになんだ! お前は薬が作れて、人を生かせる。こりゃスゲェことだぞ? みんな長生きさせてやれる。お前もお前のやり方で、人を助けてやれんじゃねぇか。お前も、出来るぜ」
ぽんぽん。頭なでてやる。
すっとマナはオレをぎゅっと抱きしめた。すんげぇ力込めて、泣きながら。
「ほんじゃ! オレはライトとユキを助けてくるから、しっかり帰れよ?」
「……うん!」
マナに離してもらって、オレはさっきの穴の方に向かう。
あ、オレの首元に鼻水ついてんな! 迷子のガキとかこれやるんだよな! あとでじっくり落とさねぇと!
「もしあったらよ! 連れて帰ってやるよ。宝物!」
マナに聞こえるよう、デケェ声で伝えた。
そんで、穴に飛び込む。さっきの倍は、高ぇな!